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エルドウィス森譚〜私と猫と、ときどきドラゴン〜  作者: 川津 聡


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11/21

幕間 森を抜ける風

今回は幕間なので短いです。

そのため2話更新です。

読み飛ばしにご注意ください。

 森の中を、サクサクと足音が続いていた。

 爽やかな秋晴れの中、リオンとキャスは森の中を巡回していた。


 キャスがひょいひょいと周りの木々を避けながら、リオンに近づく。

 キャスは人の姿だ。

 琥珀の瞳が、猫の眼のように細められている。


「今日は足取りが軽いな。何かいいことでもあったのか?」


 キャスの軽口に、リオンは笑いながら近くになっていたベリーをもいだ。


「いいこと、ですか……。そうだですね。前より森の樹が穏やかに揺れるようになりました」

「樹が? そんなの気のせいだろ」

「気のせいでいいんですよ」


 リオンは、吹いてきた風を確かめるように、顔を上げた。

 木々の間を抜けてきた風が、リオンの銀色に近い白髪を揺らした。


 キャスもつられて、木々を見上げる。

 以前なら、森はざわざわして落ち着いていなかった。リオンの背中も遠く感じていた。


 しかし、今は違う。

 木々が優しく揺れ、柔らかく木漏れ日が差し込んでいる。


「……なぁ、リオン。あのドラゴン、もう来ないのか?」

「ジャハルですか? 来ますよ。気が向けば、きっと」

「その時は、一緒にお茶でも飲もうよ」

「いいですね。彼も昔は発酵茶が好きだったそうですよ」


 その言葉を聞いたキャスが顔をしかめる。

「発酵茶? 僕、あれ苦くて嫌いなんだけど」

「年を取ると、どんな種族でも渋い味が好きになるものなんです。キャスもいつか発酵茶の良さがわかりますよ」


 そう言って笑うリオンの声には、もうかつての重さがなかった。

 キャスはふと自分の尻尾(人の姿でも時々出てしまう)を撫でながら、その笑い声を聞いていた。


「なぁ」

「はい?」


 笑顔で振り返ったリオンを見て、キャスは言葉を飲み込んだ。


 ――お前、そんな顔でも笑えるんだな。


「……発酵茶、付き合ってやってもいいけど、おやつ付きな」

「検討します」


 二人の間を風が吹き抜けていった。

 舞い上がった木の葉が、澄み切った青空に登っていった。


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