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悪役令嬢?断固拒否します。

作者: 上条伊織

 先日、学校帰りに通り魔に刺され「あ、死んだ」と思った私ですが、何の因果か生きていました。否、それには少々語弊があります。

 正確には転生したといったほうが正しいと思います。ただし前世の記憶を持って。

 また生きれるのは嬉しい。やれなかったことをチャレンジできるわけだし。でも、せめて記憶は消してほしかった……っ。それか三歳児くらいになったときに思い出したかった。

 だって、だって――。

 この年齢(精神年齢)になって下の世話をされるなんて――!

 確かに見た目0歳ですよ!?生後数か月の赤ちゃんですよ!?でも、身体はそうでも精神は立派な大人!いくらしてくれるのは女性でも羞恥心はあるんです。恥ずかしいものは恥ずかしい!

 ――と、思っていた時期が私にもありました。なんかいろいろとごりごり削られて吹っ切れたのは多分仕方ないことだと思います。

 (わたくし)、今世の名をリリアンヌと申します。今年で5歳になりました。父はシャーロット伯爵で現役の軍人さんです。20代後半にしか見えないと思っていたら本当にまだ20代後半なようでした。ちなみに私の母はすでに他界しております。しかも私、実は愛人の子どもだそうで。家での立場がものすごく微妙なんですよね……。

 本妻の方は元侯爵令嬢らしく身分が自分より低い父に嫁いだことに未だ納得がいっていないようです。でもよく見るとこの人、ただのツンデレなんですよね。ワガママ言うのもただ構ってほしかったりで、正直見ていて微笑ましいのです。愛人の子どもでもある私にも一応相手をしてくれています。普通だったら育児放棄したり暴力をふるったりするのに。

 本妻さんのお子さんで私には兄が二人います。レイフォードお兄様とアルフォンスお兄様です。二人は双子でとっても優秀だから「シャーロットの双璧」と呼ばれているそうです。私より一つ年上で片親しか一緒じゃない私のことをちゃんと可愛がってくれる自慢のお兄ちゃんです。

 妾腹だと知ったときはショックでしたが幸いにも父は伯爵でも辺境伯という貴族だったようで。母を亡くした私を引き取ってくださいました。本妻の方も母と呼ぶことは許してはくださいませんでしたが構ってくださいます。というより構い倒してきます。女の子がほしかったそうですが彼女のお子さんは男の子なので。あと、私が父似なのもあるのでしょう。

 私の父、イゼルス=フォン=シャーロット辺境伯は国の国境を守る重要な役に就いております。凛々しい顔立ちの銀髪青目のイケメンさんなのです。

 対して私ですが、父と同じ配色ですが全体的に白っぽいです。白銀の髪に薄氷色(うすらひいろ)の目って感じに白いです。当初は色素異常の類かと本気で悩みました。

 あと、この世界には魔法が存在するみたいです。

 と、いうのも侍女さんが読んでくれる絵本すべてに魔法っぽいのがあって不思議には思っていたのです。決定的だったのは兄たちの喧嘩なのです。

 兄たちは現役軍人さんの子どもなので剣を習っているのですが、今日の模擬戦でレイフォードお兄様がアルフォンスお兄様に二連勝してしまったのです。今まで剣の腕は互角だったアル兄様は悔しくて仕方なかったらしく再戦をレイ兄様に申し込みました。面倒くさそうなレイ兄様でしたがアル兄様の「逃げるのか」という挑発にまんまと乗せられ……。兄様ちょろいです。

 その再戦が、魔法でした。レイ兄様が風魔法の使い手でアル兄様が火魔法の使い手です。

 意外なことに理知的な見た目のレイ兄様は魔法が苦手なようで、アル兄様の火魔法に翻弄されまくりです。しかも属性の関係もあってレイ兄様は苦しそうです。

 理知的見た目のレイ兄様が剣、野生的見た目のアル兄様が魔法。

 なかなかどうしていいコンビ、と思っていたのですがこの後悲劇が起こります。

 お互い最後の魔法として放ったであろう風と火の魔法が拮抗し私の方へと向かってきたのです。つい条件反射で周囲に水を集めようとしたのが失敗でした。

 ドカンッ――

 水素爆発を起こし庭は半壊、屋敷の一部は崩れ、私は全身大火傷。

 本妻さんが治癒魔法をすぐにかけてくださったので死ぬことは免れましたが、とっさにかばった左腕にケロイドができてしまいました。珍しく本妻さんが「痕が残ってごめんなさい」とおしゃってくださいましたが、私は全身の火傷が左腕以外きれいに治ったことに驚きです。顔は父似の凛々しさあるものですし、焼き切れたはずの髪はツヤサラです。多分重点的に治されたであろう顔と髪――。別に、いいですけどちょっぴり複雑です。

 ちなみにお兄様方は二週間の謹慎と魔力コントロールを徹底されていました。爆発が起こったのは私が水素を集めてしまったのも原因ですが、実はお兄様方も魔力暴走を起こしかけていたからだそうで。

 一人娘が仮にも生死の境をさまよったのです。大激怒したお父様が魔力コントロールが完璧になるまで私には合わせないと宣言されたそうです。

 私は私で魔法理論を叩き込まれました。火と風の混合魔法に水魔法で防ごうとするなど言語道断。今回のように水素爆発を引き起こしかねないし、水蒸気を発生させてしまって視界不良の中かまいたちに襲われる、なんてこともあるそうです。こういうときは土魔法による対処がベストだと教わりました。

 さらに父様、私の婚約まで取り付けてきました。自分で言うのもなんですが傷物になった私の婚約です。相手の子が可哀想です。

 兄様方が魔力コントロールの特訓を行っている間にその婚約者と会ったのですが……。

 王子様でした。金髪碧眼の絵に描いたような秀麗な男の子です。何だか見たことがあるようなないような。もうちょっと大人になって、騎士の服とか着ていたら――……。と考えたところで私の意識は途切れました。

 なんとなく転生したことで予想はしていましたよ?私だって前世は夢小説とか読んだりコミケとか行ったりする立派な乙女でしたし、兄たちがとても優秀で端麗だとも思っていましたよ?だから、だからって――。

 自分自身が乙女ゲームのテンプレ悪役令嬢に転生するなんて思わないじゃないですか!

 しかもリリアンヌといえば結構嫌な女でしたよ!?ヒロインに水被せたり大人数で囲んで罵声浴びせたり男に襲わせようとしたり……。

 無理です。嫌です。断固拒否です。

 私の心臓に悪いじゃないですか。しかも攻略キャラって私のお兄様方に婚約者が当然含まれているじゃないですか。当て馬なんてごめんこうむります。

 とりあえずお父様、婚約破棄してください。え、こちらから申し込んだ?知りませんよそんなこと。それからお父様、私、剣術と魔法を習いたいです。実戦向きの。

 私、結婚しなくても自立できるようになりたいのです。悪役令嬢なんて断固拒否します!

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