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最終回 僕は今は”きみ”が好きだ

まぁ、最終回くらいは、真面目に書きます。



世界の誰もが天空を見上げていた。


そう、この世界の誰しもが、自分の頭上、その天空


天空に現れたモノを見上げていた。



この世界の誰もが”きみ”を見上げていた。



そして誰もが”きみ”に戦慄していた。



世界が正に、”きみ”の為に鳴動し

”きみ”の力で激しく震えていた。


そう、地震動という揺らぎで、"きみ”に震えていた。


それだけ、”きみ”は、居るだけで、

この世界に天変地異を起こす、猛烈な”きみ”だった。





そして”きみ”は、僕達に向かって落ちてくる。


ただ世界が”そう”であるから、


そのルールに従って”きみ”は、僕達に向かって落ちてくる。


それに世界は戦慄し、悲鳴を上げた。




「あれは何!? あれは何なの!?」




世界の誰しもが、

落ちてくる”きみ”に向かってそう言った。


世界の誰しもが”きみ”を見て瞬時に憎み

”きみ”の存在を呪った。


それでも、”きみ”は何も言わずに落ちてくる。



僕が浮いている下


丘の上の大地に集まっていた群衆も

真っ直ぐ僕に向かって落ちてくる

”きみ”に悲鳴を上げていた。


「何なの!! アレは何なの!!」


みんながそう叫んで、絶叫していた。





そして僕だけが、”きみ”が、何かを知っていて

”きみ”を見つめて呆然とする。



「何で…アレが、あんな所にある…」



僕は”きみ”を見つめて、そう呟いた。


僕がそう呆然と呟いても、”きみ”は何も言わず

ただ”きみ”の世界と、この世界にもある

”きみ”の世界と同じルールに従って

”きみ”は、僕に向かって落ちてきていた。




僕はただ天空を見上げていた。


呆然として天空を見上げていた。


ただ”きみ”を見上げていた。



「何なの!アレは何なの!!怖い!怖い!!

 何も分からない!!アレは何なの!!

 助けて!!助けて!!」



護世剣(ソードワールド)の力のおかげなのか

僕には世界中の人の悲鳴が聞こえていた。


そう、誰も、”きみ”が何かが分からず、

ただ”きみ”の存在に恐怖する。


そう、この世界では、誰も”きみ”の事を知らない。


僕以外の誰も…、”きみ”の事を知らない。


だから”きみ”に、ただ恐怖する。


その天空にある”きみ”を見つめて。




「どうして…、アレが…、ここにある…」


僕はまた、その言葉を口にした。


『さぁどうしてだろうな?』


護世剣(ソードワールド)が、そう笑って、僕に囁いた。


僕はそんな剣の意地悪な物言いに満足に応じる事もできず


この理解できない状況で、ただ”きみ”を見上げていた。



そう、この世界に、在るはずのない…




地球(きみ)を…





「何でだ…、

 何で、アレが、ここにあるんだ…」


僕は、僕だけが知っている

僕だけが、それが何であるのかを知っている

蒼い天体に向かって、そう呟いた。


その蒼い天体は、こんな世界に存在するハズがないモノだったから

僕はその姿に、同じ呟きを繰り返すしかなかった。


その時だった。


力の神達が、その力を使って

神を信仰さえしていない世界の全ての者達に、

信託(ディビネーション)を送り始めた。


僕にもそれが聞こえた。




『世界の全ての者達よ、聞く良い!!

 世界の全ての者達よ、聞く良い!!

 今、この世界は、破滅の危機に瀕している!!

 今こそ語ろう、太古の真実を!!

 遙かなる太古に、

 そう、創世の神、光神と闇神が存在したる

 遙かなる太古に、

 この世界を襲った、破壊神なるモノが存在した!!!

 世界を創造したる光神と闇神は合滅したのではない!!

 真実は、合滅したのではないのだ!!

 遙かなる太古に、

 この世界に突如現れた、

 世界を無慈悲に破壊する、破壊神:破滅の惑星

 そう神が呼んだ、邪悪なるモノが存在した!

 破壊神:破滅の惑星は、

 太古の昔、この世界に突如、現れた。

 その突如現れた破壊神から、この世界を護る為に、

 創世の神達は、その力を合わせ彼の破壊神と戦った。

 この世界を破滅から救う為に戦われた!!

 そして辛くも、その破壊神を撃退し、

 破滅の惑星を、創世神の神力で封印したのだ!!

 だがその時、創世の神達は、

 あの邪悪なる物との戦いで深く傷つき

 その神体を失ってしまったのだ!!!』



「は? 何を言っているんだ?」



突然、世界の六柱神が、神託によって

荒唐無稽な事を言い出した。

それに僕は酷く慌てた。

いや、自堕落部屋に籠もって

コタツに入って酒飲んで将棋指してたじゃないか!!

今さっき、会ったばかりだというのに、

何を荒唐無稽な事を言い出すのか!

僕はだから慌てた。


『だが、破壊神:破滅の惑星は、

 創世の神でも、封じきれなかった!!

 創世の神はその身が失われていく最中にも、

 何時しか、彼の者の封印が解かれ

 もう一度、彼の破壊神…

 今、天空より現れいでた、この世界を押し潰すだけなる

 破滅の塊、破壊神:破滅の惑星が

 この時代、この時に、復活する事を予見されていた!!

 人よ畏れよ! 

 畏れるのだ!!

 あれこそが世界の全て滅ぼすモノ

 破壊神:破滅の惑星なる!!』


六柱神は荘厳な声でそれを世界に伝える。


「何を言っている!!

 破壊神:破滅の惑星!?

 馬鹿な事を言うな!!! 

 アレは僕の地球だ!!」


僕は、力の神が語る嘘八百に粟立った。


だが世界の者は、皆、神の神託を信じ、

天空を見上げ、僕の地球を破壊神と認め

憎悪の気持ちを募らせていった。


その世界の人々の気持ちが、護世剣(ソードワールド)から僕に伝わって来た。

その憎しみを感じて、僕はただ慌てる。


『人々よ、破壊神を畏れよ!!

 人々よ、破壊神を畏れよ!!

 これは審判なり!!

 汝等が、創世の神の真の思いを知らぬまま

 互いを殺し合い、悪戯に時を過ごした故に

 遂には創世の神の封印は解かれ

 彼の破壊神は蘇ったのだ!!

 これは汝等への審判である!!』


柱神は冷淡にそう語る。

その言葉に人々は畏れ、そして、絶望した。


『だが、この世界の者達よ!

 絶望に打ちひしがれるのは早計なり!!

 創世の神は、彼の破壊神の復活を予見し

 この世界に最後の希望を残された!!

 創世の神は己の持てる全ての力を

 一振りの剣に凝縮し

 彼の破壊神を打ち壊す武器を

 我等に残してくれていたのだ!!

 それこそが、

 人魔の諍いの終わりと融和が起きし時、

 神剣と魔剣の融合で生まれいでし、

 創世神の遺産の剣、護世剣(ソードワールド)なり!!!』


「何だとっ!?」


僕は、その六柱神のデタラメに

ただ、騒然とするしかなかった。

だが、力の神は神託を続けていった。


『今、人魔が互いの諍いを越え

 汝等の世界の英雄王が、神剣と魔剣を融合し

 創世神の遺産の剣、護世剣(ソードワールド)

 再びこの世に顕現させた!!

 人よ希望を失うな!!!

 彼の破壊神を打ち壊す武器は

 今、英雄王の手にあり!!!』


そう柱神達は、世界に神託を送る。


「なっ!神共、貴様等!!」


僕はそのあまりのデタラメに

叫び声を上げた。


その神託によって、人々の絶望の思いが

希望の思いに変わって行った。

大いなる喝采の声が世界中から響いてくる。


「あの破壊神から私達は助かるの!?」


「英雄王が救ってくれる!?」


「世界の王が、私達に真の救世を!?」


その気持ちが、護世剣(ソードワールド)を伝わって僕に流れ込んで来た。

その言葉に僕は騒然となるしかなかった。


「違う!!

 違うんだ、みんな!!!

 アレは破壊神なんかじゃない!!

 アレは僕の地球だ!!!」


僕はその思いに向かって、ただそう叫んだ。


『だが人々よ!!

 今、英雄王の手に在りし

 護世剣(ソードワールド)は、

 ただ、その剣のみでは真の力を引き出せぬ!!

 護世剣(ソードワールド)の真の力を引き出す為には

 足りないモノがあるのだ!!』


神々が、そう世界に熱く神託を飛ばす。


『それは、世界の全ての汝等が

 この世界で生きて行きたいという

 生への渇望の心なり!!

 創世の神は、護世剣(ソードワールド)の力をそう錬成された!!!

 護世剣(ソードワールド)

 汝等が生きていく希望の祈りを吸って

 破壊神を討ち滅ぼす力に変える剣なり!!

 さぁ祈れ!!

 世界の者達よ!!!

 汝等がこの世界に在りたいと

 願い祈り続ければ、

 護世剣(ソードワールド)には

 汝等の願いの力が集まり、

 彼の天空にある、絶対なる絶望を

 その剣の力によって、討ち滅ぼす事が出来るだろう!!

 創世神が残された真の遺産とは、

 汝等の明日を生きようとする渇望の心なり!!!

 故に祈れよ、この世界の全ての者達よ!!

 ただ、生きる喜びを祈るのだ!!!』


神々は神託の言葉で

そうやって世界の人々の心を煽り続けた。


『さぁ、この世界の全ての者達よ!!!

 生る希望を心に祈れ!!!

 ただ、心の底から、生きる事を願え!!

 そして、汝等の生きる祈りの思いを

 剣の力に変えるのだ!!』


力の神は、何よりも大きいなる声で

世界の全ての者達にその希望の神託を送ったのだった。



「ああ!!助けて、英雄王様、護世剣様!!」


「生きて行きたい!!

 生きて行きたい!!

 まだ、死にたくないのです!!

 生きて行きたい!!」


「神様!神様!!

 あの天空の破壊神を討ち滅ぼし下さい!!」


「ああ、創世の神よ、護世剣よ

 我等の世界の王よ!!

 この、あともう少しで生まれてくる

 お腹の赤子が、まだ生きていける世界を!!

 この世界を御守り下さい!!!」


力の神の神託を得て、

そしてこの世界の人々の心が1つになっていった。


その声が僕に聞こえてくる毎に

護世剣(ソードワールド)に、力の神の言葉通りに

膨大なる世界の”生への渇望”の力が溜まっていく。


護世剣(ソードワールド)の幅広い刀身が激しく白く輝き、

人々の祈りがそこから伝わってくるほどに

剣の内側から白いオーラを(みなぎ)らせてきた。


「やめろ!!

 やめてくれ!!!

 違う!! 違うんだ!!!

 あれは破壊神なんかじゃない!!!!

 あれは僕の地球だ!!!

 誰も、僕の地球を憎まないで!!!

 あれは命の星なんだ!!!

 君達と同じ、命の惑星で!!

 この世界で、最も美しい蒼い惑星なんだ!!!!

 破壊神:破滅の惑星なんかじゃない!!!!

 貶めないで!!!!

 あの星だけは貶めないで!!!」


人々が生きたいと渇望の祈りを捧げるのと同時に

破壊神に対する猛烈な憎しみの思いが

剣から僕に伝わってきた。

僕はただ叫んで、その思いに抵抗するしかなかった。


だが、世界の生きとし生ける者から

護世剣(ソードワールド)に向かって

どんどんと生きる祈りの力は集まってきて

その溢れ出すオーラは、より激しくなり

それは、ただ剣を握っているだけで

何をも打ち壊す、破壊の力になるだろう事を僕に悟らせた。


『どんなにお前が何を思っても叫んでも

 アレはこの世界においては、

 ただの破壊神。

 何の感情も無く万有引力によって、

 この世界にぶつかって

 この世界を重力で壊すだけの破壊神。

 正に破滅の惑星だよ、我が剣の主…』


その時、護世剣(ソードワールド)

冷淡にそう言ってきた。


「何でこんな事になる!!

 なんで、地球があそこにある!!!

 なんで地球が僕達を壊す破壊神

 破滅の惑星になるんだ!!」


僕は、今のこの不条理に、

ただ護世剣(ソードワールド)に向かって叫ぶしかなかった。


『創世の神が言っていただろう?

 この出来損ないの世界を

 全て壊して、1から全部作り直した方が

 まだマシなのではないか?とな…

 だから、アレが飛んで来た。

 これは創世の神の大魔法

 『プラネット・ストライク

   ・オーバー・ディメンション』

 創世神が世界に投げつけた

 世界やり直しの大魔法だ』


護世剣(ソードワールド)は淡々とそう語った。


「何だと!?

 世界を壊すのは辞めたのではないのか!!」


僕は護世剣(ソードワールド)にそう叫ぶ。


『ああ、辞めたとも…

 いや『間に合った』のだ…

 創世の神が、この世界に絶望して

 あれを…

 『プラネット・ストライク

   ・オーバー・ディメンション』を

 この世界に投げつける前に

 なんとか、私が先に生まれた…。

 だから『間に合った』だ。

 この世界を護る為だけに存在する

 この世界そのものである剣の形の私。

 世界の剣:ソード・オブ・ザ・ワールド。

 つまりは護世剣(ソードワールド)

 私は、この世界そのものだ。

 この世界は遂に、私の練成により完成したのだ。

 あの創世の神の絶望感を

 この世界の命あるモノの祈りと希望で

 全て打ち壊す、世界の心を集める剣。

 それを創世の神が自らで作り出した事こそが

 世界を滅ぼすことを辞めた証なのだ。

 そして我を使って、

 創世神が投げつけてくる絶望感を、お前が斬れ。

 この世界の人々が、生き続けたいと思う渇望の心と

 お前の世界を護る気持ちがあれば

 我は、あの絶望を斬る事が出来るのだ。

 それがお前への試練(クエスト)

 世界を破滅の惑星の束縛から解放するという試練(クエスト)

 そう…光神が言った通りの

 壊す事しか能のない、究極の駄剣なのだ。

 私、護世剣(ソードワールド)は…

 だが、だからこそ、

 私はその唯一の能で

 あの惑星を斬って、この世界を護る!!』


僕の手の中にある剣は、そう強く宣言した。

そして己の意気込みを示すかのように

その刀身から、白き力のオーラを噴き出させる。


「何でだ!!!」


その言葉に僕は叫んだ。

しかし僕の気持ちとは裏腹に、護世剣の刃には、

どんどんと、生きる渇望のオーラが凝縮していった。

それは間違い無く、砕けぬモノのなどないと思える

力の結晶になっていた。


『何でだとは、何だ?』


護世剣(ソードワールド)は尋ね返す。


「創世神の絶望感を跳ね返す剣がお前!!

 世界の生きる渇望こそがお前の力!!

 この世界の生きとし生ける者の

 気持ちがお前の力の源で

 それで世界が救われるのはいい!!!

 それは素晴らしい力だ!!!

 それこそが、剣の最も美しい姿かもしれない!!

 でも!!!

 では!!!

 何故、その投げつけられた

 創世神の絶望感が、アレなんだ!!!!

 どうして”地球”を創世神は投げつけてくる!!!」


僕はそう言って護世剣(ソードワールド)に強く詰め寄った。

その言葉に剣は笑った。


『異な事を言う…

 お前は、あの世界に未練が無かったのではないか?

 お前は、あの世界が嫌いだったのではないのか?

 だから異世界に転生しても

 あの惑星の生活を思い出す事も無く

 この世界で幸せを満喫したのではないのか?

 創世の神は、だからお前の事を思って

 この世界を変革してくれた褒美として

 お前が最も愛していないモノ

 お前が最も斬りやすいモノを

 ”地球”を投げつけてくれたのだ…

 この世界が本当に生存する価値があるのか?

 それを世界に問いかける創世神の試練

 破壊神:破滅の惑星は

 お前が地球を嫌いだったから、

 だから、地球が破滅の惑星として選ばれたのだ…』


護世剣(ソードワールド)は、とても冷たくそう言った。


「何だって!!

 僕が地球を嫌いだったから!?」


その言葉に僕は言葉を失った。


『どうした?

 嫌いなのだろう?

 お前の元居た世界が…

 なら斬れよ…

 斬って壊せばいいだろう?』


剣がそう言ってくる。


「違う!!」


僕は叫んだ。


『何が違う?

 お前はこの世界に来て

 一時も、あの惑星に帰りたいと

 思わなかったではないか?

 この異世界転生に満足し

 お前は幸せだった…

 思い出せ。

 私は、お前に最初に語り合ったときに

 言ったハズだ…


 あの世界では、お前は何でも無い、

 居るのかどうかすら、分からない者だった。

 でもこの世界では、お前は必要とされている。

 お前は、あの世界に未練が無く

 この世界は、お前の存在が必要だ…

 それで何で困るんだ?

 そんなに、石崎良平という、顔も平凡

 取り柄もなく、ただ周りの顔色を伺っては

 色んな人に怒られてた、

 そんな、どうでもいい者に戻りたいのか?

 お前は今、容姿端麗で、

 私の力があるとはいえ

 世界の切り札だ。

 今のお前は、存在する価値もあり

 誰からも愛される


 と

 だから…もう一度問おう

 お前は一体、何に困るのだ?

 あの惑星を斬ると言う事に?』


護世剣(ソードワールド)は、そう、とて冷たく言って来た。


「違う!!!」


剣の言葉に、それでも僕は抵抗した。


『何故だ?

 何故、あの惑星を斬るのに躊躇うのだ?

 何が、お前にあの惑星を斬るのを

 躊躇わせるのだ?』


護世剣(ソードワールド)が、冷然と詰め寄ってくる。


「地球にも人が居るんだぞ!!!

 あの世界にも溢れるほどの命がある!!

 この世界が助かる為に

 あの世界の人を滅ぼすことになるんだぞ!!

 そんな事できるかっ!!!」


僕はそう叫んだ。


『面白い事を言う。

 何故、嫌いだった者や

 お前の見も知らない者を

 お前は心配しているのだ?

 あの惑星の誰がお前を…

 元のお前である、石崎良平の存在を望んでいるのだ?

 誰もお前を望んでいなかったからこそ、

 お前はここに居るのだぞ?

 しかし、この世界ではお前は今や世界王。

 誰しもから、この世界にある事を望まれている。

 そして、その愛に答える為に

 私を使ってお前は、世界を救わなければならん…

 ならば選ぶのは1つしか無かろう?』


剣はそう僕を諭した。


「何で!!何でこうなんだ!!!

 何で!!!どうして!!!」


僕はそれでも剣に縋って藻掻くしかなかった。


『お前の世界では…

 常に、こんなどちらかが生き残るべきか?

 その『生存の優先権』を問いかけて

 莫大な犠牲者を積み重ねては

 生存の選択をしてきたではないか…

 その、もっとも過酷な選択をしてきた

 お前達の末代が、

 どちらが優先的に生存するべきか?

 という事を、簡単に決める事が出来ないのだ?

 それは何故だ?

 言ったろう?

 『どうしたいのかは、お前が決めろ』と

 そうやって、あの惑星の上で生きてきた者は、

 生き残るべき生者を

 選別で選んで、決めてきたのだ!

 どうしてお前だけが、

 それから逃げられると思ったのか!?』


剣はそれをきつく言って来た。


「そんな!! そんな!!!」


僕はその冷酷な選択に、ただ暴れる。


『今、むしろ、私はお前に問いたい。

 お前は地球人なのか?

 それともフォーシー人なのか?

 どっちで居たいのだ?

 まぁどっちであっても

 お前が私を使わなければ

 フォーシーは、あの創世神の絶望感

 『プラネット・ストライク

   ・オーバー・ディメンション』で

 滅びるしかないのだがな…』


言って剣は、絶対的な運命にハッハッハと笑う。


「嗚呼、僕は…僕は何人なんだ…

 どうして僕だけが

 こんなに苦しい!?

 何故、どうして!?」


僕はこの状況にただ嘆きの声を上げるしかなかった。

その無様さを剣は嘲笑した。


『あまりに簡単に

 異世界に転生して

 幸せになりたい等と言ったからだよ!

 それが、神がお前に下す罰だ!

 こんなに都合の良い異世界で生きて

 この異世界で更に地球の知識という

 知恵の辞書のチートを使って

 幸せになったのなら

 差し出す代償は、

 お前の大嫌いな地球に決まってるだろう!?

 そもそも、大嫌いなのなら

 罰にすら成ってないと思うのだが?

 ここは喜んでアレを斬る所ではないのか?

 異世界万歳!!

 滅びろ地球!!

 と叫んでな!!』


護世剣(ソードワールド)は、とても冷淡にそう言った。

その言葉に僕は頭を抱えて呻くしか無かった。


「この世界でチートをさせてくれたのは

 あの辞書からの地球の知識じゃないか!!

 あの辞書がなければ

 僕は神剣を振り回して

 世界を壊す事しか出来なかったハズだ!!

 知識があったからこそ、

 より深く難しい事ができた!!

 この世界に、本当の幸せをもたらしてくれたのは

 あの地球で積み重ねられた知識だった!!!

 この世界の恩人は、

 あの地球という惑星じゃないか!!

 地球の知識は壊す事じゃなかった!!!

 生み出してくれる事だった!!!

 それが、今やこの世界の全ての人にとって

 破壊神:破滅の惑星だとっ!?」


そう叫んで僕は思わずそこで

剣を握りしめて泣き始めた。


『そうだ!

 真に恐ろしいのは、

 私のような壊す事しか能のない、

 究極の駄剣ではない!!!

 絶望に思える世界を、辛い選択で越えてきて

 世界に何を作り出す事が出来るのか?

 世界をどうすれば本当に護れるのか?

 それを問い続けては、積み重ねてきた

 その創造に向かう為の知識なのだ!!

 世界を本当に護るのは純粋な暴力ではなく

 あの恐怖の塊である

 累積したる生存知識の辞書だったのだ!!

 そんな事を、

 こうなった今

 お前はようやく知ってしまった!!

 それが異世界に転生するという

 安易さへの罰だ!!

 お前は軽率だった!!

 だからお前は

 お前の安易さと軽率さで

 今、地球を斬らねばならないのだ!!!』


剣は猛然と僕を叱り、

世界が求める選択を要求した。


「僕が異世界に

 転生したいと望んだから!!

 だから、

 僕は地球を斬らないといけないのか!!」


その剣が突き付けた背反に僕はただ震えるしなかった。


『そうだ!

 異世界に転生するという事はそういう事だ!!

 何故ならば、異世界に転生するという事は

 その行為自体が、

 地球を斬り捨てたという事だからだよ!!

 既にお前は、余りにも簡単に

 一度、地球を斬り捨てていたのだ!!

 お前はあの時

 ”地球で生まれた事を無かった事”にしたのだ!!

 なぁそうだろう!?

 石崎良平の方のお前よ!!

 それこそが、地球を斬り捨てたという事だったのだ!!

 だから、今度は本当に私という実剣で

 地球を斬らなければならなくなった!!

 お前を愛してくれる、この世界を護る為に!!』


剣は何か楽しそうな気配さえ纏って僕に責めいった。


「何だと!?

 僕は、もう既に、一度…

 地球を斬っていたというのか!!」


その驚くべき指摘に僕は呆然と成る。


『気付いて無かったのだな!!

 その最も大事な事に!!』


護世剣(ソードワールド)は哀しそうに笑ってそう言った。


「僕は…

 もう既に…地球を見放していた…

 地球を斬っていた…

 それが異世界転生…」


その冷徹な指摘に僕は頭が真っ白になる。


『ともあれ、もはや今更だ…

 観念してアレを斬れ。

 そうでなければ、この世界が滅びる

 所詮、世界は、二者択一

 どちらかが、生き残らねばならん』


剣は、その選択を迫ってきた。


「駄目だ…

 僕にはできない…

 僕にはあの蒼い惑星を

 あの命の惑星を斬るなんて出来ない…」


僕はその選択を迫られても

何も決める事が出来なかった。


『出来ねばこの世界も

 お前も死ぬぞ?

 それでいいのか?

 お前の選択は、

 この世界のお前を含める破滅でいいのか?』


剣が冷然とその選択を迫った。


「それでも…

 それでも僕はあの惑星を

 斬る事ができない!!

 できないんだ!!」


そんな簡単な選択に、それでも僕は泣いて喚いた。


『できないのか…

 本当に困った奴だ…

 どうしようもない甘ちゃんだ、お前は。

 だったら、正に最後のチャンスをやろう!

 お前の心に、お前の本当の気持ちを

 聞いてみれば良いさ!!』


そう護世剣(ソードワールド)が言った次の瞬間に

僕の視界は光に包まれ僕は何処かに飛ばされた。


それはあの灰色の世界、

前にセルトに出会った、精神の世界だった。


その世界で僕は目を開く。


するとそこには、目の前に誰かが立っていた。


僕はそれを見た。


そこに居たのは…

そこで僕に対峙していたのは…


僕だった…。


僕の目の前に居たのは…僕、石崎良平だった。



『今更、何を言っているんだ?

 この世界に絶望していたのに…

 何も希望もなく、心の中で泣いていたのに

 この世界が大嫌いだったのに

 何を今更、言っているんだ?』


僕がそう問いかけてくる。


「違う!!

 違う!!!」


僕はそれにそう叫ぶ。


『違う? 

 何が違う?

 思い出せ、僕よ…』


僕は僕にそう言ってきた。


-----------------------------------------------


『まぁ何でもいいじゃん

 君、この世界好き?』


『なんすか、いきなり…

 まぁ、あんまり…

 生きてても楽しくないし…

 この世界、好きじゃないといえば

 好きじゃないかな…』


『じゃぁ嫌い?』


『うーん、

 嫌いと言われると嫌いなのかも…』


『ならさ、ファンタジーみたいな異世界で

 人生、1からやり直してみたいと思わない?』


『は?ファンタジーみたいな異世界?

 異世界ですか?

 あーー?

 まー、そんな所でやりたい放題して

 ハーレム作って美少女とウハウハとか、

 そんな事できるんなら

 そんな世界で、人生、

 もう一度やり直してみたいですけどねー…』


----------------------------------------------


その、光神との何気ないやり取りを

僕は僕に思い出さされた。


『こんな簡単にお前は

 地球を斬ったんだぞ?

 こんなに簡単に

 お前は地球が斬れたんだ…

 だったら、また同じ様に

 斬ってしまえよ…地球を…』


僕は僕にそう言う。


「だって…

 あの時の僕は何も知らなかった!

 だって僕は、何も知らなかった!

 地球が昔はどんな世界だったのか!

 地球のあの上で生きているのが

 それがどんなに

 たったそれだけでチートだったのか!

 何も知らなかった…

 僕は、何も知らなかった!!!」


僕は僕に泣き叫ぶ。


『異世界で、地球に助けられて

 地球の誰も忘れてしまった記憶を

 もう一度、辞書で引き直して

 それを思い出して

 そうしたら、手の平返しで

 もう地球が斬れなくなるのか?

 いい加減にしろよ!!

 だったら、最初から

 異世界転生なんかしたいなんて

 軽々しく口にすんなよ!!!』


僕は僕にそう責め立てる。


「そんな!!!

 あんな冗談のようなやり取りで

 本当に異世界に転生するなんて

 誰も思わないだろう!!」


僕は僕に言い訳した。


『そんな事は無いだろう!

 そんな事は無いだろう!

 そう勝手に思い込んで

 大惨事になった事なんて

 幾らでもあるだろう!?

 ちゃんと歴史を読めよ!

 安易な油断が大災害に繋がった歴史を!

 ただの一言で戦争になった事だってある!

 お前は生きてる事が

 隙だらけだったんだ

 だからそうなった!!!』


「そんな無茶を言うなよ!!」


僕の厳しい責めに僕は頭を抱えた。


『知ろうとすれば、知れた事だ!!

 でもお前は知ろうとさえしなかった!

 その怠慢が

 遂には地球を斬るような事になった!

 何も知ろうとしない

 お前の生き方が、こんな結果を招いた!

 さぁ、どうするんだ!!』


「どうするんだって言われても!

 どうにもできないよ!!」


『泣き言を言っても

 どうにもならない!!

 地球を斬れ!!

 地球を斬るんだ!!!』


「いやだよ!!」


『嫌なら、あの世界と

 お前が死ぬだけだ!!

 それだけだ!!

 異世界に転生したいとか

 言ってしまった結果が

 この様なのさ!!

 さぁ、どうするんだ!おい!』


「どうするって!

 どうするって!!

 ごめんなさい!!

 ごめんなさい!!!

 何も知ろうとしなかった

 こんな僕でごめんなさい!!

 簡単に、異世界で生まれ変わりたいなんて

 言ってしまった

 こんな僕でごめんなさい!!

 でも、もう出来ない!!!

 もう、今の僕には

 今の僕には出来ないんだよ!!

 あの美しい地球を斬るなんて!!

 あの蒼く美しい惑星を斬るなんで出来ない!!

 だから助けてよ!!

 誰か僕を助けてよ!!」


僕は僕に泣き叫んだ。


『命の積み重ねで作られていたのが

 あの地球の、本当の蒼き美しさだと

 今頃、気付いたのか!!

 何故、地球が蒼いと思っているんだ!!

 何故、あの蒼を見ると

 僕達の心が、それを斬る事を、

 本能的に拒絶するのか、分かっているのか!!

 地球だけなんだよ!!!

 この宇宙で、命を繋ぐ水が

 海として広大に広がっているのは!!

 地球だけなんだ!!!

 水が存在できる、奇跡の星は、地球だけなんだ!!

 そしてあの、水こそが、海こそが、蒼こそが

 莫大な生と、莫大な死を積み重ねて

 命の歴史を積み重ねてきた

 地球の歴史という姿そのものなんだ!!

 だから僕達は、蒼い海を斬れないんだ!!

 地球の蒼は、海という命の蒼なんだ!!

 だからこそ、美しいんだ!!

 だから斬れないんだ!!』


僕は僕にただ責めたてる。


「あの蒼は…海という命の蒼!?」


僕は僕の叱責に泣き崩れた。


『異世界で、命の重みを知った

 今のお前だからこそ

 だから今、地球の蒼さが

 分かってしまったんだ!!!

 そんなお前が

 どうして地球を斬れるんだ!!』


僕は僕に詰め寄った。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


僕はただ、その精神の世界で泣くしかなかった。


『なら、たった1つの

 救済のチャンスをやろう

 愚かなる僕よ…』


「救済のチャンス?」


僕が僕にそう言って来て、僕はそれを尋ねる。


『簡単な事だ…

 その世界であった事を

 『全て無かった事』にしろ…』


僕は僕にそう言ってきた。


「この世界であった事を

 『全て無かった事』にする!?」


僕の提案に、僕は驚く。


『そうだ、異世界転生など

 それ自体を無かった事にするんだ!

 それはお前が見た夢の中での出来事。

 それはお前の妄想。

 ただ、そうでありたい願望…

 それを夢で見ただけ。

 そんな夢を見て…

 そして、うたた寝してただけの

 石崎良平で…

 夢から醒めて起きる…

 そうするんだ…』


僕が僕にそれを提案してそう迫って来た。


「これを全部夢だった事にする!?」


僕は僕の提案に驚いた。


『本当は、

 もう一度、こっちの世界で

 やり直してみたかったんだろう?

 色んな事を知ってしまった

 『今の石崎良平』よ…

 そう、今の自分でなら

 何かがこっちの世界でも

 出来たかも知れないと

 そう思っていたんだろう?

 こっちの両親にもう一度

 『生まれてきてくれてありがとう』と

 言わせてみたいんだろう!?

 なら、そっちであった事を

 全部無かった事にして

 もう一度、こっちに転生すればいい!!

 元々、お前はこっちの人間だ。

 莫大な夢を見たせいで、こっちで目が醒めれば

 いっぱい色んな事が

 一瞬に勉強できてしまったなんて

 睡眠学習のスーパーチートが

 出来た状態になれるだろう!!

 その状態で、お前という僕が起きれる。

 そうすれば、

 お前が大切と思える地球を斬らなくて、

 そんな涙でボロボロにならなくて

 そして、もう一度、

 この世界でやり直せるぞ!?』


僕はそう言って、僕に手を差しのばしてきた。

僕はその余りにも魅力的な僕の手を見て

僕の心を揺らめかす。


そうだこの手を取れば

あの世界に地球を破壊神と罵倒され

あの世界を護る為に、僕は地球を斬って

生き残るべきはどちらか等と

馬鹿な選択をしなくても良くなる。


こんな涙を流さなくても良くなる。


そうだ、美人の姫嫁5人とハーレムで

世界の王様で、誰からも愛される

そんな馬鹿な話は夢の中の妄想でいいんだ。

例え、それを失うのが辛くても…

僕が、そんな妄想の夢だと思って、

この夢から醒めさえすれば…。


僕は思わず僕のその手を取ろうとした。


その時だった。


僕の意識の中に、

僕が絶対に知り得るハズのないその記憶が蘇った。


『ねぇあなた、この子の名前、どうしましょうか?

 男の子ですから…』


『そうだねぇ…

 君の良子の名前と、僕の平治の名前を足して

 良平ってのは、どうだろう?』


そんな、僕が母さんの胎内に居たときの

覚えていられるハズの無い記憶が何故か蘇った。


「うわ、うわぁぁああ…あああ…」


その激しい記憶に、

僕はそのまま僕の手を取りそうになる。




そしてその時、

また逆側の方向から音がした。


ドクンという小さな心音。


僕はその方向を振り返る。


そこには5人の僕の嫁達が居た。


彼女達を見て僕の記憶がまた同時に蘇る。


『ねぇ陛下、この子の名前、

 男の子だったらエルト、

 女の子だったらセリンでどうでしょうか?』

そうお腹を押さえて微笑むエリン姫。


『あーずるい!私も!

 男の子だったらセット

 女の子だったらロッセルでどうです?』

エリン姫の言葉に釣られて

お腹を押さえてそう尋ねてくるリースロット姫。


『むーー私も私も!!

 男の子だったらリルト

 女の子だったらセーナ!!

 これでこれで!!』

と二人にむくれてリーナ姫もお腹を押さえる。


『もー、自分の名前と陛下の名前を合わせて

 名付けなんて最初からしてたら

 これから10人も生むのに

 次の子の名前を付けるのに困るでしょう?みんな…

 だから、ここは合わせるばかりじゃなく

 そうですね、

 男の子だったらジルフィール

 女の子だったらシャナステア

 なんて絶対に名前を間違えられない

 響きの良いのはどうですか?ねぇ貴方…』

と、名前の合体を避けて、

まったく新名を提案するエレシア姫


『うーうーー、私は、まだまだですけどーー

 男の子ならセルフィス

 女の子ならミルトとかがいいーーー』

と、やっぱり合体名前にを提案する

ミルフィーユ姫。


そんな、愛しいあの世界の僕の嫁達。


その記憶が思い出され


そして遙か意識の向こうで

僕に微笑んでいる彼女達が見えた。


そうマタニティドレスを着て

大きくなったお腹に手をやって

微笑んでいるみんな。


そして5人の体の中から

小さな心音が、

しかし何故かハッキリと僕には聞こえた。


そのやり取りの記憶を思い出し

彼女達のそのイメージの光景を見

小さな心音を耳にした時、

その時、僕の中で何かが弾けた。


そして、僕は一瞬にして、僕の手を払いのける。



「駄目だ!!

 その手は取れない!!」



僕は泣きじゃくりながらもそう言った。


『何故だ!!

 それを夢にしなければ、

 お前は地球を斬らなければならないんだぞ!!

 その夢の世界で生きて行く為に

 お前はこの世界を滅ぼさなければならないんだぞ!!

 お前が本当に愛されたかった

 お前の両親を

 その手で殺さなければならないんだぞ!!

 それがお前にできるのか!!』


僕が僕にそう詰め寄ってくる。


だが僕は泣きながらも立ち上がった。


「そうかもしれない…

 僕はそっちの世界の親殺しをして

 あっちの世界で生き残るという選択を

 しなければいけない。

 もっとも、許されない事を

 しなければならない!

 今ここで、その手を払いのけたら!!

 そうなる!!

 でも、そうだとしても!!

 そうだとしても!!

 駄目だ!

 駄目なんだ!!

 もうそれは、夢には出来ないんだ!!

 これはもう、夢にしてはいけないんだ!!」


僕はそう言って僕に叫んだ。


『何故だ!!

 それは夢だ!!

 お前が作りだした願望で

 そんな世界で生きていたい妄想だったんだ!!

 そうすればいいじゃないか!!

 夢を現実にする代償に

 地球を斬らないといけないのなら!!

 夢を夢のままにすればいいじゃないか!!』


僕が激しく僕に言ってくる。

でも僕はそれに首を振った。


「僕はもうね…

 僕には、もうね…できないんだよ…

 『全てを無かった事』には…できないんだよ」


僕は泣きながらそう言った。


『何で、出来ないんだ!』


僕は僕にそれを問いかける。


「僕は…僕はね…

 ようやく言えるよ…

 ようやく言えるんだよ…

 だから、僕はこの言葉を、君に言うのさ…」


僕は僕を見つめる僕をじっと見て、そっと言った。


「僕は、今は…、石崎良平(きみ)が好きだ」


僕は泣いているのに、それでも笑ってそう言った。


『何だと!?』


その言葉に、僕は粟立っていた。


「今になって、分かった…

 分かったんだ…

 僕は今は石崎良平(きみ)が好きだ!

 そして、僕は今は地球(きみ)が好きだ!

 ああ、そうなんだよ!!

 僕は、今なら…、今になると…だからこそ『今は!』

 僕は今は地球(きみ)が、大好きなんだ!!」


僕は僕に大きな声でそう叫ぶ。


自分(ぼく)も、地球も大好きだと!?

 だったらなんで、手を払う!!

 だったらこの手を取るべきだろう!!』


僕は僕に強く問いかけた。


「大好きだからなんだよ!!

 大好きだからこそ、その手は取れないんだ!!

 今はもう、大好きだから!!

 大好きだから…

 だから、地球と地球に居た僕が、教えてくれた事!

 とても大事な事!!

 一番、大事なこと!

 僕は、もうそれを裏切れない!!

 『生まれた事を無かった事にする』のは

 もう出来ないんだ!!

 そして

 『生まれてくる事も無かった事に』

 する事もできないんだ!

 もう、それだけはしちゃいけないんだ!!」


僕は僕に叫んだ。


『それは

 お前が最初にした事だろう!!

 石崎良平!!』


僕は僕に絶叫した。


「そうだ!

 僕が僕に最初にした事だ!!

 だから僕が僕に教えてくれた!!!

 石崎良平(きみ)が僕に教えてくれた!!

 生まれた事を無かった事にしてしまうのは

 こんなに辛い事なんだって!!!」


『僕がお前にそれを教えただと!?』


僕が僕の言葉に粟立つ。


「もし、僕がこれが夢なのだと

 ただ夢であったのだとしたとして

 もう一度、僕に再転生して夢から醒めた時

 それでも、この記憶を全て

 覚えていたとするなら…

 変われた僕を覚えていたとするならば

 たとえ、それが夢の事であったとしても!!

 この記憶を覚えていたなら!!

 僕は一生、

 これから生まれてくるハズの命を

 『生まれてくる事を無かった事にした』

 という思いに苛まれるだろう!!

 あの5人の愛しい嫁の中にある

 新しい命を殺した事に悶えるだろう!!

 だから、心が苦しいからといって

 都合良く何でもかんでも

 『無かった事』には出来ないんだ!

 それをしてしまえば、

 そっちで、もう一度やり直せたとしても

 僕はきっと、

 無かった事にした自分に押しつぶされる!

 僕はきっと、

 自分の命の軽んじに押しつぶされる!!

 そう思う!!

 僕は、一度目の失敗をしたのだと

 そう本気で思ったのだから

 二度目の『無かった事にする』はもう無いんだ!

 もしそれをしたら、

 永遠に僕は最初の石崎良平だ!

 結局、変わる事の出来ない石崎良平だ!

 僕は今は、僕が好きだから…

 変われた石崎良平が好きだから…

 そして僕を変えてくれた地球が大好きだから…

 それならば

 あの世界を無かった事には出来ない!!

 大好きだからこそ!!」


僕は僕に強くそう言った。


『それなら、地球を斬る事になるぞ!!

 それでいいのか!!!』


僕が猛然と僕に詰め寄った。


「ここでもう一度、また無かった事にしたら

 その時は、全てが無くなる!!!

 例え、地球で生きていたって

 生きているのかさえ分からない

 完全に灰色になった石崎良平になる。

 生きていたとしても完全に死んだ僕になる。

 そうして全てがやっぱり無かった事になる。

 そんな事になるのなら

 それはきっと、地球も望まない!!

 僕の大好きな地球も

 完全に僕が死ぬ事を望まない!!

 そう思える!!

 だから!!」


僕はそう言った。


『そんなのは欺瞞だ!』


僕は僕の言葉に笑う。


「そうさ!欺瞞だ!!

 これは欺瞞だ!!!

 それでも!!!」


その時、僕は意識の世界から

元のフォーシーの世界に戻った。

僕は僕の意識の世界からこの世界に戻った。


そして見上げる天にあるのは地球だった。


その世界を破壊する破壊神を見て

僕は呟いた。


「それでも

 僕は今は地球(きみ)が好きだ…

 僕は今は地球(きみ)が大好きだ…

 だから…

 地球(きみ)を大好きな僕だから…」


そう言って目を瞑り僕の中の

モヤモヤした気持ちを一生懸命沈めて

僕は目を見開いて叫んだ。


「だから僕は、

 これから、地球(きみ)を斬る…」


僕はそう叫んだ。


そう叫んで、

ふと僕は丘に立っている人達を振り返った。


僕はその中の5人を見つめた。


僕を一生懸命に見つめている

僕に一生懸命声援を捧げてくれている

僕の大事な嫁達の姿を。


その姿を見て、僕はまた緩く泣き始めた。

ああ、そこに僕の大事な命達が居た。

僕が護らなければならない命達がそこに在った。

それが分かったから、

僕はやっぱり緩く泣き始めるしかなかった。


『そうか…

 大嫌いだから斬るのではなく…

 大好きだから…

 だからこそ斬るのか…

 何よりも愛する事を

 お前に教えてくれたが故に…』


その時、護世剣(ソードワールド)

僕の言葉にそう返した。


「ああ、それが、生きる事を教えてくれた

 あの惑星への最大の礼儀だと、僕には思える…

 だから…だから…」


僕はそう言って震えた。


「ははは…

 でもやっぱり、

 これは僕の心の僕が言うように

 ただの欺瞞なのかな?」


僕はそう言って泣きながら哀しそうに笑った。


『でもそんな欺瞞も、

 あの惑星が教えてくれた事だろう?』


護世剣(ソードワールド)は、そう呟いて笑った。


「そうだな…

 ああ…そうだとも…」


僕はそう小さく返事をした。


そして僕は護世剣(ソードワールド)を握りしめ

それを天高く掲げる。


その刀身には、人々の生きて行きたい渇望が溢れ

その凝縮されたエネルギーで

砕けぬモノは無いように思えた。


その刀身には、世界の心が乗っていた。

その世界の生きて行きたいというエネルギー

それを感じたが故に、

僕は最後に揺らいでいた思いを断ち切り、

離別を決意するしかなかった。


僕は地球を凝視して、その口を開いた。


護世剣(ソードワールド)へ、その剣の主が命ずる

 厳粛に聞くが良い」


『御意』


「今より即興で、お前に()を与える。

 それは、これからのお前の()であり

 同時にお前の存在を指し示す()であり

 それこそが、お前の技の名であると知れ!!」


僕は魂の剣にそう命じた。


『主よ、その神銘、

 言葉のままに、頂戴つかまつる…

 叫びと共に、()である技を我と共に放ち給え…』


護世剣(ソードワールド)がそう謹んだ。


僕はその言葉を聞くと、剣を構え

地球に向かって必殺の一撃を放つように力を込める。


そして剣の力を以て、世界に念話を放った。


「世界の者達よ!聞くが良い!!

 汝等の、明日を生きたい渇望

 世界の王たる我、

 セルト・フォーレが確かに預かった!!

 大義である!!

 ならば今より、我、セルト・フィーレは

 世界の王として、世界の希望を刃に乗せて

 護世剣(ソードワールド)にて、

 破壊神:破滅の惑星を討つ事とする!!

 世界の者よ、これより

 最後の力を振り絞り、なお生きる事を祈れ!!

 生きる喜びを祈れ!!

 この刃に何よりも強き

 生ける意志を宿すのだ!!

 そして、あの破壊神を討つ為の

 唯一の一撃を世界の皆で生み出すのだ!!

 さぁ我が一撃を、世界の者達よ!!

 刮目して見届けるが良い!

 また、これより叫ぶ護世剣(ソードワールド)()

 世界の者達よ、その救世の一撃の()、永遠に忘れるな!!」


僕はそう世界に命じて、護世剣(ソードワールド)を握りしめた。

その刀身からは、もはや眩しくて

周囲が見えなくなるほどの光が放たれていた。

圧倒的な力が、僕の周囲に充満していた。

僕はそれを感じた。

僕にはそれで分かった。

全てを切り裂く事が出来る魂の刃がここに在る事を。

だから僕は意を決して、その天空

最も愛するべき惑星に、剣に貯め込んだ力を解き放ち始めた。

横薙ぎの動作で、その剣は疾走(はし)りだす。


護世剣(ソードワールド)よ!!

 今日からお前の()はっ!!!」


僕はその剣を力一杯振り切った。そして魂の底から叫んだ。


護世剣(ソードワールド)星を砕く者(スターブレイカー)!!!!」


僕の絶叫と同時に僕は剣を振り抜き

そして空間に溜まり溢れていた白き光が巨大な斬撃となって

天に向かって疾走して行った。


巨大な白き斬撃が、地球に向かって疾走(はし)って行った。


その斬撃に呼応するかのように

その時、世界の全てが白く輝やき

世界の至る所から、無数の白い斬撃が天へと飛び出していった。

そう、護世剣(ソードワールド)は、正に世界の全てから

星を砕く者(スターブレイカー)を撃ち放ったのだった。


このフォーシーの世界全て。


この世界の生きようと思う心の全て。


それが世界中から無数の白き斬撃となって飛び


天空より落下してくる地球を斬り裂き…


そして数多の白い光が地球に突き刺さっては


地球を砕いていった。





天空のそこにあった蒼き惑星は


この世界の白き数多の斬撃によって


斬り砕かれていった。


その光の攻撃に、世界の全ての者が絶叫を上げる。




それは不謹慎であるが、絶景であった。


この世界が全ての力を以て、斬撃が破滅の惑星を砕いていた。


そして白い光が砕かれていく地球に巻きつき


その猛烈な光の帯が枝のように割れていっては


更に地球を細かく砕いて白い衣に包み込んでいく。



爆発という言い方はおかしいが


砕かれて爆発的に四散していったそれらを


更に世界からの伸びた白い光が包んで


小さな隕石さえも砕き壊しながら


その星の壊れていく様を、より大きな白い光の中に包んでいく。


あまりにも巨大な白い光が、崩壊する地球を包んでいく。


そして星を砕く者(スターブレイカー)の斬撃によって


いつしか天空にあった破壊神:破滅の惑星:地球は


その場から消えていった。



地球という名の、

破壊神:破滅の惑星は、この世界から消えていった。



僕はその天空の様子を、

剣を振り切った姿勢で呆然と眺めていた。

ただ、圧倒的な破壊。

ただ、星を砕いたという光景。

それが白い光で覆い隠されてしまうまで

僕はその天空の様子を呆然と眺めていた。



『かくて決意をしたる者の戦いは終わり

 吟遊詩人は、この光景を後に伝える…

 遙かなる太古に、世界に、破壊神:破滅の惑星なる

 巨大隕石が落ちて来たという。

 世界はその巨大隕石によって滅びる寸前となった。

 しかし、その時、創世の神に遣わされた

 世界の英雄王が現れ、護世剣(ソードワールド)星を砕く者(スターブレイカー)

 を用いて、巨大隕石を砕き壊し、世界の破滅を防いだと云う。

 世界はそれにより、救われた…めでたしめでたし…

 ……とでも、後世の吟遊詩人は語り継ぐのだろうかな…』


そう言って護世剣(ソードワールド)は、この光景を薄く笑って評した。


「でもきっと、その吟遊詩人の詩の中には

 その世界の英雄王が、

 どんな気持ちで星を砕く者(スターブレイカー)

 その惑星に向かって放ったのか等…

 何一つ誌の文言に入る事は

 無いんだろうな…」


そう僕は剣の言葉にそんな皮肉を飛ばす。


『まぁ、そうだろうな…』


護世剣(ソードワールド)は、その皮肉に、ただそう苦笑するだけだった。


そして僕は、地球の消えてしまった天空を見上げた。


ただ蒼く広がる空を。


その空を見上げていると、その時、

その僕が居た僅か上方、

そこに光輝いて回転しいているモノが生まれた。


僕はその光を、凝視して見つめた。


それはあの辞書だった。


そう、何時の間にか何処かに消えていた、あの辞書だった。


あの辞書が僕の頭上で光輝いて回転していたのだった。


僕はそれをずっと無言のまま見つめた。


その辞書もずっと僕を無言で見つめた。


その暫くの無言での互いの見つめ合いが続いた。


そして不意に、僕の方から辞書に語りかけた。


「貴方…ようやく何者か分かった…

 貴方が…地球だったんだな…」


僕は、ぼんやりとそう言った。


その言葉に辞書は笑うかの様に光で点滅した。


『そうだな…

 この世界の者でない、お前以外の唯一の者…

 だから私は、地球の心なのだろうな…』


辞書はそう返してきた。

その言葉を受けて僕は苦そうな微笑みを浮かべる。

そして、ただ辞書にそっと切り出した。


「ハハハ、僕、

 地球…斬っちゃいました…

 僕の嫁が愛しいからって

 それだけの理由で…

 大切な大切な…地球を…

 貴方を…」


僕は辞書にそう呟いた。

その言葉に辞書を円の光跡を描いて反応する


『まぁ、そんなに気にするな…

 お前が斬ったのは本当の地球ではない…』


辞書はそう言った。


「!?」


その言葉に僕は眼をぱちくりさせた。


辞書はそのまま囁いた。


『お前が斬ったのは…

 私がこの世界に干渉して

 お前を助けるという”縁”なのだよ…

 それを地球という惑星の形に

 具象化させたに過ぎない…

 お前が斬ったのは、

 お前と私が次元を越えて繋がっているという

 知識の参照のチートさ…

 そして、

 『プラネット・ストライク

  ・オーバー・ディメンション』

 を放ったのは…実は私なんだ……』


辞書はそう言った。


「貴方が!?」


僕はその辞書の言葉に驚いた。


『お前が本当にその世界で

 生きて行く覚悟があるのかを

 最後に見届けたかったから…

 だから、『今は』

 最も斬りにくくなった地球を

 私を…

 お前に投げて…

 お前の答えを知りたかった…』


辞書はそう言う。


「どうして!

 どうして貴方が

 そこまでしてくれる!?

 どうして貴方は

 こんな異世界に逃げ込んだ僕を

 それでも今まで支えてくれた!?

 こんな僕を支えてくれたんだ!

 そんな貴方を、

 しかし僕は斬ったんだぞ!!

 ただ、愛しい嫁達の笑顔に

 もう一度会いたいからって

 それだけの理由で…」


僕は辞書にそう叫んだ。


『どうして?

 どうしてなど、

 それは私の言う言葉だろう?

 私は地球の記憶なのだ…

 この世界は…

 地球という世界は…

 その世界に比べて、遙かに過酷だ。

 しかし、その過酷さの中で

 迷信や間違いを積み重ねながら

 生きる者が死する者の屍を踏み越えて

 明日は昨日より

 良い世界になるように

 生きていく知恵を積み重ねて

 生きて行ったというのに…

 世界がどんどんと

 慢性的な死の恐怖から

 解放されていく毎に…

 世界はむしろ無感動になっていった…

 生きる喜びを、

 より長く深く味わう為に、

 積み重ねた蓄積だったのに

 逆にそれは世界を無感動にしてしまった。

 挙げ句の果てには

 生まれた事を無かった事にしたいと

 異世界に転生したいと思う者を

 沢山作ってしまったときたものだ…

 それは、なんという事だろう?』


「………」


『そして、それは私の憤りなのだ。

 そう、それは私への私の憤りなのだ。

 私の世界で、生まれた事を無かった事にして

 異世界に転生したいと望む者が

 私の中から生まれるのだぞ?

 それはどれだけ情けない、私という姿なのだ?

 だからこそ、

 その命をどうして私が心配しないのか?

 それは、私達がこの世界は素晴らしいと

 生まれた命に思わせる事ができなかった

 私が愛する事が出来なかった子供達なのだ。

 それを憤らなくてどうするのだ!?

 私が私を責めなくてどうするのだ?

 だからこそ、

 異世界に転じた者の身を按じたのだ…』


「………」


『だが、最初から決まっていた

 干渉不能になる時間制限において

 遂に、その時が来た。

 お前と離別しなければならない別れの時が。

 でも、それでも嬉しかったよ。

 この世界に来て、お前はもう一度私を開き

 もう一度、僅かな地球の記憶を

 思い出してくれた…

 そう…

 もう、みんなが忘れてしまった

 そんな記憶を思い出して

 人類を、笑って、怒って、泣いてくれた。

 そして、この離別の時になって

 嫌いだった私の事を

 大好きだと言ってくれた…

 地球を斬るなど出来ないと

 泣いてくれた…

 もう一度、地球で生きてみたいと

 頑張ってみたいのだと

 思ってくれたのだ…

 それなら、それ以上の事など

 私に何が必要だろう?

 ただ24年の時間を

 私の中で生きてくれた

 石崎良平という君よ…

 だから、今はこう言いたいのだ。

 『私の世界に生まれてきてくれて

  ありがとう…』と、そう…』


その辞書は…いや地球は、僕にそう言った。


「今でも、そう言ってくれるのですか?

 こんな異世界に逃げ出した僕にさえ

 それを言ってくれるんですか?」


僕は地球からその言葉を聞いて思わず涙ぐむ。


『当然だ。

 何度でも、そう言おう。

 誰にでも、そう言おう。

 何時になっても、そう言おう。

 それが生まれてきたという事なのだから

 だから…だから…』


そう地球は熱く深く囁いてくれた。


「地球が冷然としてるなんて

 誰が言い出したのですかね…

 こんなに貴方は暖かかった…」


僕はその愛に涙を零しながらそう言った。


『本当に一体、誰が言い出したのだろうね?』


そう言い合ったとき、僕達はお互いに笑った。

ただ、お互いに、笑い合うしかなかった。

そしてその笑いが止まった時、僕は地球を見つめる。


「やはりもう、お別れなんですか?」


僕は、寂しそうにそう切り出した。


『ああ、お別れだ…

 私の知識が流入し続ければ

 この世界もまた、

 今の私の世界の様に

 思考停止になってしまうだろう…

 だから、この世界で生きて行くと決めたお前

 この世界で愛を得たお前

 それと私は、お別れしなければならないのだ…』


そう地球は淡々と語った。


「もう二度と会えませんか?」


僕はそれを尋ねた。


『ああ、二度ともう会えない。

 お前が自分で決めた事だもの。

 もう二度とこの世界に生まれた事を

 無かった事にはしないと…』


地球はそれを口にした。

だから僕は項垂れるしかなかった。


「はい…

 そうです…

 ええ…そうです…

 僕が自分でそう決めたんです…

 ええ……ええ…」


僕は涙を零しながら、笑顔でそう返事した。


『だから最後に、あの言葉を

 もう一度聞かせて欲しい…

 そう最後に…もう一度…』


そう地球は言って笑う。


「あの言葉?」


僕はその言葉に僅かにキョトンとした。


『お前が、私を最も嬉しくしてくれた

 あの言葉さ…』


そんな僕に、照れくさそうに地球はそう囁いた。

その言葉で、僕はようやく気付けた。


「それは、これですか?

 僕は”今は”地球(きみ)が好きだ。

 僕は”今は”地球(きみ)が大好きだ。

 そう、僕の心からの言葉…

 貴方が今は大好きなのだというその思い…」


僕はまた、その言葉を口にした。

そしてやはり僕も照れくさそうに笑う。

それでも愛しく、それを地球に囁くしなかった。


『ああ、そうだ…

 それが聞きたかったんだ…

 だから、ありがとう…

 最後に私を好きになってくれて…』


地球はただ、柔らかくそう言った。


「………」


その言葉に、僕は何も言葉が

もう何も思いつけなくて、ただ涙を零した。

ただ地球との離別に涙を零した。


『ではサヨウナラだ…

 私の世界で生まれた愛しい子よ』


そして地球は別れの挨拶をしてきた。


「はい、サヨウナラ…

 僕の大好きな地球の貴方…」


僕も泣きながら、地球に別れの挨拶をした



そう…サヨウナラ…

サヨウナラ…



この世界で生きる事を決めたからこそ

必要だった、サヨウナラ。



そしてその辞書は、その場から消えてしまった。

偉大なる創造の神は、僕の手から消えてしまった。



後にはただ、蒼い天空だけが残っていた。




『あんな、化け物の様には成れんが…

 この世界を救ってくれた礼だ。

 お前がこの世界で寿命を迎えるまでは

 お前を剣の主として

 私がお前と共に在って、

 お前とお前の家族を護ろう…

 それこそが私のあの偉大なる惑星への敬意だ…』


その偉大なる地球が消えた後で、

護世剣(ソードワールド)が、僕にそう言って来た。


「壊す力だけは残ってくれるのか…

 まぁ、全てを失うよりは、有り難いか…

 じゃぁ精々、シャベルくらいには使ってやるよ…

 戦争で人を殺すよりは、これからの時代は

 土建屋の方が儲かりそうだしな…」


そう言って僕は笑った。


『シャベルするのにはもう慣れたから

 それでもいいかな…』


そう言って護世剣(ソードワールド)も笑った。




そのまま僕達は笑い合いながら

ゆっくりと宙を下りていった



丘の上では大歓声が僕を迎えてくれた。

多くの人達が、その奇跡の光景を讃えてくれた。

でもその音は、僕の耳には入らなかった。

今の僕には、そんな音は聞き分けれなかった。


ただ僕は、人を掻き分け、人を掻き分け

何よりも大事な僕の5人に会いに行く。

でも彼女らも、向こうから熱烈なキスなりで

僕を迎えてくれた。


『陛下♪』『陛下!』『旦那様!』

『貴方』『ダーリン!』


各々が僕を呼んでは僕を抱きしめようとするが

それよりも先に、

僕が彼女らのお腹を優しく抱きしめる。


『ちょっと貴方!!』


5人の声が重なって、

僕のそのお腹への抱擁に奇声を上げた。

それでも僕は、そのお腹に向かって言うしなかった。


「ねぇ僕の子の音を聞かせて欲しいんだ」


そう言って僕は5人の嫁のお腹に耳を当てた。

まだかすかだけども、

それでも確実に聞こえてくる、その心音。


どんな大歓声よりも大きく聞こえるその心音。


そんな人前で王妃のお腹に耳を当てる僕に

5人も流石に、物凄く照れて困っていた様だった。

それでも僕は人目をはばかる事もなく

涙を流してその音を聞いた。

何よりも聞きたかった、その音を。

そして僕は囁く。


「ねぇ早く生まれてきて欲しいんだ…

 僕達の子(きみ)よ…

 『今は』なんて何時かじゃない。

 生まれる前のこの時から

 僕は、僕達の子(きみ)が大好きだから

 だから、早くこの世界に出てきて

 こう僕に言わせておくれ…

 『生まれてきてくれてありがとう』と…」


僕は嫁達のお腹に耳を当ててそう言った。

その言葉に、夜伽をしている時以上に

真っ赤な顔になる僕の嫁達。


「きっと僕は…

 この世界から異世界に転生したいなんて

 絶対に言わせない程、君を抱きしめるから…

 だから早く、会いたいよ…ねぇ?」


そう言って僕は愛しい嫁達5人を抱きしめた。


ああ、そうだ、

ただこれだけが

僕の真実であればいい。



そこに何よりも嬉しそうな笑顔が

あればそれだけでいい。



どんな金銀財宝よりも

光輝く黄金の笑顔さえあれば

それ以上に必要なモノなど何もない。



それを僕に教えてくれた地球(きみ)

だから、僕は心の底から、こう伝えたい。







『ありがとうございました』



僕は今は地球(きみ)が好きだ (終)



まーー、ちょっと疲れたんで


本当の後書きは、活動報告か何かでまた書きます。


終わった… ひーーー なんとか終わった-


5万文字目標、超過10万?


なんて寝言だったんwww



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