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禁書目録  作者: jo2
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5. 今日が初日なんですけど?

モンスターを殺した男が宙返りをしながら着地した。

手を振りながら近づいてくるが、相手は私を知っているようだった。


「なかなかやるじゃないか。だが無謀だったな。長生きしたければ、モンスターと自分の力量を見極めることだ。」

「どなたですか?」

「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は人類防衛庁のレオだ。」

「私はユウマです。」

「よろしくな、ユウマ。モンスターを捕まえておくのも大変だっただろう。もうすぐ後続部隊が来て処理してくれるから、お前は休んでいろ。」


その言葉で、私はすっかり忘れていたことを思い出した。

私は急いでレンのもとに駆け寄った。


「レン!」

「くっ……痛いというより、耳が痛い。そんなに大声を出さなくても聞こえる。」

「友達が危なそうじゃないか。早く病院に行った方がいい。」


いつの間にかレオも私についてきていて、横から口を挟んだ。


「それより、そこに落ちている腕を拾ってくれないか?」

「腕?」


私は隅に落ちていた腕を拾って渡した。

最初は病院に持って行ってくっつけるのかと思ったが、なんと切断面にそのまま当てがうではないか。


驚いた私は、慌てて言った。


「床に落ちていたからバイ菌も多いだろうし、病院でやってもらえばいいのに、何してるんだ?」


感染でも起こしたらどうするつもりなのだろうか。

しかし、レンは何事もなかったかのように左腕をあちこち動かし、怪我なんて嘘だったかのように、ぴんぴんして立ち上がった。


「見たか?」

「ほう……」

「どういうことなんだ?」

「なんだか、できる気がしたんだ。」

「君の友達も覚醒したようだな。最近、何か特別な感じがしたり、変な本に触ったりしたことはないか?」

「…本、ですか?」

「そうだ、本だ。」


大柄な男の言葉に、レンは記憶をたどった。

そして、旅行に行く数日前、家で見慣れない本を見つけたことを思い出した。

もちろん、すぐに消えてしまったので夢だったのかと思っていたが、彼の話を聞くと、ただ事ではないと思えてきた。


「はい。家に見たことのない本が本棚にあって、手に取ってみたんですが、すぐに消えてしまったので、何でもないと思っていました。僕が覚醒したことと何か関係があるんですか?」

「あるとも。世間では覚醒は自然に起こるものだと知られているが、それは半分しか合っていない。覚醒前には前兆があるんだ。とにかく、二人とも覚醒おめでとう。」



「左腕はどうですか?そちら側をぶつけたそうですが。」

「左腕?ちょっと上げてみてもらえますか?特に異常はなさそうですが。どうしても心配なら、精密検査をしてみますか?」

「大丈夫です。自分の体のことは自分が一番よく分かりますから。」

「ふむ、分かりました。もし後で少しでも痛みが出たら、すぐに来てください。」


事態が収拾し、レンと一緒に医者の診察を受けると、どこにも怪我はなく、ぴんぴんしているとのことだった。


翌日。

私たちは人類防衛庁の建物に足を踏み入れた。

本来ならもう少し後で来るつもりだったのだが、二人が覚醒したのだから明日すぐに来るようにというレオの言葉に、何も言えずに承諾してしまった。


短時間でモンスターの襲撃を二度も受けた時点で、先延ばしにするのは違うような気もしたし。


レンと私は、マサヒロ隊長と向かい合って座った。


「葬式の最中にモンスターに襲われたそうだな?その時に君が覚醒したと。」

「はい。」

「まずは二人とも覚醒おめでとう。」

「ありがとうございます。」

「ありがとうございます。」


聞きたいことは山ほどあったが、まずは彼の話を聞くのがよさそうだった。

レンも私と同じ気持ちだったのか、私たちは黙って彼を見つめた。


「ふむ…覚醒したらどうなるかは知っているな?」

「はい、知っています。」

「年齢に関係なく、防衛隊に入らなければならないんですよね。」

「そうだ。単刀直入に言おう。お前たち二人は、今から一流防衛隊に入隊することになる。防衛庁といっても戦闘要員だけがいるわけではないが、報告を見る限り、お前たちは現場要員として適していると判断した。嫌なら今すぐ言え。」

「望むところです。」

「いえ、いいです。」


私たちは、どちらが先に言うでもなく、肯定の意を示した。

意外だったのは、レンまでためらうことなくそう言ったことだ。

活発というよりは勉強や本が好きな彼の性格上、後方支援に回ったとしても驚きはしなかったが、これまでの出来事が彼の心に波紋を広げたのだろう。


「よし。では、当分の間、お前たち二人を指導する者を紹介しよう。」


マサヒロ隊長が机の上のダイヤルのボタンを押して誰かを呼び出すと、間もなく一人の男が入ってきた。


「お呼びでしょうか。」

「ああ、ここに座っている二人を君に任せたい。」

「ええっ?俺がですか?」

「もう会ったことがあるだろう。まだ子供たちだから、一度でも会ったことのある仲の方がいいと思うんだが。二人はどうだ?」


その言葉に、私たちは部屋に入ってきた男を見上げた。

背が高く、肩幅が広く、筋肉の鎧をまとっている男、レオだった。


ためらう必要がどこにあるだろうか。

どうせ受けるなら、強そうな人から受けた方がいいと思い、承諾した。


「どうせお前以外にやるやつもいない。俺がお前を信じているのは知っているだろう?」

「まさか。」

「やるということだな。」


こうして、メンター兼班長としてレオが配属された。


「これからは班長と呼べ。俺の名前はレオ。隊長から聞いた通り、ひよっこにも満たないお前たちを、人並みに使えるようにしてやる。難しくはないから、しっかりついてこい。」

「よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

「では、始めようか。」

「何をですか?」

「訓練場に来たんだから、訓練するに決まっているだろう。他にやることがあるか?」


マサヒロ隊長と別れてから、なぜここに来たのかと思っていたが、そういうことだったのか。


「言葉で言うよりも、体に刻み込んだ方が早く、長く覚えられるものだ!」


フン。


突然、拳が飛んできた。


「よし。そうこなくっちゃな。まずはお前たちの能力を確認させてもらう。」


かろうじて、鍋の蓋ほどの大きさの拳をかわした。


いや、それにしても、最初なら組織図や仕事内容くらい説明してくれてもいいんじゃないか?

学生だってそのくらいは知っているぞ!


そんなことはどうでもいいのか、再び攻撃の構えを見せる姿に、私たちは彼と距離を取った。


「そうやって逃げてばかりいても、何も終わらないぞ。根性を見せろ。」

「教わったことがないと、見せるものもありません。」

「よく言った。戦ったら俺たちが負けるのに、どうやって立ち向かえって言うんですか?」

「誰が勝てと言った?本気でやっていたら、最初の一撃でお前たちは死んでいた。戦闘要員として配属されたからには、重要なのは書類仕事の能力ではなく、モンスターとの戦いで生き残ることだ。昨日、二人が見せた能力から判断して、これが、お前たちを知る一番手っ取り早い方法だと思っただけだ。もう長々と話すつもりはない。逃げずに、ありったけの力を振り絞ってかかってこい。もうすぐ昼休みだから、その前に終わらせたい。」


レオ小隊長の言葉を聞いた私たちは、彼を中心に距離を取った。

互いに向かい合って頷き合うと同時に、私たちはレオに向かって突っ込んだ。

長い時間を共にしてきたから、言葉を交わさずとも目つきだけで簡単な意思疎通は可能だった。


レンは下段、私は上段を狙った跳び蹴り。


タタダッ。


だが、勢いとは裏腹に、やられたのは私たちの方だった。

その場でジャンプしたレオに足首を掴まれたのだ。

そして、私はそのまま放り投げられた。


ドスン。


衝撃に備えて体を丸めていたものの、不思議と痛みはなかった。

昨日モンスターの視線を浴びた時と同じ現象が起きたのだ。


私は膝を支えにして立ち上がった。


「身体能力はよく分かった。覚醒して間もないにしては期待以上だ。能力もだいたい見当がついた。あとはあいつだけど、確認すべきことはしないとな?」


バキッ。


「うあっ……」

「大げさだな。医者は常に待機してるから心配いらないよ。」


レオがレンを踏みつけた。

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