ギーリク大図書館
機械だらけだと、窮屈。
機械人形であるユイ言うとそういうものなのかなと、機械技師のリーリは納得させられたような気がした。
「さあ入りましょう」
リーリがユイの言葉を考えていると、ユイはスタスタと先にギーリク大図書館へ入って行った。
エントランスの入り口には電子カーテンが設置されており、ギーリク大図書館に出入りする人たちの認証を行っていた。じっくり周りを観察しないと気付けないくらいひっそりと行われていて、全くストレスを感じさせない造りになっていた。
リーリも自分が機械技師でなければ分からなかったと思う。ユイは気づいているのかいないのか、関係なさそうに楽しそうにキョロキョロしていた。
「すごいですね、リーリ」
ユイはエントランスに設けられた、天井まで届く壁に並ぶ巨大な本棚に納められた本を見上げていた。
何千、何万冊あるのか分からない本の海が建物の内部を埋め尽していて、何十年、何百年、もしかしたら、何千年も前に名もない人物によって作られた本の匂いが溢れていた。
そんな匂いが訪れる者たちに魔法を掛け、別世界へ誘っていた。
晴れ渡る秋空のコーバリを彼方へ消し去り、異世界な雰囲気が満ちていた。
建物に一歩踏み込むだけで、そんな想像させる空間だった。
人の記憶とか、思考とか、経験。
それらを納めている一冊一冊の本。
時の流れと共に古びた印刷されたインク。
時間の流れが止まった場所、なんて言うと大げさかもしれない。
そんな言葉が沸き起こるぐらい不思議な場所に思えた。
「ユイ、ここで待っていて。古文書の閲覧の申請を行ってくるよ」
リーリはそう言うとエントランスの近くにある受付へ向かった。