01 私達は旅人
01「私達は旅人」
私が覚えている限り、物心付くまで住んでいた「この土地」に…
今年も私達は、この大陸に・・・一時の間、根を下ろす
私達は毎年、夏に向けて海を渡り…山や谷を越えて…
「この土地」にやってくる旅の一座の一つ
冬にはまた・・・山や谷を越えて、海を渡る旅人の一行
『先に帰った兄貴達はもう、良い場所を確保してるのかな?
今年こそ…どの兄貴でも兄さんでも良いから
相手だって、何処の一座の人とでも良いから
誰か特別な恋人か、嫁をゲットしてくれると良いのだけど…』
私は久し振りの帰郷に胸を躍らせながらも、少しだけ・・・
自分の兄貴達、親戚の兄さん達の事を心配していた。
余計な心配する私を・・・姉貴や親戚の姉さん達が笑う
『ちょっと家の人達は、自信過剰でナルシスト過ぎるから
恋人探し処か、嫁探しなんて…
誰かの後押し無しでは、無理なんじゃない?』
私は「確かにそうかもしれない」と、苦笑いを浮かべた
悲しきかな・・・
我が兄貴達と親戚の兄さん達の「男としての評価」は
ちょっと、なんて言ったら良いか…強いて言えば「低い」のだ
『じゃぁ~…姉さん達、誰か兄貴達の嫁になってあげてよ!
姉貴も、兄さん達の誰かの嫁になってあげなよ!』
繰り返される私の「嫁入りの御願い」に
姉貴と親戚の姉さん達は、軽く鼻で笑うだけで
今まで、良き返事をしてくれる人がいなかったのだけど・・・
女性陣が、そう言う年齢になったのか?
男性陣それぞれの「良い所」を
私が時間を掛けて繰り返し「売り込んだ結果」か?その成果か?
今回は、何人かが「満更でも無い態度」で微笑んでいる様に見える
「後で、誰になら落とされてくれるのか確認して
仲を取り持ってあげなくては…」
私は「その微笑」に、確かな手応えを覚え・・・
婆様達や、親戚の御母さん達と一緒になって
御節介根性丸出しで、徹底的に完璧なリサーチを始める
そうこうしている間に、身内での「嫁探しの時間」は過ぎ去り
毎年、来ている地域「目的地」に辿り着いた。
先陣隊で先に来ていた「私と一番、仲の良い兄貴」が
今年も嬉しい知らせを「出迎え序」に持って来る
『今年も豪遊出来る程に、大地の実りが良いぞ!
安心して良い!今期も皆で楽しんで、この時期を過ごそうな!』
すっ飛んできて、私を抱締める兄貴に対し
その場に居た皆が、緩い笑いを浮かべていた
そして・・・
先に目的地まで来ていた男性陣の報告に、皆は喜んだのだけども
私的には、ちょっと複雑な部分があった。
先陣隊を率いていた長老や爺様達と親戚の父さん達
同い年や年下の・・・従兄弟や親戚の兄弟が揃っているのは
皆が無事で辿り着き「元気である事」で「良し」としよう
残念なのは・・・
兄貴達や親戚の兄さん達も勢揃いである事なのである
勿論、旅の途中で誰一人として欠ける事も無く
皆が無事で、私達を出迎えてくれるのは嬉しいのだけれど・・・
他の同種の旅の一座の女性陣が、既に到着していると言うのに
誰一人として、女性を引掛けて来ないとは
ちょっと、情けないかもしれない
他の一座の男共は、既に女性達にアプローチを始め
次の段階へ進んでいるのが見受けられるのだ…
兄貴達や兄さん達に、浮気性な男になって貰うのは嫌だけど
なんだかとっても奥手で、草食系男子過ぎて
辛い気がするのは、私だけか?私の気の所為か?
私は、そろそろ「オッサンな年齢に差し掛かる」
高年齢層の兄貴達&兄さん達から目を逸らす様にして
森の方向に向かってバレない様に、こっそり隠れて溜息を吐いた。
『キャノメラナ!俺等の話をちゃんと聴いているのか?』
不意に、兄貴の一人が
溜息を吐いた私の頭を掴む様にして抑え付けてくる
「何時もの注意事項の演説中に、溜息ついた私が悪いんだけど…
要らない所でコノ兄貴は、目敏いんだよね…」
私は『ちゃんと聞いてるよ!』と、言って
自分と仲のよろしくない、私的に好きくない兄貴の手を
自分の頭の上から乱暴に払いのけた
『森の中の城には、近付くなって言うんでしょ?』
『そうだ!毎年、耳にタコができるくらい
俺達の口が酸っぱくなるくらい言っている事だが…
森の中にある見栄えの良い綺麗な城には
悪い王様が住んでいるから、近付いちゃイケナイぞ!
アレは、獲物を捕らえる為の罠だ!
捕らえられて、奴隷の様に従わされて
一生処か死んでも、城から出して貰えなくなるんだからな』
真剣過ぎる、真面目過ぎる兄貴を見て…私はまた、溜息を吐く
『はい、はい!大丈夫、大丈夫!用事が無ければ行かないし
そもそも…私はそんなに鈍臭くないよ!
何があっても、簡単に捕まるなんてヘマしないし…って…』
「あ…不味い!」
私の態度や、言い草で・・・
兄貴の御機嫌が悪くなるのを私は、その表情から読み取った。
私はとっさに、兄貴の首に一瞬だけ抱き付き
先程、姉貴達や姉さん達から得た最新情報をそっと囁く…
今回、私の予想以上に・・・
兄貴の頬が面白いくらいパッと赤くなるのが、面白かった
『兄貴さぁ~…いい加減に告白しちゃいなよ!
タイミング逃すと、他の誰かに持って行かれちゃうかもよ?』
私は捨て台詞を残し、笑いながら仲間の輪から出る
兄貴は・・・
私がこっそり告げた内容に驚き、動揺し過ぎて私を追っては来ない
他の兄貴達も、兄さん達も・・・
動揺する兄貴の姿をカラカウのが忙しかったりとかして
私を追っては来ないみたいだった
私は、この隙を見逃さなかった
『まだ、日も高いし遊んできまぁ~す!』と、言って
一行から離脱して行く
私と仲の良い兄貴は、この一座にいる「皆の纏め役」の一人なので
騒動の収拾する為に忙しく
『メラナ!日暮れまでには、戻ってこいよ!』とだけ、私に言った
私は『了解!絶対に帰って来るから!』と言って、手を振り笑った。
私はとっても嬉しかった
今回も、これからまだまだ続きそうな「到着の儀」
毎年、何時もと殆ど同じ内容であるらしい「長話」から
私は、逃げ出す事に成功したのだから
正直、こんなに嬉しい事は無い
特に、「私一人」と言うのが良かった
誰の妨害される事無く
私は思うままに、自由な好きな場所へ飛んで行く事ができるのだ
勿論、私が一人で向かう先は・・・
今、話に出てきていた「森の中の綺麗な白い御城」だったりする
「実は、綺麗な物を観るのが大好きなんだよねぇ~」
私は森の中に、人気が無い事を確認しながら注意して
森の中に隠れる様に存在する、城へと向かった。




