キャラ紹介と設定・用語集(第二部終了時)
《主な登場人物(勢力別)》
◇ユールヴィング領
ルーヴェン=ユールヴィングがフィルガス戦役の功績によりクレドガル王国の男爵位を賜った時に拓いた領地。“聖域”の南端近くに位置する。
クレドガル本国とは飛び地になる辺境の地だが、ルーヴェンは“聖域”から“機神”を運び出す時の唯一の道であるここを領地とすることで、“機神”復活を阻止する最後の盾とし、旧フィルガス領の傭兵たちも影から統括している。
【マークルフ=ユールヴィング】
性別:男 年齢:十八・九歳
貴族の礼装を粗野に着崩し、飄々とした態度が印象的なユールヴィング家の若き当主。物語の主人公。
祖父である先代ルーヴェンから男爵位を継ぎ、傭兵部隊〈オニキス=ブラッド〉の隊長も務めている。
家宝である黄金の斧槍《戦乙女の槍》を愛用し、先代の遺産である古代文明の強化鎧《アルゴ=アバス》の制御装置を胸に埋め込んでいる。
先代の使命を受け継ぎ、二代目“戦乙女の狼犬”として、因縁の敵であるフィルディング一族への抵抗を続けている。
リーナの力を借り、黄金の“鎧”を纏って激戦を続けてきたが、その代償として肉体の疲弊が進んでおり、限界が近づきつつある。
【リーナ=エンシヤリス】
性別:女 年齢:十七・八歳
黄金の髪と碧眼を持つ美しき少女。物語のヒロイン。
“機神”の暴走によって滅ぼされた古代王国エンシアの最後の王女であり、鉄機兵の中で数百年地下深くで眠っていた。その際に“神”と接触し、戦乙女へと生まれ変わっていた。
地上に現れた際にマークルフに保護され、その後、マークルフと共に行動するうちに彼が裏で行う傭兵芝居に気づく。命のやり取りを芝居にするいい加減さに一度は反発したが、やがて彼が隠し持つ本当の使命に気づいてからは運命を共にすることを決意する。
クレドガルでの“機神”との戦いで戦乙女として覚醒。マークルフを勇士に選び、その最大の武器である《アルゴ=アバス》へ変身する力を身に付けた。
黄金の“鎧”としてマークルフを護ってきた彼女だが、それによって彼の身体に限界が近づきつつあることを彼女はまだ知らない。
【ログ】
性別:男 年齢:二十代後半~三十歳手前
長身で黒の外套を纏っている、物静かな男。
先代ルーヴェンの最後の従者であり、現在はマークルフの懐刀として傭兵部隊〈オニキス=ブラッド〉の副長を務めている。
“聖域”でも屈指の剣の名手であり『副長だけはガチ』と称されるほどの二刀流の剣士。
本名はアウレウス。“聖域”最強と謳われたブランダルク王国騎士団〈白き楯の騎士団〉最後の生き残りだったが、過去を封印して傭兵ログとして生きていた。
“機竜”を巡る戦いにおいて祖国ブランダルクに帰還。そこでかつての恩師の娘アデルと再会し、自らの運命と対峙する。
騎士団の祖である神女の力と使命を懸け、アデルと一騎打ちの果てに勝利。さらに騎士団の仇であり祖国を荒廃させた暴王ガルフィルスを倒した。
ブランダルクに若き新王が誕生したのを見届けると、仲間たちとの約束である“その剣を執るに値する道を切り拓くまで死ぬな”を果たすため、今度こそ過去を捨てて“狼犬”の下へと帰還した。
その左手には〈白き楯の騎士〉の証である紋章が刻まれている。過去に負った心の傷により左手は逆手でしか剣を使えなかったが、アデルとの戦いでそれを克服し、本来の戦いができるようになった。
【グノムス】
性別:リーナの弟分? 年齢:古代エンシア産
古代王国エンシア末期に製造された〈鉄機兵〉と呼ばれる人型巨人兵器の一体。
魔力で動く通常の古代兵器と違い、大地の霊力を動力源とする特殊機体。最後の王女リーナの守護者であり、彼女の命令に従って行動する。会話機能はないが知能は高い。
土や岩壁などを自在に透過して移動することが可能で、胸の内部に人を乗せることも可能。
古代エンシア滅亡時、最後の王の命令によってリーナを載せて地底深くに避難した。その命令は“機神”の脅威が去る時まで地底深くでリーナを守ることだったが、なぜか現在の地上に出現する。その理由は不明。
普段は封印しているが魔力駆動に切り換えることで強力な戦闘兵器へと変化できる。その破壊力だけなら“機竜”にも対抗できるほど。
妖精娘プリムから気に入れらており、彼女の一番の友達となっている。
【ルーヴェン=ユールヴィング】
性別:男 年齢:老齢(シリーズ開始の五年ほど前に死去)
かつて古代文明の遺産である強化鎧を纏い、“機神”の復活を阻止した英雄にしてマークルフの祖父。
かつては“戦乙女の狼犬”の称号を名乗る傭兵隊長として活躍していたが、フィルガス戦役の際に仲間たちの命を捨て駒にするフィルディング一族の姿とその野望に叛旗を決意。クレドガルの若き大公バルネスと盟友となり、共にフィルガス戦役を戦う。
ルーヴェンの叛旗をきっかけにフィルガスは瓦解し、“機神”復活も阻止した後も、権勢を維持する一族との戦いに終生を費やす。
フィルガス戦役の再来を阻止するため、そこに統一国家ができないように傭兵たちによる戦争芝居を画策し、その枠組みを作り上げた。そして自身はクレドガルの男爵として辺境に最後の盾となるべく防衛の拠点を領地として築き上げる。
この傭兵芝居の仕組みによってフィルガス戦役で全てを失った者たちを拾い上げ、また権力者の思惑だけで傭兵の命が捨て駒として無駄に失われる事もなくなった。現在の傭兵たちはその功績をいまも忘れず、現在も彼を傭兵の神として崇めている。
ブランダルクの〈白き楯の騎士団〉が敵連合に包囲された時、ルーヴェンも彼らの救援に向かっていたが間に合わず、一人で包囲網から脱出した若き騎士を救出している。
後にその騎士が過去を封印して傭兵となると、ルーヴェンは彼を副官に“狼犬の懐刀”の役割を与えた。
【エルマ】
性別:女 年齢:二十代後半
古代エンシア文明を研究する希代の天才科学者。
性格は大雑把かつ気ままで、しっかり者の妹マリエルにしょっちゅう怒られているが、科学者としての手腕や見識は確かで、マークルフを支える“狼犬”側の中心人物の一人。
クレドガル王国で“機神”の監視をしていたが、ブランダルクでの戦いの後にユールヴィング領に帰還し、科学研究室の責任者に復帰している。
ブランダルクでは彼女が封印していた理論を使いた疑似“機神”を作ったオレフと対峙。
戦いの末に彼の真意を知ったエルマはその遺志を引き継ぐべく、《アルゴ=アバス》の修復作業に尽力している。
【マリエル】
性別:女 年齢:二十代半ば
エルマの妹で古代文明を研究する科学者。
姉と違って極めて真面目で身なりにもきちんと気を遣う美貌の才媛。ただし、ちゃらんぽらんな姉と子分二人の面倒を長年見続けてきた結果、すぐに手と足が出てしまう残念な性格も併せ持つ。
天性の姉と違って地道なデータ収集や検証を得意とする几帳面な学者肌だが、説明に火がつくと長い欠点もある。
現在は姉を手伝い、《アルゴ=アバス》のデータ管理を主にこなしているが、限界の近づきつつあるマークルフの体調を懸念しながら、その体調管理も務めている。
【アード】
性別:男 年齢:二十代後半
エルマの子分でマリエルの部下。巨漢の男だが気が弱く、そしてずぼらな性格をしている。
研究者としての能力は優秀。しかし、だらしない性格がマリエルの怒りに火を着けていつも鉄拳制裁を食らっているが改善の兆しはない。
エルマたち姉妹に故郷の学院時代から付き従っている。
エルマを所長、マリエルを所長代理と呼ぶ。
【ウンロク】
性別:男 年齢:二十代後半
エルマの子分でマリエルの部下。小太りで小柄な男で胡散臭い雰囲気を持つ。
アードといつも組んで行動しており、アードより少し先輩。
研究者としての能力は優秀。しかし、やはりだらしない性格がマリエルの怒りに火を着け鉄拳制裁を食らっており、こちらも全く懲りた様子はない。
エルマたち姉妹に故郷の学院時代から付き従っている。
エルマを姐さん、マリエルを姐さん代理と呼ぶ。
【タニア】
性別:女 年齢:十代後半ば
ユールヴィング城で働く少女。がさつで男の子ぽい容姿だが心は乙女。ただし口は悪い。
好奇心旺盛で盗み聞きとか詮索が好き。ただし、恋心を抱くログにだけは素直。
孤高に生きるログの内にある優しさに惹かれ、それゆえに彼の戦いに巻き込まれたりした。その際に彼の過酷な過去と背負った使命を知り、非力ながら彼を助けようとしている。
ログが閉ざしている心に一番近く迫っている少女でもある。
【マリーサ】
性別:女 年齢:三十代半ば
ユールヴィング城で働く侍女頭。キツい言動と目元のシワが目立つ厳しい人だが、ユールヴィング城のまかないを一手に仕切っている。
そのゲンコツは先代ルーヴェンのお墨付きであり、マークルフやログでも逆らうことはできない。
【ウォーレン】
性別:男 年齢:四十後半
傭兵部隊《オニキス=ブラッド》の古株傭兵。“狼犬”に仕える傭兵の中では年季が入っており、ログの副官的立場にいる。
【女将】
性別:女 年齢:老齢(六十歳過ぎ)
酒場である《戦乙女の狼犬》亭の女主人。
ルーヴェン=ユールヴィングとは最も古くから付き合いのある一人であり、英雄である初代“狼犬”の実像を知る最も親しい間柄だった。
現在もマークルフたちの良き理解者として彼らの戦いを見守っている。
【フィリー】
性別:女 年齢:七・八歳ぐらい
女将の孫娘。皆はフィーと呼んでいる。
店の看板でもある戦乙女みたいな女性になるのが夢。
プリムや《グノムス》と友達であり、最近はプリムが連れ帰った子猫のニャーの世話もしている。
【ダロム】
性別:男 年齢:不明
地下世界からやって老妖精。
古代文明が存在していた頃から生きる妖精族の古株。
当時のエンシア魔導科学の知識や技術を盗んでおり、現在の科学者でも到底及ばないほどの技術や知識を持つ。
同行する妖精娘プリムのために損壊していた《グノムス》を修復したり、その技術や知識でマークルフたちに協力してきた。
現在は大破している《アルゴ=アバス》の修復に力を入れている。
実は“神”と直接、謁見できる数少ない存在であり、地上に現れたのも“神”に頼まれて勇士の鎧を修復するためであった。
【プリム】
性別:女 年齢:不明
ダロムと一緒に地下世界からやってきた妖精の子供。
土や金属の組成を読み取る能力に長けており、強化鎧修復に必要なためにダロムに連れてこられた。
鉄機兵の《グノムス》やフィーと友達で、特に《グノムス》がお気に入りであるが、ダロムはある理由によりそれを複雑に思っている。
趣味は陶芸。
◇クレドガル王国
“聖域”中央部に位置する大国。
フィルガス戦役においてルーヴェンに停止させられた“機神”を封印し、管理している立場にある。ユールヴィング家はこの国から男爵位を賜り、忠誠を誓っている。
【バルネス=クレドガル】
性別:男 年齢:老齢(六十代)
クレドガル王家の一人で大公の地位にいる王国の重鎮。
フィルガス戦役時に傭兵隊長ルーヴェンと知り合い、身分を越えてフィルディング一族と戦うことを誓った英雄の戦友。ルーヴェン亡き後は後継者であるマークルフの後見人を務めている。
ルーヴェンによって活動を停止した“機神”が王国内に封印された後、外部から監視するユールヴィング領と呼応しながら、王国内の“機神”とフィルディング一族の暗躍を長年監視し続けていた。
フィルディング一族の最長老ユーレルンとは長年に渡って対立する立場にあったが、ブランダルクの事件を機に何かを決断しようとしている。
【ナルダーク=クレドガル三世】
性別:男 年齢:二十歳前半
クレドガル王国の若き国王。クレドガル王国は古代エンシア王家の血を引くと言われており、リーナの遠い血縁とも言える存在。
大公バルネスに信を置き、破天荒とも言えるユールヴィング家の行いにも理解を示している。
“機神”暴走や竜墜ちなどの大事件が続いたが、それでも国のために常に先頭に立ってきた若き賢王である。
【システィア=クレドガル】
性別:女 年齢:二十歳前後
クレドガル国王妃。フィルディング一族に連なる名家の出自。
国王との結婚自体は政略結婚ではあったが、夫婦としての愛情は本物。それゆえに世継ぎの子を身籠もれないことによる周囲からの圧力や、夫への申し訳なさに苦しみ続けていた。
実の父はその境遇から娘を救おうと画策していたが、それでも彼女は父と決別し愛する夫との道を選んだ。
現在、ようやく待望の子を懐妊した。
【カーグ=ディエモス伯爵】
性別:男 年齢:三十代
我が輩口調が特徴の豪放さと騎士道精神を愛する心を持つクレドガル王国の伯爵。
王国でも猛者と知られており、英雄の後継者として活躍するマークルフを高く評価しているが、マークルフはある意味、冗談の通じない一番やりにくい相手と思っている。
◇フィルディング一族
“聖域”中に強い権勢を誇る名門中の名門一族。
“機神”を操る術を受け継いでおり、その力を手に入れて世界を支配しようとする者たちを排出してきた。“機神”を滅ぼしたい“狼犬”側とは天敵の関係にある。
【ヒュールフォン=フィルディング】
性別:男 年齢:十八・九歳(生前)
フィルガス最後の王の甥に当たるフィルディング一族の貴公子。クレドガル王国で生まれてフィルディング一族の有力者として育てられたが、フィルガス戦役を引き起こした王の血縁者として表向きは日の目を見なかった。それゆえにフィルガス王の野望を阻止して祖国を壊滅させたルーヴェン=ユールヴィング、フィルガスの地で活動する傭兵たち、なによりユールヴィングの後継者であるマークルフに並々ならぬ敵愾心を抱いていた。
物腰は礼儀正しく貴公子然としているが本質は傲岸不遜。因縁の相手であるマークルフの存在が許せず、彼を陥れるために暗躍し、その時に知った戦乙女も自ら手中にしようとした。リーナに拒絶された時は貴公子の顔を捨て、強引に彼女を手に入れようともした。
フィルガスの遺産である“機神”の制御装置を胸に埋め込んでその力も利用していたが、マークルフに追い込まれた彼は一族に切り捨てられて一度は死亡する。
しかし“機神”の闇に取り込まれる形で復活。“機神”と同化したヒュールフォンは暴走し、それを止めようとしたマークルフと《アルゴ=アバス》を倒すが、戦乙女の力に覚醒したリーナの力で“黄金の鎧の勇士”となったマークルフの手で完全に葬られた。
【ラングトン=フィルディング】
性別:男 年齢:三十代後半(生前)
フィルディング一族の重鎮である子爵家当主で“機神”の制御装置保有者の一人。
上位の資格者であったヒュールフォンが“狼犬”に倒されたことで“機神”を操る資格を得ると、その野心を燃やして活動を開始。
古代文明の遺産である“機竜”を“機神”の力を用いて掌握すると、各地の古代遺跡群から“機神”復活に必要な魔力を集め、さらに障害となるマークルフとユールヴィング領も襲撃した。
しかし、“機竜”の活動はマークルフの手で妨害され、自身も身体に埋め込んでいた制御装置ごと謀殺された。
全ては司祭長の間者として活動していたオレフの手によるものだった。
【司祭長ウルシュガル】
性別:男 年齢:四十代(生前)
“聖域”東部を拠点に活動するフィルディング一族傍系の出自である司祭長。聖職の肩書きを持つが東部の小国家群を裏から支配する権力者である。
中央の本流からは外れているが一族でも実力者であり、ラングトンの次に権限を持つ““機神”制御装置の保持者でもある。
他の一族と違って“機神”の存在を危惧しており、また血の繋がった実の娘が一族の思惑で辛い境遇にあることもあり、一族本流と戦うために暗躍する。
天才科学者であったオレフを自ら招き、“機神”を際限なく利用できないための仕組みを作り上げ、さらにオレフを間者としてラングトンの許に送った。ラングトンの排除と“機竜”を掌握に成功すると自身の目的のためにブランダルクを“竜墜ち”の地にしようとした。
しかし、オレフが離反し、対決することになる。
オレフ相手にも優位に戦いを進めた司祭長であったが、唯一の肉親であった娘に裏切られたことでオレフに敗れた。
才覚に優れた人物であったが、娘が愛する人との今の道を選んで自分の救済をむしろ脅威と思っていたことと、それに最後まで気づかなかったことを自嘲しながら死亡した。
【ユーレルン=フィルディング】
性別:男 年齢:六十代後半
フィルディング一族内で“最長老”と呼ばれる車椅子の老人で、いつも傍らには孫娘のエレナを置いている。
表舞台に出ることはないが、巨大な権力を持つ一族を裏から支える重鎮であり、一族の繁栄に全てを捧げて生きてきた男。
巨大になりすぎた一族内の調整や揉め事の解決を引き受けており、一族と戦うルーヴェンやバルネスとも長きに渡って暗闘を繰り返した。
ラングトンら一族重鎮の死亡や、傍流であった司祭長の反乱などもあり、現在は一族の立て直しのために奔走している。
一族のためならいくらでも非情になれる男であるが、孫娘への愛情だけは本物である。
【エレナ=フィルディング】
性別:女 年齢:十八、九歳
ユーレルンの孫娘である美姫。車椅子の祖父に常に従っている。
一族のために生きた祖父を見て生きてきたため、一族に対する使命感と誇りは誰よりも強い。
ユーレルンの後継者でもあり、祖父に代わって“機神”の制御装置を胸に埋め込んでいる。
彼女の制御装置は他の装置を凍結する能力を持つ特殊なもので、そのために司祭長ウルシュガルの反乱においては彼の装置を凍結するためにブランダルクに派遣され、奇しくもそこで敵対関係にあった“狼犬”マークルフたちと共闘することになった。
“狼犬”を一族に歯向かう天敵と考えていたが、現在は祖父の使命と信念を受け継いで死闘を繰り返すマークルフの姿に共感と敬意が芽生えている。
◇ブランダルク王国
“聖域”東部に位置する小国家群の一国。
“神女”の伝説と古き歴史を持ち、小国ながら最強の精鋭騎士団〈白き楯の騎士団〉を擁することで他国に知られていた。
しかし、王位を強奪した暴君ガルフィルスの失政によって〈白き楯の騎士団〉は壊滅、他国にも狙われ続けるまでに没落。
さらに司祭長ウルシュガルの策略によって“竜墜ち”の危機にあったが、それを追って来た“狼犬”側と正統後継者であるフィルアネス王子らの尽力によって“機竜”は破壊され、ガルフィルスも王子派の決起によって倒れた。
現在は若き新王の下で再建が進んでいる。
【ルフィン(フィルアネス)】
性別:男 年齢:十六・七歳
先王の遺児である双子の兄で赤毛の少年。現在の若きブランダルク国王。
幼少時に叔父ガルフィルスによって謀殺されかけたが運良く脱出し、その後は反政府組織に双子の妹であるリファと一緒に反政府組織に匿われ、ルフィンという名の少年として育った。
“竜墜ち”を機に司祭長の後ろ盾を得て反政府軍の旗印となったが、自分を犠牲にしてまで国を助けようとしたリファを側近たちが見捨てるように進言したことで失望し、王の座よりも妹の救出を選んだ。
しかし、後を追ってきたマークルフに諭され、もう一度、国を救う王として決起する。
そして“最後の騎士”の力も借り、ついにガルフィルスの打倒に成功する。
現在は国王としてブランダルクの立て直しに忙しい日々を送る一方、離れて暮らすリファを心配する双子の兄なのは変わらない。
【リファ(フィーリア】
性別:女 年齢:十六・七歳
先王の遺児である双子の妹で赤毛のお下げ髪の少女。
兄と共に反政府組織に匿われ、ルフィンの妹リファとして育った。
その正体は古代文明が作り出した〈ガラテア〉と呼ばれる人造生命体。出産後に死亡した本物のフィーリアの身代わりとして生み出された。
だが、現在のブランダルクの凋落と“竜墜ち”の危機が全て自分に起因すると知り、またそれを脅迫材料に乱暴されかけたことで人間不信に陥る。
しかし、リーナに“リファ”は自分しかいないと諭され、それを心の支えにして、マークルフや兄のために自分を犠牲にしてでも役に立とうとした。
現在は国王となった兄と離れて地元の傭兵組織に身を寄せ、影ながら祖国と兄のために役に立とうと頑張っている。
【リーデ】
性別:女 年齢:二十代後半
反政府組織の一員でルフィンとリファの保護者的立場だった女司祭。
表向きは争いを好まない双子の教育係として振る舞っていたが、その裏では仮面の女剣士として独自の活動をしていた。
本当の名はアデルといい、壊滅した〈白き楯の騎士団〉団長の娘。
騎士団壊滅と父の死を受けて戦うことを決意。武芸の経験はなかったが、父から受け継いだ紋章の力を使って神女の魂を解放し、それを身に宿すことで神女の剣技を使えるようになった。
オレフとも内通しながらガルフィルスへの復讐とブランダルク復興を目論んでいた。
ログとは知己の間柄で祖国を離れたログに憤っていたが、一方で最後の〈白き楯の騎士〉である彼の帰還を望んでいた。しかし、ログの望みが神女の力の悪用を止める事だと知って完全に決別。ブランダルクの王城で一騎打ちを行った。
激しい戦いの中で“神女”の願いを知り、“神女”と共にログと死闘を繰り広げた彼女は最後にログに敗れ、剣で貫かれる。
最期は戦いを見届けていたルフィンにブランダルクの未来を託し、その腕の中で事切れた。
【“神女”】
性別:女 年齢:不明
ブランダルクの伝説に残る“神”の娘。名はリーデ。
戦乱が続いた“聖域”東部の地に現れ、人々の救済のために戦った。
二刀流の神技を持つ剣士で、共に戦った仲間たちにも剣を教えた。後に彼らが中心となって〈白き楯の騎士団〉が結成し、ブランダルクを興したため、神女はその祖として崇められている。
人々を助けた神女はひっそりと地上から消えたと歴史に残っていたが、本当は魂だけが地上に残り、従馬である“神馬”と共にとある地に封印されていた。
地上の運命に直接介入しない“神”から離れ、人々の苦難を自ら助けることを選んだ神女は魂を地上に縛られて故郷に還ることができなかったため、封印されることを選んだのだ。
神女の封印は〈白き楯の騎士団〉の最大の秘密として守られていたが、先の騎士団長の娘リーデによって解かれ、その力となっていた。
やがて最後の〈白き楯の騎士〉であるログと戦い、その後はオレフの手で取り込まれた。
最終的にオレフを勇士に選び、疑似“機神”体と融合する形で戦乙女の武具と化したが、マークルフたちによって破壊され、ようやくその魂は解放された。
その力の一部は現在もログが持つ〈白き楯の紋章〉に宿り、勇士たちの運命を見守っている。
【マリア】
性別:女 年齢:四十代半ば
司祭リーデと共に王家の双子を保護していた女性。
夫は〈白き楯の騎士〉だったが騎士団壊滅と共に死亡しており、それからは反政府組織に属しながら司祭リーデに協力していた。リーデが騎士団長の娘であることを知っていた数少ない人物。
現在は国王に即位したルフィンの世話役として働いている。
【ガルフィルス】
性別:男 年齢:三十後半
兄であった先王より王座を簒奪した暴王。ルフィンら双子の叔父に当たる。
野心家であった彼は兄王の秘密であったフィーリアの素性を知ると、それを脅迫の材料として使い、兄王を王位から退かせる。そして自らが国王の座に即くと邪魔な兄王らを謀殺した(ただし双子たちは生きていた)。
その後は〈白き楯の騎士団〉の力を用いて周辺諸国に覇を唱えようとするが、それによって国力が疲弊し、逆に周辺諸国に追い込まれる。
ガルフィルスは実力者であった司祭長ウルシュガルと密約し、司祭長にとって脅威であった〈白き楯の騎士団〉を謀殺する代わりに自分の保身を図った。
だが〈白き楯の騎士団〉壊滅はブランダルクの凋落を招き、存亡の機に陥るまでになった。
度重なる失政にも目を背け、司祭長の操り人形になる形で権力にしがみついていたが、王子ルフィンらの蜂起によってついに政府軍は瓦解し、ガルフィルスは逃走する。
逃げた彼はフィーリアの秘密を暴露してルフィンらに復讐しようとするも、マークルフによって捕らえられる。
最期は王子ルフィンの命により、自身が壊滅させた騎士団の生き残りであるログの手によって処刑された。
【“蛇剣士”カートラッズ】
性別:男 年齢:二十代後半
マークルフと同業の傭兵隊長。時と場合によって二つ名などを変えるが、基本的には“蛇”のイメージを貫いている。
マークルフのことは先代の七光りの意味を込めて“血統書付き”と呼ぶ。しかし、それらも“狼犬”と対立する好敵手が必要であるための芝居であり、実際はマークルフをはじめ他の傭兵たちからも全幅の信頼を寄せられる傭兵の鑑的存在。
ブランダルクの戦いにおいて“狼犬”と共に王子フィルアネス派の側で活動し、現在も若き新王の治世を影ながら支援する形で活動している。
【テトア】
性別:女 年齢:二十歳前後
傭兵ギルドの見習い記者。傭兵ギルドの記者として傭兵たちを追って来た伯父の生き方に惹かれ、形見である写真機を手に伯父の跡を継ごうと努力している。
現在はブランダルクの傭兵ギルド支部に腰を置いてブランダルク復興の取材を主に行っている。
【“龍聖”セイルナック】
性別:男 年齢:三十前後
ブランダルクの傭兵組織の顔役的存在。
禿頭にあごヒゲ、太い身体と威圧的な風貌だが性格は穏やか。
“龍聖”の二つ名を持つ美丈夫な傭兵で売り込んでいたが、潜伏期間中に身体の管理で失敗して以来、そのまま裏方の仕事に従事している。
ブランダルクの戦いでは“狼犬”たちを支援し、現在は“蛇剣士”と共に新王フィルアネスの治世を影ながら支援する立場にいる。
【サルディン】
性別:男 年齢:三十前半
かつて先代“狼犬”ルーヴェン=ユールヴィングに仕えていた傭兵。
ルーヴェンが引き取ったログに傭兵のイロハを教えた先輩でもある。
現在は独立して傭兵隊長として活動しているが、ブランダルクの戦いでは古巣である“狼犬”の戦いを支援した。
戦いの後、ブランダルクを拠点にしながら“龍聖”と共にその復興に協力している。
《設定・用語》
【霊力・輝力・魔力】
世界を司る三種の力。
世界には“光”と“闇”、その間に立つ“大地”の領域が存在し、それぞれの司る力が輝力、魔力、霊力と呼称されている。
世界は輝力と魔力、そして二つの力を抑える働きをする霊力が干渉し、光と闇の力が天秤のように均衡を保っている。
【聖域】
物語の舞台。
“神”によって作られた極めて高い霊力で満たされた地域。中央王国クレドガルを中心に複数の地方が存在する。
強い霊力で満たされたこの地は輝力と魔力を排除するため、魔力を動力とする機械や輝力で生きる神の眷属たちが活動できない土地となっている。
古代文明を滅ぼした“機神”を封じるために作り出された土地であり、その中心地に“機神”が活動停止したまま封印されている。
現在、オレフによって構造の一部が破壊され、その働きが不安定化している。
【戦乙女】
“神”の娘と呼ばれる存在。
自らが選んだ勇士を導き護る運命の娘であり、勇士のために自らの身を黄金の武具に変える力を持つ。
リーナは古代文明の王女だったが“神”に接触し、戦乙女へと転生している。
ブランダルクの“神女”も“神”の娘として戦乙女の力を持っていた。
【戦乙女の武具】
“戦乙女”が自ら選んだ勇士のために身を変えた武具。
黄金の武具であり、損なわれることのない不朽の存在である。
劇中で登場しているのは四つ。
○マークルフが持つ“戦乙女の槍”
○古代の勇士シグが遺した“シグの魔剣”
○リーナが変身し、マークルフが装着する“鎧”
○“神女”の力を借りて変身したオレフの疑似“機神”体
武器に身を変えた戦乙女は二度と元の姿に戻れないが、リーナだけは特殊な条件下にあり、元の姿に戻ることができる。
“戦乙女の槍”は破壊されることのない性質を利用し、専用武器が遺失している《アルゴ=アバス》の最終兵装用武器として用いられている。
究極の不変性を持ち、破壊不可能の武器だったが、ある条件においてその不変性が破綻し、破壊可能となる。
“神女”の力を借りたオレフの疑似“機神”体はその条件に持ち込まれて破壊された。
【勇士】
“戦乙女”によって選ばれた戦士の呼称。
戦乙女は“神”に選ばれた娘であり、その娘に選ばれた勇士もまた神の導く運命に選ばれた者である。
戦乙女は真に自分が認めた者の為にしか武器に変身できないため、戦乙女の武具が勇士の武器であり、その証である。
【“神”】
人の手が及ばない遙か地下深くの世界に鎮座する“光”の頂点的存在。
地下で眠っていたリーナと接触し、彼女を戦乙女に転生させた。
かつて古代文明崩壊時に出現し、暴走する“機神”を止めている。そして、その封印の地として“聖域”を創造した。
世界に直接、干渉することはないが、“娘”である戦乙女と選ばれし勇士を見えざる形で導き、運命という形で世界を見守っている。
その真の姿を知る者はごく限られており、地上ではその地によって様々な姿で信仰されている。
【アルゴ=アバス】
古代文明エンシア末期に開発された強化装甲。
制御装置である“心臓”を埋め込んだ装着者のみが使用できる。
武器は両腕から展開する一対の湾曲型の刃で、魔力弾を発射したり、魔力の“盾”を形成して防御することが可能。
さらに手にした武器に膨大な破壊力を付与して敵を消滅させる〈アトロポス・システム〉を搭載している。
過去のフィルガス戦争によって“機神”が覚醒しようとした際、ルーヴェン=ユールヴィングが装着し、“機神”の完全復活を阻止するために用いられた。
ユールヴィング家の家宝としてマークルフが受け継いでいたが、クレドガルでの“機神”暴走時に破壊された。
修復する術がなく、残骸がユールヴィング城で管理されていたが、地下世界からやって来た老妖精ダロムたちの協力によって、修復作業が進んでいる。
【“鎧”】
リーナが変身し、マークルフが装着する黄金の強化装甲。
リーナに選ばれた勇士としてマークルフが使う“武器”であり、黄金の装甲以外は姿と性能も《アルゴ=アバス》そのものである。
戦乙女の力と古代文明の叡智が融合した“光”と“闇”にも属さない異質の力であり、“聖域”の影響を受けることなく活動が可能。同時に不完全な“武器”でもあるため、リーナは元の姿に戻ることができる。
性能は同等だが破壊できないというオリジナルとの決定的な違いのため、装着者は想定外の負荷を受ける。そのためにマークルフの肉体は相当に疲弊しているのだが、リーナはそのことをまだ知らない。
【黄金の疑似“機神”体】
“機神”の力を強化装甲のように全身に纏った疑似“機神”体に加え、戦乙女でもある“神女”の力と融合して覚醒した姿。
“機神”の力を複製し、“神女”の魂”を手にしたオレフが手に入れた“鎧”で、“機神”の装甲が黄金の武具化している。
オレフはこの姿を手に入れ、なおかつ破壊させるために暗躍していた。
“鎧”を纏ったマークルフの前でオレフはこの姿に変身して戦い、最後は望み通りに破壊されることで、“機神”を破壊する手段を遺した。
【エンシア】
五百年前に“機神”によって滅ぼされた古代文明。
古代の民は“闇”の魔力を利用した魔導技術を見つけ、それを発展させて世界に一大王朝を築いて繁栄していた。
しかし、魔力を用いた文明の発展は世界の力の均衡を“闇”に傾かせ、それを修正しようとする大地の霊力の干渉が魔導機械の障害を引き起こすようになる。文明末期の時代には文明存続が危ぶまれるほどの障害に直面するようになっていた。
古代文明はその問題を解決するため、世界規模で魔力を管理する超弩級の魔力制御炉を建造して文明存続を試みたが、皮肉なことにその魔力炉である《アルターロフ》が暴走し、文明は滅びることになる。
リーナはその最後の王族であり、護衛機だった《グノムス》に搭乗して逃げ延びた。
【“機神”】
古代文明末期に建造された魔力制御炉である《アルターロフ》が暴走して変貌した機械仕掛けの災厄。
古代文明を滅ぼしたが、“神”との戦いに負けて“聖域”に封印されている。
過去に二度、復活しかけている。
一度目は数十年前のフィルガス戦争時に時のフィルガス王がその力を手に入れようと復活を画策したが、それはルーヴェン=ユールヴィングによって阻止された。
二度目は一年前のヒュールフォン=フィルディングの画策で覚醒したが、それはマークルフ=ユールヴィングによって阻止された。
フィルディング一族による“機神”覚醒はともに当代の“戦乙女の狼犬”によって阻止されており、フィルディング一族とユールヴィング一族の因縁の元凶となっている。
魔力がある限り無限に再生し、活動する恐るべき存在であり、“神”も滅ぼすことができずに魔力を封じる“聖域”を作って封印するしかなかった。
マークルフたちの悲願はこの“機神”を世界から消滅させることであり、現在もそのための研究を続けている。
“機神”は“闇”の領域と繋がる特異点そのものであり、オレフはこの特異点を人為的に作り出すことで“機神”の複製を作り出した。
そして現在、ようやくその破壊手段が確立しようとしているが、それは戦乙女を犠牲にしなければ為せない手段でもあった。
【“機神”の制御装置】
古代文明時代に作られた《アルターロフ》の緊急制動装置。これを胸に埋め込むことで“機神”に命令する権限を持つことができる。
複数存在しているが命令の優先順位が設定されており、“機神”はより上位の装置を持つ者の命令に従う。
さらに特別に一つだけ“監視者の制御装置”と呼ばれるものがあり、命令権は最下位だが他の装置保有者の全ての承認を得ることで他の制御装置の権限を凍結できる機能を持つ。
フィルディング一族が隠し持っていたが、“狼犬”との戦いや司祭長の反乱によってほとんどが破壊され、残るはエレナ=フィルディングが持つ“監視者の制御装置”のみとなっている。
【傭兵】
報酬と引き換えに戦いやその他の様々な依頼をこなす者たち。
戦いの匂いを嗅ぎつけては馳せ参じる無頼の集団であったが、フィルガス戦争以前と以後ではその在り方が違っている。
過去の傭兵は戦いの道具であり、その命も軽んじられた存在だった。
フィルガス戦争においてはそれが顕著であり、無数の傭兵たちが使い捨ての駒として犠牲になった。
当時、フィルディング一族に仕える傭兵隊長だったルーヴェン=ユールヴィングは権力者の犠牲になる仲間たちの姿と一族の野望を知り、離反。クレドガル王国の大公バルネスと手を組み、激しい戦いの末にフィルガス王国を打倒した。
その後、瓦解した旧フィルガス王国領は小勢力が乱立するようになり、傭兵たちもそこに居場所を求めた。
その裏で“機神”打倒の英雄となったルーヴェンは暗躍した。
傭兵たちの戦いに密かに干渉し、人脈を作り上げ、やがて傭兵組織全体に一大情報網を作り上げる。そして戦いの度に互いに内通して犠牲を出さないようにし、旧フィルガス地域が統一されることなく競り合いが何時までも続くような仕組みを作り上げた。
それは二度と“機神”復活の野望が繰り返されないためと、傭兵たちが戦いで使い捨ての道具とされないための盛大な八百長であった。
現在、傭兵たちは各地の互助組織のギルドを作り、今もルーヴェンの遺志を継いで世間を欺きながら八百長の戦いを続けている。
彼らの根底にあるもの――それは多くの命と運命を弄び続ける“闇”とそれに魅入られた者たちに抗い続ける意地である。
【白き楯の騎士団】
かつてブランダルク王国が擁した精鋭騎士団。
“聖域”最強を謳った精鋭であったが、物語開始時点ですでに壊滅している。
伝説の神女から剣の手ほどきを受け、彼女と共に戦った戦士たちによって結成された。
そのため神女を祖としており、騎士団の名は彼女を護る証として白い楯を持っていた戦士たちの姿が由来となっている。
長くブランダルクの守護者として活躍してきたが、自らの失政によって国と自分の身を危うくした暴王ガルフィルスが保身のために彼らを敵連合軍に売り渡し、敵の連合軍に包囲されて壊滅した。
殲滅されたと思われたがたった一人だけ、最も若かった騎士アウレウスが仲間たちに逃がされ生き延びた。
【最後の騎士】
“白き楯の騎士団”最後の生き残り。
騎士団が敵国連合に包囲され壊滅したが、最も若い騎士だけが他の騎士たちによって逃がされた。
仲間たちが倒れ、独りで敵の只中に取り残された絶望的な状況だったが、それに抗うように剣の才能を開花させた若き騎士は多くの敵を屠り続け、ついに敵包囲網を突破して脱出に成功した。
壮絶な脱出劇を成し遂げて唯一生き残った若き騎士は後に伝説として語られ、“最後の騎士”の名で呼ばれるようになった。
その後、消息を絶っていたが少年王フィルアネスの帰還時に姿を現す。
正当なる王を護り、騎士団の仇でもある暴王を倒した彼は今度こそ姿を消した。
最後に生き残った騎士は、彼の望んだ最後に消える騎士となったのだった。
【妖精族】
遙か地下世界で暮らす、とても小さな身体を持つ一族。
大地の霊力と高い親和性を持ち、土や石などに潜ることができる。また、とても寿命が長く数百年以上生きる者もいる。
本来は穏やかな気質を持つ一族だが、古代エンシア時代では被検体として乱獲されたこともあり、現在は地上に出てくる者は少ない。また古代文明技術については憎む者も多い。
地中深くに鎮座する“神”に最も近い場所に住むためか、“神”の声を聞く者も多く、妖精ダロムは“神”の頼みを聞いて地上にやって来ている。
【機竜】
古代文明エンシアで製造された竜型の機械兵器。
太古の最強生物だった魔竜を模して製造された国防兵器で、口から放つ“魔咆”は古代兵器の中でも最強クラスの破壊力を持つ。
古代文明全盛時に量産されたが、ブランダルクに墜ちたのは〈甲帝竜〉と呼ばれる最高位のもので、その咆哮によって“聖域”はその構造を一部破壊された。
古代文明を滅ぼしたのは“機神”だが、実際に文明を破壊したのは“機神”に操られた“機竜”たちである。
【竜墜ち】
古代から残存する“機竜”が“聖域”の影響下に入ることで地上に落下し、暴れ回る“機竜”によって地上が破壊された惨劇。
歴史上で二度起きており、一度目は数十年以上前に北の地ラクルに墜落。魔力が尽きるまで地上を暴れ続けた“機竜”によって一帯は壊滅した。多くの犠牲を出したが、機能を停止した“機竜”を研究する者たちが集まり、現在は学術都市として復興している。
二度目は司祭長ウルシュガルとオレフによって人為的に起こされたもので、多くの思惑に支配された“機竜”はブランダルクの山稜に墜落したが、最後は待ち受けていたマークルフとリーナの手で破壊された。