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魔王に拾われた人間の子供のお話  作者: 憂依ーyuuiー
第一章◇はじまり
4/9

第四話:きれいにしましょうね

湯の用意が整ったと報せを受け、ヴァリオスはグレイソンと共に風呂場へ向かった。


今は亡き曾祖父がこだわって造らせた、黒曜石と白大理石の湯殿。

床には魔紋が施され、常に清らかな温水が湧き、霊草の香がほのかに漂う。


ヴァリオスは湯気に包まれた浴室で、改めて子供と向き合った。


身体はまだ細く、泥と血に塗れた髪は絡まり、肌は薄汚れている。

見れば見るほど“どうやって洗うのか”がわからない。


ヴァリオスは眉をひそめ、しばし考え込んだ。


(……子犬のときは、どうしたか)


タオル?石鹸?先に湯をかける?


(湯船に沈める…は、さすがにないな。)



ひとしきり試行錯誤の末、ついに諦めた彼は、浴室の外へ向けて声を張った。


「グレイソン」


「……はい、そうなると思っておりました」


呆れ半分、諦め半分の声と共に、執事がすぐに現れる。




グレイソンは黙って少年を受け取り、膝をついて丁寧に洗い始めた。

その手つきは驚くほどやさしく、まるで何度もこうしたことがあるかのようだった。


「……お前、手馴れているな」


「陛下がこれまでにお拾いになった“いろいろなもの”の洗浄経験がございますので」


小動物から巨大な鳥、沼から引き上げた謎の魔獣まで。

それらを全て洗ってきたのは、この執事に他ならない。


(そういえば拾った子犬はグレイソンに洗ってもらったな…。)


「……なるほど」


ヴァリオスは子供の様子をしばらくじっと見つめていたが、やがて脱衣場でさっさと自分の衣服を脱ぎ、風呂に入った。


温かい湯に身を沈めると、ようやく肩の力が抜ける。

そのまましばし無言で、洗い場の様子を湯船から眺めていた。


――が、あまりに長引いている。


何かあったのかと思い、立ち上がる。

湯を滴らせながら歩み寄り、洗い場をのぞき込んだ。


「……まだ終わらないのか」


「……髪に、血や泥が何層にも固着しておりまして」


桶に湯を汲み、丁寧にすすぎながら、グレイソンは根気強く髪を指で解いていた。


ヴァリオスは、素っ裸のまま腕を組み、仁王立ちでそれを見つめる。


「……」


「……」


「…………風邪をひきますよ、陛下」


「…………」


指摘されたヴァリオスは、若干不満そうな顔をしながらも、無言で踵を返すと、脱衣所へ向かっていった。


やがて洗い終わった子供をタオルに包み、そっと抱き上げるグレイソン。


「まったく……王という立場を理解しているのか、いないのか……」


ため息混じりにそう呟きながらも、グレイソンの手はどこまでもやさしかった。



湯気の中で、少しずつ温まっていく子供の体温を感じながら、彼もまた、脱衣所の奥へと続いていく。

※この作品は創作支援AIのサポートを受けて執筆していますが、すべてのアイディア・キャラクター・展開は作者自身によるものです。

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