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祖国の終焉に生きた一人の男の物語(3)

 エンシア王国内の技術開発を管轄する技術庁。

 その庁舎は互いに連結した二棟のタワー型高層建物で構成されている。

 その最上階にある、賓客用の応接室にヴェルギリウスはいた。

 豪奢なソファの真ん中でふんぞり返った彼は、壁一面ガラス張りの向こうに広がる都市の姿を眺めていた。

「待たせたな」

 やがて扉が開き、長官職の服を纏う一人の男が入って来る。

 歳はヴェルギリウスよりも十歳は上の三十代半ば。この技術庁を取り仕切る技術長官であり、ヴェルギリウスの兄であるエンシア王国第三王子クレオス=エンシヤリスだ。

「急に何の用だ? 事前に連絡をくれないと予定も空けられないだろう」

「これから会いに行くとは連絡したぜ、兄上」

「わたしの立場にもなれ。こうして時間を作るのも楽でないのだぞ」

 クレオスがヴェルギリウスの向かいに座った。

「それで何の用だ?」

「時間がないようなら単刀直入に訊くぜ。兄貴はこいつの存在を知っているか?」

「何がだ?」

「汎魔導機構制御用魔力媒介擬人素体」

 ヴェルギリウスが告げるが、クレオスは眉一つ動かさなかった。

「……さすがは兄上だ。まったく動じないか。俺なんか名前を覚えるのすら時間がかかったぜ。それとも、それが何か知っていて、俺がここまで知っているのも承知の上だったとか?」

「回りくどい言い方はよせ」

 クレオスが椅子にもたれる。

「ヴェルギリウス、どこまで知っている?」

「ずっと昔に存在した“亜人”の能力を持つ生体デバイス。“亜人”の遺伝情報をベースに作り出された人造生命体らしいな」

 “亜人”とは古代に存在した種族だ。魔力と極めて親和性が高く、“魔法”と呼ばれる不可思議な能力を持っていたと言われる。機械によって魔力を制御するエンシア技術を以てしても到達できない能力であり、“魔族”という別名も持っていた。

 その“亜人”は絶滅したといわれるが、現在の人間の中にもその血を引く者が存在していることが分かっている。

 エンシア文明によって力の均衡が“闇”に傾く現在、“亜人”の血が反応して不完全な形でその形質が発現する者が出現していた。その者は不完全な隔世遺伝により、魔物に似た姿となって生まれてくるか、あるいは幼少期を経て変貌する。

 彼らは“小鬼の取り替え子”と呼ばれ、世界各地でその存在が確認されていた。

「その“小鬼の取り替え子”たちを秘密裏に収容し、その遺伝情報を解析。そうやって合成した遺伝子を〈ガラテア〉に投入し、現在の技術を使って復活させた“亜人”の複製体──それがコードネーム“メディア”と呼ばれる被験体。もし違っていたら教えてくれ」

 クレオスは黙って聞いていたが、やがて答える。

「いいや、間違ってはいない……先日の事故現場にはお前も居たらしいな」

 クレオスが立ち上がって背中を向けると窓の前に立った。

「まさか脱走した被験体たちをお前が匿っているとはな。偶然とは常に予想を越えるな。ま、探す手間は省けたということか」

「納得できる説明がないと、その被験体がまだどこかに逃げるかもしれないぜ」

 クレオスは背中を向けたままだが、窓の映る表情は苦笑を浮かべていた。

「あの事故の現場近くに“メディア”の研究施設の一つがあったのだ。急激な魔力変動と予想しなかった事故が重なり、施設の警備に混乱が生じてな」

「その隙に脱走したわけか」

「それだけではない。被験体の一体が魔力変動の影響を受けて異常をきたして暴走。それは鎮圧したが、さらに騒ぎを嗅ぎつけた“神”の眷属が一体、襲撃してな。施設の研究員の大半が絞殺か、急所を針のような物で貫かれて死亡した。さらにサンプルだった“小鬼の取り替え子”も一体、拉致された。まったく大きな損害だ」

 ヴェルギリウスは鼻を鳴らす。

 クレオスが振り向いた。

「あんな欲望に塗れた玩具の研究をしていた報いだ──そんな顔をしているな」

「同情はできないね。“小鬼の取り替え子”たちだって、亜人の遺伝子研究のために強引に集めてきたそうじゃないか」

「魔物のように変貌していく彼らに他に生きる場所があると思うのか?」

 ヴェルギリウスも立ち上がった。

「なぜ、あんな研究を認めた!? エンシアの先行きが暗いというのに退廃的もいいところだと思わないのか!?」

「亜人の力が今後のエンシアに必要となるかも知れないからだ。我らは“闇”の魔力を利用して文明を築きあげたが、その力の全てを解明したわけではない。“闇”の魔族と呼ばれた“亜人”たちの力を研究すれば今後のエンシアを救うきっかけになるかも知れない。そう判断しただけだ」

「兄上だって分かっているじゃないか! 欲望に塗れた連中のために操り人形作ってそれで国が救えるってのか!」

「なら、貴様に何か国を救える妙案でもあるというのか!?」

 クレオスが厳しい表情で反論した。

「若いがゆえに政から遠い立場にいるから、そんな甘い考えになるのは大目に見よう。だが、それなら自分に何ができるか考えてから言え。他人に文句を言うだけで済むなら誰も苦労はしない」

 クレオスは軽く息を吐いた。

「確かに退廃的な連中の欲望を満たすような研究かもしれん。しかし、人の欲望を叶える力こそが“闇”の本質、そして文明進歩の原動力なのだ。実際、あの“メディア”たちを利用する資産家たちはこちらに非常に協力的だ。今後の研究の大きな後ろ盾になってくれるだろう。国の予算だけでは研究も限られるからな」

 一瞬、気圧されたヴェルギリウスだがすぐに気を取り戻す。

「それが国を救う力になるってのかよ!」

「目の前の口だけ御曹司よりはマシだ」

 クレオスは自分の席に座り直し、立っているヴェルギリウスを見上げる。

「それで、お前は逃げた被験体たちをどうするつもりだ?」

「……俺が預かる」

「ほう、何だかんだでお前もあれが気に入ったか」

「変な言い方はよしてくれ!」

 今度はヴェルギリウスが背を向ける。

「名誉を傷つけたなら謝ろう。しかし、あれらを匿うことでこちらへの抑止力となると思うならそれは無駄なことだ。“メディア”は製造の段階で精神活動部分を意図的に除去されている。つまり“心”を持たないのだ。人のように振る舞っているのも、あくまで外部の情報を統合して処理した結果の反応に過ぎない。その気になればこちら側から強制支配し、連れ戻すこともできるのだ。悪い事はいわん。無駄な抵抗は止めておけ。あれはあくまで“道具”だ」

 ヴェルギリウスは歩き出す。

「もう帰るのか?」

「長居するつもりはなかったさ。それに何があろうとあんな研究の存在を看過なんかできないさ。兄上がどんな手段を執るとしても、俺は折れるつもりはない」

「──待て」

 そう言って部屋を去ろうとするヴェルギリウスだが、クレオスが引き止めた。

「帰る前に言っておくことがある。重要な話だが、一つだけ良いことが含まれている」

「……何だよ?」

「噂は聞いているだろうが、ついに《アルターロフ》計画が始動する」

 ヴェルギリウスは振り返った。

 文明を存続させるため、エンシアは様々な手段を模索していた。その中の最大規模の計画が《アルターロフ》計画だ。

「決まったのか、兄上。しかし、一部の科学者たちが猛反対していたはずだ。世界の理を歪めかねない暴挙だと」

「あくまで一部が言っていることだ。それに世界を歪めるとしても、この文明を維持するためにはどうしても必要な計画だ。期間は三年だ。三年で完成させる」

「三年……エンシアはそこまで追い詰められているのか?」

「わたしが科学庁の統括だ。その言葉を疑うか?」

 計画自体は至極単純だ。王国全土をカバーできる超弩級魔力ジェネレータを建造し、それで世界規模の魔力変動に対応するというまさに力業の計画だ。

 そのためには膨大な人材と資産──国力の大部分を投入しなければならず、国王の承認を保留している状態だった。

「父上と議会が承認を下した。近いうちに正式に発令されるだろう。魔力変動が激増し、先日に至っては大惨事も発生した。国民も不安を増し、これ以上はごまかしきれん。不安を払拭し、王国の総力をあげた一大計画を世間に認めさせる機会は今しかない」

 ヴェルギリウスは窓から外を見た。

 魔導科学の恩恵を受けた街中で人々が行き交っている。

 この当たり前と思っていた日常ももはや暗い影が忍び寄っているのだ。

「……しかし、それのどこに良い話があるんだ?」

「知っての通り、この計画は国の総力を挙げる。そのために現在の研究も仕切り直しとなる。あの被験体たちを生んだ“メディア”計画も凍結される。この非常時に“退廃”を認めてまで進める研究でもないしな」

 ヴェルギリウスは唖然とした顔を浮かべる。

「兄上! それを知っていて、俺に何ができるものかと言ったのか!」

「気ままな風来坊みたいな生活のお前に、自分の甘さというものを教えたつもりだよ」

 クレオスも立ち上がると近づく。

「“メディア”に投資した資産家・権力者たちにも大方の協力は取り付けている。反対はできまいよ。奴らはすでに“魔女”と、それを管理する我々に籠絡されているのさ。今までの退廃のツケを払わせる。この国のためにな」

 そしてヴェルギリウスの肩にポンと手を置いた。

「脱走した被験体たちはお前に預ける。好きにするがいい。その代わり、これ以上のことは忘れろ。エンシアは五年後がどうなるか分からないほどに切迫している。これからはお前の言う退廃も、それに怒る子供じみた正義感すらも許されない時代に入るんだ。お前もエンシア王族の一人としての一層の自覚が求められるのだ。覚えておけ」



 屋敷のテラスで夜景を見ていたヴェルギリウス。

 近くではトウとミューが互いにホウキを持ち、どこで覚えたのかチャンバラごっこをしている。こうして見ると年相応に姉妹がじゃれ合っているようだ。

「何かお考えですか?」

 カップを手にしたエレが彼の近くにやって来る。

「珈琲をお持ちしました。よければどうぞ」

「ああ、ありがとう」

 ヴェルギリウスはカップを受け取る。

「君たちの存在を知って兄を糾弾すると息巻いたものの、結局は軽くあしらわれてしまったよ。ほんと、俺も口だけだな」

「私たちのことで嫌な思いをされたのなら、お詫びします」

「いいや、俺が未熟なだけさ。君たちを助けようと少しヒーロー気取りだった。それだけさ。気にすることはない」

 エレがヴェルギリウスの隣に立ち、彼と同じものを見ようとするかのように夜景を眺める。

「……なぜ、私たちを助けてくれたのですか?」

 黄金の髪を微風になびかせながら、エレが口を開く。

「あの時、助ける理由はなかったはずです。ここに置いてもらっているのに見返りも要求されませんし、私の能力や身体が必要としているようにも──」

「そういう言い方はやめろと言ったはずだ。言っただろ? 俺は君たちを道具と思ってはいない」

「失礼しました。ですが、答えはまだ聞いていません」

「聞きたいのか?」

「ええ。聞けばよりヴェルギリウス様のために働けるかもしれません」

 ヴェルギリウスは珈琲に口をつける。

「……その前に俺も聞きたいことがあった。君はなぜ脱走した?」

 予想していなかったのか、エレの表情に戸惑いが見えた。

「俺も君たちが脱走した理由をまだ聞いてはいない」

「それは……私にも分かりません。ただ、気づいた時には脱走していたのです。あの時、大規模な魔力変動が発生していました。きっと、それの影響を受けて一時的に混乱したためではないかと──」

 戸惑うエレの姿をヴェルギリウスはじっと見ていた。

「……こうして見ていても、君に“心”がないようには思えないな」

「ご存じでしたか。仰る通り、私たち“メディア”には心はございません。肉体は人間と変わりませんが精神活動部分だけは人工の物です。こうして受け答えしているのは情報統合インターフェイスによって形成された疑似人格によります」

 ヴェルギリウスはテラスの柵にもたれた。

「だったら何故、君は『助けて』なんて言葉を言ったんだろうな」

「私がそんな言葉を……いつでございますか?」

「君を見つける少し前だ。持っていた端末が勝手に受信して、君の声とおそらく見ていた映像を拾った。おそらく君の力が混乱していた時の影響だろう。その時、君の声はこう聞こえた──『助けて』とな」

 エレが首を傾げる。彼女自身もそれが不思議でならないようだ。

「何でそんな声を受信したかは知らない。だが、俺には心の奧から振り絞った声のように聞こえた」

「先ほども申し上げたように、私に“心”はございません。こうしてお話しているのは主人の性格・行動・嗜好を理解するための機能による──」

「じゃあ、何で『助けて』と言ったんだ?」

「それは……その……おそらく機能混乱により漏れた単語でしかなく、意味はないのだと思います」

 ヴェルギリウスは微笑んだ。

「偶然か。でもな、俺には理屈で説明できないそういうのが“心”に思えた。だから、それが君の本心と俺が勝手に解釈した。それが君たちを助けた理由の一つさ」

 エレはその言葉が理解できないのか、少しだけ怪訝な顔を浮かべる。その仕草は愛らしく、とても疑似人格とは想像できなかった。

「偶然を“心”とお考えなのですか?」

「説明できるのだけが“心”じゃない。自分自身だって自分の“心”は分からない時がある。こうして君が戸惑う姿が気に入ってしまったかもな」

「変わったご趣味ですのね」

 彼女的には相手の趣向が理解できないのが気になるようだが、ヴェルギリウスはその姿も含めて思わず楽しくなってしまう。

「そういえば、今のが理由の一つとおっしゃいましたが、他に理由があるのですか?」

「え? ああ、別にたいした理由ではないのだが……」

「教えてくださいませ。私も勉強できますので──」

 何の勉強かは分からないが、彼女の真摯な姿勢を前にはぐらかすこともできなかった。

「うーん……その、なんだ、リーナが大きくなったら君のような感じになるかと思ったら、どうにも放っておけなかった。それだけさ」

「リーナ……妹様のことですね」

「似てるといってもその髪だけなんだけどな。あいつが君みたいな淑女になれるかどうか、正直あやしいもんでな。何しろ、気が強くて俺も手を焼くぐらいだ」

「それが私たちを助けた理由なのですか」

「ああ、他にはない」

「……どうにも合理的な理由には思えません」

「人助けに合理的な理由を出しても仕方ないさ」

 エレはその話を聞いて何やら真剣に考えていたが、やがて自分なりに何かに気づいたのか、静かにうなずいた。

「そうなのですね。分かりました!」

「何が分かったんだ?」

 ヴェルギリウスは珈琲をすする。

「妹様がご趣味なのですね!」

 ヴェルギリウスは口に含んだ珈琲を盛大に噴き出した。

「これは気づかずに失礼致しました。私では趣味には少し合わなかった訳ですね」

 エレが手招きしてトウとミューを呼んだ。

「よく聞いて。ヴェルギリウス様は妹様が好みなの。歳の近いあなたたちがヴェルギリウス様のお世話をした方がいいわ。そうね、まずは髪の色をこの金髪のようにして、瞳の色も確か同じような碧い瞳だったと──」

「待ていッ!」

 ヴェルギリウスは叫んだ。

「そんなこと、しなくていい!」

「よ、よろしいのですか? 私たちの肉体は需要に応じてある程度は変化できるのですが、設定年齢だけは容易に変えられないので、私よりもこの子たちの方がより妹様に近づけると──」

「だから、それが余計なの! しなくていい!」

「あの、何もしなくても──」

「そもそも勘違いだから! 君たちはそのままでいい!」

「で、ですが……肉体は基本的に放っておいても設定年齢までは少しずつ成長する仕様になっていて、そのままというわけには──」

「それはいいから! 普通に成長する分には別にいいから!」

 ヴェルギリウスは力説すると疲れて肩を落とす。

「トウ姉様。ヴェル兄様、なんで疲れてるの?」

「さあ?」

 横から見ていた“妹”たちが不思議そうに見ている。最初は生意気だったが、今は“兄様”扱いしてくれているようだ。

 ヴェルギリウスはこちらを見ているエレとトウ、ミューの姿を見渡す。

 そして、誰にも聞こえないように一人呟くと、すぐに笑みを浮かべた。

「さあ、そろそろ寝るか。二人とも、今日は喧嘩せずにちゃんと寝ろよ」

 トウとミューは一緒にうなずくと競争するように駆け足で屋敷の中へと駆けていった。

 その姿はとても恐ろしい力を持つ被験体には見えなかった。

「エレ、君も休みな」

「いま、何と仰ったのですか?」

 エレが真面目な顔で迫る。

「いま……ああ、別にあれは独り言だ。気にする必要は──」

「教えていただけませんか?」

「どうしたんだ? そんなに気になるのか?」

「先ほどおっしゃいました。偶然に出た言葉が“心”だと──なら、いま出た言葉がヴェルギリウス様の“心”ではございませんか? それを知りたいのです」

 真剣に尋ねる姿は冗談ではなさそうだった。

「はは、すぐに自分に返ってくるとはな……いま、聞こえないように『すまない』と言ったんだよ」

「そうなのですね。なぜ、聞こえないように謝られるのですか?」

「深い意味も理由もないんだ」

「それでは何故、すまないと──」

 ヴェルギリウスは夜空を見上げた。

「人は欲望を糧に進歩する──確かにその通りだ」

 地上は文明の光で満たされているが、空は無限の闇が広がっている。

 こうして眺めていると、地上の人々の欲望すらこの深淵に吸い込まれているようにも錯覚する。いや、“闇”が欲望を通して人々を操っているような、そんな気もした。

「だが、それも限界があるのかもしれない。これからそのツケを払うかもしれない世界に、人の欲望を満たす道具として君たちは生まれてきた……それを考えるとつい、そんな言葉が出てしまったんだ」

「……分かりません。何故、謝る必要があるのか」

「だから深い理由はないのさ。さあ、戻ろうか」

 ヴェルギリウスが先に行こうとするが、エレが両手で彼の左手を握り締めた。

「そうお考えの理由は分かりませんが、私たちはこうしてヴェルギリウス様に拾われたことを感謝しています」

「……エレ」

「もし、自分で主人を選ぶことが許されるなら、私たちはこれからもヴェルギリウス様にお仕えしたいと思っています。お許し願えますか?」

 屈託のない笑みを浮かべるエレ。

 未来が分からない暗い世界に、醜い欲望によって生み出された被験体。

 きっと生まれてこない方が良かったのだと思っていた。

 だが、その笑みを見ていると自分のそんな憐憫すら愚考だったと思えてくる。

 世界は自分が思っているよりも優しく、温かいのかもしれない。そんな気持ちがした。

「……分かった。エレ、俺もこれからはエンシア王族の一員として、いろいろと忙しくなるかもしれない。君も手伝ってくれないか」

「はい! 何からお手伝いしましょうか?」

「とりあえず隣に居てくれ。今はそれだけでいい」

「え? それだけでいいのですか?」

 不思議に思うエレの顔を見て、ヴェルギリウスは心の底から笑みを浮かべるのだった。

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