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12時すぎのシンデレラ

作者: 志崎洋

「おばあちゃん、この前のお話、ほら、かぼちゃの馬車でお城に行ってさ…」

「ああ、シンデレラのお話かい」

「あのね、不思議なことがあるの、魔法は12時を過ぎたらもとに戻ったんでしょ」

「そう、その通りじゃ」

「そこが、不思議なのよ」

「どうしてだい?」

「だって、ガラスの靴はもとに戻らなかったじゃない」

「アハハッそうじゃな。実はな、ガラスの靴は魔法使いのおばあさんが自分のふところから出して、シンデレラに履かせたのじゃ、わかったじゃろ」

「なあんだ、そうか……。ちょっと待って!」

 おばあさんは、ぎくりとした。

「なぜ、おばあさんは、ガラスの靴だけ魔法を使わずに自分のふところから出したんだろう? ねえ、おばあちゃん不思議よねえ」

「ささっ、もう帰った、帰った。その話は、終わりだよ」

「ええっ、つまんないの。私もシンデレラみたいなお姫様になりたいなあ」

 女の子はなごり惜しそうに帰っていった。


「まったく近頃の子はしょうがないねえ、お姫様になりたいなんて。お姫様なんて、それはつまらないもんさ……」

 おばあさんは、そう独り言をつぶやくと静かにゆり椅子に腰を下ろした。

そして、色の変わった古びた手紙を取り出すと、それを読み出した。


 おばあさん、お元気ですか。私があの家での生活に疲れ果て、家を出ようとした時に出会ったんですよね。

 びっくりしました。いきなり魔法を使って素敵なドレスを私に着させてくれたんですもの。あの夜のお城の舞踏会はとても楽しかったわ。でも、おばあさんからお借りしたガラスの靴、少し私には大きかったみたい。急いで階段をおりたものだから、途中で脱げてしまって……。

あれから私は遠くの町まで逃げて、やっと住むところも見つかりました。私は今とても幸せです。相変わらず貧乏ですけれど、自由で気ままな生活を送っています。おばあさんもお体に気をつけて、いつまでもお元気で。                                                                                

シンデレラより


 おばあさんは手紙を読み終えると、また独り言をつぶやいた。

「あれから魔法をかけてシンデレラになりすまし、うまくことは運びよった。

なにせ私の靴じゃからな、足にぴったりするはずじゃ……そして、あこがれのお姫様になれたのじゃが……、毎日がパーティやら晩餐会やらで自由で気ままな生活などありゃしない。いやつまらなかった……本当にシンデレラがうらやましいのう……」






どんな魔法でもできないことがある。

それは、幸せをつかむこと……。


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