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#1 メイドに転生
月本華が最後に覚えているのは、卒業論文の最終チェックを終え、就職が決まった喜びに浸りながら横断歩道を渡る瞬間だった。次の瞬間、鈍い衝撃とともにすべてが暗転した。
そして目を覚ますと、彼女は「ルナ」という名の22歳のメイドとして、見知らぬ屋敷の使用人部屋のベッドの上に横たわっていた。記憶が流れ込み、この世界の常識が脳裏に刻まれる。異世界転生――漫画や小説でしか知らない現象が、自分に起こったのだ。
3日後、ルナはヴァンデルフォート公爵家の令嬢、キャサリン・ヴァンデルフォートの専属メイドに任命された。
「これがあなたの新しい主人よ。気をつけて仕えなさい。
キャサリン様は……気難しい方ですから」
先任メイドの忠告には、言葉にできない恐怖が込められていた。




