第十三話 どうも面接らしい
王様って大変やなーって書いてると思うわ、うん。
僕は面接会場のど真ん中に座ってた。
それも面接する側だ。
『学者募集、あるいは何かしたい人
身分問わず、ジキスムント大学に募集』
それで人がワラワラやってきて
その面接をしている。
学者募集とあって学者スキル持ちが多い。
しかし魔導師も結構な数だ。
魔導師はこの世界の感覚的に
本人は学者だと思っているらしい。
それ以外にも、農夫も抗夫も料理人も居る。
思った以上に集まって困った。
しかし…
十分な紙がないとは、ここまで困る事なのか!
あっちの世界で、就職活動で書いた履歴書。
すっごく嫌な気分で書いてたアレ。
だが、こうやって人材募集をしてみると
募集する側にとっては
「履歴書」が有る無し、それだけで、
面接する作業が遙かに違う事に気付ける。
紙!紙!紙!
簡易な履歴でもいいんだ!
口頭質問オンリーでなく
最低限の事が、分かる紙をくれ!
毎回、口で何してきたのか聞くの地獄!
って言っても無理なんだ!!
識字率…
言葉は基本的に音声で事足りるんだ…
文字分かんなくっても、
会話の中に生きていれば人間ってのは
言葉を話せるようになるらしい。
なんせ、最初に募集出しても
その文字が読めなかったんだから
文字読める人が
口伝で内容を伝えるしかない。
すると伝言ゲームで、
なんか違う意味として解釈してきた人も居るし!
文字の読み書き!
これが出来るって、そんなに大事な事なのか!
僕はそれに絶句した。
学校だ!
難しい事を教えなくてもいい!
最低限、文字!
最低限、読み書き!
それだけ教える機関でいい!
ああ、学校って、その為にあったのか!
僕は、あっちの世界での、
学校でやらされていた勉強の
本当に何でもないと思えた事が
実はそれこれどころじゃねー
最も大事な事なのだと、
そこで分かった。
何でもいいんだよ、題材は!
題材なんて何だって!
識字率が上がりさえすればね!
それがこれで分かった。
国力にもっと余裕が出来たら
隙を見計らって読み書きを教える程度の
日本の昔の寺子屋みたいなのを作ろう。
そうしよう。
よーわからん
意味の無い勉強の押しつけとか
そんなんどうでもいい。
読み書きだ。
だた、それだけでいい、読み書きだ。
それが大事。
辞書にそれを尋ねたとき
不思議に皮肉がかって言った。
「てめーの住んでた日本は
識字率がほぼ100%寸前。
世界の平均が75%で
アメリカとか移民の多い
二国言語が混在する国では
英語の識字率は50%とか
そんな面白い話なんぞ?
母国語識字率100%寸前とか
どんだけ恐ろしい事か
わかってねーだろお前!」
とか感情的に言われた。
どうしたんだ辞書!
熱いな、最近!
本で教育を普及させる為にも
識字率を上げることは最重要であり
これを伴わなければ
本による情報拡散は有り得ない。
本と識字率。
切っても切れない重要関係。
と最後にいつものクールな辞書さんの
コメントに戻る。
まぁ、僕達が使う共通語。
これをみんなが読み書きできる様にするって
すげぇ大変な事で、
すげぇ重要な事なんだね!
ともあれ、流石に学者職は共通語の読み書きが出来
まぁ、開発中の紙を出すわけにもいかないんで
国費でしゃーないから羊皮紙で
簡単な経歴と、スキルを書いて貰っての
あんな、あの世界の就活での面倒な
筆記試験とか飛ばして
いっきに口頭試問なわけだけど…
「陛下の偉業を耳にして是非とも
私も何かをしたくて、馳せ参じました」
「あーえっと学者スキル5
スキル高いですね…」
学者スキル5、6というのは
それなりに達人の世界という事で
期待はしたのだが…
「えっと、それで、この大学に何をしたいと
思われて尋ねられたので?」
「もう世界の色々な知識を研鑽したくて!」
「すいません、
ちょっと別室で待機お願いします
次…」
で、次。
「陛下の偉業を耳にして是非とも
私も何かをしたくて、馳せ参じました」
「あーえっと学者スキル6
スキル高いですね…
えっと、それで、この大学に何をしたいと
思われて尋ねられたので?」
「もう世界の色々な知識を研鑽したくて!」
「すいません、
ちょっと別室で待機お願いします
次…」
そんな感じで「漠然と何かをしたい」という人は
多かったんだけど、
「何を」を最初から持ってくる人が居ない。
タラスみたいに「呪文書を作る」とか
明らかに明確なビジョンを語ってくれる人が居ない。
才能が勿体ないんで、あっちの世界みたいに
「直ぐにお帰り下さい…」
というわけにもいかず、
別室待機で保留にしたけれども、
”知識欲を貯め込むのが好き”
という所で止まって、後一歩が無いのに困った。
しかし、まぁそこそこ「当たり」も出る。
「タラス先輩!」
「オールド!」
「先輩が野外冒険者から、
この大学に赴任したというのを聞いて
僕も学園抜け出して、ここに来ました!」
それはオールドという、
タラスが魔導学園に居た時の後輩であり
その彼がこの募集に来たのだった。
「タラス?」
彼を尋ねる僕。
「このオールドは、
私と同じく魔導学園に通っていた
そして老人達に論議を唱えて、
しかし、聞く耳を持って貰えなかった
私と似たクチでしてね…
失われた”晶石”の再生成は出来ないのか?
という研究をしたいと言ってて
学園みんなに笑われましたよ…」
「晶石?」
僕は聞き慣れないそれを自然に尋ねる。
「ええ、今は作る事が出来ませんが
古代に神々と魔族が戦争をしていた頃
古代言語魔導を使って神の下僕として
戦った古代魔導師は
”晶石”という、
人の精神力を封じ込めて、
魔力を高めるという石を作れたのです。
しかし、今は製法が完全に失われて
古代遺跡の探索でのみ発掘されるという
超貴重アイテムでして…」
と、その説明をタラスがした時に
不意に僕とタラスの目が合った。
「晶石で魔力の集中かけ!?」
僕達二人の声が、その時ハモった。
「そうか!
精神力を、2倍、3倍と使って
使用精神力を高めていけば
相対的にレベルが上がったのと同じになる!
しかし、それでは一日の精神疲労で
何もできなくなってしまい、
作れる個体の呪力強度は上がっても
生産量そのものは落ちる…
でも、その精神力を、”晶石”で補えば…」
タラスが自分でも”迂闊!”といった顔でそれを口にした。
「オールドさん、採用、是非、我が大学に来て下さい」
僕はいきなり合格の判子を出す。
「え?大王!?」
問答無用で僕が採用を言ったのに驚く彼。
「出来るかどうかは、どうでもいいんです。
いや、出来てくれれば革命ですけれども。
失敗は、成功の母だ!
私達が欲しいのは、そういう”具体的”な
出来たら何かになる事なんです。
”晶石”の研究!
それが私達には、今、必要だ!
是非、貴方にそれを、
この大学で研究して貰いたい!
お願いします!!」
その言葉にタラスも笑って頷く。
オールドはその電光石火の採用に、オロオロしていた。
これだよ。
こういうのを募集してたんだよ。
”何かしたい”も、いいけれど
”何をしたい”が、一番、欲しかったんだ!
それが特に今、必要な事なら、尚更!
その時、不意に僕は、
あっちでの僕の就職面接を思い出した。
(「貴方は弊社に何をしたくて、希望されましたか?」)
その質問を思いだし、僕は、「あっ…」と言った。
立場が逆になった時、面接官は何を待っていたのかが
僕は分かってしまった。
僕はそれに、「御社がしている何々について~」とか
テンプレートな事しか言わなかった。
そう就職活動教書にそう書いていたから…。
違う。
今のこの立場なら、それでは駄目だと分かる。
『何をしたい』
それだったんだ。
どんな笑ってしまえる事でもいい、
『何か』
ではなく
『何を』
それを聞きたい。
国力に余力ができれば、
色んな文化が広がった方が良い。
それが、あの世界にあった”基礎力”
抗生物質が作れたように、
その全ての周辺技術によって
1つの技術を支えていた、本当の力だ。
その為には”こちらが思わぬ『何を』”だったんだ…。
それが今更になって分かって、僕は頭を抱えた。
そしてその後、もっと凄いのが入って来た。
「ええかのー?英雄王」
ドワーフの装飾品も立派で威厳のあるその人が
そこに入って来たのだった。
タラスが彼を見て驚く。
「ドワーフ王、デルゼン陛下!!」
その言葉を聞いて、僕も名前だけなら聞いていた
ドワーフの王の登場に驚いた。
ドワーフ技術者の王国ドグルヌを統べ、
自身もこの世界の技術者、
職人スキルというそうだけど、
それの最高レベル10で職人王として君臨している
この世界の技術の王。
それが、僕の所にやって来たのだった。
「うーん、クラフトの神の信託によってのー
英雄王が、なんぞ、世界を革命しかねんモノを
作り始めているという事を聞いてのー
とても、そこら辺のドワーフの職人には
手に余るモノなので、お前が直接出向けとな…
そんな神の信託を貰ったんじゃー
クラフトの神の神託じゃからのー
仕方なく、わしも足を運ぶしかなかったんじゃよー」
言って王は髭をキュッキュとする。
「はい、採用です。陛下。
是非、是非に…
王族の職人とかもうクリティカルです、はい。
機密保持をどうするかで、困ってました。
ドワーフの職人王とか、最高です。はい。
土下座モードで、ご助力お願い致します」
言って僕は、そのドワーフの王にガチで土下座した。
「神剣を使えるというのに
ひょうきんな王だという噂は聞いていたがのー
噂通りらしいのー」
言ってドワーフ王はわっはっはと笑って
僕の背中を叩いた。
釣り針を海に入れたら
自発的にクジラが釣られてくれたような感覚。
募集って怖ぇぇーーー
面接を一通り終え
僕は一人休憩室で呆然と座っていた
『どうした?』
神剣がそんな僕に尋ねてくる。
「うん、別室待機している集めた学者さん達
どうしよかってね…
それと、何かしたくて集まった国民のみんな」
言って僕は壁に背を持たれる。
嫁姫達もタリスも、
そして、
もう当たり前の様に一緒にいるデルゼン陛下も
その待機室で僕の言葉を何も言わずに聞いていた。
『目的が見えてないんだろ?
それなら、今日はお帰り願っても
仕方ないのでは?』
そう神剣がみんなにも聞こえるように念話する。
「うん、でもなんかさ…
学者さんや魔導師さんのスキルとか
書いて貰うとさ…
この才能、それか努力の結晶、
それって勿体ないよなーって」
『勿体ない?』
「僕は、あっちの世界では
面接される側だった事があるんだ。
その時に、今の僕の様に尋ねられたんだ。
『何か』ではなく『何を』って…」
言って僕は笑う。
『ふむ…』
神剣はそれにただ頷いた。
「僕も同じ様に、ここに集まった学者さんみたいに
適当な『何か』しか、答えられなかった…
でも、今なら分かる。
それでは、採用できない。
採用できるわけがない。
そうなんだけど…、あの世界の僕と、
ここに集まった人達が違うのは…」
『違うのは?』
「あっちの世界の僕は、大した努力もせずに
ここの学者さんレベル5だ6だとか
そんなスキルすら持ってなかったんだ。
けれど、ここに集まってくれた皆さんは
少なくとも、あっちの世界の僕よりは
ちゃんと勉強して学習して、能力がある…
あっちの世界での僕よりは
間違い無く能力がある…
そしてあっちの世界の僕には、それすら特に無かった
とても大切なモノ
『何かをしたい』という意欲。
それが確かにある。
そんなみんなに、
ただお帰り頂くって、勿体ないなって」
言ってやっぱり僕は笑う。
『ふむ、なるほどな…
その才能なり習熟なり情熱が勿体ないと…』
神剣は上手い利き手になってくれた。
「今日の採用の基準は、
”できるかどうかはともかく、
『何を』したいのか”だった…
タレスが呪文書を作りたい
オールドが晶石を作りたい
まぁデルゼン陛下は…イレギュラーなんで
状況を見せれば、
そっから興味が沸けば
何でも作ってくれそうだけど…
でも…ポイントは
『何か』と『何を』の
そんだけの違いだったんだ…
才能や努力や情熱があったとしても
採用の基準って…」
『まぁ無目的に、知識欲で学ばれても
こっちはそこまで、余裕は無いからな。
無駄飯食いを雇える余裕は
今のジキスムントには、まだ無いのだ…
それなら、採用基準がそれで
足切りになっても仕方なかろう?』
その神剣の辛辣な言葉に、みんなが笑う。
「工業技術じゃなくてもいいんだ…
魔導理論じゃなくてもいい…
例えばエリン姫が、
たまに歌ってくれる吟遊詩人の歌とか。
それだけでも、聞いてる人の心が癒されるだろう?
それだって、みんなが生きて行く事には
大事な事じゃないか…」
「え…あ、はい…はい…その
そう言って貰えると…嬉しいです」
突然、話を振られたエリン姫が
どもって顔を赤く染めた。
「スキルがちゃんとある人が
そのスキルを持て余している…
それって、あっちの世界の僕からしたら
なんて勿体ないんだろうってさぁ…」
言って僕はそれに笑うしかなかった。
その時、デルゼン陛下が口を開く。
「お前さん、何言ってるのかよく分からんが、
やっぱり面白い奴じゃの…
じゃが、まだ王として若いわ…
なれば、王をする者の先輩として
言わせて貰うがの…
王なんぞ、ぶっちゃけていえば
何もかも全部できんでええんじゃよ…
一人で何でも出来る
超人なんかじゃなくてもええんじゃ…」
「陛下?」
陛下の突然の語りに、驚く僕。
「まぁ聞けい、英雄王。
まぁワシは好きじゃから、
したい事はつきつめるよ?
じゃから、職人王とかいうのになった。
じゃが、ワシは美味しい飯が作れるわけでもない
美しい歌が歌えるわけでもない。
洗濯も掃除も周りのモン任せじゃ。
わしの取り柄は、職人の王でしかない。
みんなに生活を支えてもらわんにゃ
それ以外のことは、なーんも出来ん。
王じゃとはいえ、全部が全部、
1人では出来ん無能者じゃ
じゃが、そんな無能者のワシでも
”王の仕事”だけは、ワシには出来る…」
「王の仕事?」
その言葉を聞いて、僕はデルゼン陛下を見つめた。
「王の仕事は、簡単じゃ。
しかし、だから何より難しい…
王の仕事は、導く事じゃ…」
「導く事?」
その言葉に僕は釣られた。
「そうじゃ…
採用の基準に満たなかった。
だから切り捨てる。
そんな単純な判断をするならの…
こういう例えは、どうじゃね?
馬鹿な事しかせん国民がおる。
面倒じゃ。
どうしよう?
いっそ皆殺しにして、良民だけを選別するか?」
「!」
その極端な陛下のたとえ話に
その場のみんなの顔が強ばる。
「しかし、
それは王のする事じゃないの…
まぁ、たまにはそんな極端な王も出るが…
それは、ただの暴君じゃ…。
馬鹿な事しかせん国民が居れば
それを止めて、良い方向に導く。
それが王の仕事じゃ…
王とは、人を導く事ができる者…
逆に言えば、それをした者を、
人は王と呼ぶんじゃ…」
「王とは、人を導く者…」
「ワシから、言わせて貰えれば…
よーわからんが、お前さんが…
英雄王が、面接受けたって何なんじゃ?
王を面接できるような者って、何なんじゃ?
神か何かか?
よーわからんが、
お前さんが、そんなに真剣に思い悩むんなら
それは本当の事なんじゃろう…
でも英雄王が?
ワカランの…
ま、後で、詳しい事を聞かせて貰うとして
その、お前さんを見た面接者は
ただ、お前の表面を見ただけで
”足らず”で切り捨てた。
そんなん、ワシから言わせて貰えれば
神でも王でも、何でも無いの。
『何か』が言えんなら『何を』を
促して、導くのが、本当の王じゃ。
それが出来んのなら、お前さんも
お前さんを切り捨てた、
謎の面接官と何も変わらんの。
そうじゃないのかの?」
言って陛下は自慢の髭を弄った。
「『何か』を『何を』に
導かないと…同じ…」
それを陛下に言われて僕はふっと考えた。
あの時、僕は”足らず”な自分だと思ってた。
でも…、あの世界も、
人を導けない”足らず”だったのかもしれないと…。
「ヒントはここまでじゃ
英雄王…
お主は、周辺国にその名を轟かせておる
色々な事を自らの行動で変えてきた、
英雄王ではないか…
どうして、迷う必要がある?
お主は、今までその行動で
人から英雄と認められたんじゃ…
戦争をして勝ったというわけでもないのにじゃ。
なら、どうすればいいか
その行動も、分かるじゃろ?」
言って陛下は楽しそうにウィンクした。
「ありがとうございます…
デルゼン陛下」
僕は、どうすれば良いのか分かって
だから陛下に頭を下げるしかなかった。
そして僕は、別室待機して貰っていた
学者や、何かしたい国民を
大会議室に集めた。
そして聴衆の前で、僕は切り出す。
「ここに居られる皆さんは、
今日の面接においては、
『保留』にさせて貰います」
僕は開口一番でそう言った。
それに僅かにどよめく全員。
「しかし、それは不採用という意味ではありません。
ここに集まってくれた皆さんは
『何か』をしたい皆さんだ。
面接をした今、分かったのは
その気持ちで、それだけは確かな事です。
しかしそれでは、
こちらは少しモノ足りません。
それに、こちらもようやく気付きました。
だから、一週間後でも良い、二週間後でも良い。
もう一度、あるモノを探し出して
また、訪れて欲しいのです」
僕はそう言った。
その言葉に、学者の一人が手を上げて質問をする。
「陛下、あるモノを探し出すとは
どんなモノを探し出せば、いいのですか?
迷宮での宝ですか?」
そう彼は問う。
僕は微笑んで返した。
「探してきて欲しいモノは、
迷宮の宝なんて難しいモノではありません。
しかし、それは皆さんには千差万別なので、
私には、具体的に「何」を指示はできません。
それは皆さんの心の中にあるモノ。
私が、探してきて欲しいと思うのは…
『何か』をしたい、という漠然ではなく
このジキスムント大学で
『何を』したいのか?
という具体的な探求物です。
それは、例えば歌を歌いたいとかでもいい。
美味しい酒を作りたいとかでも良い。
鉱山の補強の強固な柱を作りたいでも良い。
そう、些細な事でもいいんです。
絵を描きたいとかでも。
とにかく、そんな…
『何を』ここでしたいのか?
それを、…本当は何年がかりでも良いんですけど…
見つけてきて、僕達に話しかけて欲しい。
でも、ただ、漫然と”何時か”では
何時まで経っても、見つからないかも知れない。
私もそんな時間を過ごした事がありますから…
だから、まずは、そう二週間後くらいですかね。
貴方達がここで『何を』したいのか
それを見つけ出して、
そして、もう一度、面接させて下さい。
それで、よろしいでしょうか?」
僕はそう言った。
その言葉に全員が、おお、と声を上げる。
「他に、この国の国民のみなさんで
国に助力をしたいと
集まってくれた方々に、
直ぐにとは約束できませんが、
職業訓練所を作って、
そこに通って貰うのかどうか?
と、私は考えています…」
言って僕は、あっちの世界で親に勧められたそれを、
そこで提案してみた。
「職業訓練所?」
国民の1人がそれを尋ねる。
「それは
自分のしている仕事に対して
その仕事のスキルを更に磨く為の
訓練機関です。
みんなで集まって、
自分の仕事のスキルを磨くのです。
そしてみんなで研鑽し合う。
みんなで技術を見せ合って高め合う。
そういう施設で、
なかなか思いつかない
『何を』を見つけて貰えたら、と…
そう考えるのです」
言って僕が溜息をつく。
何を僕は言っているのだろうかと。
あっちの世界では、母に勧められても、
格好悪いと断ったその僕が、
それをみんなに提案しているのだ。
それは、どんなおかしな話なんだろう。
でも、僕は今、王だ。
例え異世界からの転生でも
今は、その立場に居る。
そしてデルゼン陛下が、それを後押ししてくれた。
ならば、どんなにそれが傲慢であれ
僕は、あの世界で切り捨てられた僕を
この世界では、拾わないといけないと思った。
それが今の僕に、
この世界から求められている事だから。
「私は、ただ皆さんを
今は『何を』が足りてないので
それだけで不採用にしたくない。
だから、この大学は、何時でも門を開きます。
ここで、みなさんが『何を』したいのか?
それを尋ねてこられた時には、
それが、この大学に皆さんが入学する時です。
私は、待っています。
みなさんが見つけてくる『何をしたい』を…
ずっと、何時でも…
私は門を開いて待っています。
だから、何時かここに集まったみなさんに
私の大学に全員入学して欲しい…」
僕がそう言い終わった後、聴衆から大歓声が上がる。
「陛下!陛下!
感激しました!!」
「分かりました
探します!『何をしたいか』を!
そして二週間後に必ず
このジキスムント大学にやって来ます!
お願いします!
もう一度、私達をその時、面接して下さい!」
「オラ、陛下の為に頑張りたい!
ジキスムントの為に、頑張りたいデスじゃ!」
そんな歓声が、その会議室に広がっていた。
「ありがとう、みなさん…」
そういった時、僕は自然に泣いていた。
その時、僕は分かった。
ああ、今、切り捨てなかったのは、きっと僕だ。
あの世界では、切り捨てられた僕を
僕が、この世界では拾ったのだ。
それが分かったから、
僕は思わず泣いていたのだった。
聴衆の熱狂的な歓声の前で
僕は、聴衆が不可思議な顔をするのもはばからず
そこで、僕自身に泣き続けるしかなかった。
「恐ろしい王が、生まれとるの…
あの坊主は、これが出来て何が不満なんかの?
正に、噂通りの英雄王ではないか…
のう、神剣様よ…」
その演説を遠間で聞きながらデルゼン陛下が破顔する。
側にあった神剣は、目は無かったがそれを見つめた。
『これが出来てしまうという事が
本当に辛いのでしょうな…
陛下が来てくれたことは心強い。
直ぐにでも事情をご説明します。
クラフトの神が、
貴方に信託を下した理由も
その時、直ぐにわかります』
神剣はそう言って笑った。
まぁ、SW1.0 のGMした事ある人なら、
「あんた絶対、次は魔晶石やるやろ?w 絶対魔晶石やろ?w」
ってバレてたろうなぁw
”レベリングのチートってどうすっかなー” って話が出た段階で
「あ、魔晶石www」
って思われたやろなーって、書いてて思ったwww
まぁ正直な感想として、フォーセリアの王家って絶対に馬鹿だよね。
国の上に立つ奴が、率先して技術開発促進しねーって有り得ねーし。
ただ、現実の中世は、カトリック信仰が強すぎて
”信仰以外の教えは悪魔の囁き” と火あぶりにされた
いわゆる「暗黒時代」という奴なんで、中世って技術革新緩慢だったんよね。
だから、イスラム帝国の技術革新に凹られたんだよな。
そう言う意味では、国家がアホでも「ヨーロッパ中世感ならなー」
ってのはあるんだけど、
多神教のフォーセリアで、カトリック一神教と同じ事が起きるって
ちょっと考えられないんだよな。
知識神ラーダって学術促進する神、居るし。
そこら辺の世界感のツメか、融通性に関しては
D&Dのマジキチレベルのルールブックには到底及ばなかったよな。
なんせD&Dは、緑本あたりから
「領土運営、国家運営」のルールが出てくるかんな。
貴族とか王様やろうぜ!高レベル冒険者なら!とか言い出して。
それと世界感の矛盾を解消する為に
「上位魔法使いになると、レベル1ぐらいの冒険者が冒険する
ダンジョンを自分で作る『クリエイト・ダンジョン』って魔法があるんだ!
ここに上位魔法使いは、財宝を隠して、冒険者がそれを漁るのだ!」
とか、すげー呪文とルールがあるからのー
ダンジョン作って、冒険者カモって財宝溜めるとか
どんなアホな魔法使いがそんな事考えるねん…
普通に超強固な金庫でええやん
って思ったネー。