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優しい『天使さん』

 闇に覆われた空の上を二つの人影が飛んでいた。

 それは二体の天使だった。

「空飛ぶ狼さんに乗っての旅ってのもオツなものね」

 エルマは光翼を広げる狼頭天使の背に乗り、天使のたてがみを手綱代わりに掴んでいた。

 その後ろでは少女天使クーラが黙ってついて来ていた。

「せめて、もう少し座り心地が良ければ快適なんだけどね」

「人を乗馬代わりにしておいて、ぬけぬけとよく言ったものだ」

 自分の背で文句を言う彼女にファウアンが答える。

「ほんと、こういう時にグ――」

 エルマは言いかけて、ファウアンの右手に握られたプリムの姿に目を向ける。

 今までなら、こういう時は《グノムス》が地中を潜行しながら運んでくれたものだった。

 しかし、もうあの鉄機兵はおらず、その遺志はこの小さな妖精娘が受け継いだのだ。

「それで学者よ。その場所に『相克欠陥』とやらはまだ残っているんだろうな?」

「多分ね。それを確かめるためにも急いでほしいのよ」

 風を受けながらエルマは答える。

「――ねえ、オオカミのおじちゃん」

 ファウアンに握られたプリムが口を開く。

「何だ?」

「おじちゃんはママのお友だちだったの?」

「友達か――そうだな、向こうはそう思っていたようだ」

「ママがたまにお話ししてくれたの。じぶんはやさしい天使さんに助けられたことがあるって――」

 同じく握られたファウアンの左手からダロムが首を伸ばす。

「ファウアン、おぬしもマキュアにだけは優しかったの」

「ふん、変な言い方はよしてもらおう。命の恩人にそれなりの態度をしたまでさ」

「命の恩人ならワシとてそうじゃ。おぬしのその身体を直してやったのは誰だと思っておる?」

「貴様との貸し借りなんぞ、もう忘れたわ」

 ファウアンの耳がヒクヒクと動く。

 エルマはそのやり取りを見て微笑む。

「母娘そろって、個性的な人を気に入っていたみたいね」

「俺と鉄機兵が同じ扱いか」

 また《グノムス》のことを思い出したのか、プリムの表情が陰る。

 それに気づいたのか、ファウアンが右手を持ち上げて妖精娘に視線を向けた。

「……丁度いい機会だ。聞きたければ教えてやろう。俺は元々、人狼族という人と狼獣人の二つの姿を持つ種族だった。だが、エンシアの連中に捕まってな。俺は狼獣人の姿のまま連中に改造された。獣人時に持つ驚異的な身体能力を維持したまま、意のままに動く尖兵を作ろうとしたのだ」

 プリムがファウアンの顔を見上げた。

「精神改造される前に俺は助け出されたが、改造手術は不完全のままでな。それに獣人の姿を固定されたために肉体も拒絶反応が出ていた。ダロムが代わりに手術をしてくれたが、俺はのたうつような苦痛の日々が続いた」

「ワシも何とかしてやろうと手を尽くしたが、正直、苦痛で手がつけられんほどの暴れようでな……それでもマキュアだけはファウアンを心配してずっと看病を続けたんじゃ」

 ダロムも話に加わる。

「ママはおじちゃんのことが心配だったんだ」

 ファウアンが苦笑する。だが、穏やかな笑みでもあった。

「まったく、俺のどこが気に入っていたのか知らんがな。危ないから近づくなと何度も警告したんだが、それでもマキュアは小さな身体で俺の手当てをしてくれた。汗をふいたり、励ましの言葉をかけたり、手術をするダロムの手伝いまで買って出た……はっきり言えば、たいしたことではなかったのかもしれん。だが、俺はあの小さな妖精娘の姿があったからこそ、死ぬ方がマシと思えた苦痛の中でも生きることを選べたと思っている。その点ではマキュアは俺にとって本当に命の恩人だった」

 狼頭天使の話が続いた。

 その後、マキュアは妖精族の能力に目を付けたエンシアの研究機関に捕まったらしい。

 ファウアンも手術は成功したが一命を取り留めただけで助けに行くこともできず、エンシアの横暴と己の無力さに憤慨するしかなかった。

 その時、彼に“神”の啓示が下った。

 狼頭の男は小さな友人を救うため、その洗礼を受けて“天使”になることを選んだのだった。

「……その後は知っての通りだ。マキュアを助けて逃がしたが、俺は再び捕まった。改造体の天使という珍しい標本を手に入れ、実験体にされて封印されていた」

 プリムがファウアンの手に自分の小さな手を添えた。

「おじちゃん、ごめんなさい。ママを助けてくれたのに、またつかまってたんだね」

「気にすることはない。あれからマキュアが幸せに暮らせたのは、娘のお前を見ていれば分かった。それで十分だ」

 ダロムがファウアンの手の中で頬杖をつく。

「おぬしも相変わらずマキュアにだけは甘いのお」

「貴様の減らず口もな」

 互いに憎まれ口を叩き合う狼頭天使と老妖精。

 変わった組み合わせだが、かつてエンシアの支配に抵抗した同志の絆は残っているようだ。

「妖精娘。あの鉄機兵もきっとお前が幸せに暮らしてくれれば十分だと思っているだろう。だから、まあ……元気を出せ」

「おじちゃん、ありがとう」

 プリムが礼を言うとダロムがニヤリと笑う。

「ファウアン、おぬしはプリムにも甘いの」

「貴様にだけは言われたくないわ。マキュアもそうだったが過保護なのがよく分かる。さあ、話は終わりだ。急ぐぞ」



 一日の旅が終わり、一行は休息していた。

 周囲を見渡せる草原の只中でエルマが身を毛布でくるんで眠り、プリムもその懐で一緒に眠っていた。

 眠る必要のないクーラが近くで見張る。

 そして、ファウアン自身はダロムと一緒に少し離れた場所の大きな岩に座っていた。

「こうして、またおぬしの身体を直していると昔を思い出すの」

 ダロムがファウアンの各部の装甲を開き、内部の機械部分を修理していた。

 魔女たちとの戦いによって身体の損傷も蓄積していたが、機械部分は自然治癒ができず、今まで放置しているしかなかったのだ。

「懐かしがられても困る。ちゃんと昔通りに修理できるんだろうな?」

「任せておけ。昔以上に仕上げてやるぞい」

 ダロムが背中の装甲を開き、内部の損傷を確かめていく。

「普通なら壊れてもおかしくないのによく機能しておるな。これも天使の力というべきか」

「……ダロム、なぜマキュアの娘を地上に連れて来た?」

 ファウアンは背中を向けたまま尋ねた。

「あの子はマキュア以上に錬金の才能があった。勇士が使う鎧の修復にはあの子の力が必要だった」

 ダロムが自分専用の小さな工具を手に答える。

「そうか。まったく何の因果だろうな。地上に来たばかりに母親と同じくエンシアのせいで辛い目に遭わねばならんとは――」

「あの子はマキュアと同じように優しい子だ。それが不幸を招いてしまうのかの」

「マキュアは教えておくべきだったんだ。優しさは他人は救えても自分は救えないとな」

「マキュアは言っておったぞ。娘には『天使さん』みたいな優しい子に育ってほしいとな」

 気まずそうな顔をするファウアンの頭にダロムが乗っかった。

 二人にとって、それは肩を叩くのと同じ意味だった。

「まあ、どうしようもあるまい。ワシもおぬしもエンシアの施設を破壊して回っていた無頼の輩よ。そんな奴らではどう考えても幸せに生きるための手本にはならんわけよ」

「……柄ではないか。そうかもしれんな」

 ファウアンはため息をつくが急に目を見開くと、装甲を閉じて頭上のダロムを掴んだ。

「おい、なにを!? うおああぁぁぁ――」

 ファウアンはダロムを思いっきり放り投げる。妖精の悲鳴が遠のくと同時に暗闇から真紅の閃光が奔り、それがファウアンを襲った。

 それは鋼のツタだった。

 無数のツタが刃のようにファウアンの装甲を傷つけると、全身に巻き付いて彼を縛り上げる。

 ファウアンも強引に引きちぎろうとするが、改造された彼の力でもツタを切ることはできない。

 暗闇に真紅の光点が幾つも浮かぶ。

 禍々しき魔力の光がツタを放った人型の“機神”――異形の姿を浮かび上がらせた。

「おじちゃん!?」

 背後でプリムの声がした。異変に気づいて起きたのだ。

 異形がプリムの姿に気づくと、威嚇するように全身からツタを解放する。周囲に広がるツタは蠢く悪意のようにプリムの前に忍び寄ろうとする。

「何をしている!? 逃げんか!?」

 ファウアンは叫ぶとツタに絡まれたまま跳躍する。そして異形とプリムの間に立つ。だが、自由に手足を動かすことができない。

 異形の足許に光の円陣が浮かび上がった。

 そして、ファウアンを拘束していたツタを飛来した光輪が断ち切る。

 頭上にクーラの気配がした。

「すまん!」

 拘束から解放されたファウアンは突進すると右手で異形の顔面を鷲掴みにした。

 前と同じように異形の精神ごと頭を握り潰そうとしたファウアンは、その右手に感じた異形の内的空間に驚愕する。

 その間に異形が自ら顔をめり込ませ、ファウアンの右手が輝く前にあえて頭部を貫かせた。

 同時に広がった異形のツタがファウアンに覆い被さるように襲いかかる。

「――クッ!?」

 ファウアンが背中の光翼を身体に纏う。

 翼の輝力がツタを防ぐが至近距離からの攻撃は全て止めきれず、鋼刃と化したツタの何本かがファウアンの全身に突き刺さった。

 それでもファウアンは右腕を異形の頭部から強引に引き抜く。そして、今度は両手で異形の頭を挟んだ。

 両手が輝き、異形の頭をぎりぎりと締め上げる。

 やがて異形の顔に当たる水晶の甲殻から魔力の光が消えた。

 伸びていたツタが収縮し、異形は動きを止めてその場に倒れる。

 相手の機能が停止したのを確認すると、全身を負傷したファウアンもその場に膝をつく。

「おじちゃん!」

 負傷した姿を見てプリムが心配しながら駆け寄るが、ファウアンはすぐに妖精娘を掴む。

「奴はすぐに復活する。今のうちに離れるぞ」

 ファウアンは光翼を広げる。

「こりゃ、待て! ファウアン、人を放り捨てたまま置いて行くな!」

 ダロムもその足に飛びついてしがみつく。

 ファウアンが飛ぶと、クーラもエルマを回収してその後を追った。

「ワシらの存在を魔女たちに気づかれたか?」

 ファウアンの頭によじ登ったダロムが危惧するように呟く。

「そう思った方がいいな。異形は“機神”の端末みたいなものだからな。急いで離れた方がいい。増援が来られたら厄介だ」

「でも、少し気になるわね」

 後ろでクーラに抱えられたエルマが言った。

「何が気になる、学者?」

「今の“機神”の現状を考えたら、端末である異形にも何らかの変化があると思ったんだけどね。間近で見た限り、何も変化が見えなかったわ」

「詳しいことは分からんが、あの異形が“機神”と繋がっているのは間違いない。いや、それだけじゃない」

「どういうこと?」

「あの異形は内部で多くの精神と繋がっていた。“機神”に従属することを望んだ無数の人間たちの精神とな。どうりで異形の精神を破壊してもすぐに復活するはずだ。異形は闇に落ちた人間の成れの果てであると同時に、未来が闇と化すことを望む無数の人間たちの操り人形みたいなものになっている」

 ファウアンは手にした感触をそのまま口にした。

 世界の闇が強くなっていることで、前には分からなかった異形の奧で張り巡らされる精神同調を感じ取ることができたのだ。

「すでにエンシアの人間たちがこの時代に転移されて来ている。それに現在の世界に恨みを持つ者たちが“機神”に魅入られてその軍門に下っている。そいつらが異形を影から操っているんだ」

「異形に怯える人たちの中に、異形を動かす者たちが潜んでいるってこと?」

「ああ。その者たちの歪んだ欲望が異形の存在する力となっているようだ。いや、その欲望の操り人形と言ってもいい。異形はそれに変わった人間を始め、今の世界の破滅を願う者たちの悪意の具現化なんだ……正直、恐ろしいものを見た気分だ」

 ファウアンの脳裏に異形の中に見た闇が浮かぶ。恨み、羨望、嫉妬、怒り――今の世界で吐き出すこともできない行き場のない怨嗟の激流であった。

 エルマが腕を組んで考える。

「なるほどね。滅びたはずの古代人の生き残り、そして自分の世界を売った人間たちが異形に力を与え、地上を苦しめている。しかも、そいつらは被害に苦しむ人々の中に隠れていると……まあ、たちが悪いわね、それってさ」

 ファウアンは右手に掴むプリムを見た。

「怖かったか?」

 その手からは小さな身体から伝わる恐怖の震えを感じていた。

 だが、小さな妖精娘は気丈な顔を向ける。

「……大丈夫、グーちゃんと約束したから。プリム、がんばる」

 世界に広がる闇の中で、この小さな娘の姿にファウアンは希望を見いだした。

 いや、この妖精娘が託された“要”が闇に反撃する手段になるかもしれないのだ。

 まぎれもなく、世界を蝕む絶望と悪意に抗おうとする小さな“希望”なのだ。

 プリムの姿に、かつて死線をさまよう自分を支えてくれた妖精娘の姿が重なる。

 ファウアンは左手の人差し指で小さな妖精娘の頭を撫でた。

「よく言った。お前は俺が守ってやる。だから、しっかり友達の分まで頑張るんだぞ」

「うん!」

 笑顔を見せたプリムにファウアンは目を細めてうなずく。

 その頭をポンポンとダロムの踵が叩いた。

 これも昔から二人だけに通じる、感謝を示す合図であった。



 闇が広がる“機神”の内的空間――

 リーナとヴェルギリウス、二人の幻影が対峙する。

『貴方から兄様の姿、声、記憶を奪ったら私が知る“兄様”がそこにいるように思えないのです』

 まるで糾弾するようなリーナの姿勢に、ヴェルギリウスの幻影は苦笑する。

『面白いことを言うものだな。人から姿と声と記憶を奪って、そこに何が残るというのか?』

『私は世間を騙して英雄の後継者を演じてきた人を間近で見てきました。だからこそ、貴方の姿が演者のように見えるのです』

『わたしが偽者だとでも言うのか』

『姿が変わっても、声を失っても、その記憶を失ったとしても、その人にはその人の“形”があるはずなのです。まるで別人のようになったとしても――でも、姿と声と記憶があれば、別人がその人を演じることができます』

『――それ以上はリーナ様といえど許されませんわ』

 様子を見ていたエレが看過できなくなったのか、ヴェルギリウスの間に割って入る。

『唯一の肉親たるリーナ様がヴェルギリウス様をお疑いになるなど――』

『エレ、いいんだ』

 ヴェルギリウスが穏やかに言った。

『リーナが疑うのも仕方ないかも知れん。確かにわたしは生身ではない。自分の記憶や情報を“機神”に融合させた亡霊のような存在だ。リーナが求めるような生きた人間の反応はできないのかも知れない』

 ヴェルギリウスはエレの肩に手を置くと、再びリーナの前に立った。

『一つ教えてくれ。お前はわたしが知るリーナ=エンシヤリスなのか。それとも“狼犬”に従う“戦乙女”のままなのか?』

『私は“リーナ”です。ただ、それだけです』

『……そうか。つまり、お前はわたしが“ヴェルギリウス”に見えないと言いたいのだな』

『ならば答えてください。エレナさんが持つ――』

 リーナの声が途中で途絶える。

 いや、この場を支配するヴェルギリウスによって消されていた。

『遮ってすまない。ミューからの連絡があった』

 振り向いたヴェルギリウスの前に末の妹魔女ミューが姿を現す。

『――ヴェル兄様、やはり“狼犬”たちが動いています』

 魔女ミューがヴェルギリウスの傍らにかしずく。

『何があった?』

『“異形”の一体が天使たちと遭遇しました。あの中に“狼犬”配下の科学者がいます』

『この期に及んで、まだ何かをしようというのか』

『あの女学者が何を企んでいるか分かりません。潰した方がいいですわ。私に行かせてください』

『一人で大丈夫か?』

『ええ。大姉様は動けませんし、トウ姉様もその護衛をしてもらった方がいいですわ』

『分かった。無理はするな。あの科学者たちの存在を我々は甘く見ていたかもしれん』

『はい』

 ミューが顔を上げる。その瞳は傍らでやり取りを見ていたリーナに向けられる。

『さっきの貴女の言葉、聞き捨てならないわ』

 ミューが怒気を孕んだ声をリーナに向ける。

『ヴェル兄様が偽者ですって? ふざけた事を言わないで! 妹だからって何を言っても許されると思っているの!?』

『よせ、ミュー』

 ヴェルギリウスに止められ、ミューは唇を噛みしめる。

『……ただ血が繋がっていたというだけで、何もかも分かったように言わないで。箱入り娘だった貴女がどれだけヴェル兄様のことを知っているというのよ』

 ミューが恨み言のように吐き出すとその姿を消した。

『リーナ、ミューを許してやってくれ。あの子はわたしの為を思って言ってくれただけだ。それにエレ、君も戻りなさい。王妃も大事な身体だ。できるだけ離れないようにしてくれ』

『分かりました、あなた――』

 そう告げてエレも消えた。

『話は終わった。すまなかったな』

 ようやく消されていたリーナの声が元に戻る。

『リーナ、何を企んだのかはあえて聞くまい。ただ、我らの妨害は止めてくれ。これは我らが祖国エンシアの復活を懸けた戦いなのだ。いつか、お前も分かってくれると信じている』

 そう告げてヴェルギリウスの姿も消えていく。

『……“真実”があってこそ、“嘘”と“偽り”は力を持つ』

 リーナは自由になった声で告げる。

『でも、“嘘”と“偽り”が“真実”の時もある』

 薄れていたヴェルギリウスの姿が再び明確になる。

『“兄様”は最後の最後で“嘘”をついている! エレさんは“偽り”の記憶を植え付けられている! それこそが“ヴェルギリウス=エンシヤリス”の“真実”と違いますか!?』

『……それも“狼犬”から教わった考えか』

『あの人は様々な姿を演じてきましたが、その裏にある本当の“マークルフ=ユールヴィング”を私は知り、愛しました』

 ヴェルギリウスの碧い瞳がその真意を探るようにリーナの姿を映した。

『そうか。さすがは“機神”の天敵たる“狼犬”だな。敗れてなお、わたしの邪魔をしてくるか。ならば仕方がない。リーナ、お前が考え直すまでここに閉ざしておく。いま、余計なことをされては困るのでな。悪く思わないでくれ』

 ヴェルギリウスの姿と共に周囲の気配が消えた。

 エレナを閉じ込めた閉鎖空間にリーナの意識も一緒に隔離したようだ。

 リーナは反応のないエレナに近づくと、その頬に両手で触れ、その頭に自分の額を当てた。

『マークルフ様はきっと来てくれます。待っていてください。必ず、貴女を救い出してくれます……それまで頑張って――』

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