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METAL QUESTER  作者: 藤沢マサト
第一章 正解のない旅路
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第7話 ラグルード基地防衛作戦

 何とかラグルード基地の防衛任務を終えてから一日が経とうとする頃、リュウタは個室でイカロスナイトと話をしていた。


「なぁ、イカロスナイト……」


 彼の顔はだるそうであった。


「どうした?」

「いや、どうにも泊まり込みでこの基地を守るってなるとよ……。責任重大過ぎやしないかと思ってさ」


 リュウタは眠そうに目を瞬きさせる。


「まぁ、突然んなこと任せられたらな……。そりゃあきついよなァ」

「分かってくれて嬉しいよ」

「でも、俺は機械だし疲れることの辛さとかは分からないがな」


 イカロスナイトのちょっとしたジョークを聞き、リュウタはほのかに微笑む。


「とりあえず、俺は俺なりにやれることをやってみるよ」


 リュウタは軽く頷いた。


「それでこそリュウタだ。何事もポジティブに考えていくのがいいもんさ」

「じゃあ、そろそろスイッチを切るぞ」

「分かった。頑張ろうな」

「おう」


 そしてリュウタは、朝食へと出向いた。



 一方その頃、浮遊大陸軍はオスリクタ隊のラグルード基地襲撃失敗を受け、彼らを含む戦闘部隊を任務から外し、この任務のメンバーは熟練の兵士で構成することとなった。


「ルガール大佐、オスリクタ隊は余り良い戦果を挙げる事が出来ていないようですね」

「どれもこれも、あのレベル3MH部隊が妨害するためだ……。奴らがいなければな」

「オスリクタ隊も苦戦しているようです。なんとしても殲滅しなくては」


 ルガールの部下、モルドは腕を胸の前で組みつつ考え込む。


「今回の作戦では、奴らを圧倒するほどの戦力を確保しなくてはな」


 ルガールはかなり深刻そうな面持ちであった。このままでは、浮遊大陸軍の地上侵攻作戦は進まぬ一方であるからだ。これではどうすることも出来ない。


「では、作戦会議はもうすぐなのでそろそろ……」

「そうだな、行こう」


 こうして、作戦会議は数時間に渡って行われたのだった。



 一方、リュウタは一人自らバルティックと話そうとする。

 彼は少しでもこの環境に慣れるべく、まずは周りの人間と仲良くなろうとしていた。


「バルティックさん……」

「どうした、少年」


 バルティックは真剣な眼差しである。


「あの……、良ければこれをどうぞ」


 リュウタは以前買ったガムを渡した。


「すまない。ガムは好きじゃないんだ。まぁ、少年の考えていることは分かる」

「はっ……」

「何の話から始めるか?」


 バルティックは微かにニヤリと笑みを浮かべる。


「じゃあ、何故バルティックさんはここに?」

「俺は元々地球では、アメリカ軍で兵士として日々を過ごしてきた。しかし、ある日の事だった。俺は実戦訓練中の中、一人ここに飛ばされたんだよ。初めは夢かと思った。訳が分からなくてな」


 以前の出来事を回顧しつつ、話を進めるバルティック。


「そうだったんですね。飛ばされてきたのはどこだったんですか?」

「このラグルード基地より北側の寒冷地だ。一週間もかけてここで彷徨い、あまりの寒さに死にかけたが、九死に一生を得た」

「というと……」


 そして、リュウタは話に集中するあまり、前のめりの姿勢になる。


「俺の相棒、ミノスソルジャーと初めて出会った日は忘れない……」


 過去の事を思い出し、軽く息を吐くリュウタ。


「バルティックにとって、命の恩人はこの俺だからなァ!」

「おい、ミノスソルジャー。調子に乗るな」


 呆れ気味に口を開くバルティック。


「すまねぇ……。あの時の事を思い出してつい……」


 ミノスソルジャーの声色からして、少し興奮していたようであった。


「ひとまず、こいつのおかげで安心出来たわけでな。それからは傭兵の仕事で飯食ってたわけなんだ」

「なるほど……。俺達はさっき会ったあの二人……、正確には二人と二機でマザノルド大陸からアクライン大陸、そしてこのサザード大陸へと来たわけで」

「えっ、そんな遠くから来たのか? なかなかいないぞそんな奴。にしても凄いな。よく頑張ったな」

「ありがとうございます。まぁ、俺達は周りの環境が良かったからいいものの、もしバルティックさんと同じ状況だったら、一日で凍死してたかも……」


 リュウタの顔はやや青白くなり、手もどこか少し震えているように見えた。


「でも、良かったじゃないか。俺なんて何度辛いことに遭ったことか……。酸欠になりかけた時は死ぬかと思ったよ」

「そんな事にも出くわしていたんですね……」


 驚きのあまり開いた口が塞がらないリュウタ。彼は慌てて自分の口を隠す。


「あぁ……、だがお前達には分からんだろうな。あの死の一週間は」


 バルティックは暗い面持ちになり、部屋の外へと出ていった。


「バルティックさん! まだ大事な話が……」

「リュウタ、あの人も好きでここに来たわけじゃないはずだ。深入りはよせ」

「分かったよ、イカロスナイト。でも、あの人なら次元転移の秘密を何か知っているかもしれないんだ」


 そんな中、ラゼックとマナもそこへ合流する。


「あれ、リュウタ。バルティックさんはどうしたの?」

「ちょっと深入りし過ぎた……」


 彼は、明け透けと話をしてしまった事を後悔した。


「そうか。あの人が何か知っていても、何かしらのトラウマがあって話せないからなんじゃないか?」

「そうなんだ。俺達はバルティックさんのトラウマを蒸し返そうとしてしまったんだ……」


 どこかしょぼくれた表情をして俯くリュウタ。

 そんな彼を見て、マナは肩をポンと叩いて励ます。


「失敗なんて誰にでもあるって。次また同じことを繰り返さなければいいわけだし」

「ありがとう、マナ。お前、本当に優しいな」


 温かい言葉に、彼は思わず口元が綻びる。


「ううん。当たり前のことを言っただけよ」

「リュウタ、後で謝りに行ったらどうだ? そうすればバルティックさんも、きっと許してくれるさ」


 しかし、そんな中で再び基地の中で警告音が鳴り響く。

 浮遊大陸軍が襲撃した事が発覚し、リュウタ達は基地の戦闘部隊と共に出撃することになった。


「よし、サモナイズ!」


 ブレスレットから光の粒子が放出され、各々のMHが実体化した。彼らがテクター・ブレスレットのボタンを押したことで、戦闘準備は完全に整う。

 こうして、彼らの戦闘は幕を開けた。



 浮遊大陸軍の歴戦の兵士、ルガールはモルド達と共に激しく光線を浴びせていく。あまりの火力に、ラグルードのMH部隊は次々に撃墜されていってしまう。

 そんな中、ミノスソルジャーは大きな斧を振り回し、敵機を薙ぎ払っていく。


「このォ! これ以上ここを蹂躙されてたまるか!」


 グランドアックスで光線を上手く跳ね返していく中、リュウタ達三人も合流する。


「よし、喰らえッ!」


 イカロスナイトは、敵機を自慢の剣術で次々に斬り倒していく。

 だが、問題点が一つあった。それは遠距離攻撃があまりにも激しく、少ない味方勢力だけでは到底かなわないという事である。


「クラーク、胸のキャノン砲を使わせてもらうぞ」

「分かった。奴らを牽制するんだな」

「そうさ」


 そして、クラークスピアーは対抗して胸部のビームキャノンを乱射する。しかしそれでも一向に落ち着く事のない攻撃。

 そこでマナが最前線に出向く。


「ケルブバスター、タイフーンブラストよ!」

「分かった! これで蹴散らすしかなさそうだな」


 ケルブバスターは、両肩に装備されたサイクロンキャノンからビームを放ち、敵の勢力をじわじわと弱体化させていく。

 これにより遠距離攻撃が出来る敵機は少なくなっていき、リュウタ達が優勢となる。


「リュウタ、バーニングスラッシュを使うぞ!」

「任せてくれよ。行こう!」


 イカロスナイトのバーニングスラッシュで、ルガールの周りを護衛していた部下の二機を一瞬で撃墜した。これには流石のルガールも黙ってはいなかった。


「おのれ……、このブラスティムの性能をとくと見せてやる!」

「まずい! 敵が攻撃態勢を取ったぞ。シールドで防ごう!」

「よっしゃあ! 任せてくれ!」


 リュウタは即座に操縦桿を前に動かし、防御の姿勢を取って敵の攻撃を見事に防いで見せた。


「おのれェ! やむを得ん。ならば接近戦だ!」

「来たぞ! もう一度バーニングスラッシュだ」

「分かった! よし、来い!」


 イカロスナイトの握る炎を纏った剣が、ブラスティムの機体腕部を切断した。


「そんな! こんな事になろうとは……。おのれ覚えていろ……。モルド、行くぞ!」

“ははっ! 戻りましょう”


 こうして、何とか戦いは終わった。ラグルード基地の被害は最小限で済んだものの、バルティックはこの事に関して、自分の責任だと自負していた。


「バルティックさん、先程は本当にすみませんでした……」


 リュウタは焦った面持ちでお辞儀をした。


「謝ることは無い……。元はと言えば俺から話しかけたんだ。こちらこそ済まない」


 バルティックは申し訳なさそうな表情を見せる。


「あの、バルティックさん……」

「あぁ、次元転移についての話か? 実は俺もさっぱり原理はよく分からなくてな。済まないがそれ以上の情報はないよ。あと、俺は今日で傭兵としての契約を満了することになった。いつまでもラグルード基地の皆に迷惑をかけるわけにはいかないしな。俺がいるせいで狙われているようなものだから……」

「は、はぁ……」


 彼の突然の発言に、呆然する一同。


「つまり、お前達と旅がしたい。元の世界に帰るためのな」


 その事を聞いて、思わずリュウタ達は驚いた。


「えっ、本当ですか!?」

「あぁ、お前達と各地を巡る方が楽しそうな気がしてな。これからよろしく頼むよ」

「分かりました……。だってよラゼック。どうする?」


 ラゼックは薄っすらと微笑む。


「そりゃあ仲間が増える分には問題ないな。とりあえず助け合いしかないな」

「そうね。私もこの二人だけじゃ少し心細かったし……」


マナは薄ら笑いを浮かべながら顔に手を添える。


「おい、それってどういうことだよ!」

「ごめん……、言い方が悪かったわ……」


 こうして、新たにバルティックが仲間に加わり、再び元の世界に帰る旅をすることになったのだった。

 果たして、彼らの行く手を阻む壁である浮遊大陸軍の全貌や如何に。

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