21「何かしらの御導き」
21「何かしらの御導き」
遠くで、重く響く様な鐘の音が鳴り始めた
気付けばさっきまで、大瑠璃の剥製が飾られた豪華な部屋だった筈の
王様の部屋は・・・
引き出しは全て抜き出され、ベットのマットは引き剥がされ
飾りは、剥製を飾っていた土台を残して放置され
荒れ果ててしまって、廃屋の様になっている
『コレはコノ理に関係する死者の皆さんと
死者に望まれ、救われた貴方達が選んだ結果なんですよ』
モルスは楽しそうに笑ったまま、私達をフリースの毛布で包んで抱き抱え
開いた窓から城の外へ出て、とても大きな黒い犬の背中に乗って
私とプティラを連れて、城を飛び去る。
一瞬、城内の端に見えた温室も・・・
見るも無残に全ての硝子が割られ、廃墟と化していた
この分だと、中の暖かい地域原産の植物は
きっともう駄目になってしまうか、枯れてしまっているだろう
私が通う程に気に入っていた、綺麗に飾り彩られていた頃の城を思い出し
私は閉じ込められるまで、大好きだったこの場所の急激な変化に
少しだけ胸が痛んだ。
私とプティラは・・・
私が前、エウおじさんに口頭で教えて貰った事のある
湖にある、廃村への目印の古い桟橋の近くに連れて来られた
そこは鏡の映像の中で、剥製が焼かれていた場所であった
但し、今見る限り…剥製を焼いた痕跡は、殆ど無くて
密かに焼け焦げた様な臭い、微かに残っている状態になっている
明るい時間に来たのならば…
「焦げた地面の痕跡くらいは、見付けられたかもしれない」
と、私は思った。
それにしても・・・
「何時焼かれて、どの位経過しての今なんだろう?」
私もプティラも、今が何時なのか分からない…
因みに私は「夢を見た」と、思った辺りから続く
コレが「夢の続き」なんじゃないかって疑っていない事も無い
夢である方が、私的にしっくりくるような気さえする
と、同時に・・・
「夢を見た」と思った所から、既に夢ではなくて…現実で
今も目が覚めないのが、その証拠ってな可能性も高い
そんな中でも、一つだけ確実な事は・・・
この場所と、この世界が「鏡の中の映像の後の状態」である
と、言う事だけだった
「どうしてこうなった」とか「不思議な時間の経過の理由」とかは
私には理解する事が出来ない
現実なのか夢なのかさえ、判断できてなかったりするのだけど
私達は、その時の流れに身を任せる事にした。
モルスが、大きな犬から降りた
湖の古い桟橋に、月明かりに照らされた1羽の大きな鳥の影がある
モルスは無言で、桟橋を渡り…その影に近付いていく
『オリエンタリスさん…賭けは貴方の勝ちです
貴方の言葉通り…剥製にされた御嬢様は、真実を知って
親を裁かれるべき場所へと導きました』
モルスは膝を折り、影と出来るだけ目線を合わす
そこに居たのはオリエママだった
『でしょ?王様と違って、私とエウの本来の御主人様は
そう言う人間だったのよ』
死神と仏法僧は、見詰め合い微笑み合う
『そうですね…それで、コレは景品の南西への同行者です』
訳の分からない、モルスとオリエママの会話の後
私とプティラは、オリエママに引き渡された
訳が分からな過ぎて
私とプティラは、モルスとオリエママに質問したけど
モルスは『守秘義務の為に黙秘します』と…
オリエママは…
『エウがね、御主人様と御話して出た結果なのよ』と、だけしか
教えてはくれなかった。
湖の上を冷たい北風が吹いた・・・
季節は、私達にとって都合の悪い事に
もう「冬」になってしまっているのかもしれない
私が慌てて『渡るなら寒波が来る前に渡ってしまわないと』と、言うと
モルスが再び、私だけを柔かいフリースの毛布に包んで抱きあげる
私は勿論、プティラとオリエママも驚いた。
モルスは、本当に優しげな笑顔を私に向けていた
『君は私にとって、とても特別です…
キャノメラナと君の両親の願いで、2人のキャノプティラの為に
命を救われ、卵から孵ったキャノメラナさん』
モルスが何を言っているのか・・・
私は最初、全くと言って言い程に理解できていなかった
『特別ってどう言う意味ですか?』
私より先に、理解したらしいプティラが緊張して
私の代わりにモルスへ質問してくれる…してくれたけど
モルスは私だけに向かって
『キャノメラナさん、君は知らないでしょうが…
君程、私の影響を受けて今を生きている者は存在しません
今回だって…
同じ様に同じ時期に捕らえられた兄姉、親戚一同の犠牲による願いで
私によって救われたんですよ』
どうやって、救われたか分からないけれども…
私はあの時の事を思い出して、悲しくて涙目になった
モルスが気を使うかのように
『後、エウリュストムスの願いでもありました』と、付け加え
『コレはエウリュストムスから事前に直接、聞いたのですが
君を「捕らえられる」ように仕向けたのは
君を「傷付けたりする為」では無かったそうですよ』
更に付け加えられた言葉に、もう既に忘れていた
エウおじさんに最初会った時、騙されていたらしいと言う事実を思い出し
私は微妙な気持ちになる
『何はともあれ、私は君が知らなくても
卵から孵る前から君の事を救い、長い間ずっと見守ってきていて
君に愛着を持っている訳です』
私はモルスの言葉に『そぉ~なんだ…』としか、言えなかった。
『そうそう、此処から本題です
キャノメラナさんの兄のキャノプティラと、その他の兄姉
親戚の方々の願いは、キャノメラナさんの幸せなのですが…』
そう言ってモルスはプティラを見た
『キャノプティラくん
このキャノメラナさんを確実に幸せにできなさそうなら
キャノメラナさんを私に譲って下さいね』
何だかモルスは・・・
私の意思を無視して、会話を進行させるつもりらしい
私は毛布の温もりに眠気を誘われ、うたた寝しながら会話を聴く
『もし、譲ったらどうするつもりですか?』
「モルスもプティラも「譲って」とか「譲ったら」とか
私を「物」みたいに言うのは止めて欲しい…」
『オリエンタリスさんの死後、私の使い魔として生れ変って頂きます
キャノメラナさんは、誰からも愛される立派な使い魔に成りますよ』
「モルスさん…使い魔って、何ですか?
生まれ変わるって、どう言う事?私、それで無事ですか?」
『幸せに出来なきゃ僕は、メナと一緒にいちゃ駄目ですか?』
「私的にはそれで幸せだからOKなんだけどな…」
『駄目ですね』
『って、何でモルスさんが私の幸せを決めちゃうの?!』
『そうよね、メナちゃん無視して話し勧めちゃ駄目よ!』
黙って聞いていた私とオリエママが
自分勝手な事を口走るモルスに、突っ込みを入れる事になった。




