第十九話 どうもコール・ゴッドらしい
来たよ、チート!
これこそチート!
僕は、1人で賢者モードに入っていた。
ベッドの上で1人、天井を見つめる。
嫁達は不満そうだったが、
その嫁達の命が既にかかっているというのだ。
今は、エロい事する気分にもなれない。
その時の僕は、ただの焦燥だった。
「おい、神剣…」
『何だ異世界転生者』
「あの、妙な自由の神とやら…
こっちから会話を繋げる事はできるか?」
僕はそう言った。
『どうしようというんだ?』
剣は尋ねる。
「神霊魔導が使えるようになりたい…」
僕はそう言う。
『ふむ…そう考えるか…
ま、それもアリだな…
ふむ、法令神が不満そうな顔だが…
ここは、アイツの方が
”っぽい”か、いいだろう
もしもーし!』
「え?もしもしで繋がるの!?」
僕はシリアスに決めていたのに
神剣の方がブチ壊した事にズっ転ける。
『おーー、どうよ?
入信考えてくれた?』
すると直ぐに、自由神のそれが語りかけてくる。
「相変わらず軽いな…」
『モットーですから!』
「あの、聞きたい事がある」
『なんだい?』
「アンタの宗教の戒律とかは、どんななんだ?」
『俺の宗派の?』
「ああ」
『自由に生きて』
「は?」
『いや、そのまんま。俺の宗教の教義は
”己の心のままに望むままに
自由に生きればいいじゃないか!”
だよ…』
「え?それ、宗教なの!?」
『まぁ、俺の宗派のな…』
「なんか、宗教的、これしちゃ駄目
あれしちゃ駄目とか…
そんなの無いの!?」
『無いよ…
俺の宗派の教義は、一番簡単で、一番難しいんだ。
自由というのは、”束縛から解き放たれる事”
それは、簡単そうで、しかし難しい。
自分が、心の中で自由と思って無ければ、
それが泥棒したり、人殺しをしたって、
自分で望んでなければ、教義に反した生き方だし
どんなに枷があっても、それが自由と思えば自由だ。
例えば、自分自身で、
”法令神の法令にガチガチに縛られたい”と
”自分で自由に考えるのなら”それも自由だ。』
「なんだそれ!?」
『だから言ってるだろう?
自由というのは、一番簡単で、一番難しいと。
だから、どーも、
”まぁそれも自由と言えば自由かなぁ?”
ってのばっかりが俺の信徒なんだよね…
自由たれとは、望む事の為に束縛を突破する事
だから、お前さんの望む自由であるなら
それが、お前さんの戒律で、俺の教義の戒律だ』
「難しいな…」
『難しいよ…意外に…』
「ともかく、アンタの宗派に入れば
僕は、キュア・ディシーズが使えるのか?」
『まぁ、俺も一応、力の神だし…
使えるよ?』
「なら、入信させてくれないか?
僕は、僕の意志で、せめて自分の嫁くらい
キュア・ディシーズで治癒したい…
だから…」
『ふむ、
嫁を愛する自由、
病気を治したい自由、
何も出来ない自分の束縛からの解放か
いいだろう
入信おっけー、これで君は自由教の一員だ!』
「え?えーーー?
なんか軽いな…」
『スーパーフリーダムがモットーですから!』
「そんなんで、アンタ信者いるの?」
『いやー、
これが結構居るんだナァ…
どーも、微妙に違う気もするんだが
”それも、まぁ…自由かなぁ…”ってのが』
「自分の神様に言うのもなんだけど
大丈夫なんか、アンタの宗派…」
『そうやなぁ…こっちが聞きたいのー
それは……
俺の宗派、これで本当にええんやろか…』
「神様!ちょっと自信無い事いわんでや!!」
『アンタは光神剣なんてチートなモンで
俺と繋いでるからの…
ディビネーションが、
ここまで直に繋がる事って無いんよな…
だから、ちょっとねー、
ディビする時に、
信者に、言いたい事が
上手く伝わらないのがあってなーー
だからついでに、
お前、俺の宗派の教祖やってくんない?』
「は!?」
『うん、今ん所、
お前が一番、俺の言いたい自由を体現してっし
ならお前に、
俺の教義の”自由”を伝道して貰えればってな』
「ちょ、神様… それでいいの!?」
『いや、
これが俺の本当のモットーですから!
神様も自由っての!』
「ちょ、教祖って何すればいいの!?」
『いや、今まで通り、自由に生きて』
「は?」
『お前さんの今まで通りで、オッケー』
「きょ、教祖だったら、何か教えるとか
せんでええんか?」
『お前さん、行動で教えてるじゃん。
自由って何か…
それでええんよ、それで。
感じて伝わればそれでええんや。
兄貴の所みたいに、御高説垂れて
あーだ、こーだと文言唱えるより
人にしてみせて、人の心の魂を解放すればええねん』
「難しいな…あんたの所の教義…」
『そうよ?
自由っていうのは
いざ求め出すと、意外に難しいモンよ?
それを考えていくのが、自由教の醍醐味よ…
みんな、これ分かって欲しいナー』
「えっと、で、キュア・ディシーズって
どれくらい修行すればいいの?」
『あーーあれレベル4なーー
お前さん、経験点使えば直ぐに上がるっしょ?
神霊魔導は上げておいて損無いし…
ただねー、ロクに修行も無くってのも
アレだから…
レベル4分、経験点貰って行くから
キュア・ディシーズだけ
使えるようにしてやんよ。
流石にスペルは覚えてね?
ああ、スペルブックに入れるときは
お前さん素人なんで、文言を言いながら
手でマナ込めしてね?
マナを感じる修行とか、本当はするけど…
まぁそこら辺、俺がサービスでサポートしてやんよ
慣れたら自分で出来るから、じゃ、ファイト!』
「なんつーフリーダムな…」
『まぁモットーですし!』
「でも、神様、ありがとう…」
『ハッハッハ、信者にありがとうって言われたよ!
それも、そういう方向性で…
これ、何百年ぶりなんだろな?』
『おい、法令神、かなり怒ってるから
そろそろ切っていいか?』
神剣がそう言ってくる。
『おう、良い信者ゲットしたんで
俺はこれでいいわ。
じゃぁねーー!頑張ってねーー!!』
そう言って、僕の崇める…崇めるハズの…
自由神は去って行った…
僕、入る宗教、間違えただろうか…
『ま、まぁ…いんじゃない?
お前のしてる、自由に生きてるのは
アイツの教義には沿ってるし…
これが不思議な事に、しかし
法令神の考えにも乗ってるんだよね…
だから法令神が、イライラしてても
何も言わないんだしね…』
そう神剣が言う。
「え?そうなん?」
僕はその言葉に眉をひそめた。
『結局、法と秩序によって世界に平和を、が
法令神の教義なんで、
法と秩序を世界に与えてるお前さんは
法令神的にも、オッケーなんだよな…
法令神は好き勝手に、神様電話繋げる
フリーダムさは良しとしないんで
私が代弁するけど…
その教義を、同じ様に曲解してるのも多くてな…
人の為に、新たに法と秩序を整備し直すのもまた法令、
という”革新無き法令は法令ではない”
つー、重要な教義を理解できんのが多いんで
それをやってるお前は、法令神的にも
オッケーなんで、勧誘できるんなら
したかったみたいなんだがね…』
言って神剣は笑った。
「なんだその、自由と法令が同時に混在するっての
そんなのアリか!?」
僕はその神剣のアバウトな言葉に破顔する。
『新たなる法と秩序を作り出すという自由。
それは必ずしも背反の関係ではないんだな。
ま、自由神の教徒、やってみるのもいんじゃね?
あっこの宗派、曲解者多すぎるから
アイツも、嬉しんだろ?
自分の掲げる自由に出会えて…』
そう神剣は溜息をつく。
なんだかなーって話だが、まぁいい。
ともかく僕は、特に縛りのない不思議な宗派
自由教の信徒であり教祖になり、神霊魔導を覚えた。
レベル4の治癒魔法限定だけど…
そして、エレシアにいきなり神霊魔導を
使えるようになって驚かれたけど
次の日に、僕も、キュア・ディシ-ズを、
魔導活版呪文書に込めてみる。
2d6+7 = 7+7= 14
え?これダイス振るの!!
「ふむ…鑑定では、魔力14の治癒スペルブックですね」
タラスが仕方ないなー、とばかりに
『アナライズド・エンチャントメント』をかけて
僕の作ったそれを鑑定してくれた。
そして、その数字を記録して、
一応、ジキスムントで作ったモノなので
国資産という事で、非常時医療アイテムとして
保存庫に持って行く指示を出す。
「あの、キュア・ディシ-ズって
精神点3点も使うんですけど!」
「私のアナライズは4点も使いますよ!
ワリ合いませんよ!
品質管理の方が精神力使うのは!」
そう言ってタラスは20点ある1日の精神点が
1回の魔法で4点も無くなった事に頭を抱えていた。
「やっべー、これマジで”晶石”
作らないと駄目だわ…」
僕は自分が製造者になって始めて分かる
製造の苦労に、舌を巻いた。
これが、お薬1回分!? マジで!?
「つか、黒死病ってどんぐらいの魔力が必要なん?」
僕は困ったその病気の目標魔力を尋ねてみる。
「うーん、魔力、17,18当たりですかねぇ…」
タラスはそう言って破顔した。
「ちょっと、もう一回作ってみるわ…」
そう言って僕は、呪文書を作ってみる。
2d6+7 = 6+7 = 13
「陛下、だから私の精神力の方が、キツイですって!
えーっと…魔力13ですね…」
そう言って記録し、倉庫に行くそれ。
「僕、精神力、最大22なんで、1回3点で今
2個作ったから、6点…
21点までギリギリ作っても
1日7個しか作れないんか…」
そう言って僕は、その生産性の悪さに破顔した。
1日、お薬7個分…
「まぁ風邪なら、たちどころに治せる呪文書ですから
魔力13、14のスペルブックならね…
むしろ陛下自ら作られた呪文書なら、
プレミアム物かと…」
そう言ってタラスは、嬉しそうにしていた。
「あらあら、旦那様が頑張っているなら
私も、頑張りませんと!」
そう言ってエレシア姫も、スペルブックを作る。
2d6+12 = 5+12 = 17
「あら?ちょっと手応えが無かったかしら?」
その込めた魔力に首を傾げる姫。
タラスに変わって精霊王が鑑定してくれた。
「ふむ、魔力17ですかな…」
「ちょ、手応えないのに、
魔力17のスペルブック作れるん!
どんだけ!!」
「まぁそれがレベル9の神霊魔導師という
頂点寸前って事ですからね…
エレノア姫の医師としての需要は
益々高まってますな…」
とタラスはふふっと笑う。
「でも、一回に2点の消費ですから、
私の精神力最大18点では、一日9個作るのが
限界でして…」
そう言って溜息をつくエレシア。
言いながら、またスペルブックを作る。
2d6+12 = 9+12 = 21
「あら、今回は中々いい魔力が込めれたような…」
「魔力21ですね、素晴らしい。
どんな難病でも治りそうだ」
そう精霊王が鑑定してくれる。
「すげぇ、俺の嫁!
魔力21とか何なん…
しかし、これは、マズイ…
なるほど、晶石だ! 間違い無い! 晶石だ!
こんなんじゃ話にならん!」
僕はその現実をようやく理解した。
そんな淫乱僧侶への評価に、他の三人はプーっと膨れる。
リーナ姫も、ロット姫も神霊魔導習得しようかなとか
悩み始めた様だ…
さもありなん…
しかしこれはマズイ。
こんなんで、はしかだ風疹だ、
治す為のお薬作るの絶対に数が足りん…
これは、僕が薬作るとかじゃなくて
王様としてなんか指示出して大きく動かさないと
根本的な話にならんぞ…。
しかし、どうすればいいんだ!
ええい、辞書さんゴー!
辞書
『ワクチン』
その答えに僕は突っ伏した。
「ワクチンなんか、この世界でどう作ればええんや!」
僕は辞書に絶叫する。
辞書
『えー?だったら”血清”でどう?』
とか言ってきた。
「血清ってなんや!」
僕は聞き慣れない言葉に更に辞書に尋ねる。
辞書
血清及び血清治療
血液は血漿成分と血球成分で大別される。
血球成分とは、赤血球、白血球、血小板等である。
それに対して血漿成分とは、
それを運搬する液性成分である。
血清とは血液を採取した時にそれを試験管に入れて
放置した場合に血球成分は凝血し沈殿する。
その沈殿した状態の上澄みの液を『血清』と呼ぶ。
この血清の中には、様々な血液因子が入っているが
治療として欲しいのは血清中の『γグロブリン』である。
『γグログリン』とは免疫の最終兵器である。
その仕事は最終兵器としては意外に地味なのだが
『無力化分子』としか言いようが無く、
病原菌だろうがウィルスだろうが表面に引っ付いて
その攻撃性(毒的性質)を機能不全にするのである。
そして、無力化した病原体(抗原という)を
病原体あるいは抗原を補体で固めたり、
体温熱で焼くなり
白血球の下級兵、好中球に食わせて
活性酸素を吐かせて殺したり
あるいは、
無毒化に成功しているので補体で鎖の様に繋がり
そのまま体外に排出したりと
ともかく病原体を無力化する物である。
このγグロブリンを持っている血清を抽出し
血中に流し込むのを血清療法という。
現在では、副作用があるので、
好んで使われる方法ではなく
出来るだけ回避される療法である。
この血清療法の延長線上の療法が『ワクチン』である。
「へーそうなん…
血清療法って人の血を入れる方法の
延長線上がワクチンなん…」
基本的に人間の免疫は、
全ての病原菌とウィルスに対抗できる。
病原体と免疫が接触した段階で免疫は
敵性病原体の内部を解析し始め、
敵性病原体を無力化する為の
『対応抗体』を生成するのである。
対抗抗体は病原体に対して
1対1で生成されるモノであり
その解析から、抗体の先端に取り付けられる
捕縛用先端形状の設計に時間がかかる。
およそ病原体が侵入してから
2週間から3週間程で
解析と設計が終わると考えられている。
(実際にはもっと早いのだが、
体内で大規模な抗体生産に入るまでに
それだけの時間を要する)
つまり、人間は十分な栄養と睡眠を取っていれば
自分の体の免疫が入って来る
病原体を撃退するのである。
「おお、この前の話か…」
問題は「速度と過剰反応である」
攻撃性の高い病原菌やウィルスに遭遇すると
体内の方も、その排除に超活性化する。
こうなると、初期遭遇戦での、白血球種
「好中球」と病原体との猛烈な殴り合いになり
病原体の毒と、好中球の出す活性酸素の
体内での応酬戦が起き
病原体を殺す為に自己自身が
高体温状況を作って病原体の無力化を図るので
体は病原菌の毒と同時に、
自分の免疫攻撃に壊されていくのである。
病気とは半分は自分に
殺されている様なモノである。
「なんだそれ…
病気って自分に殺される事なのか…」
この様な過剰防衛を起こす病原体のせいで
体内で「抗体」を作る前に力尽きて死ぬのが
病原性の病死といえる。
普通に毒性で臓器不全も病死ではある。
基本的には高熱による自己細胞破壊か
肺炎などの気管支の破壊か。
ともかく「抗体生産前」に
低級免疫防衛活動によって
体が壊れる事が問題である。
逆に言えば、「抗体」が予め体内に存在すれば
最初から、高級免疫防衛ができ
低級免疫の過剰反応を発生させる事なく
病原体を無力化できる。
これが『血清療法』及び『ワクチン』である。
血清療法とは、
実際には最初にされた方法は異なるが
理想的に言えば
「既に病気に打ち勝って病原の対抗抗体を手に入れた」
人(あるいは最初にされたのは馬など他生物)の
血液を貰い、その血中内の
病原対応抗体「γグロブリン」がある血清を抽出して、
病中の者の血中に入れる事である。
現在ではエボラ出血熱などの猛烈な病気において
最終手段的に血清療法が使われている。
血清療法は、自己体内で生産した抗体ではないので
他人の血清が入って来ると体内が混乱し、
血清の内容物を異物と判断して
免疫が防衛活動に出るという副作用が生じる。
故に、現在では「最終手段」的な扱いでしかない。
(特化的に免疫グロブリン製剤という
抗体のみを抽出して純化する方法がある)
この「予め抗体を手に入れる」という発想を
突きつめていったのが「ワクチン」である。
ワクチンとは
「化学的に無毒化した病原体」である。
これを体内に注射する事で、
過剰反応を免疫に起こさせず、
体内免疫に病原体を解析させ、
専用の対抗抗体を設計させ
更に、抗体を生産する生産工場
『B細胞』を生ませて
体内巡回させるという療法である。
「ワクチンって、あれ
無力化した病原菌だったのかよ!!
病気を注射してたんかい!!」
「ワクチン」の生成の泣き所は
病原の予めの特定、病原の培養、病原の無力化
である。
『病原を発見』しなければ、特定ができず
『病原を培養』しなければ、化学実験ができす
『病原を完全死滅しない無力化』ができねば
培養した病原を注射で撃ち込めば
普通にその病気になるだけなので
これらを短時間に行うのが非常に難しい。
特定種のワクチン開発に
時間がかかる所以である。
特に最初の『病原の発見』が難しく
染色を用いた色化で探索などを行うので
過去から続いたこれらの病原発見こそが
病気を解明する事が出来た
一番重要な出発点であった。
「ちょっと待て…
『病原の発見』?
それって魔導顕微鏡だと、
滅茶苦茶楽なんじゃないか?」
僕はその説明を読んだとき
予め病原菌が敵性のみ
位置報告してくれるという
『センス・エネミィ』で
位置特定できるという魔導顕微鏡が
どれほどおかしな顕微鏡なのか
その時ようやく分かった。
染色加工無しなのに、
勝手に敵性存在が見えてしまう顕微鏡!
ナンダソレ!
そんなモン、あっちにあったら
もしかしてノーベル章モンなんじゃ
なかろーか…
しかし、ともかく、今は
それどころじゃない。
血清??
確かにワクチンを作るよりは
病気に打ち勝った人の血液を
手に入れて抗体だけ貰うという方法なら
まだこの世界でもやりようがありそうだけど…
でもそれも簡単じゃないだろう。
くそ、何か近いのに…
その時だった。
特記事項
自己免疫は病原と戦闘を繰り返す度に
永久抗体を手に入れて風疹等の
病気が生涯無毒化されていく。
変化性の激しいインフルエンザ等は
毎年のように変化に対応した
抗体生成が必要であるが
変化性の無い病原は、一度の戦闘で
抗体を獲得すれば永久抗体により
二度はかからないという性質がある。
(実質的には15年程度の間に
1度も体内再戦闘が起きないと
免疫記録を失うという性質がある)
しかし生後間もない赤ん坊は、
自己免疫の戦闘情報がゼロであり
最も病気に対して危険な時期である。
そこで母の『母乳』の中には
母の戦闘経験の塊である
『γグロブリン』が入れられており
この抗体を常時吸収する事で
自己体内では生成できない
抗体を赤ん坊は補うのである。
これは、方向性の違う
血清治療の様なモノであり
ただの栄養でしかない合成ミルクと
免疫補佐までしてくれる『母乳』は
根本的に乳としての性能が異なる。
赤ん坊は母乳という母の愛で
守られているのである。
「ナ…ン…ダ…ト!?
おっぱいミルクは、
免疫補助の疑似血清だと!?」
なんて話を知ってしまったのか!!
嫁のおっぱいは愛の汁!?
しかし、知ったはいいが
まぁ母乳で赤ちゃん育てるって大事ねーみたいな
新生児の死亡率って乳児死亡率の50%も
あるらしいんで、乳飲み子を母乳で育てるのは
それだけで、新生児死亡率を下げそうな気も
したんだけれども…
「はーー、なんかこう、ワクチンはともかく
血清ってのはまだ、
いけそうな感あるんだけどなー」
と僕はベッドでゴロゴロする。
『なんや悩める信徒やな…
ちょっと神様、
相談にのってやってもええんやで?』
とかフリーダムな奴が脳内会話してきた。
「神様、そんなに簡単に
人間と会話してもええんですか?」
流石に僕はそのフリーダムに腐る。
『お前、異世界転生やろ?
完全にこっちの人間でもねーんだから
別にええがな…』
とか言いやがるよ、この神は…
「はぁぁ~~無害で大人の免疫の抗体だけ
手に入る血清とか、都合のいいもんあればな~」
僕はそう愚痴る。
『そりゃ、難易度、たけぇな…』
なんか、直ぐそこで雑魚寝しながら
語ってるかの様に言ってくる自由神。
「じゃぁせめて、母親の獲得免疫抗体たっぷりの
母乳が出まくるとか、
そんなエロい魔法でもあればな~~」
とか、とても不埒なエロ心も含めて
素晴らしい妄想を口にしてみる僕。
『…ん?その程度なら…
いけるんじゃねーかな?』
「は?」
なんか変な事言い出したよ、俺の神様!!
『その程度の事なら、作れるんじゃねーの?』
ほわ!?
「何言ってるんです、神様!!」
僕は、ハイパー素っ頓狂な事を言い出した
フリーダムにそう叫ぶ。
『いや、だって、それなら
『コール・ゴッド』で頼めば作ってくれるっしょ?』
その神様は、何か突然、変な事を言い出した。
「ちょ、ちょっと待って下さい、
コール・ゴッドって何すか!?」
僕は良くワカラン素っ頓狂な言葉に、それを尋ねる。
『ん? ああ、俺みたいな神様呼び出して、
呼び出した奴が、神に無理難題ふっかける
神霊魔導レベル10の魔法『コール・ゴッド』
『コール・ゴッド』使えば神霊魔導は、
よっぽどの無茶な内容じゃない限り増やせるかんな…』
とか言い出すフリーダム。
「ちょ、魔法増やすってアリなんすか!!」
僕はその自由神に向かって絶叫した。
『いや、『コール・ゴッド』って、
普通はそう使うモンだからな…
世界征服させろとか、不老不死にさせろとか
呼び出されては、無理難題ふっかけられて
いやー、それはちょっとなー、みたいな
互いに妥協点探して適当な所で手を打つ
困った要求してくる奴ばっかだからなー
もうちょっとね、自由っていっても
こう…なぁ…前向きな自由ってのがね?うん』
とか、なんか凄い事言う自由神。
あんたフリーダム過ぎるよ!!
「いや、でも魔法の追加っすよ!?」
僕はそれに食い下がる。
『だって俺、何百年前か昔に
何年前だっけ?もう千年以上前になんのかな…
『コール・ゴッド』で呼び出されて
神霊魔導の魔法、作った事あるもんな…』
とか言う自由神。ナニソレ!?
「どんな魔法、追加したんすか!」
僕は思わず問いかける。
『えーっと、うん、『異種族交配』の魔法だな…
レベル設定で揉めたけど、レベル6ぐらいで
みんなに手を打って貰ったナー』
とかいう自由神。
「異種族交配!?」
僕はその言葉に絶叫した。
『うん、アイツは良い奴だったな…
あのフリーダムは良かった…
あれが俺の教義に沿った信徒だよ、うん。
とにかく、凄く好きになった異種族が居て、
それとの子供が欲しいけど異種族じゃ無理なんで
せめて私の命と引き替えに『コール・ゴッド』で
『異種族交配』の魔法を作ってくれって…』
「そんなんアリなの!?」
『うん、アリよ?』
「いいのそれで!?」
『何が問題なん?』
「マジで!?」
『まぁ自由教だけの宗派魔法だからね…
他の宗派じゃ使えないんよね…
つか、それで他の神と揉めたんだけど…』
「他の神?」
『力の神の魔法追加会議で、
そんな魔法なら、全体魔法にしろやとか
いやそれは、自由教オンリーにするべき
とか、揉めてねぇ…
兄貴の法令神は、それは全体に関わる事だし
法令的に見て、全体魔法じゃないか?って言ったんだけど
全体でそれをやるのは、制約がなさ過ぎるだろうって
あのカーチャン…じゃなかった大地母神が言うから
揉めて揉めて、まぁ自由教の宗派魔法でいいかって
判定になってね』
「は、はぁ…っていうか
そんなの全員で会議するんすか…」
『うん、世界の構成に関わる魔法の追加は
流石に全体会議なんでね…
『異種族交配』はちょっと難度高かった…
まぁ通ったからねぇ、良かったよね、あの時は』
とハッハッハと笑う自由神。
何、このフリーダムさ…
『いやーあの後が大変でサー
『コール・ゴッド』って
原則、使用者の命が引き替えなんよ…
いや、最初はそうじゃなかったんだけど、
無茶ばっかり言うアホが『コール』しまくったんで
もう、使用者の命取って、乱用避けようよって事に
後で会議でなってねぇ…
でも、その嘆願者
自分が子供産みたいから
その願いだったのに、死ぬの可哀相じゃん?
だから、命と引き替えのルールを
今回ばっかりは許してつかーさいって
みんなに土下座して頼んでサー
兄貴はいい顔しなかったけど、
今度は大地母神の方が、そういう事なら
しゃーねーなーって、一緒に頼み込んでくれたんでね
それで兄貴も折れて、使用者の命を
今回は最初の決まりに戻してセーフにしようってね』
言ってハッハッハと笑う自由神。
「神様が神様に土下座ですか…」
僕はその話に呆然とした。
『だって俺、自由神だよ?
可愛いその時の信徒の為なら、
下げる頭なんかいくらでもあるわー
で、その子は晴れて好きな異種族と交配して
子供作れたんで、ああ、ヨカッタ-
久しぶりに自由の神様らしい事できたーってねー』
とか懐かしそうに語る自由神。
なんかこの神、アットホームな神様だな…
ちょっとフリーダム過ぎて困るけど…
「いやでもレベル10の魔法って…」
と僕がどもると…
『いや、お前の嫁さん、レベル9の僧侶やろ?
光神剣使って1レベルぐらい、
誤魔化してもらえばええやん?
光神剣ってそういう事できるチート剣だし…』
とかとか‥
「マジで!?」
『うん、マジで…
レベル8なら法令神が、
ちょっと待った言うだろうけど、
光神剣のチート補佐付きなら、レベル9で
『コール・ゴッド・プロテクション』いけるやろ?
内容が内容だし…
レベル1ぐらいの魔法でいけるんじゃね?』
とかいう自由神。
「ほんと!?」
僕は思わず神剣の方を見た。
『いらん知恵を与えおって、お前は…
ホント、お前はお前らしいよな…』
『いやだって俺、自由神だし…』
『まぁ、出来ん事はないが…
しかしだなぁ…』
と、どもる神剣。
「な、何かあるの?」
『うーん、だって『コール・ゴッド』が
エレシア姫なら……』
『まぁ、カーチャンだわなぁ…』
『内容もどう考えてもカーチャン専門だしなぁ』
『だねぇ…』
『カーチャン呼んだら
大変やで……』
『だろうなぁ…』
と、その神様と抜かす、本当に神なのか
神と名乗るなんか怪しい奴等2人は
よく分からない事で、悩んでいたらしい…
これ、自由神、分かる人、絶対にゲラゲラ笑ってくれると
俺信じてるんだけどナー