幕間 森を抜ける風
今回は幕間なので短いです。
そのため2話更新です。
読み飛ばしにご注意ください。
森の中を、サクサクと足音が続いていた。
爽やかな秋晴れの中、リオンとキャスは森の中を巡回していた。
キャスがひょいひょいと周りの木々を避けながら、リオンに近づく。
キャスは人の姿だ。
琥珀の瞳が、猫の眼のように細められている。
「今日は足取りが軽いな。何かいいことでもあったのか?」
キャスの軽口に、リオンは笑いながら近くになっていたベリーをもいだ。
「いいこと、ですか……。そうだですね。前より森の樹が穏やかに揺れるようになりました」
「樹が? そんなの気のせいだろ」
「気のせいでいいんですよ」
リオンは、吹いてきた風を確かめるように、顔を上げた。
木々の間を抜けてきた風が、リオンの銀色に近い白髪を揺らした。
キャスもつられて、木々を見上げる。
以前なら、森はざわざわして落ち着いていなかった。リオンの背中も遠く感じていた。
しかし、今は違う。
木々が優しく揺れ、柔らかく木漏れ日が差し込んでいる。
「……なぁ、リオン。あのドラゴン、もう来ないのか?」
「ジャハルですか? 来ますよ。気が向けば、きっと」
「その時は、一緒にお茶でも飲もうよ」
「いいですね。彼も昔は発酵茶が好きだったそうですよ」
その言葉を聞いたキャスが顔を顰める。
「発酵茶? 僕、あれ苦くて嫌いなんだけど」
「年を取ると、どんな種族でも渋い味が好きになるものなんです。キャスもいつか発酵茶の良さがわかりますよ」
そう言って笑うリオンの声には、もうかつての重さがなかった。
キャスはふと自分の尻尾(人の姿でも時々出てしまう)を撫でながら、その笑い声を聞いていた。
「なぁ」
「はい?」
笑顔で振り返ったリオンを見て、キャスは言葉を飲み込んだ。
――お前、そんな顔でも笑えるんだな。
「……発酵茶、付き合ってやってもいいけど、おやつ付きな」
「検討します」
二人の間を風が吹き抜けていった。
舞い上がった木の葉が、澄み切った青空に登っていった。




