夜明け
目覚める。
がらんとした通路。
ゆらゆら揺れているつり革。
どうやら電車のようだ。
外は暗く、しんみりとしている。
雨が降っていたからか窓ガラスが濡れている。
電光掲示板には何も書かれていない。
広告も何もない。
乗客は私一人。
なぜか何も思い出せない。
何でここにいるのか。
自分が誰なのか。
自分が今まで何をしていたのか。
何も覚えていない。
持ち物は腕時計のみ。
それ以外は何もない。
服装は白い長袖のポロシャツに黒いパンツ。
学生だろうか。
時計には12月23日4時45分と書かれている。
(なぜこの時間に電車が走ってるんだろう……)
普通なら走っていない。
始発でもせいぜい5時ぐらいだろう。
私は電車の中をうろつく事にした。
この車両の運転席には運転手がいない。
おそらくこの車両は最後列なのだろう。
ドアを開け隣の車両へと入った。
さっきの車両と変わらず誰もいない。
広告がないのも電光掲示板に何も書かれていないのも同じ。
そして静か。
一体何が起きているんだろう。
まるで地球に私一人だけ取り残されたような感じだ。
なぜ誰もいないのだろう。
人が一人くらいいるはずなのに全くいない。
「すみませーん! 誰かいませんかー?」
大きな声で叫んだ。
誰も返事をしない。
何もないのにいつまでも突っ立ってても意味がないので次の車両に行く。
そっとドアを開ける。
じっと見渡す。
やはり何もない。
どうしてこんなにも何もないのか。
さっきと変わらない。
ドアを開けての車両へと向かう。
この車両が最前列だった。
運転席のところへと走る。
途中でおかしなことに気付く。
嘘だと思いながら前へと進む。
運転席を覗く。
誰もいない。
一体だれが運転しているのか。
どうやって動いているのか。
もはや意味が分からない。
電車に私一人。
運転手や乗務員もいない。
外も暗い。
私はいったいどうすればいいのか。
私は座席に座り外を眺める。
電車の光で多少は外が見える。
今見えているものは線路に入らないようにするための柵。
今一瞬が看板だ見えたが、
何が書いてあるかまでは見えなかった。
私はこのままずっと電車の中なのだろうか。
なぜ?
私が何か悪いことをしたっていうの?
電車の止め方もわからない。
外に助けも呼べない。
怖い。
「早く家に帰らせてくれよ!」
家がどこかも思い出せないのにこんなことを考える。
また窓の外を眺める。
すると見るからに古そうな鉄橋が見えた。
鉄橋の下は川が流れている。
電車の光が反射されてきれいだ。
鉄橋を渡り切ってしばらくしてからゆっくりと電車の速度が落ちてきた。
窓の外には駅が見える。
そして電車が止まった。
ドアが開く。
私は電車を飛び出した。
その瞬間ドアが閉まり出発してしまった。
周りを見渡す。
向かい側にもホームがある。
ホームの柱のプレートには『きつくり』と書かれている。
ホームには一部分にしか屋根がない。
ベンチは壊れている。
ところどころ雑草が生えている。
少し奥には立札があり、そこには大きく『きつくり』と書かれていた。
ひとつ後の駅は『ふかうら』で、ひとつ前の駅は『なるさわ』らしい。
聞いたことのない駅だった。
時刻表を見るがボロボロで一部読めない。
かろうじて読めるところは気持ち悪い文字で何かが書かれている。
出口へと向かう。
改札がある。
自動ではない有人の改札。
人がいないので改札の役割を果たしていない。
私は金を払わずに駅から出た。
駅前には申し訳程度のロータリー交差点がある。
それ以外何もない。
十分な舗装がされていない道路や木が生えているだけ。
家が数軒建っているがどれもボロボロ。
トタン屋根が外れていたり壁が壊れていたりしている。
廃村だと思われる。
とりあえず歩く。
もしかしたら何か知っている村人がいるかもしれない。
時間は5時30分。
年寄りがもしかしたら朝の散歩とかをしているかもしれない。
そんな根拠のない希望をもって進む。
もちろん何もない。
歩けば歩くほど暗くなっていく。
そして気づけば森の中だった。
(ここはどこだ……?)
深く暗い森。
方向感覚がおかしくなる。
どこを歩いていたのかがわからない。
歩いても歩いても景色が変わらない。
やらかした。
完全に迷子。
泣きそうになった。
座り込んだ。
ひたすら地面を殴った。
どうすればいいのかわからない。
何も思いつかない。
葉っぱが揺れる音がする。
とても怖い。
このまま猛獣とかが現れて襲われて殺されるのだろうか。
嫌なことが思い浮かぶ。
時間は5時45分。
一向に明るくならない。
いくら冬でもこの時間なら少しは明るい。
後ろから物音がした。
こっちへ近づいてくる。
私は無意識のうちに立ち上がり前に走り出した。
物音が追ってくる。
ひたすら逃げる。
ずっと走っていた。
途中で道が切れて崖になっていた。
急には止まれなかった。
そのまま勢いで崖から落ちた。
(痛った……)
腰に激痛が走る。
何とか起き上がる。
起き上がると木の間に道があった。
私はそこに導かれるかのように進んでいった。
しばらく進むとそこには一階建ての小さい家があった。
時間は6時ピッタリ。
玄関のドアをノックする。
返事がない。
本当はだめだがドアノブをひねった。
鍵がかかっておらずドアが開いた。
中へ入る。
静かだった。
靴がなくすごく汚い。
まるでゴミ屋敷。
中へ進んでいく。
ドアを開けるとそこはリビングだった。
誰もいない。
テレビとソファーとキッチンとテーブルと冷蔵庫。
生活にある程度必要なものしかなかった。
木造の家だった。
ログハウスといったほうが正しいだろうか。
大きな窓が一つ。
バーベキューとかいろいろできそうな場所も外にある。
しかしホコリくさい。
しばらく人が利用していなかったのだろう。
冷蔵庫があるので開けた。
中にはシカの生首とたぶんシカのものである肉でいっぱいだった。
腐っていてゴキブリやウジ虫が湧いていた。
この家には何もなかった。
ソファーの上に座る。
久しぶりにゆっくりとできた。
背もたれによっかかり溜息を吐いた。
そしてさっきまでの出来事を思い浮かべていた。
電車の中のこと。
廃村のこと。
森のこと。
あっという間に時間が過ぎていった。
ほっと一息ついていた。
ふとテーブルの上の紙に目が行った。
手に取って眺めた。
血みたいなのがついっている。
紙には『ずっとお前を見ている』と書かれていた。
その瞬間玄関のドアが開いた。
私は悲鳴を上げながら窓ガラスを割って家から出た。
リビングのドアを開け入ってきた。
あと一歩遅かったらつかまっていた。
ひたすら走り続けた。
後ろを見ずに走り続けた。
しばらく走っていた。
前方からパトカーが見えた。
大きく手を振った。
パトカーは止まってくれた。
警官は状況がわからなさそうだった。
夜が明けた。
助かった。
でも結局何もわからなかった。
追っかけてきたやつが何だったのかも。
あの村が何だったのかも。
駅と電車が何だったのかも。
私が結局誰なのかも。
後日、この女性の証言をもとに調査を行った。
だが女性の言っていた駅や電車、家、廃村は見つからなかった。
この女性のいたずらとし調査は打ち切られてしまった。
登場人物
女主人公
年齢 不明
職業 不明
名前や設定が思いつかず結局わからないという形で終わりました。
終盤はネタが付き雑になりました。




