out of the frying pan into the fire
何か本当に何事もなく着いちゃったなぁ。ちょっとつまんない…。いやいや。モンスターを傷つける必要が無くて良かったよ。
「ありがとう。おじさん!気を付けて帰ってね‼︎」
馬車のおじさんに運賃を渡して走り去る馬車に大きく手を振るボクの足下でフィスティが馬車に向かってニャーと鳴いた。
さてと…。ここに来るのも久しぶりだな。3年前が最後だっけ…。
馬車を降りたボクを迎えてくれたのは、3年前と変わらないウノ王国の大きな門だった。門の横には門番と思われる堅いのいい甲冑をきた大男が堂々と立っていた。
3年前には門番なんていなかった。きっと例のモンスター事件だろう。でもボクにはセイスの新聞記者という肩書きがある!堂々とこの門をくぐれる。
「嬢ちゃん。せっかく来てくれたのにすまないね。今大変な事が起きていて、これ以上被害者を出さないために観光客は入れることが出来ないんだよ」
ボクから見て右側にいた、背の高い門番さんは背の低いボクに身長を合わせるように屈んだ。
堅いに合わず優しいな!だがしかし!地味にカチンとくる。確かに童顔で背も低いがボクは16歳だ。とりあえずセイスの新聞記者ということを証明するために腕章を…。あれ?おかしいな…鞄に詰めたはずなのに…。無い。腕章忘れたー‼︎‼︎ど、どうしよう…。
「嬢ちゃん?何処から来たの?次の馬車教えてあげるから」
「ぼ、ボクは…」
「ん?」
「ボク!セイスの新聞記者なんです!でも…腕章忘れちゃって…。どうしよう…。何にもネタがないとまた編集長に殴られる…」
どうかな?ボクの演技。はっはっは!こう見えてボク演技力には自信があるんだ〜。実際6歳の頃子役としてドラマや映画に出てたんだ〜。懐かしいな〜。何で辞めたんだっけ…。
「ああ。セイスの…。厳しい編集長さんなんだね…。可哀想に…」
あ、ごめん編集長。編集長のイメージめっちゃ下がっちゃった。
「まだ12歳位なのに…」
は?ボク16歳です‼︎まあこの際12歳という設定の方が都合良いか。
って言うか左の人全然喋らないんだけど。逆に怖い。
「分かった次は忘れないでね。がんばって。嬢ちゃん」
「入って良いんですか⁉︎ありがとうございます‼︎」
最後の『嬢ちゃん』は気に食わないがとりあえずこれで取材が出来る。
「このバッジは[セイス村から来た新聞記事]という印だから見えるところに付けといてね。みんな快く迎えてくれるよ」
「ありがとうございます」
便利な仕組みだなぁ。さすがこの星の中心部と言われてるほどはあるな。きっといろんなバッジがあるんだろうな。まあこの星の新聞記者の中で一番よくウノに来るのがセイスだからセイス専用のバッジがあるんだろうが。
バッジはセイスの象徴である、モンスターの中で最弱で有名なスライムの形をしている。そのスライムは新聞を読んでいる。え?なんで村の象徴がスライムなのかって?ボクもよく知らないけど『戦争とかしないですよ〜。平和主義ですよ〜』って言いたいらしいよ?あくまで噂だけど。ちなみにセイスの兵隊は居るけどスライムに勝つのがやっとらしいよ。
「気を付けてね。お嬢ちゃん」
はいはーい!お疲れさまです!ボクの演技バッチリ!あとは国の人に話しを聞くだけ!
「…待て…」
「ヒャッ‼︎」
ボクが門をくぐろうとすると後ろから肩を掴まれた。
変な声を出してしまった…。恐る恐る後ろを向くとそこには怖い顔をした左側にいた門番さんが…。嫌な予感がする。て言うかこの状況で嫌な予感がしない方がすごい。
「…こいつ怪しい…何か隠してる」
ヒィッ!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤb…。って言うかボク嘘ついてなくない?
「お前…12歳じゃないな…」
いや…まあ…うん…。そうなんだけど…。ボク一言も12歳だなんて言ってないよね…。右の門番さんが勝手に思い込んでるだけだよね…。むしろボク被害者じゃね⁉︎
「そ、そうなのか嬢ちゃん!まさか私に嘘を…‼︎」
おいっ‼︎なにデタラメ言ってんだよ‼︎ボク12歳だなんて言ってないだろ‼︎
「た、確かにボクは12歳じゃないですけどそれ以外は本当の事です!信じてください‼︎」
とりあえずキャラは保っとこう。
「12歳って嘘ついた。怪しい」
うーん。嘘はついてないんだけどなあ…。まずいな。このままじゃ入れない。
「何か問題でもありましたか?」
ん?後ろから男の人の声が…。
後ろを振り返るとそこには燕尾服を着たメガネのイケメン男子がいた。きっとボクより年上だろう。メガネの奥の瞳は綺麗な緑色。綺麗に整った黒い髪。めっちゃさらさらだろう。触りたい衝動に駆られる。
背は高いほうだと思う。でも流石に堅いのいい門番さんと比べると小さい。
どうでもいいけどボクは146センチです。…。16歳の割りに小さいなとか言うなよ!これでも毎日牛乳飲んでるんだかんな‼︎しかし本当に綺麗な髪…。
「く、クリュウさん⁉︎どうして⁉︎」
この人の名前クリュウって言うんだ。
「リンゴを積みに行ってたんですよ。坊ちゃんが好きみたいですから」
クリュウさんはそう言うと持っていたバスケットの中に入っているリンゴを撫でた。
ん?坊ちゃん?クリュウさんって金持ちの使用人かなんかなのか?
「そうでしたかお帰りなさい。裏門の方から出たのですね」
「ええ。…この子が何かしたのですか?」
「ああ!そうでした!実はカクカクシカジカで…」
「…。セイスまでの馬車…手配する…」
ええっ⁉︎左の門番さん‼︎ボクネタを持っていかないと編集長に殴られるんですよ‼︎
「…。あ!もしかして!アイラさんですか?」
「そ、そうですけど…」
なんでクリュウさんボクの名前知ってんだ?
「やはりそうでしたか。たいへん申し訳ございませんでした。さっきあなたの編集長さんから『猫を連れたアイラと言う見た目は12歳前後だけど実は16歳の童顔で背が低くてとりあえずバカでアホでおたんこなすの腕章を忘れたバカボクっ娘が
きたら門を通してやれ』と連絡がありました」
猫を連れたアイラと言う新聞記者だけで充分だろ‼︎って言うか名前だけで分かるよ‼︎
「彼女は私が預かります。お仕事お疲れ様です。さあアイラさん。こちらへ」
まあ中に入れることには感謝だな。ありがとう!バカデブ編集長!猫にそのブサイクな顔をもっとぐちゃぐちゃにされてまえ‼︎
「ありがとうございます。えっと…クリュウさん?」
「いえいえこちらこそ失礼しました。私はウノの第七王子の執事をやらせていただいております。クリュウと申します」
クリュウさんは私の鞄を持ちながら深くお辞儀した。
え?ちょっと待って!王子⁉︎って言うか第七⁉︎第七ってなによ。第七って。
「実は女王陛下は七人の子供に恵まれたんですよ。つまり私は一番年下の第七王子に使えているのです」
「なんか第七王子様可哀想ですね」
「え?何でですか?」
「え?だって、自分の兄たちに負けないように沢山勉強とかしてらっしゃるんでしょう?一番年下だから王様になれる確率も一番低いじゃないですか」
「だったら良かったのですけどね…」
クリュウさんはフィスティを抱えたボクの一歩後ろを歩きながら苦笑いをした。
どうゆうことだろう…。あ!そうだ!
「今からその第七王子様に会えますか?」
「…。まあ…大丈夫ですけど…。あまり期待しないほうが良いですよ」
?
一ヶ月以上もすみません。こんなペースですがよろしくお願いします。