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ぼーっと前を見る
視界には砂嵐が入っている
目の前には女の人がいることは分かる
私 (ん?)
ぼーっとした感覚が晴れていく
体を動かす
普通に動く
徐々に視界が晴れていく
私 (何だこの夢)
白い部屋
そこには女性がいる
しかし女性の姿は真っ暗で姿が分からない
「こんにちは」
女性の声がする
目の前の女性から話しかけられる
私 「あー こんにちは」
お辞儀をして返す
今は視界に砂嵐は無かった
「えっと 少しお話いいですか?」
私 「大丈夫ですけど」
私 (何だこの人)
前の女性は困ったような表情をする
顔が見えている訳では無い
それでも何となくわかる
まじまじと女性を見る
背丈は180cmくらい
かなり背の高い女性だ
「あんまりジロジロ見られると恥ずかしいです」
目の前の女性は両手を胸の前でモジモジとさせる
私 「申し訳ないです」
目を逸らす
私 「…」
「…」
お互い黙ってしまう
数分が経つが私は何を話せばいいのか分からずに黙ったまま女性の前に立っている
私 (気まずい)
「そういえばコン君今日楽しそうにしてましたね」
女性はお互い黙ったままの気まずい雰囲気を打ち破るように話す
私 「ボール遊びですか?」
「そうです かなりはしゃいでましたよね」
私 「ですね なかなかああいう遊びはしてなかったのでこれからしようかなって思いますよ」
「コン君あなたと遊べてかなり喜んでましたしいいと思いますよ」
私 「ですね」
私 (夢の中だからそりゃこの人知っているか)
なんでこの女性が今日コンと遊んだことを知っているのか一瞬疑問が浮かぶ
しかし直ぐに疑問は晴れる
自分の夢だからだ
夢は自分の記憶を整理する手続きとも言われる
自分の記憶を元に形成される夢
だから知っていても違和感は感じなかった
私 (明晰夢みたいにここまで意識はっきりしてるのは珍しいけど)
「あ 夢じゃないですよ」
思わず女性を見る
私 (そりゃ夢の世界だから)
「違う違う」
私 「何が違うの?」
「ここは夢だけど夢じゃないんですよ」
困ったように女性は言う
私 「何言ってるんだ」
「んー なら起きた時にコン君に着いて行ってください」
私 「着いて行く?コンに?」
「はい それが多分手っ取り早いので」
私 「なんでまた」
「それじゃあまた後で」
私 「いや、な
意識が消える
私 「…」
目を開ける
私 (なんだったんだ)
体を起こす
スマホを開いて時計を見る
まだ早朝だった
私 (ん?)
違和感を感じる
コンが居ない
いつもなら胸の上で寝ているが今日はいなかった
私 「コン?」
辺りを見回す
いない
私 (もしかして)
玄関に向かう
コンは玄関の扉をカリカリと書いていた
私 (やっぱり)
コンの癖
散歩に行く時は早く玄関に行って玄関の扉をカリカリと足で削る
私 (流石に嘘だよな)
夢だと思っていた女性との会話
しかしコンが起きた時に胸にいないのはほぼ初めてと言ってもいい
私 (とりあえず行くか)
首輪を取りだしてコンに付ける
私 「ごめん鍵と財布だけ取ってくるね」
リビングに戻り財布と鍵を取る
昨日出かけたから机の上に置きっぱなしになっていた
玄関に戻るとコンは一心不乱に扉をカリカリと削っていた
早く出してと言わんばかりに
私 「行こっか」
リードをしっかりと持って玄関を開ける
するとコンは目的地が決まっているかの如く走り出す
私 「うわっ」
きちんとリードを持っていなかったら離していただろう
散歩の時はジョギング程度の速度でコンは走る
しかしここまで全速力なのは昨日のボールで遊んだ時と今しかない
かなり珍しいことが起きている
私 (なんか夢のことと言い本当に怖いな)
息が切れない程度の走りでコンを追いかける
外は朝焼けが広がり、涼しいと感じる気温だった
私 (昼間だったらきつかったな)
準備運動もせずにランニングを始めたから息が切れそうになる
少し足を止めて息を整える
私 「はぁ はぁ」
コンはリードを引っ張る
早く行こうと言うように
私 「ちょっと ゆっくり行きたいごめん」
そういうとコンはこちらを見たあとてくてくとゆっくり歩く
私 「ありがとう」
息を整えながら歩く
私 (急に走るのはしんどいな)
コンは前を見て歩く
目的地があるように
その足取りに迷いはなかった
私 (ただこの先って)
前を見る
そこは家の裏の山だった
自転車で10~20分程度で着く山
私はあまり入ったことがない
1度来たことはあるが、山はあまり手入れはされていない印象だった
舗装されたり人工物がある訳でもない
縁もゆかりも無いかと思っていた
私 (これから登山するのかな)
自分の格好は白シャツジーパン
持ち物は財布と家の鍵という初心者が登山をするには山を舐めている格好だった
私 (無事に帰れるといいな)
心の中で涙を流しながらコンと山に向かって歩いた
私 「えぇ」
トンネルの入口の前で私は立ち止まる
1時間ほど山に向かって歩いた
そこまでは足を進めていた
コンはリードを引っ張ってトンネルに入ろうとする
私 「本当にこっち?」
コンに向かって言う
言ったところで変わらない
結果としてコンはトンネルに入ろうとする
私 (こんなトンネルあったんだな)
車が横並びで2台くらい入るくらいの幅
トンネルの先は見えない
トンネルの周りを見渡す
スプレーで落書きはされていない
しかし手入れもされていない
本当に人の手が触れずに年月がたったのだろう
あたりは草でおおわれていて
入るのを躊躇ってしまう
私 (トンネルの名前もわかんないし)
看板やトンネルの上にある名前の書かれたプレートもない
本当に何も無く朽ちているトンネルが目の前にあった
コンは首輪を引っ張ってトンネルに行こうとする
私 (怖すぎる)
無理やり1歩
また1歩
ゆっくりと足を踏み入れる
コンは早く行きたいようだがさすがにそうはいかない
恐怖心が勝ってしまう
トンネルの中はチカチカと点滅するオレンジの蛍光灯
何年変えてないのか明かりが付いていないライトが多かった
カツーン
カツーン
トンネルの中で靴の音が響く
意を決してトンネルに入った後
私はひたすら歩き続けていた
後ろを見る
ちゃんと入口はあった
私 (ホラー映画みたいに入口無くなったらさすがに泣くぞ)
トンネルの中は本当に何も無かった
不法投棄された家具などがあると思っていたが何も無い
白線の塗装が剥がれた道路
それに従って歩く
何も無いのがわかると徐々に歩く速度が早くなる
私 「さすがに脅かし要素あったら無くならね」
コンは前に向かって歩き続ける
私 (高速道路を歩いてるみたい)
恐怖心が薄まり少しワクワクとした好奇心が湧く
私 (にしてもかなり先だなこれは)
トンネルの先を見る
微かに光があるから出口があるのはわかる
しかしかなり光はかなり先にあり、このトンネルの長さを表している
私 (今何時だ)
スマホを取り出して時刻を見る
6:02
私 (あれ?)
【電波を取得できません】
スマホは電波が通じていない
圏外の表示が出ていた
私 (ここまでくりゃそりゃ圏外か)
スマホをポケットにしまう
私 (いつ着くかな)
出口が見えるだけまだ救いだろう
終わりがいつか来るかが分かるから
私はスマホの音楽アプリを開く
そしてダウンロードしておいたお気に入りの音楽を流す
私 「誰もいないし心折れるから勘弁してね」
誰かに言う訳でもない
強いて言えば謎の女性とコンにだろうか
カツーン
カツーン
お気に入りの音楽と靴の音が響く
私は終わりのあるトンネルをコンと歩き続けた
前作 ep 7.8 を参照




