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METAL QUESTER  作者: 藤沢マサト
第一章 正解のない旅路
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第8話 エスティアにて

 バルティックはリュウタ達の仲間になり、同じ境遇の人物と出会えたことで心に余裕が出来ていた。

とはいえ、まだ元の世界に帰るための確固たる方法は分からないままであった。その方法を見つけ出すため

にも、各地を巡って少しでも手掛かりとなるような情報を探ることになる。

 ある夜、バルティックはただ一人テントの外に出て、ミノスソルジャーと静かに話をしていた。


「なぁ、ミノスソルジャー……」


 バルティックは深刻そうな顔つきをする。


「どうした?」

「俺には元居た世界に、恋人がいるんだ。メアリーといってな……」

「そうなのか。初耳だぜ」


 やや呑気そうな態度のミノスソルジャー。

 その後もバルティックは淡々と話し続ける。


「メアリーは今頃、俺の事を探してるんじゃないかな……」


 彼はリュウタ達には見せないナイーブさを見せた。


「まぁ、そうだよな。突然この世界に飛ばされた事なんて知らねぇだろうしな」


 彼らが話している中、リュウタが目を覚ましバルティックの元に近寄る。


「ん……、バルティックさん……」

「リュウタ! 起きてたのか?」

「あぁ……。何か声が聞こえたもんだからつい……」

「今の話、全部聞いてたのか?」


 思わずバルティックは驚きのあまり目を見開く。


「いや、あくまで何を喋ってたのかまでは聞き取れちゃいないさ」

「そうか……。まぁ大したことのない話だ」

「ふぅん。もしかして故郷が恋しくなったのかな……、なんて思って」


 リュウタの発言にますます動揺を隠せなくなるバルティック。


「その通りさ……」

「俺もそうなんだよね。今頃、親とか学校のクラスメイトは困惑してるだろうな」


 リュウタは綺麗な星々が輝く夜空を見上げる。


「ところで、バルティックさん」

「どうした?」


 バルティックは不思議そうな面持ちで彼の事を見つめる。


「なんで俺達の仲間に?」

「そりゃあ、あれ以上ラグルード基地にいる人たちに迷惑をかけないためさ。それに、同じ境遇のお前達と出会って思ったんだ。充実した時間を過ごせるんじゃないかと思ってな」


 バルティックは先程とは一転して穏やかな表情になる。そして、それを見てリュウタも微笑む。


「ふぅん。でも、これから何が起こるか分からないんだぜ?」

「それでも賭けてみたいんだ。お前達となら、元の世界に帰れそうな気がしてな。共に戦いながら、お前達の様子を見てみたが、なかなかいい腕前だった。それもあるな」

「帰れる保証は無いけど、それでもいいのかよ?」


 リュウタはバルティックの事をじっと見つめていた。


「いいさ。それでも俺はお前達と旅をするよ。お前達となら退屈しないだろうしな」


 ニヤリと笑みを浮かべるバルティック。彼は静かに拳を握り締め頷く。


「分かったよ。じゃあ、よろしく頼むよバルティックさん」

「こちらこそよろしく、リュウタ」


 二人は握手を交わした後、すぐさま各々のテントに戻った。



 一方、浮遊大陸軍はリュウタ達の事を危険視していた。この事もあり、彼らに対しての対策を練っていた。その対策会議のメンバーの中には過去に何度も戦ったスレイン達もいた。


「ここ最近、例のレベル3MH(メタルヒューマノイド)の連中の妨害が激化しているので、何としても奴らを止めなくてはなりませんな」

「そうだな、スレイン。そのためにも奴らの戦闘データを分析して、新型のMHを開発しないとな」

「しかし、そればかりでは対応が遅れてしまいます!」


 スレインは机に拳を叩きつけた。


「だが、お前たちの今の実力で奴らにかなうのか?」

「そ、それは……」


 彼はオルドックに対しては口を濁すことしか出来なかった。


「何も言えないのも無理はない。だが、やれる限りの事はやってみろ。それでも駄目だったら開発をより早く進めなくてはな」

「はい……」


 ただただ上官のオルドックの言う事に返事しかできないスレイン。

 彼の心の中には悔しさが渦巻いていた。


「そんなに悔しいのなら、奴らに本当の実力を見せつけて来い。次の作戦はお前たちに任せるとしよう」

「はっ、ありがとうございます……」


 スレインはこの好機を逃すはずがなかった。こうして、オスリクタ隊を中心に作戦は計画されることとなる。



 そして一方、ところ変わってリュウタ達はアレシア山脈を下山し、サザード大陸の南側にある小国のエスティアへと旅客用車両で向かっていた。


「エスティアはこのサザード大陸の中でも比較的発展している国らしいぜ」


 イカロスナイトはブレスレットの中からリュウタに話しかける。


「そうなんだな。でも、どの程度発展しているんだ?」

「俺のデータベースによれば、このエスティアは農耕業や観光業でここ数年で発展させているとのことだ。でも、メガリアと比べたら微妙な所かな」

「ふぅん。にしてもイカロスナイトは物知りだな」

「当たり前さ。俺、最新鋭のロボットだもん」


 ラゼックは腕を組みつつ、興味津々な態度で話を聞く。


「この国に長い事いられるかどうかは分からないけど、行くのが楽しみね」

「おいおい、マナ。俺達は旅行に行くんじゃないんだぞ。あくまで情報集めだ」

「分かってるわよ、ケルブバスター」


 マナは呆れた表情であった。

 その間にも、もうエスティアは近くなってきていた。


「バルティックさん、街が見えてきたわ」

「そうか。しかし、ここで情報が集まるとは思わんが……」

「まぁ、行くだけ行ってみようじゃないか。な?」


 ミノスソルジャーは懐疑的な顔つきのバルティックを諭す。


「お前がそういうなら……、まぁいいだろう。行くとするか」


 バルティックの口元は微かに綻ぶ。こうして、彼らはエスティアへと到着した。



 車から降りたリュウタ達は、すぐさま周辺にいる人々に話しかける。


「あの、お忙しい所すみません。俺達は次元転移者なんですけど……」

「次元転移者? なら、その事に詳しい奴がいるからちょっとそいつの所まで案内するよ」


 その男は、リュウタ達を大きな塔がそびえ立つ所まで連れて行った。


「この塔は情報交換センターだ。ここに俺の知り合いがいる。参考までに写真も渡しておくから、そいつと会ったら俺に紹介されたと言っておいてくれ」

「あの……、ところで、名前は?」

「俺はバロック・スフィード。とりあえず、名前だけでも覚えておいてくれ。俺もよくこの塔で情報交換をしたりするんだ。俺達の国はあいにく田舎でな。ここじゃコンピューターが貴重なんだ。ちなみに知り合いの名前はロメス・バーナード。とりあえず会うだけ会ってくれ」

「分かりました……」


 そして、彼らが虚ろな目をしている状態のまま、バロックは去って行った。


「おい、行っちゃたぜ? どうするんだよ」

「とりあえず行くしかないな、ラゼック」

「でも、私たちにその情報をすぐに教えてくれるとは思えないわ。ねっ、バルティックさん」


 マナはバロックの事を完全に怪しんでいた。


「まぁな。だが、もしかしたら……」


 バルティックは、仮にこれがハイリスクハイリターンでも信じようとしていた。


「本当に行くの? リュウタ」

「俺は信じるぜ。な? イカロスナイト」

「まぁ、リュウタがそういうならな」

「分かったわ。そこまで言うなら行くしかないわね」


 マナも次第にリュウタの事を信じるようになっていった。

 こうして、リュウタ達は意を決してその情報交換センターへと入っていった。


「ここか……。コンピュータも旧式の物が多いな……」


 長い間ラグルード基地にいたバルティックは、比較的新しめのシステムを使っていたため、大型で携帯することも出来ないコンピュータを見て眉をひそめる。


「まぁいいじゃないかよ、バルティックさん。とりあえず、さっき言ってたロメスさんを探そうぜ」

「分かった。とりあえず一階にはいなさそうだな。二階へ向かおう」


 そして、リュウタ達はエレベーターを使い二階へと向かった。

 するとそこで、早速ロメスと思しき人物に遭遇する。


「あの、もしかしてロメスさんですか?」

「あぁ、そうだが。何の用だ?」


 黒い眼鏡をかけた青髪の男。彼こそ、ロメス・バーナードであった。

 当然ながら、彼は混乱していた。


「俺達、実は次元転移者なんですけど……」

「次元転移者だと? 本当か?」


 ロメスは、目を輝かせて彼らを見つめた。


「はい。自分たちは地球からこの世界に飛ばされてきたんです……」


 その眼差しを見て、ロメスは彼らの発言は真実だと察した。


「なるほど。地球……。俺達がよく知らない星の名前だな。とすれば面白い。早速話を聞こうじゃないか。今から近くのカフェテリア……、いや、僕の家へついて行ってくれ」

「は、はい……」


 突然の出来事に思わず驚くことしか出来なかったリュウタ達。

 こうして彼らはロメスの家へと向かうことになった。



 彼の家に到着し、中に入れてもらうとそこには様々な文書が所狭しと置いてあった。

 中には見たこともないような言語で書かれていると思しき本もあり、どこか不気味であった。


「やぁ、君達とは話したいことが山ほどある。是非とも、いろいろ話そうじゃないか!」

「えぇ、いいですけど……」


 リュウタは突然の出来事に焦っている。


「本当に信じて良かったのか……?」


 イカロスナイトはどこか悩んでいるようであった。


「君達は次元転移者とのことだ。その次元転移の秘密について色々と考察をしているんだ。だが、確固たる証拠はなかなか……」

「なるほど。でもなんで?」

「昔から僕は探求心旺盛でね。知らない事があったら真っ先に調べてしまう癖があるんだ。で、まずは黒髪の少年、君だ」

「は、はい……」


 こうして、リュウタ達四人は出身地など、元の世界にいた時のことを話した。

 ロメスはリュウタ達の話を興味深そうに聞き、自身もなぜ次元転移の秘密を研究しているのか話す。


「僕は、ある日空を見ていたんだ。すると、不自然に穴のようなものが開いているのを見てね。だが、その穴はすぐに閉じてしまった。そこで、その現象は何故発生したのかを探り出したんだ。だが、既存の学術書などをいくら読んでも、その現象について書かれているものが見当たらなかった。そして、ある日の事……。とある山で空に穴が開いているのを見たんだ。そこで初めて、その穴から何かが落ちて行くのを見た」

「それって……、もしかして!?」


 リュウタは思わず前のめりの姿勢になる。


「だが、その落下物は見失ってしまった。そこで僕は考えた。軍の実験じゃないかとね。とはいえ、大陸連合軍がそんな実験をしているという情報は一切掴めなかった。半ば消去法になってしまうが、この現象は浮遊大陸軍によるものじゃないかと……。まだ確証は無いけどね」

「えっ、じゃあ俺達がここに来たのも……」

「待つんだ。まだそう考えるのは、早計だよ。現段階での推測ってだけさ」


 ロメスは掌を突き出す。


「あの、ロメスさん……」

「なんだ?」

「俺達と協力してくれませんか?」

「いいよいいよ。暇な時ならね。君たちのことは、かなり気に入ったんだ。良ければ情報提供などの支援もしよう」


 笑顔でサムズアップをして見せるロメス。見る限りだと、彼はどうやら下心などは一切ないようである。


「ありがとうございます!」

「今日は客間に泊まっていくといいさ。少し狭いが、寝泊りできるスペースはあるぞ」

「はい」


 ロメスはリュウタ達に興味津々であった。果たして、今後リュウタ達はどうなっていくのだろうか。





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