道をたどれば
ギーリク大図書館はコーバリの中央広場の西側に位置する。
チラシには夕焼けを背にするギーリク大図書館の写真が載っていた。
「この先にあるはずだけれど・・・」
「はい、そのようですね」
「地図、インストールしたの?」
リーリはホテルで見つけたコーバリの地図を見ながら言った。
「はい。迷子になっていけませんから」
「初めての街だからって、迷子になったりしないよ。それに、ギーリク大図書館はこの街のシンボルなのだから、もし道に迷ってしまっても誰かに聞けばすむことだよ」
「そうですけれど、リーリは方向音痴ですから。ユイがしっかりする番です。もぅ」
「とにかく、ギーリク大図書館は目の前のはずだよ」
リーリは地図を頭の中に入れると空を見上げた。ギーリク大図書館の一部が建物の隙間から覗いていた。
「ほら、あれがギーリク大図書館のようだね」
細い道の所々にギーリク大図書館への道案内が置かれていた。
謝肉祭で盛り上がる中央広場と比べると、ギーリク大図書館へ続く道は別世界のように静かだった。角を一つ曲がるたびにお祭りの喧騒が掃除機で吸い込まれてしまったかのように消えていった。
距離はそれほど離れていない。
徒歩で10分程度といったところか。
気のせいかもしれないけれども、周りに立ち並ぶ建物もどこか威厳があるような気がした。ビッシリと隙間なく並んでいて何処かから見張られているような気分になる。しかし、注意深く見るとリーリでも知っている偉人の名が掘られたプレートが壁面に埋められていた。五百年も前にこの世を去った人だ。それなのに、こんなところに名を残している。
リーリは可笑しいという以上に、大昔の偉人が歩いた同じ道を自分も歩いている、そのことに不思議な気分になった。