第1話 日常から非日常へ①
「おはよう。もうすぐでご飯できるぞー」
「おはよー」
「嵐にぃおはよー」
朝食の準備をしていた緋野嵐は階段を降りてきた弟と妹を見つけると、にこにこしながら声を掛ける。
なぜ兄弟だけで暮らしていて、俺が朝食や掃除に洗濯と、家事をする羽目になっているのかと言うと―――
もちろん、両親のせいだ!
両親はいまだに新婚夫婦の様にラブラブで……
ラブラブなのは…まぁ仲がいいだけ良しとして、問題は―――
「嵐、悪いが…今日から母さんとちょっくらりょ、仕事に行ってくるから後はよろしくっ!!」
「ねぇ…いま旅行って言いそうになったよね……?」
「ら、嵐~來と瑠宇のことよろしくね~♪」
この突拍子もない放浪(?)のせいで、だいぶ迷惑を被っている。
そのせいで俺は朝から弟や妹のために朝食を作るのだ。
弟や妹の反応は、またかと言う目で見るだけで、特に文句は言わなかった。
そう…
『また』なのだ。
この間なんか2ヵ月もどこかに行っていた。
しかも帰ってきた時の第一声が、「ただいまー」でもなく、「ごめんね」でもない…
「「ら…ん…おなか、す…い…たぁ~~」」
バタッ
「………」
こんなのが続けばさすがに慣れるものだ。
幸いそんな両親から生まれた子供達は、みな極普通に育った。
一番上の嵐は高2の17歳、弟の來は中1の13歳、妹の瑠宇は小5の10歳と、年はバラバラだ。
「あ、嵐にぃ~私来週の水曜日に、授業参観があるの。来てくれるよねっ?」
「あ~俺も!来週のどっかに三者面談があるんだった」
「瑠宇も來もかぁ…日付被らなければいいけど。まぁ、そこはなんとかなるでしょ」
「「よろしく~」」
「あー嬉しいな♪嵐にぃを自慢できる~♪友達のお母さん達なんか、嵐にぃを熱い視線で…」
「おいおい、なに言ってるんだよ。ただ若いからみんな見てるだけだろう。…まぁ瑠宇が嬉しいなら別にいいけど」
「「嵐にぃって…そう言うところは鈍感だな(よね)……」」
「?」
二人が何やらぶつぶつ言ってるのを聞き流しながら、手際よく料理を並べていく。
「ほら、できたぞ」
「「いただきまーす」」
他愛無い話しをしながら、和やかに朝食が始まる。
(そうだ…こんな事になる前だって、いつもの様に過ごしていたんだ)
あの事故さえなければ―――