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禁書目録  作者: jo2
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6. 互いの能力

回復していくレンの足。

それを見ているレオが小声でつぶやく。

足がリアルタイムで治っていく様子を見ているのだ。


それを遠くから見ている俺は、これは一体何なんだと思った。

これまでの行動から、レオが行動派だということは分かる。

俺たちの先輩でチーム長だということも分かっているが、それにしても急すぎるのではないか、名札のインクも乾いていないというのに。


「こっちへ来い」


レオが手招きで呼ぶので、不満を飲み込んで近づいた。

レンの足を見ると、いつの間にか彼に負わされた傷はすっかり治っていた。

レンの破れたズボンだけが、ここで何があったのかを物語っている。


「戦いの最中になぜ呼んだんですか?」


この状況が不満な俺としては、当然、言葉もぶっきらぼうになる。

先輩でありチーム長だからこの程度で済んでいるが、そうでなければ拳が先に出ていただろう。


しかし、そんなことはどうでもいいというように、レオチーム長は自分が言いたいことだけを言う。


「たった今、お前たちの能力の把握が終わった」

「もう?さっきちょっと戦っただけでですか?」

「ちょっとだと?この前も今日も見たから二回目だろう」

「だとしても、二回しか見ていないじゃないですか」


俺たちはレオチーム長の言葉に驚き、目を丸くした。

何も見せた覚えがないのに、もう能力の把握が終わっただと?


どれだけ有能なんだ、こいつは!

一瞬でも、こんな奴をつけられたと心の中で悪態をついた隊長に、申し訳ない気持ちになった。


「二回も見れば、俺のようなベテランには十分な時間だ。どうだ?尊敬の念でも湧いてきたか?」

「はい」


正直に言った。

嫌なものは嫌だが、すごいものはすごい。


「俺たちの能力はどんな感じなんですか?」


レンは自分の能力がよほど気になるのか、問い詰めるように言った。


「誰から話すかな。うーん…まずはユマから。お前の能力は念力系だ。何度か見ているから間違いない」

「念力ですか?その、目に見えない超能力みたいな?」

「そうだ。まだどうやって使うか分からなくて、敵に攻撃された時に本能的に身を守るため、防御としてだけ発動しているようだが、違うか?」


モンスターにやられた時も、今日のように何かが俺を守ってくれてはいた。


「…はい。そんな感じです」

「これからは意識して使えるようにしてみろ」

「どうやってですか?」

「意志の問題だ。普通、そういった能力はその者の精神に影響される。だから、似たような能力でも人によって力の差が最も顕著に現れる。精神力が弱ければ小石一つ持ち上げるのが精一杯だろうが、お前次第ではビルも持ち上げられるかもしれんぞ」

「えっ!本当ですか?」


ビルも持ち上げられるという言葉に驚いて聞き返した。


「はは!そんなわけがあるか。からかい甲斐があるな」

「……」


だよな。

喜んで損した。


「さて、次はレン、お前だ。お前は…うーん、俺と似たようなタイプな気もするし、そうでない気もして曖昧なんだ」

「レオチーム長の能力は何なんですか?」

「俺か?俺は鉄を食う能力を持っている」

「ええ、それがどうして俺と同じなんですか?」


確かに、それがどうしてレンと同じだというのか。

鏡がないから見えないが、今の俺の顔もレンと同じだろう。


「おいおい、人の話は最後まで聞くもんだ。俺は鉄を食うと傷が回復する。もちろん、お前のように身体が切断されたり、大怪我を負ったりした場合もな」

「確かに、その話が本当なら俺と似ていますね」

「だが、お前と俺の間には大きな違いがある。負傷を回復するために必要な『材料』がな」

「…材料?」

「そうだ。等価交換というのを知っているか?」


等価交換?

何を交換するってことだ。


「何かを得るためには、それと同等の価値を犠牲にしなければならないという言葉ですよね。でも、レオチーム長の能力が鉄を食べて負傷を回復することなら、等価交換が成立しないような気がするんですが?」

「今回は少し頭が回るやつが入ってきたな。だが、それは一般的な考えだ。同等の価値とは誰が決める?お前か?俺か?もし神がいて俺にこんな能力を与えたのだとしたら、神の立場では人間も鉄も価値が同じだということだろう」

「…どういうことか分かりました」


悪いが、俺には半分も分からない。

俺が理解しようがしまいが、二人は話を続けた。


「だが、今言ったことも単なるこじつけだ。あまり気にする必要はない。ただ一つ、能力を使うためには些細な対価が必要だということだ。それがどんな形であれな。ユマは精神力、俺は鉄、お前はどうだ?よく考えてみろ」

「さあ…。髪の毛が抜けるとか?」

「それは対価にしては過酷すぎるだろう」

「今、少しお腹が空いてはいますが…。まさか、そういうことじゃないですよね?」

「ないとは言えないな。動いたからかもしれないし、本当にそうなのかもしれない。だとしたら、『活力』である可能性が高い。あくまで俺の推測だから、あまり盲信するな。これから徐々に分かってくるだろう」


聞いているうちに、互いの能力が入れ替わっているんじゃないかという気がしてきた。

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