第1部 21話 『彼らはXYZ』
時間は無い。
無駄に使えるポイントも無い。
みんなの命は俺の決断にかかっている。
犠牲も既に出ている。
怖いよな? 怖くないなんて言う奴がいたら、それは責任を持って周りの人達に触れていないからじゃないかと思う。
アンタも、触れてみりゃ分かると思うぜ。
簡単な事だ。
ワチを見る。
ラシュリーを見る。
アミエルを、タヌキチ……。
『なんでやす?』
ま、こいつはいいや。
俺を信じて少人数で敵を迎撃する為に向かってくれた、真田丸を、ゴブザとゴブツを、アンリエルを、マキシムを、オンヤを、思う。
トーガスと、シャルケについては、アミエルの為に、無事に帰ってきて欲しいと思っている。
誰一人、失いたく無いんだ。
それが怖くったって恥ずかしいとも思わない。
「決めたぜ、タヌキチ。俺はこいつらをポイントを使って呼び出す!」
『わかったでやす! ポンポコポーン!』
くるりとタヌキチが回り、一気に大量のポイントが消費されたのがわかった。
そして、俺の目の前に三人の男女が片膝をついていた。
呼び出した人物は三人。
消費したポイントは9000ポイントだ。内訳は仲良く3000ポイントずつである。
「よく来た。早速で悪いが状況は最悪だ。俺はお前達を頼らなきゃならない。応えてくれるか?」
問いかける。
俺は、俺達は、もう、彼らに賭けるしか無いのだ。
二階に侵入したブーチは、はやる部下達を抑えて、ゆっくりと着実に歩みを進めていた。
「慎重過ぎるのではないのかな? ブーチよ」
「ここの指揮は、俺がアブレーチェさんに任せて貰ってるんで、指示には従って貰いますよ」
「これはすまぬ。血が騒いでの。許せ」
「いえ、俺も言い過ぎました。すいやせん」
ガイバーンが同行し、部下達が浮ついているのを、ブーチは感じていた。その苛立ちを事もあろうに、ガイバーンにぶつけてしまった。
ガイバーンで良かった。これがクフィールか、ガストであったなら、自分は命が無かったかも知れない。
強者と共にいると、自分も強者になったつもりになるらしい。
馬鹿どもが!
二階に振り分けられた面子の質は、それ程高くない事は知っているのだ。敵を数で圧倒する予定なのだから、気持ちぐらいは引き締めて貰わねば困るのだ。
しかし、ブーチは知らない。
このブーチの慎重さこそが、守達に時間を与えてしまった事を。
皮肉と言えただろう。
彼は間違えた訳ではないのだ。
相手が普通であったならば。
胸騒ぎを感じているブーチの横で、肌のざわめきを感じ取り、逆に、笑顔になったのは暴風壁ことガイバーンであった。
視線は正面から歩いて来る、男女二人組に釘付けであった。
一人は見た事もない(恐らく刃物の類だろうが)武器を腰に下げた、二十代くらいの男であった。
顔に大きく走るXの傷跡が男の面構えを強くしていた。裸の上半身から見える鍛え上げられた筋肉と言い、ガイバーンの獲物に相応しい。
……是非、メイスに血を吸わせたい。
そう思わせる相手であった。
もう一人の女は、男に比べれば多少落ちるが、それでも十分興味をそそる。
年齢は良く分からない。年が若いと思えば若いと思えるし、それなりに大人だと思えば大人に思える。美人か、可愛いかと問われれば、どちらとも思える。
雲の上を歩く様な足取りが見事だ。まるで、自身の体に重さがないかの様だった。
美しい女である事は間違いない。
だが、その実態をまるで掴ませない女の気配に、ガイバーンはただならぬ物を感じていた。
最も、既にターゲットは決めていたので、ガイバーンの心はそれ程乱される事は無かったが。
心は既に男との死闘に向かっていた。
男が歩みを止め、女がそれより少し前まで歩み出て来る。
ブーチの周りにいた部下達の間からは、下卑た言葉や笑みが漏れていたが、致し方ない事だっただろう。
ブーチも一瞬見惚れる程であったのだから。
女は自らのスカートの裾を摘み深く一礼すると、ドキリとする様な笑顔を見せて口を開いたのだった。
「お集まりの皆様方。ワタクシの名前はヨルコ。敬愛しております主人の命により、ここにおります」
ヨルコは更に艶やかに笑う。
「では、死んで下さいませ」
ブーチの視界が、ガイバーンの大きな背中に覆われる。
凄まじい風が巻き起こり、部下達が吹き飛ばされ壁に叩きつけられるのを見た。
死んでいる……。
ブーチはガイバーンに助けられた事を悟った。何だ? 何が起こっている? 冷や汗が、自然に頬を伝って落ちていった。
いかれ女だな。
こいつは、いかれ女だと俺は断定する。
お館様の城を傷つけやがって。
思わず、頭をかかえちまった。
女に、お前間違ってるぞって言うのが一番苦手なんだよ。奴ら、泣くか、文句しか言わねぇからな。
あ? お前は誰だって。
俺の名前はX字だ。
ひでぇ名前だと……オイ、殺すぞ? こいつは俺の大事なお館様から頂いたんだ。これ以上ない、立派な名前なんだ。
馬鹿にする奴は許さねぇ。
胸を張って言うぜ。
俺の名前はX字だ。
「オイ、ヨルコてめぇ、お館様の城を傷つけてんじゃねぇよ」
「きっと、ワタクシのご主人様なら許してくださいますわ」
「根拠がないだろうが、根拠がよー」
「多少の被害は仕方ありませんわ。それよりも、ワタクシはご主人様のビルの中に、あの様な輩達がいる事に怒りを覚えております。速やかな排除が、急務と思えますが?」
ふむ。
一理ある。
壊れた物は直せば良い。
だが、命は一つだ。みんなを助けてくれと、お館様も言ってたし。さっさと暴れて奴らを排除するとしよう。
「かっかっかっ!! 面白い面白い。だが、女、貴様の相手は後だ。そこの男、儂と血の宴を催そうではないか? 血杯を空けるのは儂か貴様か、勝負といこう」
「てめぇが何を言いてぇのかさっぱりわかんねぇ。それに俺は『そこの男』じゃねぇ。立派な名前がある」
「ほう。聞かせろ」
「X字だ」
「かっかっかっ、儂はガイバーンだ」
俺は腰に下げた刀の柄に手を掛けた。この刀の所為で、俺は一緒に呼び出された二人より、余分な負担をお館様にかけちまった。
スッと引き抜く。
良い刀だ。
お館様の為ならば、例え何であっても斬り裂いてみせる。
いいだろう、ガイバーン。てめぇは、俺の名前を聞いても馬鹿にしなかった。まともに立ち会ってやろうじゃねぇか。
「ヨルコ。雑魚は任せるぞ」
「ご主人様以外には、命令されたくありませんわね。けれど、良いでしょう。他はワタクシが引き受けます。負けは許されませんわよ」
「誰に言っていやがる!」
俺は飛び、一気に間合いを詰める。
奴はメイスで迎え打つつもりらしい。
「直ぐに終わらせてやらぁ!」
こうして俺とヨルコは、お館様、つまり荒海守様の為にビルに侵入した敵の排除を開始したのだった。
□現在のオーナー状況
職業:駆け出しビルオーナー。
オーナーポイント :更新中(暫定更新ポイント345ポイント)
配下:更新中(暫定更新なし、幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ムキムキドワーフ1、ゴブリーダー1、?ゴブ1、ゴブ25、ビキニアーマー1、コロボックル18)
今の協力者:狐面2、落ちぶれ商会の面々3
ビルサイズ:3フロア。小さめ。
備考:賽は投げられた。残念ながら個性はかなり強めだ。




