夜になるまえのうた
まるい柑橘のゆうひがのぼれば
たちまち街にフィルターがかかる
こどもは思い出したようにアスファルトを進み
西日にのびたかげに大人の自分をみる
あまいだけだったミカンは
すこし酸っぱくなって
せつなくも苦くなって
けっきょくは妥協点をみつけて、
ある味におちついた
じりじりと苛立だしいときは
どきりとするほど繊細なそらにおもいをはせよう
たがいにオレンジ色のほおで見つめあって
そのいっしゅん、せかいは一つになるのだから
もうあまやかな夢は見られなくなるけれど
あの星はわたしの星だよ
あの星はあなたの星だ
そんなふうにくらやみを
楽しめるひがいつかくるのだろう
だから
目をそらさないで
わたしが
“大人になるまでのうた”をうたうから