第24話 終結の時
ついに両軍は最終決戦に向けての戦闘態勢をわずか一週間ほどで整え、リュウタ達もその間に英気を養った。そして、時空暦も跨ぐこととなった。
「ついに戦いのときは来たか……」
ゲイリーは並び立つMHを見つつ呟く。
「ゲイリー中佐、顔色の方が……」
「ソロスか。気遣ってくれてありがとう。私の心配より、自分のことを優先しろ」
しかし、ソロスはかなり不安そうな表情であった。
「はい、でも……」
「私の事は大丈夫だ。さぁ、早い所MHの最終調整をするぞ」
「了解!」
時を同じくして、リュウタはマナと二人で屋外スペースで夕日が沈むのを見ていた。
「なぁ、マナ……」
「どうしたの? リュウタ」
リュウタのその時の表情は辛そうな面持ちであった。
「俺、こうして巡り巡っていろんな人と出会えたけど、また離れ離れになるのかって思うと、少し寂しいんだよな」
「そうね……。私もよ。この戦いが無事に終わったら、たぶん私たちは離れ離れ。もう会う事はないのね」
二人が哀愁に浸っていると、ラゼックとバルティックがそこへと駆けてくる。
「おい、二人共!」
「あっ、ラゼック! それにバルティックさんも……」
リュウタは二人の顔を見て尚更切なくなる。
「夕食冷めちまうぞ。早く行こうぜ」
「おう、分かった」
軽く頷いたリュウタ。それでも彼の顔は暗そうであった。
「じゃあ行きましょ」
そして、四人は屋内に戻り、夕食を食べにカフェテリアスペースへ向かう。
翌日、ついに最終決戦の日はやって来た。死を恐れうなだれる兵士もいれば、敢然とした態度でMHにすぐに乗り込む兵士もいたりと、実に三者三様であった。
リュウタ達は飛行空母に乗り込み、カタパルトで集結した。
「イカロスナイト……、行こう!」
「おう!」
すると、ラゼック達三人もリュウタ達の元へ駆け寄る。
「俺達も忘れんなよ!」
「そうよ、抜け駆けは無しよ」
「最後まで生き延びて、必ず……」
三人の言葉を聞き、リュウタの口元は少し緩くなる。
「みなまで言うなよ、バルティックさん。皆、行こう!」
「サモナイズ!」
四人は各々の相棒を実体化し、飛行空母バルクスから降りて戦地へと駆けて行った。
浮遊大陸テラノスの人々は、一般人であれ誰であろうと戦争に召集され、果ては学生待てもが銃を握らされた。とはいえ、幼い子供達は軍の保護施設にて画面越しに自分の家族を見守る事しか出来ない。
これもテラノスの未来のためか────────
この剣呑とした状況の中、最終決戦の火蓋は切られる。
先手を仕掛けたのは浮遊大陸軍。艦隊やMH部隊をフルに稼働させ、攻撃を仕掛けていく。やがて、大陸連合軍の艦隊は、浮遊大陸の上空で次々に撃墜されていく。
「まずい! ブリッジに直撃するぞ……。ウワアァァッ!」
戦艦は撃墜され、そのまま鉄屑と化した。
これに見かねたゲイリー達は、アルドロス・カスタムで敵部隊に挑む。
「何としても、これ以上はやらせん! 行くぞ、ソロス!」
「了解! ゲイリー中佐」
親衛隊は機銃から光線を放ち、敵軍のMH部隊を次々と撃墜していく。
そこへと地上からマナが援護する。
”おぉ、マナ! よく来てくれた”
「ゲイリー中佐にはお世話になりましたからね! 恩返しを私にも……」
マナはサイクロンライフルで狙いを定める。
「慌てるなよ、マナ!」
「分かってるわ、ケルブバスター」
彼女は敵に照準が合った瞬間、光線を一発放った。
「何ィっ! ガハァッ!」
敵機は轟音と共に爆発四散。その後も、マナは親衛隊の援護射撃を行う。
一方、ラゼックとバルティックは敵機動部隊と浮遊大陸にて対峙し、突破口を開くために、ひたすら敵部隊を撃墜していた。
「この数じゃいくら俺達でも持たないぜ……」
「ラゼック、こうなったら『アレ』を!」
クラークスピアーはアクアトライデントを構えて、スプラッシュプランジ・ツバイの態勢になった。
「よし、スプラッシュプランジ・ツバイだ!」
分身が放出され、敵の気を逸らした隙に攻撃を仕掛けた。
敵部隊の数は次第に減っていく。
「俺達も負けちゃいられないぜ! 行くぞ、バルティック!」
「分かった、任せろ。グランドディバイド・ツバイ!」
この攻撃により、地上ゲートの戦闘部隊は殲滅され、いつでも敵軍基地へと突撃できる状態となった。現状はリュウタにも伝え、直ちに彼はラゼック達と合流する。
”リュウタ、聞こえるか?”
「もしかして……」
”あぁ、地上部隊は全て撃墜した! あとはマナを呼んでから基地に突入するぞ!”
ラゼックの必死な声から、リュウタはそれに応じてマナを呼び出して、ついに四人が揃った。
一方、スレインとメナンは浮遊大陸軍基地上空にて、敵部隊の殲滅作戦を行っていた。
その最中でリュウタ達四人が接近していることを知った彼らは、すぐさま覚悟を決めた。
”バウルの仇……、必ず討ちますわ”
メナンは復讐の怒りに燃えて、二本のビームバズーカを両手に構える。
「メナン、無理せんようにな」
”はい。分かっています”
スレインや傘下の部隊と共に、突撃を開始した。
「来たぞ、あいつか……」
「怖気付くなよ、行くぞ、イカロスナイト!」
イカロスナイトはすぐさま二本の剣を構える。
「メタルクエスターめ……。何としても殺す!」
”この私に、あの青いのをやらせて下さい!”
メナンはラゼックと対峙する。そして、二人の間に緊迫した空気が漂う。
「あいつ、本気のようだな。よし、来い!」
まず、クラークスピアーは拡散ビーム砲から光線をメナン目掛けて放つ。
「見切っていましてよ!」
メナンはすぐさま攻撃を回避し、そこからバズーカで光線を発射する。
この攻撃を間一髪で回避するクラークスピアー。そこから右腕を回転させて、アクアトライデントを盾のようにして取り回す。
「なんだよコイツ……」
「クラーク、他の機体も来ているぞ!」
「嘘だろ!? ならまた使うしかないか……」
クラークスピアーは再びスプラッシュプランジ・ツバイを発動させ、敵部隊を分身の相手にさせて、すぐさま殲滅した。
そこから彼は、拡散ビーム砲を再度構えて掃討した。
「くっ……、なんて攻撃力なの?」
メナンにとって、この機体は仇とも言える存在。
何としても倒さなくてはならないという思いを胸に、ただ攻防戦を繰り広げる。
「クラーク! スプラッシュプランジ・ツバイだ!」
「分かった! 任せな」
クラークスピアーは即座に攻撃を繰り出そうと試みる。
「させませんわ!」
メナンは即座に二本のバズーカを構えて同時に光線を発射。
「何ッ!? アクアトライデントが……」
ラゼックは思わず焦る。しかし、自らの武器を破壊されたものの、クラークスピアーには策があった。
「死になさいッ!」
「まだ終わりじゃない! アクアスピア!」
ラゼックはすぐさまアクアスピアを実体化させて、すぐさま後方に下がり構える。
「もう終わりでしてよ……、メタルクエスター!」
彼女は怒りに燃えて光線を発射するも、すぐさまクラークスピアーは軽やかな動きで回避。
「ラゼック! 行くぞ。スプラッシュプランジ・ラピッドを……」
「おう、やった事ねぇけどやるか!」
クラークスピアーは新たな技を繰り出した。
一秒間の内に百数回もの突きを喰らった事により、メナンの機体は致命傷を負う。
「はぁ、はぁ……、この私が……、やられるなんてェッ!」
メナンはそのまま機体と運命を共にした。自分の失敗をひたすら悔いながら────────
一方、リュウタはスレインと一騎討ちを繰り広げていた。
お互いに満身創痍の状態であり、どちらが勝ってもおかしくはない。そんな状況にあった。
「このォッ! バーニングスラッシュ・ツバイ!」
「させるか……!」
ワイバースレイヤーはすぐさま攻撃をダガーで防ぎ、さらにそこから切り返す。
「クソッ、こうなったらこれで!」
そして、リュウタは敵から遠ざかり、ビームキャノンで光線を発射するも避けられてしまう。
「何ィッ! こうなったら『アレ』しかない。行くぞリュウタ」
「おう! バーニングスラッシュ・ドライ!」
イカロスナイトは炎を纏い、そのままワイバースレイヤーに突撃するも、敵側も考えは同じであった。
「こっちもやるぞ、スレイン」
「任せろ、ワイバースレイヤー」
ワイバースレイヤーはダークグレイブに持ち替え、渾身の必殺技であるダークパニッシャーで対抗する。
「このォォッ!」
「ふん、この程度で負けて堪るか!」
お互いに力が拮抗しており、どちらも一歩も譲らない戦い。そこでリュウタは操縦桿を前に動かし、もう一度白いボタンを押した。
「これで決める!」
「何ッ、このスレインが……」
次第に押されていくスレイン。想定外の事態に最早焦ることしか出来なくなっていた。
「トドメだ、斬るッ!」
その時である。イカロスナイトがワイバースレイヤーを一刀両断したのは。
この攻撃を喰らった事により、とうとうスレインとワイバースレイヤーは燃え尽きた。
「この俺が……、奴に負けるなんて……、認めんぞ!」
ついに戦いに終止符を打った瞬間であった。リュウタ達は浮遊大陸軍に事実上の完全勝利を収めた。
数日後、浮遊大陸軍は降伏し、この惑星リーザーに平和が戻った。
国王ノーティスからの提案により、浮遊大陸軍の次元転移装置でリュウタ達を元の世界に戻すことになった。
「地球の座標軸確認、X座標3345、Y座標2231……、」
「次元転移準備は完了したぞ、四人共。今までご苦労だった」
ゲイリーは穏やかな表情で四人の顔を見る。
「イカロスナイト達だけじゃなく、ゲイリー中佐とも別れるのか……」
リュウタは少し寂しい気持ちもあったが、ようやく元の世界に帰れるという嬉しい気持ちも混ざっているという複雑な状態であった。
「リュウタ、今までありがとう。俺達の事を忘れないでくれよ」
「勿論だって。じゃあ、さようなら」
そして、リュウタは次元転移装置のカプセルの中に入り、地球へと戻った。
────────◇────────
リュウタは気が付くと、家の外にいた。晴れ渡る空が眩しく感じる。
すると、リュウタの母がドアを開けた。
「リュウタ、そんなとこで何やってんのよ! もうすぐ学校の時間でしょ!」
「え!? そうか! 早くしなきゃ……」
慌てて彼は部屋で身支度を済ませて、久しぶりに学校へ行った。
リュウタはついさっきまでの別次元での戦いは現実であると信じつつ、また平穏な日常に舞い戻る。
それはきっとラゼック達も同じであろう。




