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私 「えぇ」
思わず困惑した声を漏らす
少しボロボロの鳥居
落ち葉がない参道
向かい合う狐の像
そして賽銭箱と本殿
目の前には神社があった
私 (こんな山奥に神社があるなんて)
コンは足元でクルクル回る
その仕草は餌箱に餌を入れている時の仕草
私 「案内終わった?」
コンを抱きかかえて頭や耳を撫でる
コンは気持ちよさそうに目を細める
私 「案内してくれてありがとう」
しばらく頭を撫でた後にコンを下ろす
そして神社を見て回る
私 (改めてなんだこれ)
大きな鳥居を見る
その鳥居は少し傷がついているがボロボロに崩れそうというわけでない
むしろしっかり手入れされている気がする
私 (参道も綺麗だし人がいるのか?)
参道は落ち葉が少ない
参道の周りは落ち葉が落ちているが掃除をしたのだろうと想像が出来る
お辞儀をしてから鳥居をくぐる
私 (あんまり詳しくないんだよな)
参拝の方法や作法は詳しくない
しかし人目がないので気にしないようにする
私 (間違ってるかもだけど)
賽銭箱の前にコンと来る
財布から100円を取り出して入れる
そして手を合わせて目を閉じてお辞儀をする
私 (コンとこれからも楽しく居れますように)
お祈りをする
そして目を開けて改めて見る
私 (まあまあデカイな)
目の前の本殿
一軒家くらいのサイズの社が建っていた
近づいてよく見る
私 (やっぱ手入れされてるな)
ホコリや落ち葉などがあまりない
人の手が加わっていることに気がつく
私 (巫女さんでもいるのか?それかさっきの女性かな)
「あの」
私 「っ」
後ろから声をかけられる
女性の声だ
私 「本当に夢じゃなかったんですね」
鼓動が早くなる
「言ったじゃないですか」
後ろを振り向く
後ろには浴衣を着た女性がいた
背丈は170cm程度でかなりの高身長
腰まである白い髪が風で揺れていた
浴衣は朝顔の模様で夏祭りに行くような格好をしてて
顔はおっとりとした表情をしていて目を引くような美人だった
「コン君 ありがとう」
女性はコンを撫でる
コンは私に撫でられた時見たく目を細めて気持ちよさそうに撫でられる
私 (この人には懐いてるのかな)
「もし良かったら少しお話しませんか?」
私 「話?」
「えぇ お茶も出しますよ」
私 「話だけなら」
断じてお茶の誘惑に乗ったわけじゃない
あくまで話をするだけである
私 「冷たいお茶だとありがたいです」
「ふふふ いいですよ」
賽銭箱の向こうの本殿
その中にコンと女性と3人で入る
「どうぞ」
私 「いただきます」
私は麦茶を飲む
私 (うま)
ここまで来るのにかなり歩いた
早朝とはいえ汗もかいて体は水を欲していた
私と机を挟んで女性はこちらを見てくる
本殿の中の一室
和室にて私はお茶を飲んでいる
本殿の中は厳かな雰囲気が漂うと思っていた
しかし実際は和の作りの一軒家だった
縁側や畳や障子など全体的に和の造り
その一室の畳部屋
そしてここは夢の中で見た部屋だと確信している
目の前に女性がいて夢で見た畳部屋
今日の朝見た景色と一致していた
私 「ふぅ」
息を整える
コンはあぐらをかいている私の膝の上で寝ている
私 「それでこれは一体どう言うことですか?」
女性は話し始めた私の前に手を差し出す
手のひらをこちらに向けて待ったというジェスチャーをする
「色々説明する前にまずは自己紹介を」
私は一口お茶を飲む
「私の名前は如月と言います」
私 「如月さんですか」
如月 「えぇ」
私 「私は東雲 蒼と言います」
如月 「東雲さんですね よろしくお願いします」
こちらに向けて如月は手を差し出す
私 「こちらこそ」
差し出された手を握って握手をする
如月 「あ、堅苦しいのはお互いあれなので崩してもいいですか?」
私 「まぁどうぞ」
如月 「なら よいしょ」
如月はあぐらをかく
如月 「私敬語とタメ口が混ざるかもだけど気にしないでね」
私 「分かりました」
如月 「ん それとごめんね急に呼んで」
私 「本当ですよというかなんなんですか」
如月 「いやー 色々見てたけどコン君に対してあんなに優しくていい人だから一度見てみたくてね」
私 「というかどうやったんですか?」
如月 「ん?どうやったって?」
私 「コンを使って呼んだでしょう?自分でも何言ってるかわかんないけど」
如月 「呼んだねぇ」
私 「トンネルを抜けたら変な場所に神社があるしコンはいつもと違う行動するし夢に現れるしなんというか説明がつかないんですよ」
如月 「まぁそりゃ私が神だからねぇ」
私 「あー 神なら説明つきますね」
私 (やばい人かな)
如月 「やばい人じゃないよー」
私 「っ」
心を読まれた
如月 「まぁ私が本当に神だろうがそうじゃなかろうがいいじゃん」
私 「まぁですね」
如月 「ちゃっちゃと本題入ろっか」
如月は真面目な顔になる
眼光は鋭く
あぐらをかいて浴衣というラフな姿勢なのに威圧感を感じる
思わず息を飲む
如月 「あぁ そうかしこまらなくてもいいよ」
目線が優しくなる
威圧感は消え、空気が軽くなる
如月 「ごめんごめん 東雲君には頼みがあってね」
私 「頼み?」
如月 「そうそう いや 君の生活にあと2人くらい加えてくんないかなーって」
私 「は?」
如月 「簡単に言えば飼っている狐を二匹増やして欲しいんだ」
私 「新しく2匹狐を増やして飼えと?」
如月 「まぁ狐というか人間というか」
歯切れ悪く返す
私 「人間?」
如月 「えーと 二人だね」
私 「二人か」
如月 「いい?」
私 「だめですよ」
即答をする
如月 「なんで!?」
如月は驚いた表情をする
私 「いや そりゃダメというか無理ですよ」
如月 「可愛い女の子二人増えるんだよ?」
私 「なら尚更無理ですよ色々気を使うし」
如月 「ダメかぁ」
私 「というかそれで呼んだんですか?」
如月 「え?うん」
私 (この人やべぇな)
如月 「というかあの子達には外の景色を見せてあげたいのよ」
私 「ほう?」
話を聞く
如月 「あの二人は色々あって人間を恨んでるのよ」
私 「…」
如月の話を聞く
端的に言えばその二人は妖狐
狐の妖怪らしい
何百年も前の話
二人は自分たちの神社の近くの村を守っていた
妖狐言う存在を隠さずにその村を支えてきた
例えば田畑を豊かにしたり
川に流れる水を新鮮にして魚が泳げるようにしたり
災害などから守ったり
その村を愛して2人は愛されていた
村人は2人をかわいがって食べ物を上げたり
子供と一緒に遊んだり
それはそれは平和だった
しかし村人は欲深かった
その力に甘えて当たり前だと感じるようになった
そしてさらに力を求めた
もっと美味しい魚を求めて
安寧を求めて木材や鉱石など無理を言って求めて
挙句はほかの村を蹴落とすために殺戮を求めて
2人は頑張った
2人は人を愛していた
だから殺生はしなかったがその分村のために生きた
けれども力が及ばなかった
そして村人は二人を非難した
褒められるべきなのに
当たり前に平和を作ってもらったのに
そして二人は失望した
そして静かに村から消えた
人に甘えるということは自分の能力を育てるチャンスを逃すということだ
その村は2人に甘えて自由気ままに過ごしていた
その対価としてあっという間に食べ物はなくなり病が流行った
そしてその村は無くなったらしい
如月は神社にいる二人の話を聞き
ここで閉じこもる選択をしたらしい
そのためにこの神社を隠した
唯一通じるのは私が来たトンネル
そこ以外からは通じないように細工をした
そして二人はここで生活をしてきた
何百年も
何百年も
如月 「それで今もう1回言うけど二人を貰ってくれない?」
私 「いや 無理でしょ」
如月 「なんで!?」
如月はばんと机を叩く
私 「尚更無理になるわ!!」
思わず声を荒らげる
私 「人を恨んでる妖狐二人を貰ってくれ!?殺されるわ!!」
如月 「それは無いから!!あんた見たけど女との経験ないんでしょ!?いいじゃん!!」
私 「お前頭やべぇな!!」
如月 「あー!言った!!これまで思ってただけなのに!!」
私 「どう考えてもやべぇだろ!!」
思わず立ち上がる
膝の上にいたコンは如月が話をしている途中で部屋から出ていった
如月は場所はわかるから問題ないと話していたから気にしていなかった
如月 「はぁ!?あんた返さないよ!?」
私 「ふざけんな!!」
しばらく不毛で無駄で感情的な言い争いをする
私 「はぁ はぁ」
如月 「はぁ はぁ」
お互い息が切れている
私は前かがみになり膝に手を当てて息を整える
私 (かなり感情的になってたな)
寝不足と不可解な事象が起きて気が立っていたのだろう
敬語が消えてしまっていた
私 「というかなんで人を恨んでるのに私に引き取って欲しいん?」
畳にあぐらで座る
如月 「外の世界を知って欲しいのと変わって欲しいんですよ 2人には」
如月も机を挟んで正面に座る
私 「変わって欲しい?」
如月 「えぇ」
私 「だいたい二人は変わりたいって思ってるの?」
如月 「変わりたいかは知らないですが外の世界が気になるとは言ってました」
私 「なるほど?」
如月 「それにあなたは…」
私 「私は?」
如月 「いや なんでもないです」
この時に如月は目を逸らしていた
言いずらいのだろうか
私 (なにか秘密があるのかな)
如月 「とにかく!!」
如月は話を切りかえて私に言う
如月 「二人と一緒に暮らして欲しいんです!!」
私 「んー」
顎に手を当てる
最初はキッパリ断った
意味がわからないし無理だった
しかし今
2人に少し同情している自分もいる
そして変わって欲しいという如月の言葉
それは力が籠っており本当にそう思っていると感じた
私 「ふたりが危害を加えることは?さすがに殺されたりしたらやばいけど」
如月 「色々あるので端折りますがないですね」
断言をして如月は言う
如月 「まぁ、ビンタとかそういったのはあるかもですが最初から殺しにくることは無いですよ」
私 「ならいいけど」
ため息を着く
私 「いつから?」
如月 「え?」
私 「家に来る日」
如月 「ということは!!」
如月の顔がぱぁっと明るくなる
私 「なんかあっても知らないからね」
両手を上げて降参のポーズを取る
私 「とりあえず詳細は後で聞くけどいいよ 家で住んでも」
如月 「ありがとうございます!!」
如月はバンザイをして喜ぶ
如月 「いやー 最悪脅す気だったので良かったですよ」
私 「え?」
如月 「ここに来るにはトンネルしかない」
さっき二人の過去を聞いた時に言っていたことを如月は言う
私 「トンネルを通さなくする気だった?」
如月 「最悪ね」
如月は平然と言う
恐らくトンネルは如月が作っているのだろう
如月画素のトンネルを封鎖する
それは帰れないことを意味していた
私 「最初から詰んでたのか」
如月 「ふふふ」
気が抜ける
張り詰めていた空気が一気に抜ける
如月 「それでもあなたから飼うって言ってくれるのは違うわよ」
私 「違う?」
如月 「脅されて選択するのと自分で選択するのは大きな差があるのよ」
私 「…」
如月 「まぁいいや言質取ったし」
私 「はぁ」
ため息をつく
私 「というかその二人は?」
如月 「今はコン君と話しているわよっと」
如月は立ち上がって棚から瓶を取り出す
その瓶は日本酒だった
如月 「飲める口?」
私 「強くは無いですよ」
如月 「なら飲みなさい」
如月はコップに酒を注ぐ
私 「朝っぱらから?」
如月 「いつも私は朝から飲むわよ」
コップをこちらに手渡す
私 「少しだけですよ」
酒を1口飲む
その酒はかなり強く辛かった
私 「つよっ!!」
如月 「軟弱ねぇ」
如月は瓶に口をつけてラッパ飲みをしている
もう一口飲む
先程はあまりに強く飲めなかった
口の中に酒を入れる
その酒は日本酒でかなり度数が強い
たまに酒は飲む
しかし基本は弱い酒をちびちびと飲む
ここまで強い酒はこれまで飲まなかった
頑張って口の中の酒を飲み込む
すると胸がポカポカと熱くなる
如月 「どう?」
私 「美味しくない」
喉が焼けそうになる
味は辛すぎて美味しさを感じることは出来なかった
如月 「いい酒なのに勿体ない」
如月は口から垂れた酒を拭う
私 「身の丈に会う酒が美味しいんですよ」
徐々に意識がぼーっとする
如月 「ん?」
如月がこっちを見ている
しかしその顔が二重に見える
私 (んー?)
どさっ
体が倒れる
視界には天井のライトが写っている
私 「あえ?」
起き上がろうとする
しかし体に力が入らない
如月 「ちょ…そこ…で…よわい…」
如月が何かを言っている
しかし理解できない
そのまま目を閉じる
そして意識を落とした
前作 ep8~ep12 を参照




