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第10話 夢?それとも…




(あれ…此処は―――)



確か俺は宿のベッドですぐ眠りに着いたはず。しかし、今いるところは自分が寝ていた寝室と明らかに違っている。


「もしかして寝ぼけてどこかへ…?いや、夢なのかな」


突っ立ったままではどうしようもない。しょうがないので適当に歩いて行く。




*********




毎朝のようにご飯を食べていたテーブルにイス


玄関の脇には見慣れた旅行カバン


その他もろもろを見た結論―――






どうやら我が家らしい。





夢にしてはやけにリアルな風景だなと思いつつ、手持ちぶさたに居間で突っ立っていると…




「ふぁ~眠い…」


2階の階段から足音が聞こえ、眠そうに目を擦る妹の瑠宇が降りてきた。



時計を見ると6時。

学校だとしてもかなり早起きだ。不思議に思いつつも瑠宇をじっと見ていると、顔を洗うのか洗面所へと向かっていく。



(これはほんとに夢なのか?瑠宇には俺の姿が見えないみたいだけど…やけにリアルな映像だ)




洗面所から戻ってきた瑠宇はいくらかサッパリとした顔でキッチンへ向かう。



(あぁ…)

瑠宇の行動に合点する。



これは…

これはきっと俺がいなくなった後の様子なんだ。

6時に起きて朝ごはんの準備をする。

それは今まで自分がやってきた事だ。それを瑠宇がやっている。何時の様子なのかはわからないが、恐らくそうだ。

俺の中で、死んで異世界へ行った時間はまだ1日も経っていないはずだったが、瑠宇の手慣れたご飯の準備を見ると違う事がわかる。

地球と異世界の時間軸は恐らく違うのだろう。


適当な解釈をしながら瑠宇の料理を眺める。

(おぉ…なかなか美味しそうに出来てる。あの時の瑠宇とは大違いだ)


手伝って貰えばほぼ焦げるか味のおかしな物体が出来上がる。それくらい料理は苦手だったはずだけど…。


(がんばったんだね)


無意識に瑠宇の頭をナデナデする。

実際は触れることは出来なかったが―――




「嵐にぃ…?」


(!?)


小首を傾げて頭に手を乗っけた瑠宇は、気のせいかと呟くとご飯をよそうために離れて行った。



(なんだなんだ…?瑠宇には霊感が!?)

驚く所が微妙に違うが、嵐は真剣に考える。あれ、でも俺は異世界で生きてるし…あー、こっちじゃ死んだことになってたんだよな。うーん―――



「あー、当番じゃないとやっぱ楽だなぁ…」


「來にぃおはよう」


いつの間にやら弟の來が降りてきていた。


「おはよー…今思うと、にぃちゃんには感謝だな」


「…そうだね。甘え過ぎてたんだなぁって思う」



(なんて…なんてうちの來と瑠宇は良く出来た子なんだぁぁぁ)

感激しながら拳に力を籠める嵐。



「「あれから一年か…」」


「え?」


「最初はお父さん達、旅行にも出掛けなかったよね」


「そりゃにぃちゃんがいなくなったんだ。それで旅行なんかしてたら流石にキレる」


「そうだけど、でもあの時のお父さん達は嫌だったな」


「……まぁ、な」


「一年経って、やっとお父さんもお母さんも…私達も落ち着いたね」


「あぁ、だからってまた放浪しちまうなんてな」


「あははっ確かにね!」


暗い雰囲気を振り払う様に笑う瑠宇をみて、つられて苦笑する來。


そんな來と瑠宇を申し訳なく思いつつ、自分が死んで一年が経っているらしい事に驚いた。


そういえばと、來の顔が少しばかり大人びた様に感じる。瑠宇も少し背が伸びたみたいだ。


朝食を食べ始めた來と瑠宇を親の様な眼差しで見つめていると―――



(お?…おおおっ?!!)


急に後ろから引っ張られる感覚がする。直感的にあちらへ戻る時間が来ていることを感じた嵐は宙に浮いた瞬間、來と瑠宇に向かって叫んでいた―――





「―――授業参観と三者面談行けなくてすまんっ!!」


言い終わると共に、引っ張られる感覚に身を任せて目を閉じた。






「ねぇ…」


「あぁ…」



「「嵐にぃらしい言葉だね」」



先ほどよりも穏やかな雰囲気に、二人は包まれた。








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