表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁書目録  作者: jo2
1
8/8

8. 拳は軽く、足は重く

彼らが到着した場所では、熊同士の戦いが繰り広げられていた。


いや、よく見ると一頭は熊だった。

もう一頭は熊のように見えたが、モンスターだった。

ただ、その体躯は熊とは比べ物にならないほど巨大だった。

一方的な戦いだったが、熊は退かなかった。


「あれを見ろ。」


レオ班長が指差す先には、無残にも殺された子熊がいた。


「モンスターというものは人間だけでなく、あの熊のように他の動物にも敵対的なのだ。まるで命を嫉妬するかのように。この世に不要な存在だ。」


モンスターは食事をしないと聞いていた。

しかし、食べるわけでもないのに幼い子熊を狩り、

弄ぶように踏み潰す奴を見て、内側から怒りが込み上げてきた。


「さっき私たちを通り過ぎた熊のようですね。子熊を探していたんでしょう。」


状況を観察するように見つめるレンの声は落ち着いていたが、

彼と長く過ごした経験から、彼が激しく怒っていることがわかった。


「今すぐにでも飛び出したいのはわかるが、私が防衛隊の任務は何だと言った?」


防衛隊の任務?


「モンスターを殺すことです。」

「そうだ。もしあの熊が人間だと仮定したら、お前たちはどうする?」

「死ぬ前に助けます。」

「あまりにも近すぎて一般人だと仮定すると、私たちの実力では助けられないでしょう。」

「ではどうするというんだ?」

「機会を見て復讐してやればいいんです。」


一つの質問に二つの答え。

私は助けると答え、

レンは復讐すると答えた。


「どちらも正しいが、どちらもモンスターと戦うことを前提にしているな。防衛庁の推奨指針は、モンスターと戦って危険を冒すな、というものだ。」

「それはどういう意味ですか?」

「身の程を知れ、ということだ。モンスターと自分の力量を測って、無理だと思ったら逃げろ、一般人が死のうがどうしようが。」

「…防衛庁は市民を守るためにあるのではないですか?」

「市民の命よりも覚醒者が優先だ。」


カッとなって、その言葉に反論しようとしたとき、

モンスターと対峙していた熊が倒れた。

そして待っていたかのように、私たちを突き飛ばした。


「お前たち二人なら相手にできるだろう。行け。」


初めての実戦。

葬儀場でモンスターとぶつかったことはあったが、

それは生きるためのもがきだった。

戦いでも何でもなかった。


レンは剣を抜き、私は念力を纏った。

適度な距離を取り、私たちはモンスターに近づいた。


覚醒してから向上した身体能力で奴を圧倒したが、

念力を纏った拳が奴に当たると、スポンジを叩くような感触があった。


「こいつ、皮が厚すぎる!」


レンは私よりも少し状況が良い程度だった。

防衛庁から支給された剣はただのものではなかったが、

分厚い皮のせいで深い傷を負わせることができなかった。


巨大な体躯に比して素早い動きに私たちが苦戦していると、レオ班長が大声で叫んだ。


「辛かったら言え。まだお前たちには無理だったと師匠に報告するからな。」

「それはいいんで、何か助言をください!」


先は長いのに、ここで引き下がるわけにはいかなかった。


「おい、お前!言葉で簡単に変わるなら、それは天才じゃないか。どうしてもというなら、拳は軽く、足は重く動かしてみろ。」


それはどういう意味だ?

役立つ助言を求めたのに、

理解できないことばかり言っている。


「レン!防衛庁から支給される剣は隊長も使うものだから、そう簡単には折れないぞ!」


レオ班長の言葉を聞いて、

葬儀場での出来事が頭に浮かんだ。


「レン!熊狩りだ。背後に回れ。」

「了解。」


レンは頭の良いやつだから、理解しただろう。


「おい、この野郎!図体だけデカくて、たいしたことないじゃないか!」


うおおお!


私の言葉を理解したかのように、怪物のような叫び声を上げた。


奴が丸太のような腕を振り回すタイミングに合わせて、

私は膝を曲げて得た推進力で奴の胸に飛び乗った。


「オラオラオラ!オラオラオラ――」


そして、ありったけの力で胸を殴りつけた。

素早く重い攻撃にバランスを崩したモンスターが首を傾げた。


ドスン。


バランスを崩して後ろに倒れる瞬間、

剣がモンスターの心臓を貫いた。


死んだのか?


巨体に見合ったように、血が噴水のように噴き出した。

しばらく待っても反応がないので、間違いなく死んだようだ。


「おい!何してる、俺を引っ張り出してくれよ。」


しまった!


私はモンスターに押しつぶされて動けないレンを引っ張り出した。

大根を引っこ抜くように引っ張り出すと、全身がモンスターの血でびしょ濡れになっていた。


「大根じゃなくて人参だな。」

「何をバカなこと言ってるんだ?」

「お疲れ様。」

「ああ。お前もな。」


スタスタ。


「拳は軽く、足は重く、という言葉はそういう意味じゃなかったが…とにかくモンスターを処理したんだからよくやった。正直、お前たちのレベルより高くて、助けてくれと言うかと思っていたよ。」


その言葉に、誰ともなくレオ班長の方に顔を向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ