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私 (んー)


作業部屋に入る


そして散らかっている床を踏みながら机に向かう


私 (依頼が近いやつはさすがに完成はさせないと近藤さんしんどいよな)


昨日作業を中断していた生地が机にはある


ラジオをつけつつ椅子に座る


そして昨日の裁断していた生地を持つ


私 (少し痛いけど行けるな)


昨日切った指


ほんの少しだけ痛むが大したことは無い


私は生地を切る


私 (ねむ)


朝早く起きたせいで眠い


一応酒を飲んで寝落ちはしていたが体は休まらなかった


私 (つーか如月さんあんな酒癖悪いのかよ)


リンに聞いた話を思い返す


如月は朝から酒を飲みリンとランにも酒を飲ませていたらしい


私 (絡み酒とか流石にしんどいな)


もし後日神社に行く時は胃腸薬を持参していこうと思う


私 (というか私もあんだけ弱いのか)


酒を飲んだ時


頭がぼーっとして一瞬でふわふわした


そして起きた時にコンに看病されていた


私 (あんまり酒飲まないし今度どのくらい弱いか調べてみるか)


明日の買い出しで酒を買う


そう決意する


私 (1人だったら酒で潰れたらやばいけど3人がいるし安心だな)


考えつつ黙々と生地を切っていく






「ニックネームねねねねさんからいただきました私は…」


ラジオからは取り留めのない話題が流れている


作業は順調に進んでいた


私 (そういえば昨日近藤さんとの出会いを思い出してたな)


考えることが近藤との出会いに移る




近藤 「働かせて欲しいんや!!」


私 「は?」


足を止める


後ろを見る


近藤は頭を下げていた


私 「働く?」


近藤 「そう!!」


私 「なんでまた」


近藤 「東雲さんが苦手とすることを俺が支えれるからや!!あと夢を諦めれんかった!!」


私 「はぁ」


私 (ヤバすぎるだろこの人)


頭を下げたまま近藤は言う


近藤 「俺は腕がからっきしやけど東雲さんの腕は確か!!なら俺が支える!!パートナーや!!」


近藤は頭を上げてこちらに近づく


私 「はぁ!?急にパートナーとか言われても」


近藤 「頼む!!営業とかは身につけたけど仕立て屋の夢が諦めれない!!けど腕がない俺の最後のチャンスなんや!!」


泣きそうな目でこちらを見てくる


私 「いや 私は自由気ままにひっそりと」


近藤 「その調整から何から何まで全部やる!!顧客との会話や営業は身に付けてる!!サイズの測定も何とかやれる!!」


私 「っ」


私ができないことをできる


それは魅力ではあった


私 「ていうかいきなり言われて信用できませんよ」


近藤 「だろうな!!分かっとる!!それを踏まえて頼む!!」


近藤はこちらを泣きながら見て土下座をする


大の大人が地に頭をこすりつける


私 「ちょ!!」


近藤 「頼むよ!!」


私 「えぇ…」


もはや引いてしまう


近藤 「無理言ってるのも信じれないのもわかる!!けれど俺の人生がかかってる!!これくらいはさせてくれ!!」


私 「話を聞くので頭あげてください!!」


声を荒くする


近藤 「っ」


近藤は頭をあげる


私 「一旦話だけでも聞きますよ」


近藤 「すまんな」


近藤は立ち上がる


勢いよく土下座したからかおでこが赤くなっている


私 「とりあえず座ってください」


私は作業部屋のソファーに座る


近藤 「あぁ」


近藤は机を挟んで反対の席に座る


黒のスーツは着崩れてぐちゃりとシワができている


私 (でも話を聞いていると私のできないことを補ってくれるのか)


私が苦手な営業や測定などの対人


それを近藤が全てやれば私は制作に集中をできる


私 (魅力ではあるけど)


ちらりと近藤を見る


近藤は縋るような目でこちらを見ていた


近藤 「ダメか?」


私 「んー」


頭を抱える


私 「自営業だし収入安定しないですよ?」


近藤 「夢を取って不安定なここに足を突っ込むんだ 全然構わん」


私 「こう見えて仕事をしない時はしないし自由奔放というか迷惑をかけますよ?」


近藤 「それを調整するのが俺だ」


私 「断ったらどうするんですか?」


近藤 「別の方法を探すね」


私 (熱いなぁ!!)


話をしているがかなり魅力的で惹かれていた


私 「どうなっても知りませんよ?」


近藤 「安定を捨てたんだ 覚悟は出来てる」


私はため息をついて話す


私 「前向きに検討するんでしっかり詰めますか」


そういうと近藤はぱぁっと顔を明るくする


近藤 「いいのか!?」


私 「いいですよ」


近藤 「怪しいやろ!?」


私 「なんで本人がそれ言うんですか」


近藤 「それはそうやんけどな…」


近藤は目を見開いて驚きこちらを見る


私 「私がやりたくないことを近藤さんが補う 近藤さんができない制作を私が行う」


私はパソコンを開いて契約書を作成する


私 「私も正直この仕事を続けるか悩むくらいには気が滅入っていたのでいい機会です」


近藤 「任せろ営業、資料制作、サイズ測定なんでもやる」


私 「人使い荒いですよ私は」


近藤 「職人を支えるのが俺だ 東雲さんが出来ないことは俺が支える」


私 (職人か)


これまで私は全てを一人でやっていた


人を絡ませると面倒だし気が滅入っていた


けれど近藤は私が出来ないことを補うと自信満々に言う


私 「採用の方向性で話を進めますね」


近藤 「ん なら話もう少し詰めよか」


私 「はい」


近藤と労働時間、条件などの話を詰めて行く






私 「ひとまずこんなところですかね」


近藤 「やね」


私は契約書をパソコンで作成する


私 「こう言ってはなんですけどかなり労働環境酷いですよ?」


近藤 「まぁやりたいこと優先したらそうなるわな 最悪副業で食いつなぐかな」


私 「副業?」


近藤 「俺一応教職持ってるんよ やんけん塾の行使をたまに行っててな」


私 「しれっとすごいこと言いますね」


近藤 「なんかあった時のためにな やんけんこういう無茶ができるわけ」


私 「なるほど」


パソコンを近藤に向ける


画面には今作った契約書が映っている


私 「こんな感じでいいですかね?」


近藤 「あー 条件はいいねんけど」


近藤は少し眉間に皺を寄せる


近藤 「あー 東雲さんパソコン苦手か?」


私 「正直苦手ですね」


近藤 「少しパソコン貸してくれやん?」


私 「え?いいですけど」


近藤はしばらくパソコンを打つ


近藤 「せっかくやし自分を売り込むなら何ができるかを言わやんとな」


私は立ち上がり近藤の隣に座る


そして画面を見るとさらに綺麗で見やすい契約書が作成されていた


私 「おー」


私 (本当に得意なんだな)


近藤 「これで見やすくなったやろ 内容は変えてないで」


私 「確かに見やすいですね」


画面には契約書が映っていた


私が作成したのと比べると無駄を省いて分かりやすい


見やすい書類になっていた


近藤 「こういった実務や営業は学んできたからな」


私 「本当にパソコンには疎くて」


近藤 「まぁ東雲さんの契約書も全然問題ないけどせっかくなら見栄え良くした方が顧客も着くもんよ」


近藤はニヤリと笑みを浮かべる


私 「普通に期待を超えてくるのやめません?」


近藤 「仕事を期待以上に出来ないと仕事を探す時に押しかけることも出来ないもんよ」


近藤はガハハと豪快に笑う


近藤 「印刷していいかい?」


私 「はい」


契約書を印刷する


私 「印鑑は?」


近藤 「もちろん持っとる」


私 「なら」


立ち上がり近藤と反対側のソファーに座る


そして一息着いて改めて言う


私 「これから荒くあなたのことを使っていくので覚悟をしておいて下さい」


契約書に私は名前を書いて印鑑を押す


そして近藤に契約書を渡す


近藤 「夢だった仕立ての仕事に関われるんや 腹は括っている」


近藤も契約書に名前を書いて印鑑を押す


私 「採用で これからよろしくお願いしますね」


近藤 「ん これからよろしく頼むな」


私と近藤はがっちりと握手をする




近藤 「にしてもまさか雇われるとは思わんかったわ」


私 「正直私も雇うとは思いませんでしたよ」


今は書類部屋にて近藤と書類の整理を行っている


近藤 「詐欺とか色々考えかったん?」


私 「あー」


近藤 「どうするよ?俺が詐欺師でこの書類のデータを全て持ち出すとかしたら」


私 「その時はひとまず謝罪巡りした後に贖罪しますね」


近藤 「贖罪てまたムズい言葉を使うんやな」


私 「まぁ近藤さんが詐欺師だったりしたらそれはそれでですね」


近藤 「ほーん」


私 「人生はギャンブルなんで」


近藤 「お ええこと言うやん」


書類をファイルに入れていく


私 「なんで近藤さんがただ夢を追う馬鹿で真面目に仕事するって賭けたまでですよ」


近藤 「逆も然りやな 俺も東雲さんにかけたし」


私 「まぁそれはそうですが私からしたら賭けてる人が向こうから突っ込んで土下座してきたので」


近藤 「それは気にしないもんやがな」


私 「はぁ」


ため息を着く


近藤 「というか実務苦手やったんやな 書類も乱雑にまとめられてるし」


私 「とことん苦手ですね」


近藤 「企業に属してれば良かったんちゃうん?苦手な実務とか営業はやってくれるで?」


私 「色々あったので」


「色々」というセリフを強調して言う


近藤 「そうか そういえば書類の整理なんやけど東雲さんは」


近藤は書類整理のコツを話す


その後も私が会社に属していた時の話を聞くことは無かった


私 (ありがたいな)


お互い話しつつ書類整理を進める






私 (懐かしいな あの時なんで雇ったんだけっけ)


黙々と生地を切り続ける


ほぼ切る工程は終わっていて細かい調整をしている


私 (たまに思い返しても意味わからないな)


近藤を雇ったのは能力に惹かれたのもある


けれどいちばんは人柄だろう


あとは直感


私 (詐欺師じゃなくて本当に良かった)


近藤は雇ったあとから仕事をかなり進めてくれた


おかげでスーツ制作に集中ができて仕事が楽しくなった


近藤にたまに聞く




私 「近藤さん制作以外任せてしんどくないですか?」


近藤 「まさか 最高の職だな 好きなものに関われて能力が生きるんだ 天職だよ」


私 「なら良かったです」




私 (本当に近藤さんと仕事を組んでよかったな)


考えていると生地の裁断が終わる


私 (これでいいな)


ハサミを置いく


私 「疲れたぁ」


ぼそっと呟きつつ伸びをする


私 「ふぁあ」


伸びをするとついつい欠伸をしてしまう


少し眠気は襲ってくる


私 (もう少しだけやったら寝るか)


そして生地を体の形に合わせつつ縫うために裁縫道具を取り出す


「はい」


私 「っ!!」


後ろから声をかけられる


思わず後ろを見る


ランが立っていた


ランはコップを差し出してこちらを見ている


私 「いつ入ってきました?」


ラン 「1時間前に」


私 (気づかなかった)


ランからコップを受け取り中身を見る


味噌汁が入っていた


私 「味噌ってあったっけ?」


買った覚えがない


ラン 「インスタントのものが」


私 「なるほど」


私 (備蓄のやつ開けたな)


ため息をついて飲む


ぬるかった


私 「ずっと居たの?」


ラン 「居たよ」


私 「声掛けてくれてもいいんだよ?」


ラン 「かけたけど集中してて気付かれなかったですね」


私 「あー ごめんね」


ラン 「大丈夫」


ランは私の手元を見ている


私 「気になる?」


ラン 「…少し」


間を開けてランは答える


私 「せっかくだし見ていく?ランが眠かったら寝ちゃってもいいけど」


ラン 「いいの?」


ランは目をきらきらとさせる


私 「いいよ」


立ち上がり適当な椅子を持ってくる


ラン 「ありがとう」


ランは座ってこちらを見てくる


私 (集中できるかな)


私は裁縫道具と生地を持って縫い合わせる


ランは私の手元をじっと見ている


ラン 「近く行ってもいい?」


私 「いいですよ」


ランは椅子を持って私の隣に座る


私 (近いな)


肩が触れる距離


ランはかなり近づいてきた


私 (距離感バグってるな)


特に指摘をせずに縫い始める


ラン 「速い」


私 「縫う速度?」


ランはこくりと頷く


私 「そりゃあ仕事にしてるからね」


ラン 「何年?」


私 「今25だから職にしたのは7.8年前?けど幼い頃からずっと仕立てはしてるよ」


ラン 「ずっと?」


私 「ずっとね」


話しながら手を動かす


ラン 「蒼さんはなんでこの仕事?」


私 「この仕事っていうのはこの仕事に就いた理由?」


ランの方をちらりと見る


ランは私の手元を見ながらこくりと頷く


私 (癖のある話し方だな)


私 「んー 幼い頃から服の制作とかしててできることがこれだったんよね」


ラン 「他の仕事は?」


私 「元々人と接するのが苦手だったから無理だったかな」


ラン 「蒼さんは話しやすい」


私 「そう?かなり口下手だよ?」


ラン 「落ち着く」


私 「なら良かった」


ランはその後黙って私の手元を見る




私 「…」


ラン 「…」


黙々と作業を進める


気まずい沈黙ではなく少し心地良さがある


「ただいま午前一時をお知らせします」


ラジオは午前1時を告げる


私 「ランさん眠くなったら寝に行ってもいいからね?」


ラン 「その時は寝る」


私 「ん」


ラン 「…」


私 「…」


たまに話して基本お互い沈黙


ちらりとランを見る


ランは私の手のひらをじっと見る


私 (綺麗だな)


背中にかかるほど長いサラサラとした黒髪で少し目は隠れている


あった時は睨んでいるようなキリッとした目


しかし今は眠そうにウトウトとしている


肌は綺麗でモデルと勘違いする


私 (というか服良く着れたな)


ランは私の白シャツとジーパンを着ている


男用のシャツだから胸はかなり強調されている


パッと見メロン位のサイズ


間違いなく人目を引くようなサイズだった


私 (羨ましいな)


生まれながらにして美形


見た目で苦労することはランとリンは無いだろう


ラン 「なに?」


ランは私の手元ではなく目を見ていた


そして自身の胸の見て


ラン 「何かついてる?」


私 「いや 私の服着れたんだなって」


ランは今私の白シャツとジーパンを着ている


ラン 「きついけどなんとか」


私 「明日服とか買いに行くから今日はごめんね」


ラン 「大丈夫」


私 (というかやっぱでかいよな)


ついつい見てしまう


私 (あんまアイドルとかテレビでしか見ないもんな)


ランは胸元を手で覆う


顔を上げると頬を染めてランはこちらを見ていた


ラン 「えっち」


私 「ごめんね」


生地に目線を落とす


ラン 「蒼さん良くない」


私 「ごめんよ」


私 (やらかしたな嫌われたかな)


私は自分の手元を見つつ作業を進める




私 「…」


ラン 「…」


「二時半になったので深夜の受験生のみんなは…」


ラジオは午前2:30を示す


私 (そんな時間か)


隣をちらりと見る


ラン 「…」


ランは腕枕をして眠っていた


私 「ランさん?」


ランは呼び掛けに答えることなく眠っていた


私 (いつの間に寝たんだ)


作業を中断して道具を片付ける


そしてゆっくりと立ち上がりソファーの横にある毛布を持ってくる


そしてランに毛布をかける


私 (流石に少し寝ないと運転できないな)


ラジオを切って私はソファーに横になる


ランをソファーに寝かせようか悩むが勝手に触れたら不味いだろう


私 (ただでさえさっきので警戒されてるしそのまま寝かせるか)


ちらりとランを見る


机にうつ伏せになって寝息を立てていた


私 (毛布ないと寒いな)


少しだけ暖房を入れて使えなくなった生地を寄せ集めて布団替わりにする


基本スーツの記事だから薄いが何も無いよりはマシだった


私 (さむ)


体を丸めて意識を落とす


夜遅くまで作業していたからかすぐに意識は落ちた




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