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第8話 着いた先は…




「ここです」


「え…」


レテアが指差した場所は間違いなく宿屋だった。

しかも一文無しだと気づいて諦めた宿屋。


看板にはイールラの宿と書かれていた。



「あ、私の家は宿屋をやっています」


「へぇー、綺麗な宿だね」

なんとなーく複雑な気持ちになる嵐。


「あ…ありがとうございますっ」

嬉しそうなレテアをみたら複雑な気持ちはすっかり消えてなくなった。うん、そもそもお金が無いことを忘れてたせいで泊まれないんだから…残念だ。


「それじゃ、俺はこれで…」


にっこり微笑んで、そのまま野宿をする為くるりと背を向け歩き出す。



「ランさんっ!」


3歩も歩かない内にレテアに声を掛けられた。

何だろうと思いつつレテアの方へ振り向くと、


「あああの、ランさんは今日泊まる場所はあるんですか?」


「え、ないけど…?」


「っじゃあ!!ぜひうちで泊まって行きませんか?!」


なぜか顔を輝かせて迫ってきた。ただ一度助けただけなのにこんなに自分を歓迎してくれるとは思わなかった。

それを嬉しく思いながらも、残念ながらお金がない。



「そう言って貰えて嬉しいけど、恥ずかしながら一文なしで…」


「え…」


「いや、じいちゃんの家はサステン国にあるんだけど、それを売ったお金で仕事を探そうとここまで来るうちにお金を全て使ってしまって…」

咄嗟についた新たな嘘。まぁお金が無いのは事実だからな。すまなそうに謝って、今度こそ戻ろうと―――


「ならぜひうちに泊ってください!!」


信じられない言葉を掛けられ、レテアをみて苦笑する。

泣いてはいないが目にはうっすらと涙が溜まっていた。


(うぅ、こんな良い子に嘘をつかなきゃならないなんて)

またチクチク痛みだす胸を無視しながら、なぜ?と口にする。



「なぜって…私を助けてくれたお礼に決まってるじゃないですか。私の気の済むようにさせて下さい

!」


(あぁ…この子は頑固だ。なんだか瑠宇に似ているな)


自分の妹と重ねた嵐は諦めたように、それでいて少し嬉しそうに笑った。


「…お言葉に甘えさせていただきます」


「うっ…」



嵐の笑顔に当てられたレテアは真っ赤になりつつも、どうぞと言って宿の入口へ案内する。




カランカラン―――


ドアノブを押し開くと、心地よいベルの音に続いて、がやがやとした声が聞こえてきた。

どうやらここは食堂もついているらしい。それなりに繁盛しているようで、6、7人の客がまだ食事を取っていた。


「いらっしゃ…レテアっ!遅いじゃないか」



未だ店の入り口で突っ立ている嵐とレテアに向かって歩いてくる女の人がいた。






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