tha occurrence of an incident
事件の発生…。
「おじさん!ウノまで馬車お願い!」
「あれ?珍しいねアイラちゃん。この時間は受け付けてないんだけど…。アイラちゃんみたいな可愛い女の子を断るわけにもいかないな」
ロリコン…。
ちなみに今疑問を持った方もいるだろう。『女の子』というワードに。ボクはれっきとした女の子だ。男の娘とかでもなく女の子だ。『ボク』と言っているが女の子だ。くどい?ごめん。しかしまだボクの髪が短かった頃に男の子と勘違いされたことが何回もあって…。まぁいまはボサボサの猫毛を肩ぐらいまで伸ばしてるけどね。
「しかしいきなりウノだなんて…取材かい?」
「うん」
ボクはボロボロの馬車に乗り、馬を操っているおじさんと雑談しながら鞄から猫を出しなでてやる。
「ん?アイラちゃん猫飼ってたっけ?」
「朝拾ったんだ」
「へーそうかい。捨て猫とは珍しいな。名前は付けたのかい?」
「まだ。とりあえずこの子の体洗いたいからトゥレス湖で一回止まってくれる?」
トゥレス湖はウノから3番目に近い村、トゥレス村の近くにある唯一の湖だ。湖と言っても水は暖かく、35度くらいだ。
「わかった。しかしよかったな猫ちゃん。アイラちゃんみたいな優しい女の子に拾われて」
優しいだなんて…。まあ本当の事だけど照れるなぁー。
「ミャー」
「お!賢い猫だな」
「ほれ。トゥレス湖。着いたぞ」
ふぇ?もう?
うとうとしていたボクはおじさんの声で目が覚めた。
目をこすりながら馬車から降りたボクの目の前にはゆらゆらと白い湯気が踊る小さい湖があった。
ふと上を見るともうすでに日は登っていた。
「じゃあ俺はここで待ってるから洗ってきな。ついでに名前も付けてやったら?」
「うん。ありがとう。おじさん。すぐ終わらせるよ」
ボクは袖を捲り、トゥレス湖に手を入れ水温を確かめる。
うん。いい感じ。いつまでも泥だらけじゃかわいそうだからね。水…平気かな?メインクーンは水が好きらしいけど…。
「水だよ。怖くないからね」
ボクはそっと手で水(お湯?)をすくい、猫の前足にかけた。
ん?怖がらない…。まだ恐怖心がないのか…水が好きなのか…。まあいいや。どちらにしろ暴れられなくてすむ。なんか誘拐犯みたいなセリフだなこれ…。
よし。綺麗になった。そうだ。名前付けてあげなきゃ。オスみたいだけど…うーんどうしようかな…。
___フィスティ
あれ?なんかいま頭ん中に男の子の声が…。
えっと…フィスティ?この猫に付けろってことかな…。フィスティ…。うん。いい響きだ。悪くない。
「よし!よくわからないけど。君の名前はこれからフィスティだ!」
ボクの腕の中でニャーと鳴くオス猫フィスティがほくそ笑んだ気がしたが気のせいだろう。
「おじさーん!」
あっ。馬車にもたれかかってタバコ吸ってる
「おー。綺麗になったなぁ!」
「うん。フィスティっていうんだ♪」
「名前も付けてもらったのか。よかったな。ん?フィスティってどっかで聞いたことあるなぁ…。なんでフィスティなんだ?」
よくわからないんだけど…。カクカクシカジカで…。
「ほぅ。不思議なこともあるもんだな」
「とりあえずウノに出発しようよ」
「それがだな…」
ん?どうしたんだろうおじさん。渋い顔して。
「さっき、通りすがりのトゥレスの馬車友達から聞いた話なんだがどうやらウノ王国で観光客がモンスターに襲われる事件が何軒か起きてるらしいんだ。あれ?アイラちゃんはその取材で行くんじゃなかったのかい?」
そういえば事務所飛び出してきたからどんな事件なのか聞くの忘れてたな…。
しかしこれまた大事件だな。普段モンスターは大人しい。特にウノのモンスターは一段と心が広い。蹴られても怒らないモンスターとか言って有名だったほどだ。酷いよね…。蹴っても怒んないとか蹴る前提かよ!
まあそんなウノのモンスターが人を襲ったんだ。先輩や編集長が驚くのも納得できる。
「あー…。そう言えばそうだった気もする」
「気もするって…。取材大丈夫なのか?」
「ハハハハ…。大丈夫大丈夫」
今初めて取材内容を知ったよ…。
「モンスターの事なら心配無いよ。ボクだってセイス村の子だよ?モンスターとの戦い方ぐらい身に付けてるよ。だから安心して!馬車と馬とフィスティとおじさんはボクが守るよ」
ボクはフィスティを下に降ろし、鞄からモンスター用の銃を出して顔の横で構えてみせた。
この星では、護身用に武器を持っていい事になっている。ただ人を傷つけることはできないモンスター専用の武器だ。
「ほぅ。心強いな。じゃあアイラちゃんに守られちゃおうかな」
「うん!任せて‼︎」
ボクは鞄に銃をしまうと胸を張って応えた。
実際モンスターを傷つけたくはない…
何もないことを祈っている…