13「閉じ込めた思い」
13「閉じ込めた思い」
私が幼少の頃、兄貴達や姉貴達から聞いていた事
オリエママが語ってくれた御話
エウおじさんが、誘い繋いだ物語
私は、その当時の主人公達の気持ちが
どんなモノだったかを想像する事しかできないけれど…
私と同じ名前で、同じ鳥の女である「キャノメラナ」の為に
プティラ兄とプティラ王子様が2人、共に
少しづつ違った辛い思いをした事だけは、理解出来た。
それにしても…プティラ兄は、どんな気持ちで・・・
私に「キャノメラナ」と、名付けたのだろう?
プティラ兄は、どんな気持ちで・・・
プティラ王子様の元へ行きたがる私に、付き添っていたのだろう?
プティラ兄は、どんな気持ちで・・・
捕らえられた私を助けに来たのだろう?
それよりも、私は・・・
どんな気持ちでプティラ兄を死なせてしまったのだろうか?
私は、プティラ兄に・・・
どんな気持ちを味あわせてしまったのだろうか?
私の中で、真っ黒な不安と罪悪感が芽生え
宿木の様に丸く大きく育っては、1つ2つと数を増やしていく
プティラ兄を好きだったのに、プティラ王子様に乗り換え
その後で、プティラ兄の元へ戻りたがって死んだ
「キャノメラナ」に対する苛立ちよりも・・・
自分への苛立ちが勝っていく
私は…無性にプティラ兄に会いたくなった。
『メナちゃん?どうしたの?大丈夫?』
私が「悲しみ苦しむ理由」を知らないオリエママが
私を心配してして声を掛けてくれている
私はオリエママにまで、自分の抱えてしまっているモノの為に
苦しんで欲しくなくて・・・
『プティラ王子様に嫌な思いさせちゃったかもって、心配で…』と
私が迷惑を掛けている、もう一人の相手の事を持ち出した。
実質、プティラ兄と同じくらい
プティラ王子様も「キャノメラナ」の為に苦しんだ事は
プティラ王子様の事も好きな私には、容易に想像できた
それに・・・
私が「キャノメラナ」より劣っていて、美人ではないにせよ
プティラ兄と「キャノメラナ」が幼馴染と言う事は
ほぼ確定的に「キャノメラナ」は、私の親戚であり
私と血の繋がりがある可能性が凄く高く
「キャノメラナ」と、多少なりとも
容姿的に似た印象や似た部分があるかもしれない
私自身が「プティラ兄の妹である」と、言う事もある
その上で私の名前も「キャノメラナ」だと言う事は・・・
どれほどまでにプティラ王子様の古傷を抉っている事だろうか?
きっと、私が想像するよりも深く傷付けている事であろう。
私はできる事ならば…今、直ぐにでも・・・
プティラ王子様と初めて出会った時
プティラ王子様に私の姿を発見される前に戻って
私自身を温室の上にある木の上から
兄貴達や姉貴達…親戚の兄さん達や姉さん達の居る森の方へ
連れ戻したかった。
外から、羽音が聞こえてきた
エウおじさんが帰ってきたのだろうか?
戻れない現実の物語に溜息を吐いて
私は、今いる飼育小屋の屋根からの出入り口に
ゆっくりと視線を向け…
自分に覆い被さって来る影に驚き・・・
『ぴぎゃっ』
更には逃げ遅れて体当たりされ、その下敷きにされてしまった。
オリエママの笑い声が聞こえてきた
『これはまた、熱烈な事で…』
エウおじさんの嬉しそうな声も聞こえてきた
『メラナ!無事なのか?体調は悪くないか?大丈夫なのか?』
想定外…想像以上に焦り、想像出来なかった程に私を心配してくれる
プティラ王子様の姿が、私の上に乗っかっていた
私の中でちょっと前まで考えていた事が、全て吹き飛んで
私は、プティラ王子様に押し倒され
身動きできない程に押さえ付けられるとは思いもしなかったのと…
プティラ王子様の充血した目、憔悴した顔に衝撃を受け
プティラ王子様のする事に抵抗する事は出来なかった。
プティラ王子様からは、兄貴達と違う匂いがした
抱締められるのは、嬉しくて心地良いけど・・・
ドキドキして、気恥かしくて…
オリエママとエウおじさんの視線が気になって、少し居心地が悪い
私は如何したら良いか分からず、身動きも出来ないまま
『心配させてしまって、ごめんなさい』と、だけ
プティラ王子様に伝える。
プティラ王子様は何か言いたげに
私を『メラナ』と、呼んできつく抱締めていた
『プティ君!名前が一緒だからって
違う子を同じ様に呼ぶのはどうかしら?違う子なんだから
ちょっと変えて「メナちゃん」って、呼びましょうよ!』
何気ないオリエママの提案が・・・
『そうだな!前の子の事と、混同してしまったら
ややこしい事になるから、その方が良いかもしれないな!』
エウおじさんの同意が・・・
私が、プティラ王子様の妻だった
プティラ王子様が「深く愛していた」であろう
亡くなってしまった「キャノメラナ」とは「違う」のだ…と
私がこんなに「思われている」のは
亡くなった「キャノメラナ」への「思いを残した」
プティラ王子様の「切ない恋心」が、為せる業で・・・
私が「私自身が、愛されている訳ではない」と…
私に「勘違いするなよ」と、言っている様な気がした。
鳥籠越しでも、優しく接してくれていたプティラ王子様は・・・
遮る物が無くなっても、とても優しかった
でも、優しくされればされる程に…私は、悲しくなった
プティラ王子様に…大事に、大切な者の様に・・・
扱われれば、扱われる程に…私の心は寂しくなった
プティラ王子様に、私の事をどう思っているか?
プティラ王子様にとって、私はどう言うモノなのか?
確認する事ができなくて私は・・・
相手の思いに拘り過ぎて、拘泥し…
深く泥沼にはまり過ぎて、自力でそこから出られなくなっていた。
また、今日もプティラ兄に会いたくなった
会えたとしても、それは剥製で…
決して「プティラ兄が私に声を掛けてくれる事」は、アリエナイ
もう二度と「私を抱締めてくれる事」は、無いと理解していても
私は、プティラ兄に会いに行きたくなっていた
人間が私を閉じ込める為に準備した、あの鳥籠に帰れば・・・
プティラ兄に会えるだろうか?
でも「どうやって帰ればいいのか?」が、私には分からない
そもそも、プティラ兄の居る場所に行く事が出来る
「私が居た場所」「私が帰る場所」が、まだ存在するのかすら
私には分からなかった
私は飼育小屋の天井の開いた場所、温室の天井が見える場所
温室の天井から・・・
今ではもう懐かしい…私が外から温室の中を覗いていた場所
プティラ兄が嘗て、私を見守ってくれていた
木の高い場所に向かって、レクイエムを歌いだした。




