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第二十八話 どうも魔王らしい

終パートは、始まり出すと、超速で進んでいくのです。


ともかくトーディ国の北の城砦

ログルトルア要塞の城門の前にUターンで返ってくる僕。

そこには、なんとか急いでかき集めました的な

多分5000騎程度の魔族?らしき軍勢と、

その先頭に、多分、魔剣の力で

浮いているんだろうナー的な、

あちらの「魔王」が要塞の目前まで詰め寄っていた。


それを最初に見て、僕は愕然とする。


一目で見て、なんか黒いオーラ出てる

こっちの神剣の逆版の剣持って、

宙に浮いてるんだから

きっと「それ」が、魔王に違いない。


もう、そう考えるしか無い絵だ。


しかし…

しかし…


その「魔王」を見て、僕は絶句するしなかった。


「なぁ…あれ…『魔王』なん?」


僕は神剣に問い詰める。


『まぁたぶん今世の魔王なんじゃないかなぁ…

 持ってる剣、魔剣ディスガイアは、あの剣よ?』


と、さらっと言う神剣。


「なぁ、また”疑う”が発動したんだけどさ…」


『ほう?』


「お前、知っとったんちゃうんか?

 今世の魔王がアレだって…」


僕はそう神剣に詰め寄った。


『ナンノコトカナー

 僕にはわかんないナー』


とか、いきなり胡散臭く

ピューピュー口笛を吹き出す神剣。


「お前、最初から知ってたな?

 最初っから、アレが魔王って知ってたな?

 そうなんだな?

 そうなんだな?

 それで、こうだったんだな?」


僕は神剣に激しく詰め寄った。


『いや、別に?

 知ってたけど、

 だからお前がどうするかなんてのは

 お前がしてきた事で、

 私は普通のサポートをしてきただけだ…

 いつも言ってきただろう?

 『どうするかは、お前次第だ』って…』


そう神剣は言って、

またしてもピューピュー口笛を吹く。

僕はその神剣の確信犯的な考えを知って

頭を抱えるしかなかった。


どうやって人魔大戦を終わらせるか…


その難題。


そう馬鹿な戦争だと知って愕然とした。


だからこんなモノは

終わらせないといけないと思った。


しかし実際に、数千年も続いた怨恨を

どうすればいいんだろう?


それは難題だった。


だが、その大難題を解決する方法は、

1つの方法論として目の前に浮いていた。



「お前が、英雄王か!」


それは多分、魔剣の拡声器の魔法みたいなので

大きな声で叫んで来た。


「えーっと、はい、そうです…」


僕は仕方ないんで、同じく、気を効かせてくれた

神剣の拡声器の魔法で、声を出して返事をした。


「我は魔族の王の中の王、魔王なる!

 緊急の知らせにより

 我等が魔族の四天王国が一国ドクスクラフ王国が王

 ナーンセン王が貴様等に捕縛されたとの情報が入った!

 四天王国の王は、我らの世界にとっては大事なる者。

 なれば、何としても救わねばならぬ!

 故に、この度においては

 私の寛大な思いで留めていた

 今世の人魔大戦も、最早やむなしと考えるに至る!

 英雄王よ、人魔の宿命の戦い

 互いの運命を受け入れて、

 また今世も始めるとしようぞ!!」


その魔王だけが頑張ってるかけ声に

後ろの軍勢も仕方なしに

「おおー!」みたいに合いの手を入れる。

しかし、かなりやる気が感じられない。

むしろそれどころではないって雰囲気。

魔王は、それにも負けず

1つ咳払いをして語りを続けた。


「しかし、結論を急ぐのも、

 王の王たる所行ではなし!

 我は、愛すべき我が魔族を

 悪戯に死するを好まず!

 よって、英雄王よ!

 汝と我の一騎打ちにて、今世の人魔大戦の

 決着を付けるを望む!

 如何か!」


そう彼女は言ってきた。


「あーー、

 あの王様の捕縛ってフラグだったかー」


僕はその発言を聞いて項垂れた。


要するにドミノ倒しという奴だ。


四天王国の王様が英雄王に捕まった。

もうしょうがない。

戦争なんかしたくなかったけど

行くしかない。

やるしかない。

やりたくなくても、やるしかない。


そんなドミノ倒し。


なんていうか彼女が如何に

追い詰められた存在なのかは

彼女のその台詞と、後ろの5000騎に満たない

やる気にイマイチ欠ける軍勢を見れば分かる。

緊急で進軍してきたのは分かるが…

まぁ、防寒具を付けてガタガタ震えながら

魔王に従って、付いてきているその軍勢。

遠目から見ても、ゴホゴホ咳き込んでは

風邪引いてますって、その様子で一発で分かる。


あー、この世界で最強のモンスターって

「冬将軍」だったんかー。

そうかー「冬将軍」だったんかー。

そうかー。

そうなー。

インフルエンザ怖いもんなー。


冬なんか普通は戦争せんもんなー。

人族の国だって。


そんな感じで、病気なんだけど

しゃーねーなーって感じで、付いてきた雰囲気の軍勢。

それだけで彼女に

かなり信用がないのが分かってしまう。


僕は、ハーと溜息をついた。


「あーー、まー、

 こっちも人族の兵士の犠牲を

 出したく無いですからねー

 お互い、大将同士の一騎打ちで

 話が付くんなら…

 それが一番ですよねー」


と僕は、相手が魔王だというのに

言葉も適当に、そう返した。

その適当な返事に、ムッとした顔をしたが

彼女は気丈な表情のままで、言葉を続けた。


「今世の英雄王よ、寛大な心、痛みいる。

 100年前の人魔大戦においては

 王と兵の壮絶な死戦になったと聞いている。

 故に、我は互いに、無益な血を流すを好まず。

 なれば、言葉通り、

 汝、英雄王と、我、魔王の

 一騎打ちにて、勝敗を決めよう!」


そう言って彼女は、兵を後ろに下がらせて

彼女だけが1人、前に出てきた。

そんな彼女の為に、魔王の単騎かけ等トンデモナと

代わりに命を張ろうと前に出ようとする者は無し。

それよりも病気を押して出てきて、

そこに立ってるだけで精一杯という様相だった。


魔王なのに。


魔王様なのに!


そっちの切り札の魔王様なのに!!


それが彼女の人望を示していた。

それに僕は憐憫の情しか沸かなかった。


「なれど英雄王よ!

 この勝負にて1つだけ要求がある!」


僕の方に近付きながら

彼女はそう言ってきた。


「なんでしょうか?」


僕は、一生懸命な彼女なのに

同じ様に一生懸命に相手をする事が出来なかった。

それが益々、彼女の心を苦しめたのだろう。


「我等が混沌の神の信託により

 英雄王よ、

 汝は、新しい病気の薬を

 開発していると聞き及んでいる。

 我との一騎打ちで、我が勝利した時、

 汝の命を取らぬ代わりに

 汝が作りだした、その薬を頂きたい!

 それで如何か!」


そう、なんとか気丈に叫ぶ彼女。


あーー見えたー。

あーー流れ見えた-。

見えた-。

これで全部見えたー。


パンデミックしてんやー。

今の魔族の国家群。


ペストを防衛できずに

パンデミックしてんやー

あっちの世界の一四世紀みたいにー。


あーー

そうなーー

ジキスムントで流行したの春から夏で

なんとかカールスントの動員で

事なきを得たけれど、

その後も、恒常的な魔法治療での

潰し潰しで防疫したモンなー。

それが、なんかの拍子で向こうに渡って行って

魔族の国でパンデミック…


ああ、あるかもナー。


ネズミさえ潜り込めば、起きる事だしナー。


「なんてこったい

 こんな方法論しかないんかい…

 ハァ…これ勝手に決めたら

 後で嫁にボロクソに殴られるんだろうなぁ…」


僕はそう言って項垂れた。


『いや、過去の人魔大戦みたいに

 あの子をスプラッタに

 切り刻んでもいいんよ?』


と、のほほんと言ってくる神剣。

その言葉に僕は呆れた。

そんな事が絶対にできない人間だと分かって

コイツは煽ってやがる。


「いや、本当に、

 何で教えてくれんかったん…これ…」


僕は神剣に愚痴った。


『いや、教えていたからって

 どうにかなったんか?』


神剣は真面目に返してきた。


「そうなーーー

 そりゃ、そうなーー」


僕は、確かにその通りな返事に項垂れた。


しかし彼女はどんどんと近付いてくる。

そう対決は目の前だ。


だが!


だが!!


えーー、

嫁のパンチが怖いから、切るの?あれを?

あんな、もう、ムラムラ来るのを

スプラッタに切るの?

えーーーー。


僕はその…


ビキニばーん!の悪魔っ娘コスチュームの

スタイル抜群、容姿も幼さの残る可愛さ抜群

悪魔っ娘系の、あの巻いてる角が付いてる

もう、ドストライクですわっ!っていう

『美少女魔王様』に、

哀しいほど溜息をつくしかなかった。


まぁうん。


そうな。


魔王という文字や音節で、

それこそド○クエみたいなアレを

安直にイメージした僕が悪い。


それ先入観。


また先入観。


魔族と聞いてデーモンを想像し

魔王と聞いてゾー○みたいなのを連想した。

それが今回の最大の敗因。


そうですよ。

魔王様が超絶美少女で

何で駄目なんですか?


こんなチートな剣を手に入れれば、

そりゃ誰だって

英雄王にも魔王にもなれますわ。


美少女悪魔っ娘が、魔剣の主になったら

そりゃ、魔王にも成れますわ。


僕がそうなんだから、

向こうも結局それなわけだ。


そこまでいは、いい。

そこまでは、まぁ理解しよう。


無い事じゃない。


それを想定できなかっただけだ。


しかし、

どーにも解せんのは…その格好だな…。


何で、その露出度なん?


それはポリシーか何かなん?


これ、一騎打ちって、

一騎打ちの内容はこの手の剣で勝負するん?


それとも違う事で勝負するん?


それ勝負服か何か?


いや、もうむしろ、夜の嫁が着てくる

夜の勝負服そのまんまやけど…


なんでその格好で悠然と、やってこれるん?


僕の股間の赤い彗星の方が

よっぽど勝負したがってるんだけど

どういう事なん?


これ切るん?


この美少女の悪魔っ娘を切るん?


マジで?


マジか?


いやん。


切るより、突く方がいいな。


ネオジオンの総帥で。


そっちの方が凄く良い。


そうしたい。


『いや、あの妄想はいいんで

 どうするかだけ、

 さっさと決めてくんない?

 もう勝負始まっちゃうし…』


そう神剣が促してくる。


そうだな。もう腹決めるしかないな…。


嫁のパンチは怖いけど、

こんな素晴らしいモノを切るなんて

とんでもない。


『それを切り捨てるなんて、とんでもない!』


これは愛でるモノですよ、ええ。


これは絶対に愛でるモンですよ、ええ。


こんな露出度で、平然と人前に立つ

美少女魔王様ならねぇ…


そう思って

なので意を決して僕は言うしかなかった。


「こちらも、

 僕が勝ったら、

 貴方の命を取らぬ変わりに、貴方に求める条件がある。

 その条件を聞いて貰いたい。

 何より、そちら側が、

 一方的に勝利後の条件を出すのは

 一騎打ちの勝負に対して

 礼を失していると思わないか?

 魔王陛下よ!」


と僕は言った。

その言葉に眉をひそめ、彼女は口を開く。


「そ、そうだな…

 こちら側が一方的に条件を出すのは

 契約の精神に反しているな!

 我が負ける事など有り得なぬが

 これは我と汝の、神聖なる戦いだ!

 汝が勝ったときの、汝の望みを言うが良い!

 英雄王よ!」


と、乗ってきた美少女魔王。

それを聞いて、心の中でニヤリとする僕。

きっとそれは、

この目の前の悪魔っ娘以上の

(よこしま)な悪魔の心だったに違いない。


いや、チョロいわ、この子。

きっと、ちょろインだ、この子。

見た目も15、16歳っぽいし…。

頑張って、一生懸命、魔王してますって感じ。

これはもう畳みかけないと!

なので僕は奸計に走った。


「よし、我が条件はこれだ。

 この一騎打ち、我が勝ったら…

 汝を我の嫁に貰う!!

 そして汝の国の国王に、我が成る!

 魔族の国をまるまる全て貰う。

 それで如何か!」


と僕は博打に出た。


「な、何だと!!」


流石にその要求には、美少女魔王も、敵の魔族軍も

挙げ句には、ログルトルア要塞にて様子を伺っていた

トーディ国の兵士達もドン引きした。


「ば、馬鹿な事を言うな!

 そんな条件が飲めるか!!」


当然魔王はそう言う。

そりゃそうだ。

しかし、こっからが言いくるめ技能の本領発揮だ。

よし、炸裂しろ! セージ技能『言いくるめ』!


言いくるめ判定ロール

2d6+11 → 6+11 → 17


出目低いな…

セージレベル8と知力ボーナス+3だけで

数値にした感じだの…

まぁそれでも17だ、

『どんな達人でも失敗の可能性が付きまとう

 プロ程度では成功を期待しない方が良い』

というレベルの言いくるめをした。


よし、それなら

ちょろイン相手なら十分だろう。


「嫌なら結構。

 一騎打ちの話も、薬の話も無しだ。

 このまま城砦に帰って、引き籠もらさせて貰う。

 恐らく汝の国は、

 疫病で、大災害が起きているのであろう?

 その汝等の国の国民が死に絶えるのを

 この城砦で籠城戦を繰り広げて待っていれば

 我々には十分である。

 万が一の、汝等の疫病の流入は

 我等の薬で防いで、我々兵士の命を守る。

 その様に、我等は守りに徹すれば、

 今世の人魔大戦は、

 こちら側が多大な犠牲を払わずに

 そちらの自滅で勝てる戦のハズだ。

 ならば、一騎打ちを受ける理由は

 こちらには本来は無い。

 なのに、こちらは、

 そのような有利に勝てる条件を捨てて

 そちらに有利になる条件に乗るのだ。

 一騎打ちという、逆転劇にな。

 なれば死に絶える国であろうと

 それを1つでもかけて貰わねば、

 我は、ワリが合わぬ。

 違うか?魔王陛下?」


と発動する言いくるめ。


「なっ!何故、貴様が我等の国情を

 そこまで知っているのか!」


と返す美少女魔王。

あーあー、やっぱ、ちょろインだーー!

いわゆるハッタリの鎌かけって奴なのに

それで釣れたー。

全部釣れたー。

予想通りの、パンデミック起きてるー。

向こうは全体的に後がないわけだー。

だから無理にでも5000ぐらいの軍勢で

病気持ちでも駆けつけて、

信頼ない魔王様に

”助けて!頑張って!”

なんだー

あーーこの構図、よくわかったわー。

なんかそれ分かると泣けてくるなー

この萌え魔王様ー

じゃぁもっと畳みかけるかー。


「魔族の方々は

 我等、人族の情報力を侮りすぎだ。

 我等が持つ

 遠見の水晶という魔導道具を

 我等は我等の研究で改造強化し

 それで汝等の国を

 我等はずっと監視を続けて来たのだ。

 故に、汝等の国の国情は我等に筒抜けである。

 これは人族勝利の潜在一隅の機会。

 今こそ、魔族を殲滅する好機。

 それを放棄してまで

 そちらが有利な一騎打ちを

 受けるというのだ。

 一打逆転の機会を与える以上

 汝の命を取らぬなら

 汝の一生と、汝の納める国を

 我に捧げよ。

 それが王の王たる覚悟である!」


はい2発目の嘘、ぶっぱなしー!

まぁ遠見の水晶の改良研究は本当だけど

魔族の国まで見てねーよ。

シムシティやってて、

こっちの事だけで精一杯でしたわ!

セージ判定すらしてませんでしたわ!

でもこう言えば、ちょろインどころか

後ろの魔族まで言いくるめれるだろ?


で、じっと後ろの様子を見てみる。


ほら、動揺して、

騎馬の足並みが悪くなってきた。


籠城戦されたらヤバイって、

その動きだけで言ってる様なモノ。


ははは、見えて来たぞ!

勝利の方程式!!


「ぐ…

 そ、そうか…

 なるほど、英雄王はそこまで分かっていて

 我との一騎打ちの申し出を受けてくれるのだな。

 ふ、それは慢心というモノだが

 なれば有り難く、

 その条件で受けようではないか。

 我が負けなければ良いだけの事。

 勝てばいい、そう、それだけだ…」


そう言って、

むしろ自分を説得するかの様に呟いては、

こっちの条件に乗る美少女魔王。

凄く悲壮な表情で歩いてくる。


おっしゃ、乗せた。


完全に言いくるめの罠に乗せた!

問題は、本当に一騎打ちにおいて

あの魔剣をどうするかだ。

さて、問題はそこなのだが…。


『いや、良くやった英雄王。

 これで勝ちだ。

 この条件に乗せれるかどうかが

 勝敗を決める分かれ目だった。』


その時、神剣がそう言ってきた。


「ん?

 ど、どういう事だ?」


その神剣の言葉に、僕は思わずどもる。


『これから、私と魔剣で、死闘を演じる事にする。

 そしてお前達二人は、神剣と魔剣を失って丸裸。

 するとお前達は

 お前達の持つ、自分のスキルのみで戦う事になる。

 後は、お前が自分の力でなんとかしろ。

 お前がその力で、あの子を殺すのなら、

 それも仕方ない。

 全てはお前の心次第だ。

 ここから先は、チートを失っての裸の勝負だ

 だから、どうしたいのかは、お前が決めろ』


神剣はそう言った。


「おい…

 お前…まさか魔剣とグルだったんか?」


その神剣の言葉に呆然となる僕。


『グルと言えばグルかな…

 前に言ったろう?

 ”異世界転生なんて無茶をしているのだ”と。

 私達は、ギリギリの事をしているのだ。

 なら、私も魔剣もすでに吹っ切れて

 この潜在一隅のチャンスに

 全てを賭けていたんだ。

 だから、お前の心に全てを任せる。

 お前は私のチートを捨て

 そして、お前自身の力のみで

 本当の英雄になれ…』


神剣はそう言って笑った。

その言葉に僕は面くらい、

同じ様に笑うしかなかった。


そうか。

そうだったのか。

この戦いは、そういう戦いだったのか。

僕がチートを捨てられるかどうか…。

そういう戦いだったのか…。

それが分かって、僕は笑った。


そして僕らは、お互いに大地に下り

歩いて近付いた。


剣で一騎打ちをかけるに

十分な距離まで

歩いて近付いていく。


しかし、魔王は蒼白な顔をしている。


ああ、なんとなく分かる。


自信がないんだ。


昔のセルトが思い出せるからこそ

今なら、それが分かる。


魔剣の重責に怯え、自分にそれが出来るのか

それが分からず震えている。


目の前の彼女はきっと昔の僕だった。


それが、たったそれだけで分かった。


まぁそれはいんだけど…


魔剣に温度的にも守られているとは言え

やっぱりその、素晴らしいビキニ姿は

なんとかならんのか…


蒼白に怯えているのに

肌の露出の塊の

そのアーマーにもなってない布ビキニとか、

いかにも『悪魔っ娘』です!

って衣装はなんとかならんのか…


もう、別の剣の方が鞘から出たくて

ウズウズしてるんすけど…


むしろ鞘に収まりたいというべきか。


そんなビクビクしながら、

それでもポリシーみたいに

露出度の塊みたいな格好で対峙されると

色んなモンが猛るわ!


困るナー。

それはそれで。


そして僕達は、

互いの剣で激突できるまでの

距離に歩み寄った。

そしてお互いの顔を見つめる。

魔王は不意にそこで口を開いた。


「しかし英雄王よ、

 我との一騎打ちの申し出、

 受けてくれて有り難く思う。

 前世でも、その前でも、

 人魔大戦では

 おびただしい人族と魔族の死者が出たという。

 それが、今世は我等が王の一騎打ちで

 勝敗が決するというのだ。

 我が愛する魔族が、無駄に死ぬ事もなく

 我等の2者が勝敗を決すれば

 それで良いというのだ。

 それは、素晴らしい事ではないだろうか? 

 まったく人魔大戦など、

 無益な戦を昔から続けたモノだな、我等は…

 人魔大戦など、

 ずっと、王と王だけで勝負を決するとか

 こうで、あり続ければ良いのにな…」


そう言ってその時ばっかりは

美少女魔王は満面の笑みで僕に笑った。


その笑顔にクリティカルヒットになる僕。


なん、その、先制攻撃!!


意図的な言いくるめではなく、

素でそれ言ってきてるよ彼女。


ああ、この子、戦争嫌だったんだ。

ああ、この子、魔族の民が

”やらなければいけない先入観の人魔大戦”で、

死んでいくのが嫌だったんだ…。


彼女は、本当に、昔の僕、怯え続けたセルトが

そのまま大きくなった子なんだ…。


彼女もまたもう一人の僕なんだ…。


なら、こんな子絶対に切れない。


きっと負けるの覚悟で、そこに立ってる。

そんな健気な美少女なんか、絶対に切れない。


これはもう、ウチの嫁ズの一員にぶっ込んで

ハーレムメンバーに入れないと駄目!

絶対に駄目!


No、KILL、美少女、In the World!!


Let’s Love、美少女、for the World!!


なので僕は命じるしかなかった。

その場のノリと勢いで、厨二病の様に荘厳に。


「神剣アーデルトよ、剣の主が汝に命じる。

 あの世界が最も愛さねばならぬ

 可憐な魂を生かす為

 かの魔剣ディスガイアを無力化せよ。

 汝がそれを達すれば、

 我はあの孤独な魔王を

 この世界から救い出して見せよう!」


そう言って僕は神剣を掲げた。

その言葉に神剣が輝く。


『御意。

 我が何千年も求め続けた、真の我の剣の主よ。

 双対の剣、闇神剣ディスガイアを我は止め

 汝の道を切り開こう。

 主よ、我は切に願い給う。

 世界の中で最も孤独なる少女を、

 その英知と勇気を以て、救い給え…』


そう言うや、神剣は僕の手の中から飛び出した。

と同時に、彼女の魔剣も彼女の手を離れ

神剣に向かって飛び出した。


そして


『やーディスガイア君、久しぶりだねー』


『やーアーデルト君、100年ぶりだねー』


とか軽ーい挨拶を交わした後

ぱきーんぱきーんと軽く剣をぶつけあう。


「いや、ちょっと、それ、

 わざとらしすぎる」


そのいい加減に戦いだした2つの剣の様に

思わず僕はツッコミを入れた。


『ああ、そうか…周りの魔族や人族に

 ”っぽく”見える様に、

 ビビらせないと駄目か…』


『せやな…あの坊主に

 全部任せればええと思ってたけど

 演出を派手にせんと、

 周囲に示しがつかんか…』


『じゃぁちょっと、軽くやるか?闇神剣』


『そやな、わしら双対剣。

 幾らやっても折れる事の無い双対の剣。

 なら光神剣よ。

 光神と闇神の力の残滓。

 創世の力の何たるかを、

 この後世の子らに示すとするか』


そう互いが言い合った後、その天空の上では

2つの剣がお互いに激突しあい、

その天空に大爆発が起き始めた。


うぉう! なんじゃあれは!!


一撃、一撃で、山1つ軽くぶっ壊れるくらいの

大爆発じゃねーか!!


僕の持ってた剣、あんな力を秘めてたん!?


「ああ!!私の魔剣様!!!」


そんな自分の手から離れた魔剣が、

天空で壮絶な大爆発の激突を始めたのを見て

驚愕する魔王。


それは魔王だけではなく、

その一騎打ちを遠くから眺めていた

人族と魔族ですら、

神剣と魔剣が始めた壮絶な激突と爆発の光景に、

ガタガタと震えていた様だった。


いや、うん、そうな。


ちょっと、アレはチート通り過ぎてるわ…。


もう人が扱う力の範囲、完全に越えてる。


あんなんに普通の人が

立ち向かったら死ぬしかないわって

やれと言った僕ですら、腰が引ける。


なんやねん、この神剣と魔剣って…。


まぁともかく、

そんなその場に居る者全てを恐怖させる、

神剣達の三文芝居によって

僕と彼女は、ようやく丸裸で対峙した。


いや、僕は、英雄王の鎧とか

古くから代々伝ってる

魔法の白い鎧でガチガチに固めてますけれど

相手は文字通り、ビキニ布一枚むけば

そのまま裸になってしまうぐらいの丸裸。


なんこの圧倒的なまでの光景。

これじゃ、どっちが魔王かわからんくらいに

一方的な光景。


でも僕は言いくるめを発動する。


「さぁ、これで互いに丸裸だ…

 あんなチートな剣を無くして

 ただ己の力のみで戦わなければならなくなった

 どうする魔王陛下?」


僕はそう言って詰め寄った。

その言葉で彼女は自分が圧倒的に不利なのを悟り

その場にうずくまる。


「ど、どうしてこんな事に!!」


彼女は突然の

自分の絶対的な力の消失に震えていた。

それを僕は見つめて、ただ無言になる。

真っ青になって彼女は僕を見上げた。

僕は何も言わずに、彼女を見下ろす。


防具でガチガチに固めた僕と、

丸腰丸裸の彼女。

誰がどう見ても

それで勝敗は決していた。


「こんなに簡単に…

 私の負けという事か…

 魔剣の力を消失するなんて

 考えもしなかった…

 ああ、こんな事になるなら、

 どうして私は、

 自分の力を鍛えて来なかったのだろう…」


そう言って彼女は雪降り

僅かに雪が積もっている

大地にヘタレ込む。

その言葉に僕は胸を打たれた。


そう、僕の中にいつもあった恐怖感。


それを克服する為に、

自分でチート剣を捨てて自分の力を鍛えた。

その”捨てるという勇気”

それが、この決定的な差を生んでいた。


それは本当に”僅か”な事だった。

その僅かな勇気が、

でも一番大事な事だったらしい。


「今世の人魔大戦は、

 我等の負けという事らしいな…

 ははは…やはり、

 下々に言われてきた通りか。

 女の魔王で本当に大丈夫なのか?

 いざという時に、

 何もできぬのではないか?

 そう陰口を叩かれながら…

 それでも私の前では、

 魔王様、魔王様と

 人類の切り札として持てはやす…

 その結果がこの様だ…

 正直に、悔しいよ英雄王…」


そう言って魔王はその瞳に涙を浮かべていた。

でも彼女は気丈に僕を睨む。


「しかし、英雄王!!

 貴方の圧倒的に有利な立場でも

 私の一騎打ちの要求を受け入れた寛大な心に

 私の心の底からの

 勝手な願いを聞いてはくれまいか?」


彼女はそう言ってきた。


「なんだ?

 君の願いとは?」


僕は彼女の言葉にそう尋ねる。


「汝は私を切り捨てて、

 今世の人魔大戦の勝者になればいい。

 でもその代わりに、英雄王…

 お願いがあるのだ…

 そう、貴方が作っているという…

 貴方が作っていると

 混沌の神からの啓示があった

 新しい薬とやらで…

 私の命と引き替えに

 我等、魔族の民の命を救ってはくれまいか?

 無理で我が儘な事を言っているのは分かっている。

 こんな何百年も殺し合ってきた我等と汝等だ。

 そんな事は無理だと分かっている。

 それでも、しかし、それでも、

 貴方に人の心が少しでもあるのなら…

 人族と魔族の怨恨も越えて

 ただ病で死に至る、我等が魔族の子供らを

 救ってやってはくれまいか?」


そう言って彼女は

ポロポロと泣きながら僕に嘆願した。

その彼女の言葉に、僕は衝撃を受ける。


ああ、彼女は王だった。


そこに居たただ泣いているだけの少女は

しかし、自分が殺されるその最後の瞬間まで

本当の王の心を僕に見せていた。


そして、僕のセルトの記憶が蘇る。


「それでも僕はこの国が…

 僕という、セルト・ファーレという人間を

 必要としないみんなでも

 それでもやっぱり好きだから…

 みんなが魔族に殺されるのを

 何も出来ずに見たくはないから!!

 だから、僕を救える

 そして、世界を救える

 僕よりも心を強い人を

 僕の代わりに召喚して下さい!!

 神剣様!!」


それを思い出して

そして彼女のその言葉を聞いて

そして僕は分かった。


僕はあの時…

灰色の世界に見えていたあの時…

それでも”ちっぽけな勇気”を出していたのだ。


だからその”ちっぽけな勇気”に神剣が応え

もう一人の僕を異世界転生させてくれたのだ。

それを思って僕の胸は熱くなる。


そして僕は予備に装備していた

腰の短剣を取りだし、それをおもむろに

彼女の前に投げた。


彼女は目の前に投げられた

その短剣を見て、そして怯える。


その彼女に僕は呟いた。


「チャンスをやろう、魔王陛下…

 もし貴方が、真に貴方の魔族の民を

 愛しているのなら、

 その短剣を持って、その場から立ち上がり

 その短剣で僕を突き刺してみせなさい。

 そんな貴方の勇気を、僕に見せて欲しい。

 貴方の言葉が、

 偽りのない心の中からの言葉なら

 きっと出来るはずだ…」


僕は彼女にそう言った。

その言葉に、

目を白黒させて僕を見上げる魔王。


「どういう事だ!

 私にお前を突き刺せとは、どういう意味だ!」


彼女はその短剣を手にし、

しかし僕の意図が分からず、ただ震える。


「勇気とは、

 泣いているその場から立ち上がり、

 そして己の恐怖と戦うという事だ。

 民を救う薬が欲しいのなら、

 相手を本当に刺し殺してでも

 奪ってやるという気迫を見せなさい。

 魔王陛下。

 それすら出来ない、

 勇気無き、ただの懇願者でいるのなら

 貴方に民を救う資格も、

 薬を嘆願する資格も

 無いと僕には思える」


僕はそう言って彼女を緩く煽った。

その言葉にカッとなる魔王。


「ば、馬鹿にしてっ!!!」


その煽りに激高し、彼女は短剣を抜いて

それをへっぴり腰で構え、僕に突撃してくる。





GM:

「さぁ肝心のシーンやで。

 ここでロールをミスるなよ主人公」

セルト:

「おいちょっと待て、こんなシーンで

 ダイスロールに入るんかよ!!

 ここは普通に、文章でいけばええやん!

 ダイスがピンゾロ振ったら

 どうすんねん!」

GM:

「お前も、サイコロの神に打ち勝つ勇気を持ってみろや!

 今までの話中や、ロッキーやって鍛えてきたんや。

 その自分の累積経験点を信じてみろや。

 今なら鍛えたスキルで、出来ない事は無いハズだ」

セルト:

「こんなTRPGの駄トークで

 微妙に熱い台詞入れてくんなよGM。

 わかったよ。やるよ!やりますよ!

 まず『パリィ』ロールで交わします」

GM:

「おーけ。回避専念『パリィ』で回避力+4

 それでロールしてくれ」


セルト

ファイターレベル7

器用血ボーナス+2

俊敏値ボーナス+3


回避ロール

セルト

2d6+7+3+4 = 2d6+14 

  => 9+14 = 23

ミルフィーユ

2d6+2+1 = 2d6+3 => 3+3 =6

23 > 6

回避成功


GM:

「セルトは華麗に魔王姫の短剣での突撃を交わし

 その剣をその身に届かさせる事さえなかった。

 そしてセルト側の行動になる」

セルト:

「『ディザーム』

 魔王姫の武器を受け止めて

 取り上げるロールをします」

GM:

「『ディザーム』武器落としロール了解。

 武器の取り上げなんで

 -4のペナルティとします。

 さぁ見せつけてよね!」

セルト:

「こんな大事なのを

 サイコロなんぞに

 まかせくさって…」

GM:

「積み重ねたモノは自分を裏切らないのを

 サイコロに勝って見せてくれよう英雄王」

セルト:

「よく言うwww」


攻撃:特殊攻撃『ディザーム』ロール

セルト

2d6+7+2-4=2d6+5 => 4+5 = 9

ミルフィーユ

2d6;2+1 = 2d6+3 => 6+3 = 9



9=9!!



GM:

「何と、同値とな!!

 これが、サイコロの神の信託か!!

 これマジでサイコロの結果ですから!

 マジでサイコロの結果ですから!

 失敗したら、

 違うフォロー考えてましたんで…

 ガチで、サイコロの神の信託ですから!」

セルト:

「同値!! 同値ですか!!」

GM:

「この子、キャラシート作ったら

 びっくりする程、能力値へっぽこになって

 だからこっちの失敗無いだろう思ってたのに

 お前の、出目4ってなんやねん!!」

セルト:

「だからサイコロの神なんぞに任せると

 そうなるんだろうが!!

 あっちも出目6で、期待値以下よ?

 これ、どんなへっぽこな、やり合いなん…」

GM:

「まぁでも、-4で出目4なんて数字をして

 サイコロの神の信託は同値なんだから

 攻撃側有利を採用してディザーム成功。

 セルトは、魔王姫の武器の取り上げに成功した。

 に、しようか…

 はーー、怖かった…

 ここの部分をサイコロに任せたのが

 一番怖かった…」

セルト:

「だから、なんでこんな重要なシーン

 サイコロの神に任せたし…」

GM:

「積み重ねた実力差は、

 サイコロの神の気まぐれにも負けないという

 これまでの文章での積み重ねに

 賭けてみたかったんや。

 文章で都合の良いシーンなんか

 いくらでも書けるからな!」

セルト:

「左様ですか…」






それは互いに見栄えの良い戦いではなかった。


僕は魔王の短剣の突撃を体で受け止め

その捕獲に華奢な美少女の突撃は受け止められる。

受け止めた彼女の突撃と交わした短剣を持つ手を

左手で掴もうとすると、

それが不器用な結果となり、彼女の腕を掴むはずが、

僕は短剣の刃をその手で握ってしまった。

自分の短剣の刃を掴み、その刃に手を切る僕。

だが、そんな不器用な結果だったが

確実に僕は魔王姫の短剣をこの手で止めた。


「ひっ!!」


魔王は自分の突撃が受け止められて

そして彼女の刃が僕に握られ

それが僕の左手を切り裂いた事に悲鳴を上げた。

握った刃の傷から僕の血が流れ出す。

切り傷からこぼれ落ちる赤い血は、

大地に積もった雪に垂れ落ち、

点々と白い床を鮮やかな赤に染めた。


痛くないと言えば嘘だった。

それでも、

それよりもっと大事なモノが目の前にあった。


魔王はその光景に怯え

僕の短剣をその手から落とす。


そして僕は自分の左の手の平を見る。

薄い甲冑の手袋なので

ミスリル銀の鋭い刃で割かれたが故に

甲冑の裂け目から僕の血が流れていた。


その血を見て、僕はその左手をそっと

魔王の頬に当て、

彼女の頬に僕の血をなすりつけた。


「ひっ!ひっぃっ!!」


魔王は僕の左手の暖かさと

そこから自分に擦られる僕の血の感触に

怯えるしかなかった。


「この溢れ出す僕の血は

 君の勇気の証明だ。

 ただ、為す術も無く、

 座って泣いてるだけの君じゃない。

 立ち上がって、相手に立ち向かう

 その勇気が、この血を僕に流させた…

 君は、勇気無き臆病者じゃない…

 この血が、それを証明している

 君は正に、勇気ある者、”勇者”だよ…」


僕は、彼女の頬に僕の血をなすりつけ

優しくそう囁いた。

魔王は自分の頬に

僕の血が滴っているのを感じて

それに怯えていた。


「い、痛くは無いのか!英雄王!

 血が!血が流れているんだぞ!!」


魔王は僕の手を取り、

そして取った手にまぶれる僕の血を見て

更に震えていた。


「痛いよ…すげぇ痛いよ…

 こんなに血が出ているんだぜ?

 痛いに決まってるだろう?」


そう言って僕は笑う。

僕の血は魔王の頬から滴れ落ち

どんどん首から胸へと流れていき

その全裸同然のビキニ服の肢体を

伝わっていった。

一見すると、彼女が僕に切られて

血を流している様にも見えた。


「どうして、こんな事をした!

 何で自分を私に刺させようとしたんだ!」


魔王はそんな僕の血で

体が染められていく事に

ただ恐怖するしかなかった。


「僕がこの短剣で君を切っていれば

 今、君の体に流れている血は

 僕の血ではなく、君の血になっていただろう。

 この血が流れている今の光景は

 僕の血ではなく、君の血となり

 君は己の血を流して死んでいただろう」


そう僕は囁く。


「そうだ!私は弱い!

 魔剣の助けがなければ

 戦う事もできない、出来損ないの魔王だ!

 だからお前に殺される…

 そう思っていたのに…

 そう覚悟していたのに…

 どうして、血を流しているのは私ではなく

 お前なんだ! 英雄王!!」


魔王は涙を浮かべながらそう叫ぶ。


「お前、可愛いから切りたくねぇんだよ!

 その男心、分かれや!!

 このムラムラ魔王が!!」


僕は思わずそう叫んだ。


「な、なんだと!!」


そのシャウトに腰が引ける魔王。


「こんな可愛い子を

 こんなに血まみれにする?

 馬鹿を仰るな。

 ご冗談でしょうファイマンさん?

 血が流れないといけないのなら

 僕の血が、代わりになれば十分だ。

 この血が君の勝利でいい。

 だからこの勇気に敬意を評して

 魔族に僕らの薬を譲ろう。

 その代償に、君は僕の嫁になれ。

 それでこの戦争は終わりだ」


僕はそう言ってその可愛い魔王を抱きしめた。


「な、何を言っている!!

 施しか!

 こんな弱い私を哀れに思って

 施しのつもりか!!

 馬鹿にして!!

 みんなが私を馬鹿にして!!

 それも、私にお前の嫁になれだと!!

 私は魔王だぞ!!

 何を考えているんだ英雄王!!

 お前と私は不倶戴天の敵なんだぞ!!」


魔王は泣きながら

僕の胸の中で暴れて叫んだ。


「誰がそんな事を決めた!!

 不倶戴天の敵だと!!

 どうして不倶戴天の敵だと思い込む!?

 どうして誰もそれを疑わない!!

 もしそれを、この世界の創世の神が

 決めたというなら

 なら、そんなルールは

 これから僕がぶっ壊してやんよ!!

 僕は自由教の教祖なんだ!!

 そんな、意味不明の

 この世界のルールなんて

 糞食らえってんだ!!

 この自由を求める気持ちが

 過去のルールなんか書き換えてやる!!

 だから、君は僕の嫁になれ!!

 そこからが、新しいルールの出発点だ!」


僕は魔王を抱きしめてそう言った。


「何を言っているんだ英雄王!

 世界のルールを変えるだと!!

 そんな事が出来ると思っているのか!!

 馬鹿にして!

 馬鹿にして!!

 私が無力だから、そんな事を言って

 私の心を弄んでいるんだろう!!

 お前に私の、何が分かるっていうんだ!!

 誰も私を分からない!!

 誰も私を分かってくれないというのに!!」


魔王は泣き叫びながら、

僕の胸をボコスカ殴る。

その言葉にカチーンと来る僕。


「お前の事なんか、

 何でも分かるわボケが!!!!」


僕はそうシャウトした。


「何故だ!!」


魔王は僕の不思議な言葉に驚愕した。


「不安だったんだろう?

 ずっと不安だったんだろう?

 あんなチートな剣を生まれながらに渡されて

 ”貴方は人族に対する魔族の切り札ですから”

 とか、そんなおべんちゃらをずっと言われて

 誰も君の事を見ずに

 ずっと戦争の兵器として崇められ続けた!

 誰も自分を支えてくれもせずに

 ずっと、誰からも支えられるように求められ

 でも、影では、なんであんな頼りないのが

 今世の魔王なんだとか言われて

 それさえ、魔剣の力で聞こえてきて!

 ずっと自分の部屋で泣いていた!

 ずっと誰かに助けて欲しかった!!

 そうだったんじゃないのかよ!!」


僕はそう魔王に言って詰め寄った。


「どうしてだ!

 どうしてお前は、

 私の事がそんなに分かるんだ!!」


魔王はその僕の言葉が

全部当たっている事に驚愕していた。

それが分かって僕も思わず泣き始めた。

僕達は二人で抱き合いながら泣いていた。


「分かるに決まってるだろ!!

 僕だってあの神剣持たされて

 同じ気持ちでずっと生きてきたんだ!!

 同じ事、僕もされて、生きてきたんだよ!!

 誰も僕を僕として見てくれなかった!!

 誰も僕という僕を、感じてくれなかった!!

 僕は君と同じ、戦争の兵器だったんだ!!

 だから、この世界で

 僕ほど君が、分かる奴なんか居るものか!!」


そう言って感極まって僕は魔王を

ギュッと抱きしめる。


「何でだ!英雄王!!

 伝え聞く話では、

 お前は人族の国を改革し

 人族の誰からも愛されていると聞いた!

 正に、英雄の王だと聞いていたんだぞ!!

 それが、なんで私なんかと同じだという!

 私のように、誰からも信用されず

 ただ、女だから駄目だろうと諦められ

 そして聞こえてくる

 英雄王の噂に魔族のみんなが怯え

 私もずっと、お前に怯えていたというのに!!

 そんなお前が、

 どうして私と同じだというんだ!」


魔王は僕の強い抱擁にボロボロと涙を流し

そして同じ様に強く抱きしめ合う。


「君と僕の差は、

 こんな困難でしかない生い立ちの中で

 支えてくれる誰かが

 たった1人でも居たかどうかって

 それだけのちっぽけな差なんだ!

 たったそれだけの

 ちっぽけな差なんだよ!

 でも、それだけの差が

 同じ苦しみを背負っても

 こんな違う結果になったんだ!!」


僕はそう強く叫ぶしなかった。


「ただ1人、支えてくれる人が居れば

 私も貴方の様になれたのか?

 そんな人が居れば

 私も、もっと強い私に変われたのか!!」


魔王はそう聞いてくる。


「ああそうさ!

 きっとそうに違いない!」


僕は魔王を抱きしめてそう言った。

僕は叫んでそう言った。

僕にとってのそれは、神剣アーデルトだった。

それまでは、そう思っていた。

だが今は違う。

今は、それは違うと思えた。

僕を支えた、たった1人の人。

セルト・ファーレを支えた、たった1人の人。

それは、もう一人の僕、石崎良平だった。

今なら、僕はそう分かる。

あのただ、”可哀相じゃないか”と

子供の様に思い”行けば良いだろう?”と

促された時に、

あの世界では”出来なかった自分”を

この世界では”やってみた自分”。

そんな”ちっぽけな勇気”を見せてくれた事が

僕を支えてくれた、たった1人の人だった。

それが分かって僕は、僕の中の二人で泣いた。


「悔しいな…

 とても悔しい…

 私にも、貴方のような

 たった一人でもいい、

 私を支える人が居てくれたなら…

 きっと私も、貴方の様に変われただろうに」


そう言って彼女は

笑顔を浮かべてポロポロ泣く。


「何言ってんだ!!

 世界の誰もが君を支えないというのなら

 それなら僕が、そのたった1人になってやる!

 まだ人生、終わってもないのに簡単に諦めんなよ!

 この世で、僕ほど君を分かれる人間など居るものか!

 だから、僕が君を支える!!

 君という本当の君を見えるのは僕だけだ!!

 これは僕にしか、出来ない事なんだ!!

 だから君は僕の嫁になって

 これから変わるんだよ!!

 本当の君に!!」


言って僕はその愛らしい魔王を強く抱きしめた。

その抱きしめと言葉に魔王はボロボロに泣く。


「お前、絶対に馬鹿だろう!?

 魔王の私を英雄王が支えるだと?

 そんな話、聞いた事がない!!

 そんな話、信じれるわけがない!!」


魔王は僕に抱きしめられながら

そう蕩々と泣いた。


「当たり前だ!!

 そんな新しい英雄物語は

 何処にも、あるわけないだろう!!

 それは、これから僕らが作るんだよ!!

 殺し合うばかりじゃない

 魔王と英雄王が手に手を取って

 人魔戦争を、二人で終わらせていく物語なんて

 そんな世界が初めて聞く英雄物語は

 僕達が作らなきゃ、生まれるわけが無いんだ!!

 物語は最初からあるんじゃない!!

 生きてる僕らが、

 自分達で作っていくんだよ!!」


僕はその雪が積もった白銀の世界で

ただそう叫ぶしかないのだった。



って、書いたけど、魔王と勇者がネンゴロする話って

「まおゆう」で既にあるけどナー


ま、この世界では初めての英雄物語って言う事で

流れ的な台詞と解釈、オナシャス

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