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第16話 迷子?①




―――とある茂みの中




灰色のコートに身を包み、フードを目深に被った人物が、拳を……ふるふる震わせて俯いていた。




「ふっ、ふフフフ……フハハハハ!!ついに…ついに…!!」


俯いていた顔をあげる





「外に、出れたのじゃーー!!!」




何がそんなに嬉しいのか。

片手を腰に、もう一方の手は拳を空に向かって突き上げる。


すると、その弾みで被っているフードがずり落ち――――



「あ」



その顔が露になった。




フードに隠されていた容姿はというと――




太陽に照らされ、キラキラ輝くふわふわな金髪、長い睫毛の下には深い碧の大きな瞳。

お人形の様に整った、とても可愛らしい少女だった。



「いかんっ、フードが取れてしまった」



慌ててフードを被り直し、キョロキョロと辺りに気を配る。そして誰もいないことを確認すると、少女はほっと息をついた。


「…せっかく出れたのじゃ、今見つかっては意味がない」


そう一人でブツブツ呟きながら、少女はずんずん茂みの中を進んで行った。



暫く歩くと、視界が開け―――

そこには2つの分かれ道と、その先に広がる鬱蒼とした森が現れた。



「むむっ!ここいらの地図を把握し忘れていたのぅ…右か左か……」



急がないと。



ここでグズグズしていたらアイツらに見つかってしまう。





―――悩む事ほんの数秒。




「…よし、右じゃ!」


自らの直感を信じた少女は、迷わず右の道へ足を踏み出す。余程急いでいるのか、あっという間に森の中へと姿を消した。









右は『外れの森』


左は『ウィルーヌ町』


とは知らずに――――――








*********






『イライカンスイシマシタ』


「ふぅー。こんなもんか」



今日の依頼は昨日と同じで、スーグネル5匹の始末だ。この様な依頼がまだ後6件あったことから、この魔物による被害者があちこちにいるのだろう。後の6件も全てやってしまっても良かったのだが、一番下である『白』のランクでこんなことをしたら……確実に王城スカウトの道へと近づく気がする。というか、スーグネル5匹を1人で始末している時点で普通とは少しずれているのだ。お金は欲しいが、先の事を考えたら自重するのが無難だろう。


依頼の目的であるスーグネルは、昨日と同じように氷の槍で全て始末した。換金部位である牙も忘れずにネ。



「ちょっとばかり物足りない気もするけど…」


偶々遭遇したと装って、何処かで換金部位の高そうな魔物でも探そうか。

まぁいわゆる、ちょっとした小遣いの為の生け贄?



「いやいやいや…いくら魔物でも小遣い欲しさに…うん、殺生は控えよう」


微妙に悪魔の囁き(?)があったが、やっぱり魔物といえど殺しは殺し。別に生活に困っているわけでもないし、止めておく事にする。



「…戻るか」


今日も高速で終わってしまった依頼。後は転移でギルドへ行くだけだ。





――ぃ―――だ――、―かっ!――――――





「ん?」


転移する直前、嵐の耳に微かな声が聞こえて来た。


(音量を上げてっと…)



「いやじゃぁぁぁぁ!!!誰か助けてぇぇぇぇぇっ!!!」



「ザ・デジャブ!」



レテア同様…どうやら助けが必要らしい。

偶然か必然か。まだ微かだが、確実に此方へ向かってくる足音に、『仕方なく』助けに行こうと目標へ足を向け…




「え」



「いやじゃぁぁぁぁぁぁああああっ!!」



ドドドドドバキッドドドドグシャッドドドドドド……ッ!!



場所をより確実にする為、更に聴力を上げた嵐は、少女の悲鳴と…何かイヤーな音をキャッチした。

それはまるで、木々を薙ぎ倒しながら此方へ迫る、巨大な何か―――



(いーや、違うねこれは。お、女の子が木を薙ぎ倒しながら来るなんて、一体どんな怪力なんだかあっはっは!)


「――なんて。むしろこれは小遣い稼ぎのチャンスかもしれない」



あまり面倒に巻き込まれたくはないが、小遣い稼ぎの為と思えばいいか。

基本、そこまでお人好しではないと自認している通り、少々冷酷とも言える考えをしていた。

―――と言っても、結局は助けるのだが。





「つーい……た……」


超人的なスピードで目的地へと着いた嵐は、尻餅をついて後ろを向いている灰色のコートを着た人物を見つけ、その子が見上げる場所へ視線を向けて―――




「―――こんな虫に――――かっ!!」


「モギャァアアアー!!!」


「…虫嫌いな奴だったら、卒倒もんだな」



全長約10メートル。全体が赤黒く、二本の長い触覚と、ムカデのような何十本もの足、目玉は触覚の先にあるらしく、ワサワサと世話しなく動いている。口には中々鋭そうな尖った牙が四本、隙間からは緑色をした粘液を…絶え間なく垂らしていた。



「つーか気持ち悪すぎだろっ。虫嫌いじゃなくても卒倒もんだよ」



まだスーグネルの方がマシだ。



取り敢えず、座り込んでしまっている子に透明な防壁を張り、もう一度魔物を見上げる。

……そう言えば、腕輪から音声が聞こえてこない。




『ゾフモウ、ランクアカ。カンキンブイ、ショッカク、アシ』



良かった。壊れてはいないようだ。

よし、早速ランク赤らしい魔物を倒すとしますか。

赤つったらAか。

因みに俺は一番下の白でG。











「…………あれぇ?」









ナンテコッタ。







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