第十四話 どうも計画表らしい
活動報告に、十三話時点でのSWのキャラクターシート作ったで!
なんか、無茶しはじめそうだゼェェェェ!!!
ドワーフの王をその秘密の王族研究所に招き
ついでにオールドにも参加して貰う事にし…
しかしオールドには先輩のタラスでさえ
「この事に関わって、もしお前が裏切った場合
五大大国の総力を上げてでも
お前を抹殺せねばならん。
それだけの覚悟を以て聞いてくれ」
と僕や嫁姫達さえドン引きする様な事を言って
制約書、
あるいは呪文『クエスト』か『ギアス』でもかけるか
と言い出して
オールドに『事の重大さ』を恐怖でわからせた。
その後にそこに参加して貰い、
新たに増えたスタッフに今の事情を話した。
「どこら辺から驚いていいのか
わからんの…」
陛下が、かくかくしかじかで事情を聞いて
事の真相を聞いた後での最初の感想がそれだった。
「まぁ、そんな大事なれば
クラフトの神の信託が下りるのも分かるわい。
下手にそこら辺のドワーフでも雇って
その技術が出来て、簡単に拡散すれば
この世界には性急な変化が起こるじゃろう
良かれ悪かれの。
紙の技術の生成1つ取っても
知識を独占してきた、魔術師や王族の
その根幹が揺るがしかねんわい。」
いって陛下はハッハッハと笑う。
そしてオールドはこの事を知ってしまって
真っ青になっていた。
”なんという話に参加してしまったのだ!”
とタラスが念を押した理由がよく分かった様だった。
「異世界からの者を転生させて
異世界の知識を拝借との…
いよいよ、世界を創造された
原始の神が、
世界変革への賭けでも出たんかいの…
でもなきゃクラフトの神が
自ら信託なんか下さんのかの…」
言って陛下は肩を上げた。
「原始の神?」
僕は聞き慣れない言葉に首を捻った。
「おう、お前さんは異世界からの転生者じゃったの。
なら知らんのも無理ないんかの…
現在は、世界には神霊魔導を司る、”力の神”
神霊語を行使したとき、それを管理する
”力の神”や、その他、ワシ等の崇める
クラフトの神とか、”知恵の神”なる
神というか超人存在がおるんじゃが…
それらの神を作った”原始の神”
”光の神”と”闇の神”という
全てを創造された神がおったというんじゃよ…
ただ、古代の光と闇の神々の戦争で
二神は相打って消滅し
原始の神を失った後に残った”力の神”のみが
今は神として居座って、
現在のこんな世界になっとるがの。」
「そうなんですか…」
僕は初めて知る、この世界の神話に普通に驚いた。
「しかし原始の神は、力の神より遙かに強大じゃ。
なんせ世界を作った神じゃもの。
それはこの世界の空気に解けて存在し
この世界の行く末を見守っておると言われておる…
その、お前さんが持つ”神剣”
それも、”光神剣”と本来は呼ばれる物で
”光の神”が残された”力の神”をも越える
世界の法則を徹底的にねじ曲げる
お前さんのいう、いわゆる”チート”な物じゃ」
言ってヒッヒッヒと陛下は笑う。
『チートですいませんな…』
その言葉に神剣はむくれた。
こいつ、原始の神の代弁者なのに
本当に人間味溢れてるよなぁ…
「ともかく、そういうわけで
僕は異世界の知識を伝導できるだけの
チートな人間。
陛下が思われている様な
英雄王ではなく、偽物なのです」
そう言って僕は頭を下げた。
「カカカ
面白い事をいいよる。
もしこれが、原始の神のお導きなら
こんな世界だけを残されて
空気に戻った神も、
粋な計らいをして下さる、といった所かの。
では、またしても老婆心じゃが…
お前さんは知識をチートだチートだと言うが
そんな事を言われたら
ワシだって、チートでしかないんじゃの」
言って陛下は笑う。
「陛下がチート?」
僕はその陛下の言葉を尋ねた。
「ワシの生きてきた感想を長々と語る事になるがの。
まぁ聞いて欲しい。
異世界の知識を、これから使うのなら尚更じゃ。
わしゃ、ワシの職人の技術が
ワシ1人で為された物でないのをよく知っとるんじゃの。
そりゃ若い頃は、それがワシの力じゃと息巻いておった。
しかし、歳を取って技術の研鑽を続ければ
それは、お前さんのいう”チート”と
何も変わらん事に気付いた。」
「?」
「ワシの技術は、ワシ1人の物じゃないんじゃ。
先代の更に先代の更に先代の…
職人として技術を磨き、口伝でも文字伝承でも
それを残して継承させ続けてくれた
先代達の知識があってこそ、
その、下履きがあってこそ、
ワシは今の世界で、新しい物が生み出せた。
それがこの歳になると、ようやく分かった。
先代が残してくれた知識。
それこそが、ワシにとっては
お前さんのいう”チート”じゃ。
じゃから、先代よりも遙かに古い先代に比べれば
ワシは驚くべき有利な所から
自分の技術研鑽が出来たのだと分かった。
しかし、ワシはそれに卑屈な気にはなれんの…」
「な、何故ですか?」
僕は僕が卑屈に感じる、
”有利な所からの出発”という事に
陛下は卑屈になれないと言った事に驚いた。
「カカカ…
それはの
先代達が残した物を継承する事は
ズルでも何でもないと、分かったからじゃ…
今ならワシも、先代達の気持ちが良く分かる。
”遺したい”
”伝承して欲しい”
”この自分達が作った物の上に更に追加して欲しい”
今はワシは、先代達と同じく、そう思っておる。
ワシ自身が、この世界に先代達の知恵を
継承して自分で作りだしたモノ…
それを後世の者が、継承して自由に使っても
ワシは、何にも思わんよ。
むしろ、それで皆が幸せになってくれれば
それこそ制作者冥利につきるわい。
そう思ったんじゃ。
だから先代達の気持ちも、同時に分かった。
それが先代達が、記録を残した理由なんじゃと。
ワシ等には寿命がある。
それでも、その中で見つけた生きている喜び。
それを次世代にも、味わって欲しいとワシは思う。
なれば、それを支える知識の継承を
何故、嫌がる必要があるのかね?
お前さんには、まだ子供が居らんから
分からんかもしれんが、ワシの子供も…
そしてワシの国の、全ての子供も
今のワシには、何よりもかけがいのない財産じゃ。
ワシには、ワシの国の民こそが最高の宝なんじゃ。
それが皆、幸せになれるのなら
どんなズルでも構わん。
知識を継承して伝授して、民を幸せにしたい。
そう思うんじゃよ」
言って大王は、またウィンクする。
「知識は、チートやズルじゃなく
継承して欲しい先代の心…」
その陛下の言葉に僕は呆然と成った。
「まぁそれでもお前さんが、それをズルと感じるのなら
それはお前さんが知識の伝承の仕方を
偏らせているからじゃないかと思えるの」
「偏らせている?」
「最初から、ポンと結果や答えだけを
当たり前の様に出されて、
それを鵜呑みにするだけでは
それの大事さが、分からんのじゃよ…
どうして?
誰が?
それを生み出したのか?
その経緯も一緒に知らんと
継承する有り難みさえ分からん。
先代達の歴史も込みで、知識を継承せにゃ
知識は、ズルにしか思えんようになる。
お前さんの、元居た異世界というのは
目の前に必要なモノだけを手にとって
それ以外の背景は切り捨てる
そんな、ワシには、えらく歪なモノに思えるの。
じゃから、全てが”チート”
ズルと卑怯に、思えるんじゃろう。
知識がチートに思える世界。
ワシから言わせて貰えれば
それは先代の存在を無かった事にする
過去冒涜の世界にしか思えんの」
言って陛下は髭をキュッキュとする。
「過去冒涜の世界…」
そんな言葉を聞いて僕は蒼白になった。
そうだ。
あの辞書を開き
黒死病が14世紀に2000万も
人を殺し尽くしたなんて知らなければ
きっと僕は頑張れなかった。
”黒死病は怖い病気でしたが、
今は抗生物質で克服されました”
なんて事だけ聞かされたら
そんなモノなのか程度で流していた。
過去に僕が恐怖する大惨事があったと
それが知れたから
僕は公王に直ぐにでも土下座が出来た。
僕は、自分は駄目な奴だと思い込んでいた。
けれど、あの世界も、過去を切り捨てて
目的だけに特化した、駄目な世界
情報伝達の仕方が偏っていた世界
切り捨ての世界なのだと
その時分かる。
”チート”とは、あの世界の僕が生きた時代の
過去冒涜から来る社会精神なのか。
そんな事を、不意に僕は考えた。
「ま、異世界の知識に助けて貰うのは
シャクはシャクではあるがの…。
それでも”何が大事か?”を考えれば…
ワシはワシの国の民の笑顔が、最大の財産じゃからの。
その財産を未来につなげれるのなら
どんなズルでも受け入れるよ。
それが原始の神の思し召しなれば
ワシはチートで構わん。
なら、その異世界の知識に、
ワシ等の世界の、ワシ等独自のモノを組み合わせて
ワシ等だけの何かを
作ってやるかの、と、居直るの…
むしろ、それを考えて生み出す等
職人魂が燃えて、楽しそうじゃわい」
言って陛下は豪快に笑った。
僕はそんな陛下の何気ない言葉に、
思わず瞳を熱くさせた。
そこで思わず泣く。
その陛下の言葉は、
僕が一番聞きたかった言葉だったからだ。
「よく泣く英雄王じゃのう…
しかし不思議じゃの…
なのにそれが、妙に気持ち良い」
そう言って陛下はまた笑った。
しかし、意外な試練が夜にやってきた。
「貴方、どうして私達妊娠できないんですか!」
「ですか!」「ですか!」「ですか!」
嫁姫四人がすっごい顔で迫って来た。
「おかしいです!これは絶対におかしいです!
こんなに毎日励んでいるのに
出来ないなんてあるんでしょうか!」
「おかしい!」
「最初は、私が不妊症かと恐れてましたが…」
「も、もしかして
我が大王の最大の弱点は…種無し…」
「ひぃぃぃぃっ!!」
「怖い事言わないで!
マジで実はそれ、僕も疑ってるから!」
それなりに、励んでいるんだけど…
出来ないらしい。
いや、心のね、うん
心の準備とか、僕、無いし
出来られても、マジ、狼狽えるんですけど…
「四人が全員妊娠しないなら
もう大王に原因があるとしか考えられません!
自国の国民がガタガタと怯えているんです!
まさか大王、種無しかって!」
言ってリーナ姫がわんわん泣く。
「酷いな!トーディ国の国民!!」
その国民の評価に僕も泣く。
「世継ぎは、王家の死活問題ですよ!
それも貴方は神剣の主に認められる血筋!
ファーレ王国が別格なのは
ファーレ王の血筋にのみ、
神剣を扱える者が生まれるからなんですよ!」
リースロット姫がそう叫ぶ。
「そうだったの!?」
初めて知ったその事実に愕然とする僕。
「偉大なる英雄王の血筋!
五国同盟大繁栄の予感!
神剣の主となる血筋の取り込み!
同盟強化の証!
私達姫の身には
世継ぎを生むのにこれだけの期待を
国民からかけられているんです!
そりゃ、陛下の事は愛してますけれど
しかし、身分的なモノも重責でしてね!」
エレノア姫も物凄い顔でそう言う。
なにせエレノア姫は19歳。
他のリース姫15歳、エリン姫15歳
リースロット姫16歳に比べれば
僧侶の身で忙しかったとはいえ
”行き遅れ感”がある女性。
いやー、あの僕達の世界では
正に、女性として光輝く、素晴らしい歳だってのに
もう、豊満なおっぱい、たまりませんわ!
なんて素敵な美人のお姉さんって感じなのに
この世界の感覚では、この歳で
”ウチの姫様やべんじゃねーの!?ちょっと!”
って慌てられるとか
その中世の生き急ぎ感って、どうよ!
もう最速は、生後からで
だいたい平均では10歳ぐらいで婚約させられて
王子と姫の時期に12~14歳あたりで結婚して
さぁ即位するまでに子供もついでに作っとけみたいな
王族の子作りの回転速度は尋常じゃねぇ。
まぁそこら辺、僧侶の回復魔法は
優先して王家に使われるんで、
あの世界の僕らほど、急ぎまくりでもなく
+2歳ぐらいは違うけど
それでも社会全体の寿命が短い分
意識的な回転速度が速ぇ。
「貴方、辞書にレッツゴーして下さい」
エレノア姫が怖い微笑みをしながらそう言ってきた。
ヤベェ目がマジだ。
シャレになってねぇ。
「いや、あのですね…」
僕がそういった時
「我等が慈愛の大地母神よ、我に力を与えたまえ
ジーテルナ・(中略)・エストナーナ。
『クエスト』
目標:
大王の辞書にて、大王との不妊の理由を解明し
我等に知らせよ。」
そう言ってエレノア姫は人差し指をさして
僕に神霊魔導『クエスト』をかけた。
「ちょ!?
神剣!? 僕にチートの抵抗判定は!?」
いきなりの『クエスト』投げつけに
神剣にチートの助けを求める僕。
『いや、それは重要な夫婦問題だし…
神剣の立場からは、保護する理由無いし…』
「ナン…ダ…ト!?」
裏切った!
神剣、こういう時に、主を裏切った!
僕はその命令に抗えず
エレノア姫の命令通りに辞書に不妊を問いかける。
辞書曰く
基本的に排卵時に受精を試みない限り妊娠は起きない。
なのでいわゆる「危険日」に
性交を試みないと意味が無い。
しかし「安全日」だからといって油断は禁物。
排卵寸前のギリギリの期間はグレーゾーン。
やはり運がある。
理論的には
女性の膣内は酸性度ph3.8~4.5の酸の海。
これは体内、特に重要臓器である
子宮を守る為の殺菌として作用しているが
だからこそ逆に、男性精子が殲滅される魔の海でもある。
この魔の海を精子が泳ぎ切る
あるいは、酸の殲滅から生き延びる精子の目安個数は
2000万個/ml を2ml程度。
数だけなら4000万個と実験されている。
しかし所詮目安である。
健康男子の定常時の精液は1億個/ml とも言われ
射精1回につき3-5ml 3億~5億の精子が放出される。
女子側の膣内酸性度が突出して高い等の
異常環境でなければ、
精子と卵子の出会うタイミングで
3億近い精子が射精されれば普通は受精する。
「なんだと!3億個もの俺の子種は、
毎回、酸の海に殺されながら戦っていたのか!」
ただし、男性の睾丸で一日に生産される精子個数は
1日当たり5000万から1億個と平均推定され
3億個近く精子を蓄積するには3日程度の
個数溜めが重要と考えられる。
濃度が高ければ必ずというわけでもないが
Ph4の酸の海では、生存確率は個数か濃度である。
溜め撃ち、一撃最深部発射、奨励。
逆に、不妊化しやすいのは、
定常的な多数回の射精を続ける事であり
この様な低濃度精子の精液では、
酸の海を泳ぎ切るのは難しい。
しかし、それも運。
薄くても、当たるときは当たる。
純粋に酸の海を泳ぎ切れるかという
確率論の化学現象である。
確率を移動させるという意味での
高濃度化という溜め撃ちである。
特記として
毎日、複数女性に精液を出しまくる等という
おかしな性生活をした場合、恒常的精子濃度不足が発生し
不妊あるいは、種無しの懸念が発生するだろう。
溜め撃ち、1対1、卵子の排卵時間会わせ。
計画妊娠、これ重要。
「てめっ!辞書!!
それ、俺の事言ってるだろ!!
最近、なんか、意地悪くね、アンタ!?」
そして僕は、彼女らに理解出来る言葉で
『クエスト』によって問題の可能性を喋らされ
嫁姫達が、どういう事かを理解して互いの顔を見合わせる。
「計画表を作りましょう」
「イエス、リーダー」
その時の嫁姫達の連帯感は、半端なかった。
やらなきゃいけない事は、色々あったけど
嫁様達が「計画妊娠」の予定表を作る事になって
なんかそれなりに賢者モードになった。
で、デルゼン陛下に剣の稽古をつけて貰ってる。
流石はドワーフの王。
職人王でありながらも純粋に戦士としても強い。
しかし僕は、神剣に頼らず、
自力で剣の修行を受ける事にした。
「神剣使えば、苦労もなかろうに、なんでじゃ?」
と稽古を付けて貰いながら聞かれると
「前に神剣と話した時に、
もし神剣が無くなったら?
もし辞書が無くなったら?
その時はどうすればいいんだ?
って語り合って…
で、僕のチート性を僕が失った時に
それでも僕は嫁も国も守れるのかって
そう思いまして…
だから、失っても、それでもなんとか
出来るように、知識は大学で
力は僕自身の修行でって…
そう思ったんです…」
剣の修行でハーハー言いながら僕はそう言った。
「なるほどの。
そういう心の備えは重要じゃの。
お主は、やはり王の器があるんじゃないのかの?
状況に甘んじるだけじゃなく
状況に対して力を備える、
それが男の決意じゃしの…」
言って陛下は僕の剣を受け流しては
木のアックスで僕の木の剣を流しながら
動きの足捌き等を教えてくれた。
「ははは、結構、やる気になれば
自分でも頑張れるモンなんですね…
神剣ばっかりに頼ってたせいで
こんなに汗かいて、自分の体で
自分の無力を…
無力じゃなくしたいって
でも不思議だ…」
「何がじゃ?」
「こうやって、それが必要になれば
僕だって一歩踏み込めたってのに…
頑張れるのに…
どうして転生前のあの世界では
それが出来なかったのかなって…」
言って僕は陛下に一休憩しようと言われて
休憩がてらにそう呟いた。
「ワシは、お前さんが元居た世界…
とても奇妙に感じるんじゃの…」
「奇妙?」
陛下の言葉を問いかける僕。
「ワシ等の魔法なりがある世界からすれば
それが全く無くて…
黒死病や、チフス、コレラ、結核、天然痘
諸々で壮絶な人口が死にまくって
戦争でも壮絶な人口が死にまくって…
それでも、そこで生きて行こうとしたなんて
物凄い精神力を持ってた者達がの…
なんで、それをワシ等の…
職人の方法論の極み…
そっちでは『科学』というんかの?
それを手に入れた後には
お前さんが自己嫌悪する、
あっちの世界のお前さんになったんじゃろな?」
言って陛下は首を捻る。
それを言われて僕も考え込んだ。
そうだ…
ペストで2000万も人が死んだ時代
なのにその時代の人類は、
むしろルネサンスで文芸復古して、
驚異的なメンタルで、生き延びていった。
そんな物凄いメンタルだったのに
どうしてその先の僕達は
それを思い出す事さえ、
どうでも良いと思えたのだろう?
知らなければあの世界の僕の様に流してしまった。
でも、知ってしまえば、それが物凄い疑問だ。
「やれば出来る事…だと
分かりさえすれば…
お前さんに、立場の状況があれば、
お前さんは、英雄王になれるわけじゃ
それが…みんなが恐怖に怯えなくて良い
そんな夢の様な世界になったら
お前さんは空気になるという…
それは何なんじゃろうな?」
ピュリフィケーションで浄化した水を入れた
竹筒の水筒を飲みながら、陛下はそれを問う。
「僕には、周囲に、神剣や辞書とか
支えてくれる人、助言してくれる人が
居たからこれが出来ただけです。
神剣がアレキサンダー大帝と
僕の違いは、心の持ち方の僅差だって
そう言ってくれなければ…
ジキスムントの王になったかも怪しい…」
言って僕は汗をかきながらそれを笑った。
「じゃぁ、お前さんの元居た世界から無くなったのは
助言なんかの?」
陛下はボンヤリとそう言った。
「無くなったのは助言?」
その言葉に目を見張る僕。
「ワシ等の世界では、当たり前の…
若い次世代の者を育てる助言者が…
文明が発展した世界では、居らん様になるんかの?」
言って陛下はその言葉を真剣に考えている様だった。
「文明が発達した世界では
助言者が居なくなる?」
僕はその言葉に首を捻った。
「ワシは、未知の知識を知るのに
ワクワクはしておるんじゃ…
新しい事をするのは、何時でも楽しい…
じゃが、その人を豊かにさせるハズの
良い未来が…そのハズの場所が…
やれば出来るハズというのを
助ける事もできん世界にしか
ならんというなら…
そんな世界が、この世界に来るのは嫌じゃの…」
陛下はそう言って難しい顔になる。
ああ、そうか。
陛下は、この僕達の研究開発によって
僕の、あっちの様な虚ろな僕しか
見いだせない世界と同じになるのを懸念しているのか…
なるほど、それが本当の王様って奴か…。
「ま、まだ見ぬ遙か未来の世界を
ここで憂慮しても仕方ないの…
ワシもお主も、今できる事をしてから
それから未来の事を語らんとの…
お主の言うように、その我等を守る神剣が
明日無くならん等
誰も保証してくれんのじゃ…
それでも戦わなきゃならん時が来れば
今のお主が、ワシと修行を続ければ
お主は、自分の力でも戦えるじゃろう。
それは間違い無く、大事な決意じゃよな」
言って陛下は笑う。
「はい、師匠!
稽古の続き、お願いします!」
そう言って僕も木の剣を握った。
「英雄王に、師匠と呼ばれるか…
これは流石にワシも、嬉しいの…」
そうお互いに言い合うと、
僕達は剣の稽古に励むのだった。
所で不思議な事に…
そんな剣の稽古を付けて貰うと
僕は異常な速度で、
剣の腕が上がっていったという。
…あれ?
『いや、お前、今、経験点溢れてるから…
その経験点、上手く配分しろな
不測の事態に備えて…』
神剣はそう言った。
…で、終わると思ったラァァァ!!!
「貴方…、私の…あの、その…えっと
今日は、私の、その日っぽいので…
あの…よろしくおねがいします…」
とエリン姫が三つ指ついて、
ベッドで扇情的な下着でニコニコしていた。
「でも、やっぱり、その…
私直ぐに、気絶しちゃいますんで…
こういうので…」
とか、なんか、怪しい薬瓶出てきタァァァ!!
「王族の仕事だと言われると
寂しいんで、
今日は久しぶりの、二人きり…
どうぞ、いっぱいいっぱい
可愛がって下さいマシね?」
言ってエリン姫が抱きついてくる。
ぬおぉぉぉ!!
エリン姫、なんでこんなに
エロ可愛くなってもうたん!?
いや昔から包容力ある
おっとり系だったけどサー
ちょっとドジっ子系だったけどさぁぁ!!
ヤバイよ!
この勢いはヤバイっすよ!!
良い嫁って、別の意味でヤバイっすよ!
容姿も美人、心も美人というのは
傾国の美女になるんすよ!
なるんすよぉぉぉ!!!
どうも僕も、そろそろ
覚悟を決めないといけないらしい…
って、何だよ、これから以下のコレはぁぁぁ!!
キャラクターシートできたからって
遊ぶなよ、ヲイィィィィ!!
実験特設ルール:「アレ」
アレ判定基礎値
アレ技能+特殊アイテム+知力ボーナス
僕 6+3=9
エリン姫 4+2+3=9
抵抗判定値
冒険者レベル+精神力ボーナス
僕 1+3=4
エリン姫 4+2=6
ダメージ判定
成功レーティング10+アレ技能+冒険者レベル
失敗レーティング0 +アレ技能+冒険者レベル
ダメージ低減、冒険者レベルのみ
戦闘開始
ラウンド1
僕ターン
僕の攻撃:可愛がる 2d+9 > 14
姫の抵抗ロール 2d+6 > 13
攻撃成功、ダメージ 1+6+1 = 7
姫のダメージ低減により、7-3 = 4
姫の精神力に4ダメージ
姫のラブポイント4増加
姫ターン
姫の攻撃:合体 2d+6 > 15
僕の抵抗ロール 2d+4 > 12
攻撃成功、ダメージ 2+4+4 = 8
僕のダメージ低減により 8-1 = 7
僕の精神力に7ダメージ
僕のラブポイント7増加
ラウンド2
僕のターン
僕の攻撃:耐える 2d+9 > 14
姫の抵抗ロール 2d+6 > 10
攻撃成功、ダメージ、クリット 5+2+6+1 = 14
姫のダメージ低減により 14 - 3 = 11
姫の精神力に11ダメージ
姫のラブポイント11増加
精神力ダメージ累計 15 姫は気絶した。
援軍が現れた。
エレシア姫、トランスファー・メンタルパワー
エリン姫 精神力12まで全回復
エリン姫起き上がった。
ラウンド3
姫の攻撃:とても頑張る 2d6+6 > 17
僕の抵抗ロール 2d+4 > 11
攻撃成功、ダメージ、クリット 5+3+4+4 = 16
僕のダメージ低減により 16-1 = 15
僕の精神ダメージ15
僕のラブポイント15増加
僕の精神累計ダメージ 15+7=22
精神力0 僕は果てた。
戦闘集計
僕のラブポイント7+15=22
姫のラブポイント4+11=15
互いの累積ラブポイントに数値をスタック。
今日は僕の方が、
エリン姫により惚れ込んだようだった。
朦朧とした意識の中で
神の囁きが僅かに聞こえた
(このルール、まだ改善の余地有りだな…
精神ダメージがほとんど
ラブポイントになるのは問題だな…
それより1ラウンド10秒は
ちょっと気の毒やな…)
名も無き神よ、何を言っているんだ…
前回と今回の前半で、良い話にしておいて、極限まで落とす。イズナ落とし! でも嫌いじゃないな。こういう無茶も。