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METAL QUESTER  作者: 藤沢マサト
第一章 正解のない旅路
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第3話 空戦部隊接近!

 リュウタはイカロスナイトをブレスに格納し、ラゼックと共に海岸の岩場に座った。


「お前、名前は?」

「クロガネ・リュウタ……、です」


 彼は少し震えながらも、何とか口を開いた。


「別に敬語じゃなくてもいいさ」

「は、はい……」

「それを直せっての」


 ラゼックは少しニヤリと笑みを浮かべる。


「アンタは次元転移について何か知ってるのか?」

「いい質問だ。かくなる俺も次元転移者なんだ」

「えっ?」


 リュウタは開いた口が塞がらなくなるくらいに驚く。


「どうしたんだ? そんなビックリしなくてもいいだろうよ」

「いや、まさか本当に会えるなんて思わなくて……」


 少しにこやかな表情になるリュウタ。


「まぁ、とにかく一緒に仲良くやろうや。俺も丁度仲間が欲しかったし」

「えっ?」


 突然の発言に、またしてもリュウタは驚きを隠せずにいた。

 彼が本当に次元転移者なのか怪しくなるほど混乱する。


「なぁ、ラゼックは本当に次元転移者なんだろうな?」

「もちろん」

「じゃあ、次元転移前はどこにいた?」

「俺は、アメリカのフロリダに住んでた。スキューバダイビングの帰りに車を走らせてたんだが、気が付いたらここにいたんだ。車はぶっ壊れるわ、元の世界の戻り方は分からないわでもう全てが終わったと思ったよ……」


 そしてラゼックはしばしの間沈黙し、再び口を開く。


「でも、そんな中俺はクラークと出会った。あいつも海が好きでな。何の因果か知らねぇが、気が付いたら俺はあいつと友達になっていた。だろ? クラーク」


 どこか嬉しそうな表情を見せるラゼック。彼は孤独の世界の中で唯一無二の親友とも言える存在と出会った。

 それがクラークスピアーである。


「そうだな、ラゼック。慣れてはいるが、ブレスの中はどうも窮屈だな。ちょっと出してくれないか?」


 クラークスピアーはどこか不満気な口調であった。


「しょうがないな。まぁ、改めてお前のMH(メタルヒューマノイド)との顔合わせも兼ねて、出してみるか。リュウタ、お前のMHも出してくれ」

「あぁ、分かったよ」


 そして、二人のテクター・ブレスレットから各々のMHが出てくる。


「改めてよろしく。俺はイカロスナイトだ」

「俺はクラークスピアー。海の守り人……、なんてね」


 お互いに握手をする二機のMH。ひとまず、これからどう行動すべきか考える事にした。


「なぁ、これからどうする? このまま食料やバッテリーを無駄遣いしても何も始まらない」


 イカロスナイトは腕を組みつつしゃがみながら頷いた。


「そうだな。といってもどうするんだ?」


 ラゼックは、眉をひそめながらしばし熟考する。


「敵の本拠地に突撃するってのは?」

「いや、それは現実的じゃあないな、リュウタ。それを大っぴらにやったら浮遊大陸軍に狙われるリスクが大きくなるだけだ。もっと、こう……、他にいい考えは?」

「旅をしつつ、各地で聞き込みをしよう。俺たち以外のレベル3のMHはロールアウト済みだって話は聞いてるし」


 イカロスナイトはクラークスピアーの意見を聞き、かなり納得したようだ。

 リュウタ達もその意見に賛成し、結果的にこの提案が採用されることになった。



 その一方で、浮遊大陸軍のオスリクタ隊はアクラインの方面への攻撃を再び行うことにし、他の戦闘部隊と共に奇襲を仕掛けるという作戦を練っており、既に出撃準備も終えていた。


「メナン、バウル、このまま地上連合軍に奇襲を仕掛けるわけだが……」

「もちろん情けは無用でしてよ」

「自分も右に同じです」


 メナンとバウルはニヤリと笑みを浮かべていた。


「問題はレベル3のMHに邪魔されないかどうかだな。これに上手く対処できればな……」

「そうですね。今回は我々の戦力が上とは言えど、苦戦を強いられるかもしれませんからね」


 バウルの心配する様子を見て、メナンは嘲笑する。


「あんな連中は、真面目に相手をしたところで無駄ですわ」

「だが、奴らは隊長の顔に泥を塗るようなことをしたんだぞ?」


 バウルは少し苛立ったような目つきで、彼女をじっと見つめた。


「全く……。お前達、喧嘩はやめたらどうだ? 今はそんなことをしてる場合じゃない」


 スレインの呆れた顔を見て、思わず二人はかしこまった表情になる。

 彼のメンツをこれ以上潰すわけにはいかなくなり、それ以上喧嘩をすることは無くなった。


「さぁ、早く出撃するぞ」



 それから少し経ち、リュウタ達はアクラインの中心部へと到着した。


「ここはアクラインの首都マリニアだ。とりあえずここで聞き込みを行おう」

「分かった。行こう」


 リュウタとラゼックは、マリニア近郊にある市街地にて情報収集するが、やはりそう上手くはいかなかった。

 それもそのはず、次元転移の原因を一般の人間が知るはずもない。僅かな可能性にかけて話しかけるが、無情にも時間は過ぎていく。


「リュウタ、そっちは?」

「俺の方は駄目だよ。やはりそんな簡単に次元転移の事を聞いても分かりっこないさ」

「そうだよな……。ん? あそこにいる人に聞いてみたらどうだ?」


 リュウタは早速、そこにいた軍の兵士と思しき人物に聞き込みを行うことにした。


「あの、すみません……」

「何だね」

「あの、次元転移について何か知っていることはありませんか?」


 彼の顔を見て、その兵士は少し訝しんだ。


「何故そんなことを? まさかお前……」

「実は俺、次元転移して来たんです」

「何だって? ちょっとゆっくり話そう」


 その後、リュウタはラゼックを呼んでその兵士と詳しく話をすることになった。


「この人は軍の兵士みたいだが……」


 ラゼックは少し困惑しているようである。突然軍の兵士を紹介され、彼は驚いていた。


「何か知ってるかな……、って思ってちょっと尋ねてみたんだ」


 リュウタの行動力に感心しつつも、ラゼックは軍の兵士を目の前にしてたじろぐ。


「そうか。でも、いきなり何か聞くのは失礼じゃないか?」

「いや、構わんよ。君も次元転移者かな?」

「そうですけど……」

「そうか。なら、話は早い。我がアクラインの軍需基地まで来てくれないか?」


 その突然の発言に二人は驚く。何しろあまりにも突拍子の無いことゆえに、二人の口は開いたまま塞がらずにいた。


「まさか次元転移者に出会えるなんて予想してなかったよ。しかも二人いるとはな……」

「俺達はどうなるんです?」


 ラゼックはかなり焦燥に駆られていた。


「君達には、ここの軍需基地の護衛を一時的に頼みたい。明日には我々の増援がここで合流するから、今日限りではあるがな。以前別の軍需基地でレベル3のMHが助けてくれたと聞いてな。それが君達なんじゃないかと思ってだな」

「え? 何故それを……」


 リュウタはその発言に驚嘆する。何しろ何故そのような事まで分かるのかが不自然に思えたからだ。


「そりゃあ、このブレスレットを見れば分かるよ。俺はレベル3MHの開発者と協力関係にあったからだ」

「そうだったんですか……」

「あぁ、そうとも。名乗るのが遅れたが、俺はウェイン・オルディーク。このアクライン共和国の兵士兼エンジニアだ。とはいってもメガリアのエンジニアの腕には劣るがな」


 二人はそのことを聞き、もしかしたら例の方法も知っているのではないかと思いつく。

 そこで思い切ってリュウタは、一つ質問をした。


「あの、元の世界に帰るための方法ってあるんですか?」

「そうだな。それがはっきりとした確証は無いんだが、ソリテキア大陸の研究者によると、次元のひずみが数年前からこの世界各地で頻繁に起こっているらしい。そこに行けば何か分かるかもしれん……」

「そうですか……」


 リュウタは少し俯いてはいたものの、微かに口が自然と綻んでいた。

 新たな情報が手に入り、彼は一安心する。


「ここに来て良かったな、リュウタ」


 優しい口調でブレスレットの中から声をかけるイカロスナイト。


「本当にそうだな、イカロスナイト」

「イカロスナイト……、それがお前のMHか?」

「はい、そうです」


 リュウタはゆっくりと頷く。


「そうか。是非とも大切にしてくれ。さっき言ったレベル3MHの開発者は、イカロスナイトも開発してたと言っていたな」


 ウェインは顎に手を添えつつ話す。


「そうだったんですか。教えていただきありがとうございます」


 リュウタは軽く頷いた。彼のその時の表情はどこか満足げだった。

 しかし、安息の時は突如として終わりを告げた。


”緊急事態です! 浮遊大陸軍がこの基地に接近していることが発覚しました! 至急各部隊は出撃準備をお願いします”


 突然の警告アナウンスに驚くリュウタ達。そんな間にもリーザー連合軍は戦闘態勢を整え、直ちに出撃した。それに少し遅れ、リュウタとラゼックは各々のMHを実体化してすぐさま攻撃準備を終えた。


「よし、俺達も出番だな!」

「行こう、イカロスナイト」


 イカロスナイトは真っ先に空を駆けて敵の空戦部隊に攻撃を仕掛ける。


「これでも喰らえ!」


 炎を纏った剣で敵を斬り裂いたイカロスナイト。しかし、油断は禁物。敵は背後にも迫り来る。


「死ねぇ!」

「させるか!」


 リーザー連合軍の兵士がビームライフルで迎撃を行い、何とかリュウタは難を逃れる。


「何をしている! 早くしないといくらレベル3のMHでも耐えられんぞ!」

「はい! わかりました」


 イカロスナイトはバルカン砲で迎撃を行う。


「ウワアァァッ!!」


 何とかすぐさま対応し、機体を一機撃破したものの、まだ敵機は数多くいる。


「この基地は必ず我々の手で守って見せる!」


 リーザー連合軍の兵士達も必死に対応し、次々に敵機を撃墜していく。

 だが、運悪くこのタイミングで敵の増援が来てしまう。


「まずい! 増援部隊が来た! バーニングスラッシュで薙ぎ払うぞ、リュウタ!」

「分かった! イカロスナイト」


 イカロスナイトの咄嗟の判断で何とか増援の大半を撃墜することに成功する。

 それでも浮遊大陸軍は攻撃をやめることはなく、しつこく攻撃を続けた。


「ラゼック、敵を引き付けるぞ」

「了解! 任せてくれ」


 ラゼックはクラークスピアーの指示通りに敵部隊を上手く牽制し、攻撃範囲に入るようにする。

 そして、クラークスピアーはタイミングを見計らったうえで槍をしっかりと構える。


「来たか! スプラッシュプランジだ!」

「しまった! そんなァァッ!!」


 その時、槍から閃光にも似た激しい水流が複数の敵機に刺突。それらの敵機は轟音と共に爆発した。


「バウル、メナン、撤収するぞ」

”了解!”


 オスリクタ隊などを筆頭とする数少ない残存部隊はそのままこの基地を後にした。



 戦いが終わり、何とか基地を守ることが出来たことに達成感を覚えたリュウタとラゼック達は、今後どうすべきか迷った。


「今後自分たちはここに残るべきでしょうか。ウェインさん……」


 リュウタは様々な感情が入り混じっているかのような表情を浮かべていた。


「まぁ、君達の好きにするがいい。本当に共に守ってくれてありがとう。お礼に1万ガニムを君たちに渡そう」

「えっ、そんなに貰っていいんですか!?」


 ラゼックはそのことに驚嘆した。彼は以前から各地の護衛任務を任されていたが、貰えた金銭はごく僅かであったのだ。


「1万ガニムあれば、生活には困らないと思うぜ」

「なぁ、ラゼック。1万ガニムって、どれくらい凄いんだ?」


 リュウタは不思議そうな表情で尋ねた。


「まぁ、各地を飛び回るための旅費は当分大丈夫そうなくらいだな」

「なるほどな! つまり、当分は安泰ってことだな。さっきウェインさんが言ってたソリテキア大陸にもすぐに行けそうだ! ありがとうございます、ウェインさん」

「お礼は要らんよ。とにかく、今後はこれで同士と出会えるといいな」

「はい」


 こうして二人は、次元転移者を集めるための旅を再開した。

 今後、彼らのもとにどんな出来事が待ち構えているのか。それはまだ誰も知る由もない。

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