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ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?  作者: 綾瀬アヲ@2月初書籍発売


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第1話 五度目の人生のはじまり

 焼け焦げた匂いが鼻を刺す。


 空は今にも泣き出しそうな曇天だ。

 それはあちこちから立ちのぼる煙のせいなのか、それとも嵐が近づいているからなのか――アリアには分からなかった。


 倒れた大理石の柱の向こうで、何かが壊される音がした。振り向くと、城の扉や窓が破壊されている。中に残っている人間がいないか探しているのだろう。


 群衆から次々に上がる怒号。

 遠くでかすかに聞こえる悲鳴。

 地面にこびりついた血の跡。


 フェルディア王国の最期は、いつだってこんなふうに悲惨だ。


「結局また、守れなかったんだ……」


 何もできなかった、という思いが胸を締めつける。

 王宮になだれ込んだ市民たちによって作られた処刑台の上。そこから燃える王都を見下ろしながら自嘲するように笑うと、乾いた喉がひりついた。


(……この光景、何度目だったっけ……?)


 ──四度目。


 アリアは何度もこの人生をループしている。

 そのたびにどれだけ手を尽くしても、どれだけこの未来を回避したいと願っても。


 また、ここにたどり着いてしまった。


 かつてあれほど慕われていたミカエル王太子殿下が、今や『血の暴君』と恐れられ民衆から怒りの矛先を向けられている。


 きっかけはたった一つの不幸。

 殿下の婚約者であるエレナ・クラヴィスが、命を落としたこと。


 一度目は毒。二度目は事故。三度目は冤罪。そして四度目の今回は――罠だった。


 エレナ嬢を失うたびに、ミカエル殿下は闇落ちしてしまう。

 絶望し自暴自棄になった殿下は自分と対立する勢力を王宮から追放し、強権的な暴政を敷く。そして、怒りが頂点に達した民衆は武装蜂起して立ち上がる――いわゆる市民革命だ。


 そしてこの国は、王政ごと倒されてしまう結末を迎える。


 アリアの前に捕まっていた一人が、引きずられるようにして処刑台へと連れて行かれる。手足は縛られ、その横顔は薄く(すす)や血で汚れていた。


(あの人の次は、私の番だ……)


 民衆にとって、王宮に仕えていた人間は全員敵だ。それは、一介のメイドであるアリアも例外ではなかった。

 髪を掴まれて、引っ張られるように断頭台へ引きずられていく。


 ただ、敬愛するエレナ嬢を守りたかった。

 過去の経験(ループ)を活かせたと思っていたのに、また駄目になってしまった。


 ミカエル殿下と、今回こそ幸せになってもらいたかったのに。


(……でも……もう一度……やり直せるなら……)


 そう願った瞬間、処刑が実行され視界が暗転した。

 まるで、舞台の幕が静かに閉じるように。


 そして、時間が巻き戻っていく――


 * * *


 まぶしい光が差し込んだ窓辺。

 遠くから温かな朝の気配と、小鳥のさえずりが聞こえる。


「……っ、ここは……っ!」


 目を覚ましたアリアは、思わず飛び起きた。

 懐かしい王宮内の使用人部屋。寝心地のいいベッドに、壁にかけられた制服と白いエプロン。


(どれも見覚えのあるものばかり……ということは……!)


 アリアは急いでベッドから降りると、壁際の机へと向かう。そこに置かれていたのは、王家の印で封蝋が施された封筒だった。


 中を開けると、淡い羊皮紙が一枚。

 本日付でエレナ・クラヴィス公爵令嬢の部屋付きとなるよう命じられた、任命書だった。


「また……戻ってこられた……!」


 アリアは任命書を握ると、目頭を熱くしながら深呼吸をした。

 過去四回とも、エレナ嬢が王宮入りされる日がループの起点だった。


「大丈夫。今度こそ……!」


 アリアはエレナを心から慕っていた。優しく聡明で、それでいて純粋で少し天然なところにいつも励まされていた。

 そして殿下もまたエレナを想っていることを、そばでずっと見守ってきたアリアは誰より知っている。

 本当なら、必ず幸せになれるはずの二人なのだ。


(今度こそお二人には幸せになってもらいたい!そして私はその尊さをそばで見守りたい……!!)


 王宮内外に、二人の婚姻を阻止したい勢力がいることは分かっている。どこでどういう罠が仕掛けられるか、過去にループしたときの記憶もちゃんと蓄積されて残っている。


「こうしちゃいられない!早く準備しないと…!」


 今度こそ王宮で最推しの――推しカプのハッピーエンドを見届けるために。


 アリア・セルフィア。

 五回目の人生の幕開けである。


 もっとも、このときの彼女はまだ気づいていなかった。

 今回のループがこれまでと様子が違うことに。


 そして、まだ見ぬ()()()()()()が、とんでもなくめんどくさい方向から絡んでくることなど、知る由もなかった。


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