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METAL QUESTER  作者: 藤沢マサト
第一章 正解のない旅路
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第4話 狙われた研究所

 アクラインの港へと再び向かった二人は、今度はソリテキア大陸方面へと向かう船に乗るため、チケットの購入手続きをし終えた。


「はい。1200ガニムは確かに受け取ったよ。乗り遅れないようにな」

「分かりました。ありがとうございます」


 明るい表情で商人にお辞儀をするリュウタ。そして二人はそのまま数時間後にやって来た船に乗る。

 そこで今後の行動について色々と話すことになった。


「なぁ、リュウタ。どうする? これから先、何とかウェインの知り合いの研究員に連絡は取れたが、道に迷ったらどうしようもない。ひとまず落ち着いて行こう」


 ラゼックは優しくリュウタを諭す。


「そうだな、ラゼック。でも、研究所の人たちはすんなり通してくれるかな?」

「それは問題ないだろ。ちゃんと事前連絡はしてるわけだし」

「確かにな。アハハハ……」


 リュウタは仕方なく苦笑いする。


「ひとまず、ゆっくり待つのが得策だ」


 イカロスナイトのアドバイスを聞き、リュウタは頷いた。


「イカロスナイトの言う通りだな。とりあえず自分から動くのは二の次ということか」

「そうだな、クラーク」


 ラゼックは少しはにかみつつもサムズアップをして見せる。彼の元来の明るい性格が垣間見えた。



 一方、浮遊大陸軍はリュウタ達の情報を盗み出すべく、諜報部隊“ダークシーカー”を出撃させており、

 彼らは秘密裏に一般人の扮装をして彼らの乗る船に乗り込んでいたのだ。


「例の奴らは既にここにいるようだな……。盗み聞きされてるとも知らずに、フフフ……」

「サイラー、クロム、ここでは奴らにバレないようにしろ」

「はい……」


 ダークシーカー隊のリーダー、ダロスは部下二名と共にニヤリと笑みを浮かべた。

 果たして、リュウタ達はこの事に気付けるのか。



 翌日、ついにソリテキア大陸に到着しリュウタとラゼックは、早速船の外に出る。

遠くを見渡すと緑の草原が広がっており、メガリアやアクラインのようにそこまで近代的な街並みではなさそうであった。

 その中でダロス達はひっそりと彼らに気付かれることなく後を追う。


「リュウタ、このまま研究所に到着できるといいんだがな」


イカロスナイトは少々不安気な声色であった。


「大丈夫だって。きっとたどり着けるさ」


 リュウタは、気楽そうな表情でリラックスして座っていた。


「あんまり調子に乗ってると、浮遊大陸軍の奴らが俺達に切り込んでくるかもしれないぞ」

「ラゼック、そんなに心配そうな顔すんなよ」

「クラーク、でも万が一のこともあるかもしれないだろ」


 ラゼックの予想は当たらずとも遠からずといった感じである。

 彼らはまだ本当に敵が襲い掛かることをまだ知らない。



 その後、研究所に到着し、リュウタとラゼックは門の前の警護兵に敬礼をする。


「どうも、初めまして。自分たちはアクラインから来たラゼック・アーバントと……」

「クロガネ・リュウタです。よろしく」


 二人はかなりかしこまった表情をしていた。

 それもそのはず、万が一不審者だと勘違いされたら大変なためである。


「えーと、お前たちの名前はここのディナールから一度聞いているぞ」

「ディナール……、というと、ウェインさんの知り合いですね」


 その発言に二人はひとまず安心した。


「どうやら知っているようだな。入っていいぞ」

「ありがとうございます」


 こうして、リュウタ達は研究所へと入っていく。

 そしてその後、ひっそりとダークシーカーの三人も偽造したIDカードを使い警護兵をいとも容易く欺いた。



 しかし一方で、そんな彼らを怪しむものも一人─────


「二番カメラに三人組の男性が……。大きな輸送トラックで来たみたいね。普段は見かけない顔だわ。何者かしら」


 彼女は小型デバイスを使い、監視カメラの映像を見て不審に思い、念のため別の警護兵に連絡を取ることにした。



 研究所の中に入ったリュウタ達。そこではMH(メタルヒューマノイド)の研究が行われていた。

 様々な科学者たちがMH用の制御コンピューターや武装用システムなどの開発しており、周りを見渡すと様々な量産型MHがそびえ立っていた。


「イカロスナイト、あのMHは?」

「あれはレザス。レベル2の量産型MHだ。この連合軍の主力機でな」

「ふーん。あれ、レザスって言うんだな。この前アクラインで護衛任務をした時にいたやつか」

「そうさ」


 二人はにこやかな表情で見学をするが、本来の目的をすぐさま思い出した。

 自分たちは同じ境遇の者を探し出すために、ここへと来たのだ。


「ところで、次元転移者に関してなんですが……」

「あぁ、それについてか。次元転移者は、ここにもいるんだよな。別方向のゲートで護衛をしているよ。後で挨拶しに来るよう、こちらから言っておくよ」


 研究者の一人は優しい面持ちであった。リュウタ達は、自分ら以外にも次元転移者がいることが本当だと知り安堵する。



 一方研究者に扮したダークシーカー隊は、リュウタ達に遅れる形でこの研究所に入っていた。

 彼らはリュウタ達の情報収集ついでに連合軍の新型MHの情報も入手しようという、抜け目なく任務を実行していた。


「サイラー、あれが現在開発中の奴か。カスタム機のように見えるが」


 彼らは小声で会話をしつつ、情報共有を行う。ここにはレザスの重砲撃タイプと思しき機体や、全く異なる新型の機体のものもあった。


「そうですね。もしやあれはレベル3の物では?」

「確かにそうだな。クロム、後で上層部に報告を頼んだぞ」

「了解。これは昇進ものですね」


 クロムはどこか調子に乗っているように見えた。

 こうして彼らは本来の任務と並行して、以前から依頼されていた新型MHの情報奪取も行おうと企んでいたのだ。しかし、そんな彼らを放っておくほど周りは甘くはなかった。



 一方で、リュウタ達はこのような情報を小耳に挟む。


「おい、さっき北ゲートの警護兵から聞いたんだが、スパイと思しき人物がここに入ったららしいぞ。といっても、確実な情報ではないらしいがな。三人組らしい」

「スパイ? まさかさっきすれ違った奴らじゃあるまいな。ひとまず確認しておこう」


 研究者たちは誰がスパイなのか互いに怪しんだりしたが、あっさりと結論は出た。

 先程北ゲートから入った三人組である。正体は既に看過されていた。


「おい、お前達。さっきから見ない顔かと思ったが……」

「な、何です……? ジロジロと」

「お前ら、スパイだろ。さっき東ゲートの警護兵から連絡が入ったんだ。お前たちがその例の奴なんじゃないかてね」


 ダロスはすぐさま事態を把握し、そのままこの場から逃げ去ろうとした。


「追え! 早くしないとあいつらが逃げるぞ!」


 そして、研究所内全体に警告音が響き渡った。これにより、ダークシーカー隊は追う側ではなく追われる側になってしまった。

 しかし、彼らはそんな事を気にせず反抗する。


「このォ!」


 ダロスは警護兵を殴って気絶させた。さらに現れる追っ手を相手に格闘戦で対抗するサイラーとクロム。最早この研究所は混沌と化した。

 そして、リュウタとラゼックはコントロール・テクターを装備し、すぐさま外に出て敵が現れるのを待った。


「リュウタ、乗れ!」

「分かった、イカロスナイト」


 彼らは万全な準備の元、万が一に備えて外側で敵が来るのを待った。その中で遠くから、一筋の緑の光が天へと突き抜けた。


「ん? あの光は?」

”まさか、例の次元転移者かな?”


 ラゼックはすぐさまこの事を察し、かすかに笑みを浮かべた。彼はもう一人仲間が出来て、少し気が楽になったようである。

 その次元転移者は、すぐさま彼らのもとへと合流した。


”そこの方、聞こえますか?”

「君は……?」


 彼女の顔を見て不思議がるリュウタ。


”研究所にスパイが入ったのは聞いているみたいですね。私はマナ・エルファンスです。貴方たちこそ名乗っていただけませんか?”

「俺はクロガネ・リュウタ」

”俺はラゼック・アーバント。よろしく”


 二人は軽く挨拶を済ませ、その直後にダークシーカー隊が輸送トラックからMHを展開して出撃。

 こうして、彼らの戦いは始まった。


「ひとまず行こうぜ、マナ」

「分かったわ、ケルブバスター」


 彼女はガンマンの様な見た目をした緑色のMH”ケルブバスター”を駆る。操縦桿をしっかりと握り、両肩側面のキャノン砲で攻撃を仕掛けた。


「喰らいなさい!」

「しまったァ!! 右腕がやられた……」

”焦るな、サイラー。慎重に狙って撃墜しろ”


 ダロスの忠言通りに、自らが駆る砲撃戦用MH”ゼガーダー”を駆り、ゆっくり照準を合わせながら間合いを取るサイラー。

 彼はどこで隙が生まれるか、よく見極める事にした。


「落ちな! レベル3の機体だろうと撃墜してみせる!」

「マナ、スライディングダッシュだ!」

”分かったわ! こんなところで絶対やられはしないわ”


 即座にサイラーが撃ち放った光線を上手く回避したマナ。そして彼女は、視点を集中させて腰のビームライフルを取り出した。


「これでもまだ食い下がるつもり?」


 マナはすぐさま躊躇うことなく、自らの銃でサイラーの機体を撃墜して見せた。


「そんなァ! この俺が……」


 機体は凄まじい音と共に爆発四散し、スクラップと化した。



 一方、リュウタとラゼックは遠距離攻撃に少し苦戦しつつも、間合いを取って攻撃をひたすら回避することに徹していた。その中で二人は、攻撃のチャンスを密かに伺う。


「へへっ、コイツはただただ避けているだけのようだな。早い所弾切れになる前に撃墜するぞ、クロム」

”分かりました、ダロス隊長!”


 彼らの乗るゼガーダーは、レベル1のやや旧式のMHではあるが、それでも遠距離攻撃性能は、現行の機体にも負けず劣らずのものであった。


「リュウタ、ここは空中から斬りかかるしかあるまい。それと、バルカンを併用するぞ」

”任せてくれよ。よし、どんと来い”


 リュウタはイカロスナイトの指示通りに空へと飛び立ち、急降下してバルカン砲を連射した。


「クソォ……、何をォ!!」


 クロムは何とか耐えながらも、目の前の敵にキャノン砲で攻撃を仕掛ける。

彼はしゃがんで安定して砲撃できるような姿勢になるようにする。


「させてたまるか! バーニングスラッシュ!!」


 烈火を纏った剣で、クロムの機体を一瞬で真っ二つにした。その後機体は大爆発する。

そして、この様子を見たダロスは震えながら退避しようとするが、ラゼックはそれを見逃さなかったのだ。


「クラーク、スプラッシュプランジで決めるぞ!」

”オーケーだ。これで一突きってね”


 ラゼックはダロスの機体を背後から槍で一閃し、ようやく敵部隊を全滅させることに成功。

 こうして、彼らの戦いはひとまず終わった。



 戦闘終了後、リュウタ達はマナと初めて直接顔合わせをすることになった。


「貴方、リュウタって言ったわね。私の相棒の機体はケルブバスターよ」

「よろしく、皆」

「こちらこそよろしく」


 三人は意気投合し、ここでイカロスナイトは一つ提案をする。


「なぁ、マナ。お前も俺達と一緒に旅をしないか?」

「旅って?」

「次元転移者を元々いた世界に帰すための旅さ」

 

 その言葉を聞いて、マナはどこか心を惹かれたのか、少し口元が緩む。


「いいわね。丁度今日でこの研究所での任用期間は終わりだったから、今日の夜まで一緒に護衛任務を全うしましょう」

「そうだな、マナ。ところでマナっていくつなんだ?」

「まだ16よ」

「俺より年下なのか。でも、俺より大人びてて憧れるぜ」


 リュウタは優しく笑って見せる。


「そんなことないわよ」


 こうして、彼らが話している間にも、この日の夜は明けていった。


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