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第14話 レテアと買い出し




「ただいま帰りましたー」


「おや、早いじゃないか。忘れ物でもしたのかい?」


「あっ、ランさんお帰りなさいっ!」


「ただいま。いえ、ちゃんと…これ今日の宿代です」


嵐がいた時と違い、今は朝食をとる人達で賑わいほぼ満席状態だ。仕事の邪魔にならないよう、説明を省いて今日の宿代を払い自分の部屋へ向かう。



「え、ちょっと…」


イールラはてっきり忘れ物でもしたのかと思っていた。…が、しっかり宿代を自分に渡して部屋へ向かう嵐をポカンとして見送り…料理はまだかという客の声で我に返る。



「あと少しで出来るよ!レテアっ手伝っておくれ!!…話しは後で聞けばいいじゃないか」


「…うん。わかった」


すぐに階段を上がってしまった嵐を残念そうに見つめていたが、渋々気持ちを切り替え、注文を聞きに客のテーブルへ向かった。






*******







「さて、インフィニーなる物を作りますか」


と言っても、作り方はとっても簡単!



①皮袋を魔法で出現させる

②皮袋に異空間魔法を追加




できあがり~……。



試しにイスを皮袋の開け口へ近づけると、スゥッ…と吸い込まれるように消えていった。出す時は手を突っ込むかひっくり返せばいい。


「うん、大丈夫だな。―――あぁっ!お金もインフィニーに入れれば良いのか!…銀行登録の意味なかったな」



あの時銀行窓口にいた男性から感じた、悪寒のことがあり近寄りたくはなかったのだ。会わなくて済むのはとーーーーーっても助かる。






―――次の日から、一度も銀行窓口に寄らなくなった嵐へ、目を潤ませながら見つめる男性がいたのは…言うまでもないだろう





「それにしても、すぐ終わったな」


魔物の換金部位を入れる用、お金を入れる用の2つ、インフィニーなる物を作り終えた嵐は、他の予定は何も決めていなかった。

何かないか考え―――

昨日タダで泊めてくれた上に食事まで出してくれたイールラさんへ、少しでもお礼をしようと思い立つ。部屋から出て階段を降りれば、ガヤガヤと騒がしい中にテキパキと動き回るレテアを見つけた。何となく鈍そうなイメージがあったので少し驚いてしまった。レテアが聞いたらショックを受けること間違いない、そんな失礼な事を考えていた嵐はキッチンで料理をしているイールラさんを見つけると、本来の目的を果たしにキッチンへ行った。



「イールラさん」


「ラン?どうしたんだい、こんなところに来て」


「昨日のお礼をしたくて…何か手伝えたらいいなぁと思ったんですけど」


「なんだい、そんな事気にしなくていいんだよ…って言いたい所だけど、今の時間は一番混むから忙しくてねぇ。済まないけど…食器を洗ってくれるかい?」


「えぇ、任せてください」


料理を作る手は止めずに嵐に頼んだイールラは、自然と口角が上がるのを抑えられなかった。

(なんて気遣いの出来る子なんだい…そこらの男にレテアをやるくらいなら断然ランがいいね…レテア、頑張るんだよ)

もちろん、可愛い娘の為に協力はするさね。



イールラにそんな風に思われている当の本人は、黙々と皿やコップ洗いに専念していた。










「本当に助かったよ。ありがとう」


「少しでも役に立てたなら何よりです」


「ランさん、お疲れ様です」


「レテアもお疲れさん」


9時30分を迎え、客がいなくなったところで手伝いは終わった。

イールラさんとレテアの二人で切り盛りしている為、朝食と夕食のみ食事を出し、昼食の時間帯は客室のベッドメイキングやら洗濯やらで時間を取られ、それらが終わるころには夕飯の支度をする時間になってしまうので、昼食はやっていないのだ。


「さて、それじゃ私はシーツでも洗濯しに行こうかね。…ランはこの後何か予定あるかい?」


「ないですよ。次はシーツの洗濯をすればいいですか?」


さも当然のように、手伝いを口にする嵐にイールラは苦笑する。


「…全く、あんたはお人好しだねぇ。あぁ、頼みたいのはそれじゃなくて、レテアと買い出しに行ってもらいたいんだ。頼めるかい?」



手伝うのは恩があるからで、自分はお人好しなんかではない。と思ったが、口には出さないでおいた。


「買い出しですか?…あぁ、重いものをレテアが持つのは大変ですよね。それに、この間のこともあるし…。任せてください、俺がしっかり守りますよ」


(あらら、私はただレテアの為に二人きりにさせたかっただけなんだけど。まぁ…いっか)


「ま、まままっ!守るだなんて!!そ、そんな…えへ、えへへへへ」


「レテア…大丈夫?」


真っ赤になったレテアになんだろうと首を傾げる。


「な、何でもありませんっ!」


「そう?ならいいけど」


「はぁ…」

(ラン、それはいくらなんでも鈍すぎるんじゃないかい…)





********







「おー!この町は活気があっていいね~」


ギルドへ向かう時にざっと周りを見ただけだったので、ついついキョロキョロ辺りを見回してしまう


「ふふっ。ここはウェステン国一活気ある町なんですよ」


嵐の挙動につい笑いながら、この町について話してくれる。


「へぇ~だからこんなに混んでるのかぁ…」


「はい。それに、ウィルーヌ町が一番ウェステン国を治めているお城に近いんです。ほら…あの真っ白な壁に金の模様があるあのお城です。見えますか?」


「あっ、ほんとだ…ここからじゃ小さくしかわからないけど、確かに…」


な~んちゃって。視力は調節しほうだいなので城ははっきり見えてます。白いお城の壁に、所々金の模様が描かれていてかなり綺麗だ。お城の端にある国旗らしき物には、金の刺繍で虎が描かれていた。


「この国の国旗って何が描かれているの?」


ばっちり見えてるけど一応聞いてみる。


「私達の国はビャッコがシンボルで描かれているんです」


「……他の国は?」


「えっと…北のノステン国がゲンブ、南のサステン国がスザク、東のイステン国がセイリュウです」


「そ、そっか。ありがとう」


(…玄武、朱雀、白虎、青龍って、まんま四神じゃないか…!!)


ここの世界は地球とビミョーに似ている所がある。覚えやすいからいいんだけど。


「しっかし、人や獣人やらでほんと賑やかだなぁ~」


「迷子にならない様に気を付けて下さいね」


「ん~?レテアのが危ないんじゃない?」


「えぇ~私は通い慣れてるんですよ?ランさんのが危ないですっ」


そんな軽口を叩き合いながら、人ごみを掻き分け目的地へと歩いて行く。




「?」


レテアはふと何か視線を感じて振り返る―――


(うわぁ~!…やっぱり。ランさんを見てる人がたくさんいる)


嵐は気付いているのかいないのか。嵐の珍しい色に気付いた人々は、老若男女問わず興味深げに黒髪を見、容姿を見た途端―――恍惚とした表情になっている。


(うんうん。やっぱりそうなっちゃいますよね!!)


皆の表情に同感しつつ、その隣に自分がいることにちょっぴり優越感を感じてしまう。

なるべく視線を気にしないようにしながら、レテアは嵐との会話を楽しんだ。




「あ、ここです」


「ん?おぉっ!すごい色とりどりだ」


「ここのお店はたくさん種類があるので良く来るんですよ」


目の前には赤、青、緑、紫、黄色…などなど。色とりどりの見たこともない食べ物が大量に並べられていた。


「おじさんは裏にいるのかな?…おじさーん!ラビおじさん!」


「聞こえてる!ちょっと待ってくれ!!」


レテアが叫ぶと、すぐに店の裏手から野太い声が上がった。しばらくすると野太い声にぴったりの、190cm近いガタイのいいうさ耳のおじさんが出てきた。フワフワシッポ付きの―――









(な、なん…だと……)



こ、これは…

こいつぁ酷いんでないか?

別にガタイのいいオッサンが店やってるのはいいよ?

何このバニーガールをことごとくぶち壊してくれちゃう感じ。

獣人はいくらか見てたけど、こんなにすごいの初めて見たよ!!

つーか見たくなかったんだけどぉ!!!



くっ、だめだ…

なんか腹立ってきた。このオッサンは何も悪くない。親の組み合わせが悪かったんだろう。

だけど、だけど…だけどぉおおおおおおお!!!


「あんまりだ…」


「えっ?あの…ランさん?」


「おい、あんた大丈夫か?」


どこか遠く空を見つめる嵐に、遠慮がちに声をかけるレテアとその元凶のオッサン。


「ダイジョブデス…俺の事は気にせず食物を……」


「わ、わかりました」


「一体どうしちまったんだ?…それにしても、みねー色だな。造作もオレに言わせりゃ、怖いくらい整ってる…なぁどっから来たんだ?」


「ッ!…ラビおじさん!今日のお勧めはありますか?!」


「おぅ!?…そ、そうだなぁ……」


ランの悲しい過去(ウソ)を話さなくてはいけない雰囲気に焦り、かなり強引に話しを振る事でレテアは回避した。






「こんなもんか?」


「はい。いつもありがとうございます」


「いやいや、お礼を言うのはこっちの方さ。…っておい、いつまでそうしてるんだ?あんた荷物持ってやりなよ」














あれ?

主人公が壊れてる…

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