第3話 出発前の神様講座
『まず、嵐の行く世界じゃが、ルヴァーニアという世界で四つの国で成り立っておる。北にノステン、南にサステン、西にウェステンで東がイステンじゃ。それぞれの国で人間が一番多く、国を統治しているのは人間じゃ。魔法を応用、活用した技術で国が成り立っておる。獣人は魔法はないが身体能力が秀でており、性格は比較的穏やかで上手く人と共存しているの。エルフは高い魔力と、人間にはない光属性の『癒し』を持っておる。他種族との共存は好まず、森の中で静かに暮らしているの。魔物は世界に害を成すものじゃな』
「ふ~ん、想像してたのとあまり変わらないんだなぁ」
『後は属性じゃが、火、水、氷、土、風、雷の6つと、光と闇がある』
「ふむふむ」
『この光属性はエルフが、闇属性は上位の魔物が持っており、獣人は勿論、人間も使えないのじゃ。ちなみに、人間は生まれた時から光と闇以外の属性の一つを持っておるが、稀に2つや3つ持っているものもいるの』
「んー、いくら身体能力が秀でても、やっぱり獣人だけが魔法を使えないのはおかしいなぁ…あるとしたら、身体強化が出来るとかですか?」
『ほぅ…中々鋭いの。その通り、獣人は魔力がないために魔法は使えないが、筋力や跳躍、俊敏などの身体面を強化する能力があるの』
「ですよねー…うん、後は異世界でどうにかするとして…神様、俺の待遇はどうなります?」
『あぁ、そのことなんじゃが―――』
神様の話しをまとめると、
・今までの記憶は消さずにスタート。
・異世界の言葉や読み書きは全てマスターしてある。
・身体能力の底上げ(限界はない)。
・魔力無限。
・魔法の詠唱破棄が可能。
・全属性の魔法使用可(光、闇も)。
・想像したものでも可(テレポートや身体強化等)。
ただ、未来や過去へは行けない(色々と問題があるので)、お金の製造、複製は出来ない。食べ物の製造、複製は可。
「うわぁ…これって異世界で最強になれるんじゃ…」
『そうじゃなぁ…やろうと思えば世界征服もできるかもしれんのぉ』
「…そんな事はするつもりないけれど、こんなに…大丈夫なんですか?」
『まぁ、お金に関しては自分で稼いでもらうがの。人間の寿命なんぞ、微々たるものじゃ。例え征服したとして、その先の未来が良いものにならない事くらい…わかるじゃろ?』
「そうですね…この能力じゃ寿命を延ばすこともできそうだけど、俺はそういうのは嫌だ」
『ふぉっふぉっ。お主なら言うと思ったわい。まぁ、そこまで強欲な人間だったら、こんな能力なんぞやらずに異世界に送っていたしのぉ』
「……そりゃ良かった」
『お主にはすまないことをしたが、我に出来ることはこれくらいじゃ。お主のしたいように生きていくといい』
「はい。ありがとうございました」
お礼を言われるとは思っていなかったのか、神様は目を細め…穏やかに笑った。
『それじゃあ…送るぞ』
「…土産話、楽しみにしてて下さい」
嵐の身体が光に包まれていく。
光が全身を包み意識が遠のいていく直前、
それは楽しみじゃと笑う声が、聞こえた気がした。