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第十二話 どうも募集らしい

らしい…


急いで、カールラント公王との密談を

エレシア姫と僕とタラスの四者でする事になった。

今では、この公国の宮廷魔術師レベル7がお付きになり

ジキスムントとカールラントは直ぐにでも

「テレポート」で行き来できる様にされていた。

ま、エレシア姫、この世界の『医者』の感覚では

超重要人物だし、

エロい事ばっかりして

トランスファー・メンタルパワーで

精神点使いまくってる場合じゃない。

普通は、医者として働いてもらわんと困るのだ。


ともあれ


「なるほど、素晴らしい発明だ…

 『キュア・ディシーズ』の携帯化

 しかし…」


公王は、僕らの懸念を一発で看破した。

やはり王族、上に立つモノは「その問題」が

いつも脳裏をよぎるのだろう。


「そう、この開発は他の呪文にも派生します。

 戦争にも使える武器になる…」


代表して僕が言った。


「医療国家である我が国としては

 そうなってしまうと困りますな…

 いや、戦争での負傷者救済で、

 一儲けとでもいきますかな?」


そう言って公王はみんなを笑わせた。


「ともかく、冗談はさておき

 こういうのはどうでしょう?

 まだ試作という面もある。

 その技術は、我々が秘密裏に

 開発したという事にして

 我々が、一時、独占販売するというのは?」


言って公王は提案をしてきた。


「お父様、それでは皆への普及が!」


姫が声を上げる。


「それは分かっている。

 しかし、皆が皆、それを作れるわけでもないし

 その木版呪文書が、

 仮にジキスムントで生産されたとしても

 それにキュア・ディシーズを付加する僧侶の確保は?

 それは、どうするというのか?

 …と考えれば、

 我等が貰い受けるのが妥当ではないですかな?

 何か我々にしか作れない的な、

 ダミーを施して、その技術が直ぐに拡散しない様に

 ゆっくりと推移を見守るという

 そういう必要があるのではありませんかな?」


公王の王としての長年の国務の印象から

性急な事をすると、ロクな事が起きないという事を

よく知っているのだろう。

時間がかかっても、ゆっくりと拡大させるべき

との意見だった。

なるほどなぁと思う。


「まぁ私の目に狂いがなかったのは幸いです。

 娘を嫁がせて、僅かの間にこんな宝が

 私らに飛び込んで来た。

 王としては、してやったりですな」


言って公王はニヤリとする。


「そんな娘を人身御供の様に言うなんて!」


思わず僕はそう言った。


「エレシア、お前、この大王に嫁いで

 不幸だったかい?」


その言葉に公王は娘の方に声をかけた。


「え…あの…その…はい…

 毎日、充実してまして…」


公王の言葉に頬に手をやって顔を赤らめる姫。


「ふふ、国同士も豊かになり

 嫁いだ娘も幸せになった…のなら

 王として父としては、

 ウィンウィンといった所ですがな…

 孫の顔が早く見たくなってきましたぞ」


言って公王はまた僕にウィンクした。

その言葉に姫も僕も照れる。


「ともかく、ひとまずはその技術を

 私達が作り上げた事だという風にして

 独占させて欲しい。

 国家的な下心もありますが

 それよりも、

 ジキスムントが作ったという事で

 方法論が分かれば、誰にでも出来る、

 あるいは派生技術が思いつく

 その急激な拡散が怖い。

 私の懸念はそこです。

 当然、謝礼は、

 密かという形にしなければなりませんが

 貿易という形でさせて貰います。

 だた、事が事。

 貿易のレートは、

 王族級の、我々だけの密事で

 当面はせねばなりますまい。

 ともかくも、焦っては駄目だ。

 しかし、研究開発は促進して貰いたい。

 ははは、上に立つ者というのは

 僧侶の私と言えど、欲深き者になりますな。

 フフフ

 法神の下僕の私が、

 これでは商売神の下僕の様だ。

 しかし、法神の精神の下においても

 正しい観点と思います。

 ともかく、少しずつでもいい

 我々で、進めていきましょう」


そう公王が語ったことで、ひとまずは話がまとまった。

公王の指揮の下で、信頼ある高位僧侶達と

試作の木版での実験検証が始まる。


こちらは、木版呪文書の安定生産

そして活版印刷で生産性を上げる作りの開発を

進める事にした。


「人手がかなり足りませんな…

 インクの適正濃度の研究。

 インクの安定化。

 呪言金型の断片化といっても

 それを作る職人の確保。

 いろいろです」


言ってタラスは頭をかかえる。

タラスは今は更に踏み込んで、

『既存魔法以外に、魔法は存在しないのか?』

という研究を、してみたいらしかった。

少なくとも『キュア・ディシーズ』の携帯化に

目処がつきそうだという

一番の目的が、思わぬほど早くに進んだのなら

元々の疑問であった

『何故、攻撃特化なのか?

 なぜ持続時間が短すぎるのか?』

それについて考えたいという事だった。

それは僕も思う。


『魔法が生活の役に立たねぇ』


それを知れば、僕に抱いていた魔法感と

随分、魔法はかけ離れていると思える。


そして王族研究室にて…


「ライトの魔法をスクロール化させれば

 夜を照らす灯りになりませんか?

 蝋燭での夜は、とても暗いですし…」

とリーナ姫。


「ブラウニーという精霊が居ます。

 その精霊魔法『ブラウニー』が

 スクロール化できれば、王の元居た世界での

 掃除機なるモノに似たことができませんか?」

とリースロット姫。

 

「『キュア・ディシーズ』も大事ですが

 レベル1でも使える『キュア・ウーンズ』の

 スクロール化もいいと思いますの陛下」

とはエリン姫。

僧侶の修行をエレノア姫としてから

医者的自覚に目覚め始めた。

それも二人とも同じ「大地母神」の信仰なので

医療に関しては意気込みが強い。

エレノア姫が女医なら、

エリン姫は看護婦といったところか…


あ、そういうプレイっていいな。


おっと、男の自堕落な妄想が…

いかんいかん…


しかし、みんなにコスプレさせてというのも…

それはそれで…


おっと、男の自堕落な妄想が…

いかんいかん…


ともあれ、嫁姫達はアイデア大爆発。

それも、全部レベル1という初級者が

使える魔法ときたモンだ…


木版の量産に目処がつけば

かなりの初級魔導師が、生産に従事できるなぁ…


「戦う事ばっかり考えて

 生活に魔法を使うって事

 考えなかったのが、最大の盲点なのか…」


僕はそう呟いた。


『剣の私には、耳が痛い言葉だな…』


神剣はそう言って腐った。



ともかく、ジキスムントの寒いと思われた冬は

越せそうになった今、

次の為に下ごしらえが必要だった。


今、当面の問題が人手。


いや、国としては国民が頑張ってくれてるし

生活という面においては、苦しいなりに人手はある。


問題は、『ジキスムント大学』に必要なスタッフ。

記録の保存と、この世界での技術開発。

そういう研究者開発者としての人手。


なので、公募をかけてみた。


『学者募集』と


意外に集まった。

なんか、みんな不思議に思ったらしい。

『身分は問わず、やる気のある者募集』

って謳い文句が。


そっかー、この身分社会においては

身分を問わないって、凄い事なのかーー

そっかー。

あっちの世界じゃ、普通の感覚だったけど

それは普通じゃなかったんだ!

僕はそれに驚く。


そして思わず辞書を引いた。


辞書曰く


『活版印刷』により『本』が爆発的に普及すると

そこで起きたのは『聖書』の出版であった。

この世界で最も読まれた本といえば『聖書』

『活版印刷』を最初に作った

グーテンベルグも、『グーテンベルグ聖書』

という聖書を普及させたい動機で作ったという。

特記事項になるが

『不器用だった』グーテンベルグが

当時の1ページを丸ごと彫って作る、

”ページ金型木版印刷職人”でありながら、

1ページの制作に失敗しまくってキレたので

文字をバラバラにして組み合わせたらどうだ?

というアイデアから、

活版印刷の考えの基礎は生まれたという。


「ぶ、不器用が転じて、大発明になったんか…

 そ、そういうのもありか…」


ともあれ、『グーテンベルグ聖書』を

読ませたいという一念で作った

それは『聖書』の大普及となり、

また当時の黒死病の大流行とも相まって、

カトリック信仰と『聖書』の

内容矛盾が次第に浮き彫りになり

『ルネサンス』というギリシャ時代の

研究文化を再検討する気運となる。


「人が2000万も死んでた時代に

 それでも、文化再発見とかしてたのかよ!

 どんだけメンタル強かったんだよ!

 14世紀頃の人類!」


ルネサンスを経て、やがて、

『聖書』とカトリック信仰の内容矛盾が激化し、

王族のカトリック離脱の願望もあって

『宗教革命』という大戦争が起きる事になる。

それらは全て『本』という知識媒体が

一般の者にまで浸透したからであり

識字率が低かったので、潜在的でしかなかったが

カトリックの信仰支配が弱まった事で

『大学』を起点に科学の研究が促進し

人文学の研究もそれに乗って

『市民革命』という『市民』の意識が醸成された。

遠因と言えば遠因であるが

『本』の普及により

長い時間と思想対立での死者の骸の上に

身分階級の崩壊が為されていった。


「本が…長い時間をかけて…

 身分制度を変えていった…のか…

 紙と活版印刷と本…その連鎖が…」


僕はそれを知り、今、自分がしようとしている

僕にとっての当たり前に思えたあの世界、

そこに、当たり前にあった「本」が、

この世界では、何百年必要なのかは分からない

でも、何時か人の心を根本的に変える物として

今、生まれようとしているのに気付いて、総毛立った。


僕は今、この世界の未来に革命を促している

それの実行者なのだと気付く。


『何でも無いと思っていた事をするのが

 場所によっては、”何でも無くない”

 というのは、結構、面白いだろう?

 あの世界では”凡人”だったお前が

 その”凡”の感覚さえ、

 この世界では驚異的なんだという事が…』


神剣がそう皮肉を言ってきた。


「ふふ、そうだな…

 ”凡”って感覚、それ自体がチートなんだな…」


そう言って僕は笑った。




なんか、5万文字、越えるし10万文字覚悟せにゃならんけど…


これはこれでええかもなーって


異世界転生、チート、ハーレム でも結構、書けるじゃん…


むしろ書いてて面白い。



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