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禁書目録  作者: jo2
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4. 復活

ガタガタという音に、その場にいた人々の視線が一斉に集まった。


「生きているのか?」

「そ、そんなはずはない。火葬の前に、死亡していることは再度確認したはずだ。」


ドン、ドン。


再び聞こえてきた物音に、人々は幽霊でも出たのかと囁き合った。


「じゃあ、あれは何なんだ?」

「...さあな。」


皆がその場を離れようとするのを見て、私はレンが眠る棺に近づいた。


「開けるなら、俺たちが出てからにしてくれ!」


焦ったような叫び声と共に彼らが飛び出して行き、私は一人残された。


彼らの気持ちが理解できないわけではない。近頃、世の中は物騒だ。死亡が確認された人間の棺が動けば、私だって逃げ出しただろう。


しかし、死んだはずの人間が数日後に目を覚ましたり、土に埋めたのに中から音がして墓を掘り起こしたら生きていた、なんて話もある。一人残されたユイのためにも、私は確認する必要があった。


私は棺の蓋を掴んで開けた。


綺麗に横たわるレン。

死人とは思えないほど安らかな顔だ。ここが火葬場でなければ、ただ眠っているだけだと錯覚しただろう。


見た限り、レンに変わった様子はなかった。

念のため鼻に手をかざしたが、呼吸はしていなかった。


さっきの出来事は単なる偶然だったのか。


棺を閉じる前にしばらく彼を見つめていたが、奇跡は起こらなかった。


「ふぅ……」


未練を断ち切り、棺を閉めようとした刹那。


カッ。


嘘のようにレンの目がカッと見開かれた。


「ぷはーっ」


荒い息をするレンの姿に、私は目を剥いた。


本当に生き返ったのか?

夢じゃないだろうな?


私は急いで気を取り直し、苦しそうにしているレンを支えた。


「大丈夫か?どこか痛いところは?」

「あ、肩が痛い。」


急いで彼の肩から手を離した。

嬉しさのあまり、無意識に肩を強く掴んでしまったようだ。


「わ、悪い。」

「み、水…水を…」

「少し待ってろ。」


ちょうど、近くに水のボトルがあったのでレンに渡した。


ゴクゴク。


「生き返った心地だ。どうなってるんだ?俺はなんでここにいるんだ?」

「お前、死んで生き返ったんだ。」

「...俺が?」


周りを見るように促した。

自分が横たわっていた棺を確認し、辺りを見回した後、レンは落ち込んだ様子で、力なく口を開いた。


「...そうみたいだな。まあ、あんなことがあったんだから当然か。他の人たちは?」



レンが目覚めて数日が過ぎた。

その間、レンは眠っている時を除いてユイのそばを離れなかったが、今日は合同葬儀があるため、俺と一緒に外へ出た。


目覚めてからは、以前のような明るい姿は見られなくなった。

だが、俺の知っているこいつなら妹のためにも立ち直るだろうと、俺は分かっている。


「ご多忙の中、故人の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございます。この度の事故により、私たちはかけがえのない人々を突然失うこととなりました。あまりにも早すぎる別れに……」


遺族代表が朗読する追悼の辞を聞いていた、その時だった。


ドガァン!


どこかで建物が崩壊するような音が響いた。

全ての人々の視線が音のした方向へと向かう。

中には、突然の音に不安が増し、パニックに陥る人も出始めた。


不安が式場を包み込んだその時、祭壇をなぎ倒してモンスターが現れた。


「うわーっ」

「ど、どけ!」


転ぶ者、踏みつけられる者が続出する無秩序の中、人々は災いの元凶から離れようと必死に動いた。


俺もその列に加わろうとしたが、遺族として前列に座っていたレンがその場から一歩も動かず、迫ってくるモンスターを見ているだけだった。


俺は大きな声で叫んだ。


「突っ立って何してるんだ?」

「こんなに近くで見るのは初めてな気がする。」


距離は遠く、騒がしいのに。

なぜか彼の言葉ははっきりと聞こえた。


「何を言ってるんだ?お前、気でも狂ったのか?」


逃げる気がないように見えるレン。

家族を失い、妹まで意識が戻らない状況で、精神までおかしくなってしまったようだ。


天も非情だ。

葬式の最中にこんなことが起こるなんて。


防衛庁のマサヒロ隊長は俺を見て、モンスターと渡り合える力があるようだと言っていたが、まだ俺は自分の力が何なのか知らない。


もっと早く防衛庁を訪ねておくべきだった。

だが、もう手遅れだ。


俺はモンスターをぼんやりと見ているレンを連れてこの場を離れるつもりで、人々をかき分けながら前へ進んだ。


しかし、レンと俺の距離は端から端まであった。

俺が一歩動くよりも、モンスターがレンに近づく方が速かった。


バキッ。


一度の攻撃でレンの体は宙に浮き、壁に叩きつけられた。


メキメキッ。


どれだけ強くぶつかったのか、コンクリートの壁が爆撃を受けたようにえぐれていた。


すると、モンスターがレンに近づいていくではないか。

まるで息の根を止めようとしているように見えた。


周りには他の人間も大勢いるのに。

なぜ目もくれないんだ?


どうすべきか考えるより先に、俺の体は本来なら動けないはずの速度でレンが倒れている場所へと駆け出していた。


途中で地面に落ちていた鉄パイプを拾った。


モンスターより一足先に到着した俺は、レンを背にして横目で彼の状態を窺った。

さっきの攻撃で左腕が切断されていた。


床に広がる血だまり。

出血が多すぎるように見えて心配だったが、病院に連れて行くには目の前のモンスターを処理しなければならなかった。


俺にあいつを止められるだろうか?


グォー


いや、あいつを止めるという考えは間違いだ。

俺を囮にしてここから距離を稼がなければ。

俺は鉄パイプを握り直し、前へ飛び出した。


体当たりしてくるやつを相手に、俺は届くか届かないかの高さで宙に跳んだ。

そして、モンスターの頭めがけて鉄パイプを振り下ろした。


キンッ。


痺れる手。

まるで鉄の塊を殴ったようだ。


グルッ?


やつが体を反転させ、俺を振り返る。

それなりにリスクを冒した一撃だったが、少しもダメージを与えられなかったようだ。

いや、視線を引きつけられたならそれでいい。


ガン、ガン!


しっかりヘイトを稼げたのか、俺に向かって走ってくるモンスター!

俺は背を向けて人のいない場所へとやつを誘い込み、追撃戦を始めた。


しばらくは大丈夫だった。

もしかしたら防衛隊が来るまで時間を稼げるかもしれないという希望を抱いたが、体力を計算に入れていなかった。

動きが速くなった分、体力消耗が激しいのは当然なのに。


疲れて何もできなくなる前に決断を下すべき時が来たと悟った。

俺は行き止まりへと走った。

それから壁を蹴って飛んだ。


ブスッ。


今度は頭を殴りつけるのではなく、突き刺すように。


「ぐっ?」


跳躍が低すぎたのか、モンスターの攻撃を許してしまった。

しかし、大きな衝撃を予想していたのとは裏腹に、どこも痛くなかった。


モンスターの頭には突き刺さった鉄パイプ。

俺にもう少し力があればとどめを刺せたのに、これ以上やつと鬼ごっこを続けるのは難しそうだ。


その時、背後から風を切る音と共に素早く飛んできた男が、モンスターの頭に刺さっている鉄パイプを押し込んだ。

怪物の名称は「モンスター」に変更します。少し修正があります。

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