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魔導書を拾う  作者: jo2
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1. 魔道書を手に入れる

ある日、地球に今までなかったものが生まれた。

ごく少数は幽霊または精霊と呼んだが、最も多かったのは小説やゲームでお馴染みのモンスターだった。


僕はどっちかって?


大激変の後、両親が亡くなり、今は叔母さんと一緒に暮らしている。



「ユウマ、ご飯を食べていきなさい!」

「これでいいよ」


僕はケイコさんの小言に食パンを一枚持ち上げてみせた。

そうでなくてもアラームをセットしておいたのに寝ぼけて消してしまい、用意された朝食まで食べたら遅刻してしまうだろう。


靴を履いて急いで出ようとすると、後ろからまた僕を呼ぶ声が聞こえた。


「じゃあ、お弁当だけでも持っていきなさい」

「どうせ今日行けば終業式だから、すぐに帰ってくるよ。置いといてくれれば、帰ってきてから食べるから」


バタン―


僕はケイコさんの残念そうな声を後にして外に出た。

この歳になって弁当なんて。昔は弁当を持っていかなくてもよかったと聞いたのに、これも全部モンスターのせいだ。


あいつらのことを考えると、思わず歯ぎしりしてしまう。

それでも今日が終業式であることを天も祝福しているのか、天気が良くて不快だった気持ちはすぐに晴れた。


涼しい風がそよそよと吹く。

鼻歌を歌いながら学校へ向かっていると、幼い女の子が花壇でしゃがみ込んでモンスターに話しかけているのを目撃した。


保護者はどこにいるんだ?

僕は慌てて駆け寄り、女の子を後ろに下がらせた。


「きゃっ」

「ごめん、大丈夫かい?」

「うわああああん」


優しくやったつもりだったのに、痛かったのだろうか。

泣いている女の子をなだめようとしていると、

袋を持った女性が近づいてきた。


「あなた。どうしてうちの子を泣かすの!」

「いえ、お嬢さんが精霊に近づきすぎていたので」


僕は花壇を指差した。


きょとん。


首をかしげるモンスター。


花壇を見た彼女は、僕の言葉が気に入らなかったのか、顔をしかめて言った。


「あんなに小さくて可愛い精霊のどこが危険だっていうの」

「……」


精霊なもんか、モンスターだろ。

親指ほどの大きさで小さくて可愛らしかったのは確かだが……。

それでも自分の子供なのだから、万が一の危険は排除すべきではないのか?


下手に口答えしても口論になるだけだと思い、何も言わなかった。

すると彼女は女の子の手を引いてどこかへ行ってしまった。

まるで変な人でも見るかのような視線を残して。


子供が怪我でもしたらと思ってやったことなのに、後味が悪い出来事だった。


感謝されようと思ってやったわけでもない…何事もなければそれでいい。

僕は髪をかき乱してその場を離れた。


「いつ終わるんだろうな」

「だよな、死にそうだ」


退屈な終業式の最中、レンが話しかけてきたので、僕も小声で答えた。


レンと僕は幼い頃からの知り合いで、両親が亡くなった後も、変わらずに接してくれる唯一の友達だ。


「今度は河口湖に行くんだって」

「河口湖?それってどこだよ?」

「富士山の近くの湖らしい」


富士山の近くの湖か。

今回の休みに行く場所が一つ決まった。

レンの家族旅行に僕も加わるのだ。


もともと僕の両親とレンの両親は昔からの知り合いで、年に一度くらいは一緒に旅行に行くほど仲が良かった。


だから僕もレンとは幼い頃からの友達で、僕の家族に良くないことが起きた後も、以前と同じように接してくれるありがたい人たちだ。


最初はこんなことをしてもらっていいのかと思ったが、今では以前よりもっと親しくなり、血は繋がっていないけれど僕も家族のように思うようになった。


旅行の日程を聞いて、その日に彼の家を訪ねることにした。


退屈な終業式が終わった。


「飯、食いに行くか?」


レンの言葉に、僕は少し考え込んだ。


ケイコさんが作ってくれた弁当がある……。


「いや、俺は約束があるから。また今度行こう」

「じゃあ、またな」

「ああ」


僕たちはお互いに手を振って別れた。


家に帰る途中。

学校に行く前に通り過ぎた花壇の花が、朝まではなんともなかったのに、荒らされていた。



「行ってきます」

「気をつけてね」

「はい」


今日はレンの家族と旅行に行く日。

待ち合わせ場所へ向かうために家を出た。

外に出てみると、空には雲一つなかった。

照りつける日差しに眉をひそめる。


今日行くことにした場所は湖がある所だというから、水遊びにはもってこいだな。僕はどこから聞こえてくるのかもわからないセミの鳴き声を聞きながら歩き出した。


道を歩いていると、本屋が開いているのが見えた。

僕は本とは縁遠い人間だが、レンは本が好きなやつで、前の旅行でも本を読んでいる姿を見たので、一冊プレゼントしてやろうとふと思った。


本屋に足を踏み入れた。


うーん。

慣れない本の匂いが僕を襲ってくる。

焦げたような、それでいて香ばしいような?


しばらくその場に立ち、どうしようかと周りを見回していると、案内板を見てレンが好みそうな本があるコーナーへ向かった。


本棚から無数の本が僕を迎えた。

数えきれないその数に、僕は考えるのをやめた。


本ってこんなにたくさんあったのか?

何を選べばいいのか分からない。

適当に選ぶか?

いや、それは違うな。

適当に買って渡して、本人が気に入らなかったらプレゼントした意味がないじゃないか。


自分のくじ運を信じるより、店員さんに本を勧めてもらおうと思って歩き出そうとした時、目に留まる本を発見し、思わずそれを本棚から引き抜いた。


こんなものがここに?

本屋にあまり来ない僕ですら、ここにはそぐわない本だと一目で分かった。


ちょうど、店員が遠くない所にいた。


「あの」

「どうかなさいましたか、お客様」


僕の呼びかけに振り向く店員。

僕はそのおかしな本について尋ねようとしたのだが…手に持っていた本がなくなっていた。


落としたのかと思って周りを見回したが、何もなかった。


夢でも見ていたのか?

何かおかしな気分だったが、僕を見つめている店員がいたので、素早く気を取り直した。


「…あ、ええと…友達に本をプレゼントしようと思いまして」


レンが普段どんな本を好むかを話し、僕は店員におすすめの本を選んでもらった。


「またお越しください」


本屋の外に出た僕は、しばらくの間、得体の知れない既視感に襲われ、本を手にぼうっとしていた。


誰にでもそういう経験はないだろうか?

初めて経験することなのに、以前に一度経験したことがあるように感じることが。


そういえば、そういうのをデジャヴと言ったような気がする。

気分は変だったが、本当に珍しく今日のようなことがあったので、大したことではないだろうという気持ちで歩き出した。


「こんにちは、ユウマお兄ちゃん」

「久しぶり」


ユイが車の横で僕を迎えてくれた。

どうやらユイに荷物の番をさせて、他の人たちは物を運んでいるようだった。


彼女に近づいた。


レンの家に時々立ち寄ることはあったが、お互いに時間が合わず、去年に会ってから一度も会っていなかったが、一年で見違えるほど成長していた。


「化粧なんてしてどうしたんだ?」

「私の友達もみんな化粧してるよ。最近これが流行りなの」

「お前はしなくても十分可愛いよ」


妹のようだから言った言葉だった。


「ユイ、お兄ちゃんの言葉聞いたか?」

「そうだぞ、見せる相手もいないのに、お化けみたいに化粧するなよ。うぇ」


声がする方に顔を向けた。

家からユイの家族が出てくるところだった。


「こんにちは」

「久しぶりだな。旅行日和でいい天気だろう?」

「はい」

「おい、こっちに来てお前も荷物を持て」


僕は両手にいっぱいの荷物を持って出てくる彼らに近づいた。


「ください」


もちろん、おばさんの荷物を持った。


「ありがとう」

「いや、俺のを持てよ」

「大げさだな」


運転はレンのお父さんが。

助手席にはお母さんが乗り、後部座席には僕たち三人が乗った。


「私も窓側に乗りたい!」

「なんでよ、私も外を見ながら行きたいんだから。どこでお兄ちゃんに口答えしてるのよ」

「もう、お前たち、ユウマ君もいるんだから、喧嘩はやめてくれないかい?お母さんはお前たちが一日でも喧嘩しなかったら、思い残すことはないわ」


弟妹がいる家はどこもこんな感じなのだろうか。

ユイもレンも、僕と二人きりの時はそうでもないのに、必ず二人がくっつくとこうなる。このままだと行く間中うるさそうなので、ユイに席を代わろうかと尋ねた。


「あっ、本当?やっぱりユウマお兄ちゃんしかいないわ。レン、見た?あんたも妹にこうしてあげなさいよ」

「なんだと、この犬が。まだ殴られ足りないようだな?」

「きゃっ、お母さん、お兄ちゃんがまた私を殴ろうとしてる」


身動きは不便になったが、ユイは急いで僕と席を代わった。

僕が中央に座る形になった。


しばらく車に乗って移動していると、ふと本を買ってきたことを思い出した。

会ってすぐに渡そうと思っていたのに、あまりにも慌ただしくて忘れていた。


「おい、渡すものがあるんだ」

「ん?なんだよ?」

「ちょっと待って」


本を取り出そうとカバンを探っていると。


「な、なんだ?」

「きゃっ!」


悲鳴のような声に顔を上げた。


ドン!ドンー


「!!」


僕たちの前にモンスターが現れた。

モンスターの突進に、前にいた車が轟音を立ててボーリングのピンのように飛んでいく。


狭い道路。

車をUターンさせることもできない状況。


「早く車から降りろ!」

「どうしたんですか?」


僕の隣にいた二人は、視界のせいで状況を比較的遅く把握した。

そして僕は直感した。

ここから抜け出すことはできないと。


死にたくない。

いや、死ぬにしても…両親を殺したモンスターにだけは殺されたくない。


体感するよりも速い速度で近づいてきたため、僕たちは避けきれなかった。


ドン。


体が宙に浮くような感覚がした瞬間。

僕の体から得体の知れない気が流れ出て、僕を包み込んだ。


意識を失う前、僕は一人の男がモンスターに向かって走っていくのを見た。



「ちっ」


人類防衛庁東京支部の隊長であるマサヒロは、外勤が思ったより早く終わり、防衛庁に戻る途中で、数キロ先でモンスターが暴れているという報告を受けた。


彼は無線機を手に取って言った。


「俺が行く」


ジジッ。


「了解しました。では、事後処理班を派遣します」


マサヒロからすれば、車で移動していては事後処理班が到着する前にさえ、現場に着けないだろうと思った。

そもそも道路が渋滞していて身動きが取れないでいるが。


ガチャリ。


彼は車から降り、方角を見定めた。


あちらか。


プァーンー


「なんだ?なぜ降りるんだ。お前のせいで進めないだろうが!」


自分に向かって叫ぶ男を一瞥したマサヒロ。

彼が腰に差した鞘をちらりと見せると、車に乗った男はぎょっとした。


「イカれた野郎だ!」


いや、普通は武器を見せれば黙るものではないのか?


むしろより激しく反応する男を見て、マサヒロは刀を抜き放ち、タイヤを切り裂いた。

その全てが、車を降りてからわずか4秒のうちに起きた出来事だった。


パッ。


一度の跳躍で車よりも速く移動する。

間もなく、報告のあった現場に到着した。


B級といったところか。

刀を握り直し、

続く数度の斬撃。


ザシュッ。


モンスターが暴れ回り、油断した隙を突いて、一瞬で制圧した。


さて、あとは他の者たちに任せて阿修羅場と化した場所を去ろうとした時、尋常ならざる気配を感じ取った。


マサヒロは専用の武器を鞘に納め、その場所へと向かった。

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