11
「…いさ……て…」
体が揺れる
「あお…きて」
誰かに体を揺さぶられている
私 (うるさいな)
目を開ける
目の前にはランの顔があった
こちらをじっと見つめて体を揺らしている
「蒼起きて」
私 (ん?ランさん?)
ぼーっと前を見る
私 (ねよ)
再び目を閉じる
ラン 「起きて」
先程よりも強く体を揺らされる
私 「っ わかった起きるよ」
無理やり目を開ける
ランは無表情の顔でこちらを見る
体を起こす
毛布がかけてあった
私 (あれ?)
昨日の夜ランに毛布をかけて眠った
しかし今その毛布は私にかけられていた
私 「ランさん寒くなかった?」
ラン 「昨日は蒼と寝たから暖かかった」
私 「え?」
眠気が一瞬で覚める
私 (そういうことか)
ランから話を聞く
ランは私が眠った後に目が覚めたらしい
そして私が寒そうにしていたから狐の姿になって一緒に眠っていたらしい
私 (そういえば人間じゃなかったもんな)
目の前には人間の姿のラン
しかし妖狐のため狐の姿になって私の胸の上で寝ていた
ラン 「蒼あったかい」
私 「昨日警戒というか距離あったのに良かったの?」
ラン 「別にいい」
ランは平然と言う
私 (いまいち分からない人だな)
距離が近かったり呼び捨てになってたりなど色々と考えが読めないところがある
スマホを見る
今は5:47分だった
私 (はや)
私 「もう少し寝ない?」
ラン 「蒼はいつも何時に?」
私 「7時とかそのくらいかな」
ランにいつも起きる時間を教える
私 (なんとなくランさんの話し方がわかってきたかも)
ラン 「寝よ」
私 「寝ようか」
私はソファーの上に横になる
上を向いて目を閉じるとソファーが揺れる
目を開けて見るとランが座っていた
私 「どこで寝る気?」
ラン 「胸」
ランはまばたきをすると狐の姿になっていた
九本のしっぽが普通の狐との違いを物語っていた
ラン 「コンが蒼の胸はよく眠れるって」
私 「そうなの?」
ラン 「だから試す」
そう言ってランは私の胸の上で丸く身を寄せる
いつもコンが私の上で眠るように
私 「嫌じゃないの?」
ラン 「そういうのは無い」
私 (へんなの)
考えるのをやめて目をつぶる
ラン 「おやすみ」
私 「おやすみ」
ウトウトしていたからすぐ眠りにつく
私 (…)
目を覚ます
私 (おも)
最初に感じたのは胸元の重み
胸元が異常に重かった
そして暑さ
暖かいを通り越して少し暑い
私 (なんだ?)
目を開ける
そして胸元に目を落とす
そこには三匹の狐が寝ていた
私 (器用だな)
川の字で寝ている三匹は今日にも私の体に乗っている
毛布をかけていないのに毛布をかけている時以上に暑い
三匹は私の胸の上ですやすやと眠っている
私 (全く)
真ん中の狐がコンなのは分かる
いつも一緒にいるから
そしてしっぽが1尾しかないから
しかし左右の狐のどちらがランでどちらがリンかは分からない
ぼーっとランとリンの頭を撫でる
私 (片方はふわふわしてて片方はサラサラしてる)
意外にも毛並みに違いがあった
ラン 「おはよ」
ふわふわした毛並みの狐から声がする
そして目を開けてこちらを見る
私 (ふわふわした毛並みがランか)
私 「おはよ」
ラン 「なんで撫でてるの?」
私 「あー」
ラン 「まあいいや」
ランは私の胸から降りる
そして人間の姿になる
ラン 「眠い」
私 「眠いね」
リンの頭を撫でる
ラン 「撫でるならここ」
ランはリンの耳を撫でる
私 「耳って触っていいの?」
ラン 「多分大丈夫」
リン 「何してるんです?」
リンも目を開ける
ラン 「蒼になでなで講座」
リン 「寝起きにこれはびっくりしますよ」
ラン 「そう?」
リン 「そうよ」
リンも私から降りて人間の姿になる
リン 「おはよご主人」
私 「おはよう」
リン 「にしてもご主人ってあったかいですね」
私 「冷たかったら困るよ」
リン 「そうじゃなくて」
私 (ん?)
リンはまだ眠っているコンを撫でながら言う
リン 「なんというか落ち着くんですよ」
ラン 「分かる 落ち着く」
私 「そうなの?」
リン 「安心?みたいな」
ラン 「これからここで寝たくなる」
私 「止めはしないけど暑苦しいからその時は暖房消してね」
ラン 「分かった」
私はコンを抱きかかえて立ち上がる
リン 「というかここがご主人の仕事部屋ですか」
リンは物珍しそうに周りをキョロキョロと見回す
私 「そうだよ 散らかってるのは気にしないでね」
リン 「しませんよ というか本当に仕立て屋なんですね」
私 「一応ね」
ラン 「昨日見てたけど手際よかった」
リン 「え 私もみたいです」
私 「別にいいけどあんまり面白くないよ?」
ラン 「面白かった」
私 「そうなんだ」
私 (どこに面白さがあるんだろ)
キッチンに向かう
コンは私の腕の中で気持ちよさそうに眠っている
リン 「というかご主人お風呂入ってないですよね?」
私 「あー 入ってないね」
仕事を終わらせてから夜入ろうとしていた
しかし熱中していたのとあまりの眠気に抗えずそのまま寝たことで入れなかった
リン 「ならお湯温めておきますね」
私 「あ お湯張った?」
リン 「そりゃあ張りましたよ」
私 「なるほど」
ラン 「コンに聞いたけどお湯浸からなきゃダメ」
私 「あんまり入らないんだよな」
基本的にはシャワーで毎回済ませる
リン 「せっかく張ったのでご飯食べたら入りませんか?」
私 「ならお言葉に甘えてそうするよ」
リンは風呂場に向かう
ラン 「朝はどうする?」
私 「菓子パンで済ませてもいい?」
ラン 「いい」
私 「コン 起きて」
リビングのソファーにコンを下ろして揺らす
コン 「んん」
コンは目をゆっくり開ける
コン 「おあよ」
私 「おはよ ご飯だよ」
コン 「食べる」
コンは人間の姿になってソファーに寝っ転がったまま伸びをする
そして人間の姿で再び眠ってしまった
私 (このまま寝かしとくか)
三人とも人間の姿になる時は一瞬でまばたきをすれば姿が変わっていた
私 (妖術凄いな)
キッチンにランと向かう
私 「どれにする?」
ラン 「悩む」
棚を開けて菓子パンを選ぶ
ランは手に顎を置いて真剣に見ていた
鋭くキリッとした目で菓子パンを見ていた
私 「そこまで真剣になる?」
ラン 「ピザパンにするかあんまんにするか悩んでる」
私 「2個食べてもいいよ?」
ラン 「本当!?」
バッと長い黒髪を揺らしてこちらを見る
ランは目を輝かせてオーバーリアクションをする
私 「この後外でお昼食べるけどそれでもいいなら」
ラン 「外でも食べる!!」
私 「…二個食べていいよ」
そう言うとランは嬉しそうにピザパンとアンマンを二個手に取る
私 (思ったより感情豊かだな)
私はコンのカレーパン、リンのイチゴジャムパン、自分のカレーパンを手に取る
ラン 「早く食べよ」
私 「食べようか」
私とランはリビングに向かう
コン 「zzz」
リン 「おかえりー」
リビングではコンは仰向けでソファーの上で眠っていてリンはリビングの掃除をしていた
私 「リンさんはいちごのジャムパンでいい?」
リン 「いいですよ というかさん付けなんか距離あるのでやめてください」
ラン 「私もヤダ」
私 「あー ならこれから呼び捨てにするね」
リン 「お願いします」
私 「コン」
コンの腕を数回叩く
コン 「まだ眠い」
私 「ご飯どうする?」
コン 「食べる」
コンは寝ぼけまなこで起き上がりソファーに座る
私 (コン朝苦手だもんな)
ペットの時からコンは朝が早い時は早いし遅い時は遅い
早い時は胸を叩かれて餌を寄越せとせがんでくる
遅い時は本当に起きないで餌の音でようやく起きる
私 (今日はダメな日か)
コンは袋を開けてもそもそと食べる
しかし首はうつらうつらと揺れていて
目は閉じかけていて今にも寝そうだった
リン 「コンまだ眠い?」
コン 「眠い」
リン 「パン落としかけてますよ?」
コン 「うん」
私 (お昼までに目が覚めればいいけど)
リンはジャムパンを食べつつコンの様子を見ている
ランの方をちらりと見る
ラン 「ご馳走様」
私 「はやっ」
私はまだカレーパンを半分しか食べていない
しかしランは二個のパンを食べきっていた
ラン 「美味しかった」
私 「ちゃんと噛んだ?」
ラン 「噛んだ」
ランはじーっと私のカレーパンを見ている
私 「…まだ食べたい?」
ランは首をぶんぶんと縦に振る
私 「この後お風呂入るからいいよ」
ランにカレーパンを手渡す
ラン 「ありがとう」
ランはカレーパンを両手で持って食べる
リン 「あんまり甘やかさないでくださいね?」
私 「気をつけるよ」
リンはじーっと怪しむような目線を送る
私はその視線に目を逸らしつつ話す
私 「お風呂入ってくるから出たら行こうかな」
リン 「分かりました」
私 「まぁモールに服とか食料とか色々買い出しに行く感じで」
ラン 「車で?」
私 「車で行くよ」
ラン 「ん」
しばらく話した後に風呂場に向かう
私 「あーったけぇー」
今湯船に浸かってのんびりとする
前かがみになったり肩に変な力を入れてるからか筋肉がほぐれていく感じが伝わる
私 (久々に湯船浸かったな)
肩まで湯船に浸かりつつ考える
私 (今日はモールに買い出しに行ってまた夜は仕事進めるか)
今は10:30くらい
本当はもっと早めに出ようと思っていたが寝過ごしたり今風呂に入ったりで遅れている
私 (40分くらいでモールに着くからそこから服とか買い出しして適当に飯食べてでいいか)
上を向いて髪を湯に付ける
私 (にしてもランもリンも第一印象と違ったな)
ランは最初は無表情、無口で話しずらい雰囲気だった
しかし興味津々で私の仕事を見た時や菓子パンを選んでいる時には表情をコロコロと変えていた
リンは最初はどこか他人行儀な雰囲気を感じていた
しかし話しやすく、ランのことを大事にしている人だった
「お兄ちゃーん」
脱衣所からコンの声がする
私 「んー?」
コン 「みんな準備できたよー」
私 「なら出るね」
コン 「待ってるー 後、ランとリンが服ないから廃棄のスーツ借りていい?って聞いてるー」
私 「女物のやつだよね?いいよ」
コン 「なら伝えてくるー」
ドタドタと浴室を出ていく音がする
私 (出るか)
立ち上がる
水がぽたぽたと垂れる
私 (抜いとくか)
風呂線を抜く
そして脱衣所に行きタオルで体を拭く
私 (ねむ)
久々に湯船に浸かった
シャワーで事足りるかと思っていたが意外に体は疲れを貯めていた
私 (たまに入ろうかな)
シャツとジーパンを履いて脱衣所を出る
コン 「あ おかえりー」
黒スーツに身を包むコンは近づいて私を見下ろす
私 「え?」
リン 「行きますか」
リンは私のカバンを持ってきていた
私に渡してくれるが私は動けなかった
私 (身長高くね?)
風呂に入る前はリンとコンの身長は150cmくらいだった
しかし今はランと同じ180cmくらい
黒スーツに身を包んだ2人は私を見下ろしていた
思わず二人から目が離せなくなる
リンはポニーテールを下げてキリッとした目でこちらを見る
胸はランに比べると無いがそれでも普通よりはあるだろう
コンは長いボサボサとした髪をして眠そうなタレ目でこちらを見る
細身だがスーツを切るとスタイルがいいということで収まり、じっと見つめるその目に吸い込まれそうになる
私 (かわいいしかっこいい」
リン 「そうです?」
コン 「僕かっこいい?本当!?」
リンは困り眉をしてキョトンと悩むような顔をする
コンは猫のように目を細めて嬉しそうにくしゅっと表情を崩して笑う
私 「あっ」
口を抑える
私 (声に出てた)
コン 「お兄ちゃんに言われるとうちゃくちゃ嬉しいよね」
コンはリンに話しかける
リン 「確かに嫌ではないですね」
ラン 「時間」
黒スーツに身を包んだランが後ろから来る
改めて三人は白シャツに黒スーツできっちり身を包んでいる
それぞれサイズが合っていて体のラインが出ているが三人とも息を飲むくらい綺麗だった
私 「んー」
私 (さすがにこの集団で1人白シャツジーパンはまずいか)
私 「少し着替えてくるから先車行ってて」
リンにカバンを渡す
リン 「分かりました」
コン 「お兄ちゃんそれでも良くない?」
私 「さすがにスーツに着替える」
コン 「手伝うよ」
ラン 「先行く」
ランとリンは私のカバンを持って玄関から外へ出ていった
私 「さっさと着替えようか」
コン 「うん!」
私はコンと自分の部屋に向かう




