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タイトル詐欺シリーズ

異世界チート乙女ゲー逆ハーの最強聖女! 〜タイトル詐欺にも程がある〜

作者: 陽乃優一

https://ncode.syosetu.com/n1218ei/の(ある意味文字通りの)姉妹版です。

「まず!ここ異世界じゃないでしょ!」

「あ、はい、そうですね。まあ、いいじゃないですか。多くの日本人にとって、外国は異世界のようなところと言われているようですし」

「比喩の話なんかしてないわよ!」


 トラックに轢かれそうになっていた子犬をかばって、あたしは死んだ。残業残業、徹夜徹夜で疲れ切った体を押しての、文字通り必死の行為だった。

 ‎気がついたら、何もない真っ白な空間に漂っていた。ここがあの世なのかと思ったら、私は神だと言う声が聞こえてきて、あたしを生き返らせて異世界転移させるという。

 ‎ひゃっほー憧れの異世界だーと、ここぞとばかりに『特典』をねだった。機嫌損ねて何もなしという可能性もあったが、なーに神なら寛大だろうと、いくつも並べたてた。


「全部叶えるっていうから、ウキウキしていたのに…」

「叶えていると思いますけど?」


 見渡す限り人っ子ひとりいない、どこかの国の山の上の高原のど真ん中にあたしを落として、なぜ叶えたと胸を張って言えるのだろう、この自称、神は。

 ‎いや、声しか聞こえないから、本当に胸を張っているか知らないけど。アイドル声なのが余計にムカつく。残業帰りにたまたま見た深夜アニメで主役やってた声そっくりだ。


「一万歩譲って、ここを異世界みたいなところとしようじゃないの!チートはどうしたのよ、チートは!」

「3つほどあなたに付与しました。ひとつは、触れただけで他の人の心を読む能力」


 おお!


「あなたの心の中もダダ漏れになりますが」

「意味ない!?」

「御心配なく。現地点から半径500km以内に人はおりません」

「ますます意味ない!」


 500kmって、えーと、東京と大阪の間くらい?心の中どころか人影すらないじゃないのよ!下手すれば、一生!


「ふたつめは、なんと!水が出せます!無尽蔵に!」

「誇らしげに言えるほどのチートじゃ」

「何を言ってるんですか!水道がなく、川もはるか遠くにある、交通手段が何もない土地柄なんですよ!?全く、これだから『水はタダ』とか思い込んでいる日本人は!」

「逆ギレされた!?」


 みっつめのチートとやらもアテにならないな、これは。


「失礼な。話は最後まで聞くべきですよ?」

「触れてないのに心の中がダダ漏れ!?」

「私は神ですから。みっつめは、あなたが最も望んでいた逆ハーレム!」

「有効範囲がやっぱり半径500km、とか言うんじゃないよね?」

「な!?あ、あなたに神の心を読む能力なんて付与してないのに!?」


 うん、わかった。こいつ、神は神でも駄神だわ。あーあ、そういうパターンかあ。せっかくウハウハ転生できると思ったのになあ。


「あ、転生は順番待ちが膨大に発生していますからダメですよ。だから、生き返らせて転移させたんじゃないですか!これだけのことができる私を駄神だなんて!」

「だから、逆ギレやめてよ!よーし、そこまで言うなら、最後のアレはどうなの!『最強聖女』は!」

「あなたが子犬を助けた時点で最強聖女じゃないですか。そこまでお人好しな性格、最強の聖女ですよ」

「比喩はもういいわよ!」


 ちなみに、あの子犬は見事助かり、飼い主の下に戻ったそうだ。なお、子犬かと思ったら種族的には既に大人な年齢らしく、平均よりも遥かに強力な体力を有し、何匹ものオス犬とたくさんの子供を作り、死んだ後は最強の聖女に異世界転生することが宿命づけられている魂の持ち主らしい。…などと、なぜか自慢げに語る駄神。


「もう、チートどころか、人並みの生活すら送れないじゃないのよ…」

「あ、生き返らせた時に強靭な肉体にしましたからね。数百年は飲まず食わず、眠る必要もなく、ずっとずっと健康に過ごせますよ」

「望んでないチート来た!?それに、そんな体なら水出せるチート要らないでしょ!」

「あなた、何百年も体を洗わない気ですか!?不潔ですね!」


 違う。何もかもが違うだろう、これ…。


 あ。


「そういえば、『乙女ゲーム』はどうしたの?」

「…え?」

「ねえねえ、ここが異世界じゃないってことは、乙女ゲームでもないってことでしょ?ん?どうなの?」

「…し、しかたがありませんね…」


 あたしの前に、ぱあああっと、光があふれる。

 ‎その光が消えた後に、目に映った光景は、


「あなたが死ぬ前にプレイしていたゲームを再現しました。もちろん、あなたの好みを考え、元のゲームの主人公ではなく、主人公のライバルだった悪役令嬢があなたとなります。平凡な男爵令嬢にたぶらかされた第一王子に婚約破棄され、失意のうちに学園を去ったあなた。しかし、優秀な第二王子と恋に落ち、傾いていた国家財政を現代知識で共に立て直し、侵略してきた外国勢力も見事撃退し、ついには第一王子を廃嫡してスパイだった男爵令嬢も追放、あなたは国の英雄として女王に君臨し…」


 と、それはそれは見事な、


「大型テレビじゃないのよ!それも、今時ブラウン管!?」

おかしい、こちらの方が面白い。性別とラストを変更しただけなのに。

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