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私 「あ」
思わず声を出す
餌袋の餌が無くなった
私 (もう少しあるかと思ったけどなかったか)
コンは私の足元でまだかまだかと言わんばかりに足に抱きついて引っ掻いてくる
私 「この後買い出し行こっか」
しゃがんでコンの前に餌箱を置く
コンは勢いよく餌を食べる
私 (ついでに冷蔵庫の中も寂しいし買い出し行こうかな)
カレーパンをひとつ取りだす
そしてお茶をコップに入れて冷蔵庫をしめる
私 「いただきます」
カレーパンを食べつつスマホを取り出す
私 (近藤さんから電話来てたんだ)
仕事中はスマホをマナーモードにする
集中が切れるのが嫌だから
近藤に電話をかける
私 (出るかな)
プルルル プルルル
近藤 「東雲かい?」
数コールした後に近藤は出る
私 「東雲さんデータ送りましたよ」
近藤 「ん ちゃんと見たで」
私 「というか久々に指切りましたよ」
近藤 「そりゃ珍しい」
私 「熱中しすぎててやばかったですね」
近藤 「というかこの時間まで電話無かったってことは」
私 「がっつり仕事してましたね」
近藤 「まじか」
私 「まじでふよ」
口の中にカレーパンを入れる
バレないように食べていたがつい喋り損ねる
近藤 「お、今何食っとる?」
私 「カレーパンれふ」
バレてしまったので食べつつ喋る
近藤 「カレーパンか 美味いよな」
私 「少し辛いですけどね」
近藤 「あ、つーか東雲」
私 (やば)
近藤の声のトーンが変わる
小言を言う時のトーンだ
近藤 「毎回言ってるけど生地の発注まとめて送ってくんな なくなりそうになったらちょっとずつ発注しろって言ってるよな?」
私 「ふいまへん」
近藤 「おぉ 説教に食いながら答えるとはいい度胸じゃな」
電話を切る
私 (カレーパン美味し)
餌を食べ終わったコンが膝の上に乗る
私 「これ食べたら買い物行こっか」
プルルルプルルル
電話がかかってくる
ちらりと名前を見ると近藤からだった
私 (話すことは話したしいいか)
電話を無視してコンを撫でる
私 (この後とりあえずペットショップとスーパー行くか)
しばらくコンの柔らかい毛並みを堪能してカレーパンを食べ進める
私 「さて行くか」
しばらくコンの毛を撫でるがこれ以上したら店が閉まる
私 「コン」
コンを抱えて床に下ろす
そして立ち上がって財布を持つ
コンは玄関に向かい壁にかけてある首輪の下でカリカリと壁を引っ掻いている
私 「ちょっと待って」
私 (鍵どこだっけ)
テーブルの上を探す
部屋は物で溢れかえっているためいつもどこにあるか分からなくなる
私 (えーと あった)
本をどかして鍵を見つける
私はズボンを履き替える
上はダボダボのシャツで下は青色のジーパン
基本的にはこの服にしている
私は玄関に行き、首輪を取る
そしてコンに付ける
犬用の首輪とリードだが、外出する時は必ずこれを付ける
コンも抵抗したり嫌がる様子もないため割と頭はいいのだろう
私 「行こっか」
玄関の扉を開ける
空は夕焼けが拡がっていた
私 「まぶし」
思わず手で目を覆う
私 (急がないとか)
車に乗り込んでエンジンをかける
コンは助手席でおすわりをしている
私 「行くよ」
閉店時間が近いペットショップに向けて車を走らせる
しばらく車を走らせる
田舎道で道路の舗装も甘く
ガタガタと車が揺れる
私 (間に合うかな)
ちらりと時計を見る
あと1時間で閉店だった
私 (間に合うな)
家からペットショップまで40~50分くらいかかる
バスやタクシーも来ない本当に何も無い田舎だった
田舎の一軒家を買ったのは手軽に広い家が欲しかったのと人との関わりを極力減らしたかったから
さすがに全ての関わりを閉じることは出来ない
それでもひとりで黙々と作業をしたかった
私 (割とこの家は程よく広いし自分が好き勝手やれるからいいんだよな)
ニヤッとする
数年前に近藤と仕事を組む際に仕事場を都会から田舎に移した
自分は1人の世界を作りたかった
その時にたまたまコンと生活することになったが特に嫌ではなかった
ちらりとコンを見る
仰向けで眠っていた
私 「ふふ」
目線を前に向ける
私 (近藤さんと言い、コンといい本当に変な出会いをしたもんだな)
しばらく車を走らせる
私 「コン?」
ペットショップの駐車場に車を止める
自分の車以外は無かった
エンジンを切ってコンを起こそうとするが起きない
私 (抱っこするか)
リードに腕を通してコンを抱きかかえる
私の腕の中でコンは眠っていた
私 (可愛いな本当に)
ペットショップに入る
「いらっしゃいませー」
いつもここで働いている女の店長がいた
締め作業をしていたのかしゃがんで棚の中を漁っていた
「あ 東雲さん」
私 「どうも早乙女さん」
ここの店長である早乙女は立ち上がりこちらに来る
背丈は150程と小さく黒髪で長いポニーテールをブンブンと揺らす
自信に満ち溢れる顔や仕草から背丈は小さいが威圧感すら感じる
早乙女「もう無くなった?」
私 「ですね 今回少し多めに貰ってもいいですか?」
早乙女「いいよー」
早乙女は店の裏に姿を消す
私は犬用のおもちゃのコーナーに向かう
ここのペットショップはそこまで大きくなく、新しい商品を選ぶよりかは商品を取り置きして貰うのをメインとしている
だいたいコンビニくらいのサイズのお店
しかし店長の早乙女は人当たりが良く、私は話していて苦痛ではない。
何より来る度にコンの様子を気にかけておすすめの商品を教えてくれたり体調や毛の状態などを見てくれる
なので私は早乙女には心を許している
私 (あ このボールいいな)
片手でコンを抱きかかえてボールを手に取る
私 (家の前とか誰も来ないしボール遊びとかいいかも)
早乙女 「気になる?」
私 「っ!!」
後ろから声がした
驚いて後ろを見ると早乙女がこちらを覗き込んできていた
早乙女 「東雲さん夢中で見てるから声かけにくいんよ」
ケタケタと笑って餌袋を沢山乗っけたカートをこちらに向ける
私 「驚かせないでくださいよ」
早乙女 「いやー ごめんごめん」
コンをみらりと見ると目を開けて起きてしまっていた
早乙女 「お、コンくんおはよ」
私 「起きちゃったか」
早乙女 「ついでにコンくん見ていこうか?」
私 「割と遅いですけどいいです?」
早乙女 「いいよいいよ」
私 「ならお言葉に甘えて」
コンを渡す
早乙女はコンを抱きかかえてジロジロと見る
私 「というか10袋もあるんですね」
早乙女 「まぁお得意様だからね」
私 「ありがたいですけどスペース取ってません?」
早乙女 「あれだよ ボトルキープ的な」
早乙女はコンの体をしばらく見たあとこちらに返す
早乙女 「今の所虫の卵とか悪い虫や変な初見は無いね」
私 「なら良かったです」
コンを片手で抱きかかえる
早乙女 「毛並みも綺麗に整ってるしちゃんとしてるね」
私 「そこまで手入れは出来てないんですけどね」
早乙女 「そりゃもったいないね」
呆れた声で言う
早乙女 「毎回言ってるけどこの子は宝石なんだよ 手入れすればそれだけ輝く!!」
腰に両手を当てて言い放つ
早乙女 「自分の可愛い子が光り輝くように毎日したげなよ!!」
ビシッと指を刺される
私 「あー はい」
思わずたじろいではいと言ってしまう
早乙女 「ならこれとこれと」
新しく発売されたクシやボールなどをぽんぽんとカゴに入れる
早乙女 「今入れたヤツは半額なー 買えよー」
レジには先ほど表示された金額よりも数千円多く表示されている
私 「うす」
私 (この人にはかなわないな)
レジに映し出された金額を支払う
早乙女 「つーか珍しいじゃん指怪我してるの」
レジ袋に道具を入れていると早乙女に声をかけられる
私 「あぁ 今日仕事してたら切っちゃって」
早乙女 「ほーん 気をつけろよ」
私 「ははは」
乾いた笑いで濁す
そして車にカートを持っていき餌を積んでいく
早乙女 「つーかまた1人引っ越すってよ」
私 「あ、そうなんですか」
早乙女 「そうそう もう餌いらないですって言われてさ」
私 「まぁ ここは何もないですからね」
早乙女 「だな」
私 「本当になんでこんな辺境の地にペットショップ開いてるのか今も分かりかねますよ」
早乙女 「それ言ったら東雲もこんな所で仕事はかなりの変人だかんな 人の事言えねぇぞ」
私 「まぁ そうですね」
早乙女 「だろ? これで最後だな」
早乙女は後部座席の扉を閉める
私 「助かりました」
早乙女 「気にすんな」
早乙女は手をひらひらと振ってカートを回収する
早乙女 「また新製品の感想ききたいし来るなり連絡してや」
私 「分かりました連絡しますね」
車に乗り込む
助手席にいるコンは袋が気になるのかずっと後ろの方を向いていた
早乙女 「また来いよー」
手を振って返事をし、エンジンをつけて車を走らせる
ミラーをちらっと見る
早乙女は手をブンブンと降っていた
ついつい頬がほころんでしまう
これほどまでに親身にしてくれる人はなかなかいないからだ
私 (にしても高くついたな)
想定より数千円超えてしまった
いつもの如く押し売りをしてくる
私 (まぁ 悪いじゃなくてコンを思って勧めてくれるからなんも言えないんよな)
片手でコンを撫でる
私 (あー、コンビニにしよ)
指がズキンと痛む
スーパーでちゃんと買い出しをしようと思ったが絆創膏を張り替えたい
ウインカーを出して進路を変える
そしてコンビニでちゃっちゃと買い物を済ませてから家に向かって車を走らせた
前作 4 ペットショップとスーパー を参照




