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METAL QUESTER  作者: 藤沢マサト
第二章 バルガウス前線
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第19話 新たなる力

 ある日、ゲイリーはリュウタ達四人を呼び出し、整備ドックエリアへと向かわせた。

 そこには今まで見たことのない武装が用意されており、四人は思わず唖然とする。


「こ、これは……」


 リュウタは思わずその直後に固唾を飲んだ。


「イカロスナイト達に取り付ける新しいMH(メタルヒューマノイド)用のアタッチメント式の武装だ」

「でも、これをどう取り付けるんですか?」


 ラゼックは首を傾げつつも、鉄製のパネル上に置かれた武装をまじまじと見つめる。


「これか? そういえば教えていなかったな……。お前たちの機体腕部にはウェポンギアと呼ばれるハードポイント……、要は拡張武装用のジョイントシステムだ。このウェポンギアに目の前の武装を取り付けることで、今までの各機体の欠点を補うことが出来るんだ」


 ゲイリーはマニュアルが映し出されたタブレットを片手に、簡潔により詳細な事もその後に説明した。


「とにかく、このウェポンギアでお前達の相棒をより強化することも楽に出来るって訳だ」

「そうなると、私のケルブバスターの場合は……、近距離用の武器が付くのかしら?」


 自分の物らしき武器を見つめつつ、不思議そうな表情をするマナ。


「勿論。今までは未完成ゆえにまともに使えなかったウェポンギアも、ようやく稼働開始できる……。思えば長い道のりだった……。そうだ、今回、これの開発終了までの短縮が出来たきっかけになった奴を紹介しよう」


 すると、第二開発班の面々と思しき人物たちがやって来た。


「今回の開発計画において……、まぁ、全員頑張ってくれたのは確かだが、特に大きなきっかけを作ったのは、ベンでな……」


 茶髪で眼鏡をかけた三十代ぐらいのエンジニア、彼こそがベン・パーキーであった。


「どうも、初めまして。ベン・パーキーです」


 やや内気そうな見た目をしているが、彼はエンジニアとしての腕は一流である。

 以前イカロスナイト達が大破した際も、彼が修復作業に最前線で活躍した。


「俺はクロガネ・リュウタって言います。よろしく」

「よろしく、リュウタ君。しかし、君たちがイカロスナイトなどのレベル3MHに乗っていたなんてね。驚きだよ」

「ありがとうございます……」


 ややぎこちない表情で感謝するリュウタ。とはいえ、彼にとってこの言葉は嬉しかった。


「ところで、ウェポンギアに装着する武器は上の方にあるやつですかね?」


 ラゼックは、整備ドックの上部を仰ぎつつ不思議そうな顔をする。


「説明してなかったか。まず、イカロスナイトに用意したのは速射ビームキャノン砲だ。これを扱うのには、少々手間取るだろうけど頑張ってくれよ」

「任せてください! ここは俺の腕の見せ所ですよ。ビデオゲームで培った技術が……」

「ちょっと待ってくれ!」


 ベンはすぐさま静止しようと掌を正面にかざす。


「何ですか?」

「戦争はゲーム感覚でやるのは流石に避けて欲しかったんだが……」

「リュウタ……、全く……」


 バルティックは呆れ顔で俯いていた。


「リュウタ君、戦争はゲームと違って人々の命、いや、それだけでなくありとあらゆる事象が関わっているんだ。だからこそ、戦争と言うのは複雑かつ何が正しいのかは一概に言えないんだ。それだけは分かっていて欲しかった」

「すみません……、戦いへの向き合い方を軽んじていました……」


 彼はベンの話を聞いて申し訳なくなった。


「反省しているようならいいんだが、今後は気を付けるようにね」


 リュウタはお辞儀をして謝った。ひとまず苛立ちは心の内だけで納めたベン。

 それを見て、他の面々はやや不安そうに見ていたが、そこでゲイリーが割って入った。


「少し張り詰めてるようだが……、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。もう解決しましたし」


 先程とは一転、いつもの明るい表情が戻ったリュウタ。


「それならいい。話は変わるが、他にも紹介したい部下は沢山いるものの、また今度の機会だな」

「はい、ゲイリー中佐」


 すると、ゲイリーの部下の一人が手を挙げた。


「あの、自分に武器の解説を……」

「おお、ジョージ。頼むぞ」


 ゲイリーは軽く頷く。彼の部下のジョージは、実に生真面目な性格であった。


「イカロスナイトの追加装備はもう紹介しましたね。で、クラークスピアーの方は拡散ビーム砲となっております。特徴としては、一度に複数の敵を狙い撃つことが出来るということ」

「なるほどね……」


 その話を聞いて、ラゼックはその装備をまじまじと見つめる。


「次に、ケルブバスターの追加装備は両腕に装備したビームクローです。出力変更である程度リーチを変えることが出来ます。場合によってはビームソードのような使い方も可能なので、やってみてください」

「はい、任せてください!」


 マナは自信を持って頷いた。


「最後に、ミノスソルジャーのものは両肩の二連装長距離砲となっています。この装備はミノスソルジャーの弱点である遠距離からの対処が苦手と言うポイントを補っています。戦艦の主砲の技術を一部取り入れ、見事小型化出来ました」

「それは凄い……。俺は元々軍隊出身だが、そこまでの技術がメガリアにあったとは」

「そうだったんですね。よろしく頼みます」


 バルティックとジョージは互いに笑顔であった。


「ひとまず、今日はこの武装のテスト運用を行いたいのだが、準備は出来ているか?」

「私はいいですけど、リュウタ達は?」


 マナは比較的扱いやすい武器なのだが、リュウタ達三人は扱いが難しい装備を任されていた。

 そのため、少し危惧しているような面持ちである。


「大丈夫だよ、マナ。しっかりやって見せるよ」

「そう、ならいいんだけど」


 それでもマナは、やや不安な雰囲気は消え切っていないようである。


「リュウタ、俺は正直言うと射撃が苦手でな……。アシスト頼む」

「分かった。でもお前ってバルカン砲が……」

「あれはな、体の一部みたいなもんだから話は別。新しい武器を外付けするとなると尚更不安だよ」


 イカロスナイトの口調からして、かなり不安であることが窺える。

 しかし、そんな彼の想いと裏腹に事態は急転した。


”浮遊大陸軍の戦闘部隊が接近! 繰り返す! 浮遊大陸軍の戦闘部隊が接近!”


 なんと、ここに来て敵襲警報が鳴り響いたのだ。これにはリュウタやゲイリー達も焦燥に駆られざるを得なかった。


「嘘だろ……。まさかこんな事になるとは……。試験運用を飛び越していきなり実戦で使うしかないな……。無茶な事なのは分かっているが、今はそれしかない! 四人共、頼む」

「は、はい……。分かりました」

「お互いに幸運を祈る」

「了解」


 そして、リュウタ達は出撃することになった。



 浮遊大陸軍は空中からウイルゾンの戦闘部隊で接近。

 リュウタ達は早速、自分たちの相棒の新たなる力を試そうとする。


「リュウタ、補正頼む!」

「分かってる、任せてくれよ。ターゲットシステム系統は……、これか」


 リュウタは射撃兵装系の操縦システムをコントロールパネルで操作し、さらに調整を行う。

 そして、敵機は射程範囲に入った。


「今だッ」

「よし……、これで!」


 放たれた光線はウイルゾンに直撃し、そのまま炎を上げて墜落した。

 しかし、必ずしも物事が上手くいくはずもなく、敵戦闘部隊は編隊のフォーメーションを横V字状から角錐状に変化させ、さらに空中からビームをひたすら浴びせる。


「まずいッ! 格納庫が……」


 地上にあった格納庫は次々に破壊されてしまい、手間取る連合軍兵士たち。

 そこでラゼックが格納庫付近の地上区域から攻撃を図る。


「こうなったら空中の奴らにこれでも浴びせるしかないな」

「クラーク、出来るか?」


 クラークスピアーはあまり自信が無さそうであった。


「任せな、ラゼック。お前はターゲットの補正を」

「オーケー」


 ラゼックは冷静な面持ちで操縦桿を動かし、照準の補正を行う。


「よし、今がチャンスだ!」


 そして、クラークスピアーは拡散ビーム砲で光線を乱れ撃った。

 この攻撃は、敵部隊にかなり大打撃を与える。


「何て奴だ……。今までとは違う武器を持ってやがる!」


 敵の兵士の内の一人は、勇猛果敢に攻撃を仕掛けようと試みる。


「もう一発だ!」


 さらにクラークスピアーは、まだ残存部隊がいたことを確認した上で光線を発射。

 この攻撃により、格納庫付近で攻撃を行っていた部隊は全滅した。



 時を同じくして、マナとバルティックはリュウタ達とは逆方向のゲートで敵を迎え撃っていた。

 敵の機数は多く、なかなか仕留めきれずにいた。


「マナ、どうする?」

「こうなったら……、新しい武器を試させてもらいましょう!」


 ケルブバスターは早速ビームクローを展開し、遠距離ではなく近距離で攻撃を仕掛けてみる事にする。


「私はこういうの慣れてないけど、やるしかないわね」


 マナは目を尖らせてリボルティムで構成された部隊に突っ込んだ。


「来たぞ! 撃てェッ!」


 ケルブバスターは機動性が高いという事もあり、素早い攻撃で敵を翻弄していく。

 窮鼠猫を嚙む状態にいた彼女たちは一転して、優位に立っていた。


「何て早さ! ウワァァァァッ!」


 敵機は一刀両断され、機体はそのまま火花を散らして倒れた。


「マナ、格闘性能に関しては自信はないが、ひとまずこの調子でやっていくぞ」

「分かったわ」


 すると突然、バルティックから連絡が入る。


”マナ、聞こえるか? 防衛ラインが危うい! 早く来てくれ!”

「場所は?」

”東ゲートの三連砲が多数並んでいるエリアだ!”

「了解!」


 マナはすぐさま防衛ラインへと駆けて行く。

 しかし、そんな彼女をしつこく攻撃して来る敵もいた。


「へへっ、遠距離攻撃をして来なくなったおかげでこっちは余裕だぜ」

「何よ! 今は忙しいのに……」


 マナはすぐさまビームクローの出力切り替えを行い、ソードモードにした。

 これには敵も驚かずにはいられなかった。


「何だ? 来い!」

「一気に斬りかかれ! 行けェッ、マナ!」


 マナは操縦桿を素早く前に倒して、敵に接近しようと試みる。

 ケルブバスターは、疾風のように凄まじい速さで斬りかかった。


「クソォ……、この俺が!」


 機体は倒れた後に爆発四散し、そのままマナは再度目的地へと向かう。



 一方でバルティックは、何とかゲイリー達と共にこの場を持ち堪えていたが、攻撃が激しいゆえに苦戦を強いられた。


「このままでは……」

「バルティック! 俺の長距離砲で空戦部隊を……」

「出来るか?」


 バルティックはやや不安そうな顔つきをしていた。


「あぁ、出来るさ」


 ミノスソルジャーは自信に満ち溢れている。


「分かった、やるか」


 そして、ミノスソルジャーの二連装長距離砲が火を噴いた。

 その圧倒的火力は、空戦部隊にかなりの打撃を与えた。


”流石だな、バルティック。命中率も抜群だ”


 ゲイリーは戦いつつも、バルティックの技量に感心した。


「ありがとうございます。ですが、まだ敵はいるのでね」

”そうだったな。全員一斉掃射!”


 ゲイリー達の掃射により、敵の空戦部隊も怯み始めた。

 そして、このタイミングでマナが合流。さらに彼らの戦力はより確固たるものとなる。


「マナ。来てくれたんだな」

”約束通り来たわ。ちょっと手間取ったけど”


 そして、マナはサイクロンバズーカとショルダーキャノンを使い、凄まじい火力で敵を圧倒していく。


”やるな。流石だ”

「いやいや、これはケルブバスターのお陰ですよ」

”とはいえ君の実力もあるだろう”


 マナは嬉しくなるが、すぐさま脳のスイッチを『敵を攻撃すること』に切り替えた。


「行くわよ、サイクロンブラスト・ツバイ!」

「任せな!」


 ケルブバスターはサイクロンブラスト・ツバイでこの場にいた敵をすぐさま葬り去った。

 しかし、その直後にリュウタ達から通信が入る。


”ゲイリー中佐、現在敵部隊が西ゲートに集中砲火を浴びせています! 早く来てください”


 リュウタは敵の多さに困っており、かなり焦った表情であった。


「分かった。全員西ゲート方面へ向かえ!」

「了解!」


 こうして、ゲイリー達親衛隊やマナ、バルティックも西ゲート方面へと向かう。


「しかし、エネルギー切れになっちまうなんて……。クソッ!」


 リュウタはイカロスナイトのキャノン砲がエネルギー切れを起こしたことにより、悔しさのあまり怒りが込み上げてきていた。


”そんなにイライラするなよ。俺だって切らしてる”

「だってよ……。援護射撃できないんだぜ? 近距離で行ったら、こっちがやられそうだし」


 ラゼックは苛立ちを隠せずにいるリュウタをなだめようとする。

 だが、リュウタはその苛立ちを自らの力に換えた。


「こうなったら、いつも通りで行くか!」

「そうだな、リュウタ」


 イカロスナイトはすぐさまファイアキャリバーとギガ・ファイアキャリバーを実体化させ、二刀流の構えを見せる。


「よし、このまま二刀流でぶった斬ってやろうぜ!」


 ここからはは自分の出る幕だと言わんばかりに見栄を切るイカロスナイト。

 彼の剣の刃は、炎のように赤く燃える。


「何だ? 近接戦闘だなんて無駄なんだよ!」


 敵の兵士はイカロスナイトの方へと機銃を撃ちながら特攻する。


「させるかよ、喰らえ!」


 イカロスナイトは空中から地上へと降下し、X字を描くように敵機を斬り裂いた。

 さらに、これに負けじとクラークスピアーも応戦する。


「俺もサポートしてやるぜ」

「クラークスピアー、助かるな」


 イカロスナイトはクラークスピアーにこの場を一時的に任せた。


「よし、トライデントで一突きだ! 行くぞ、クラーク」

「任せとけよ!」


 そして、クラークスピアーは近づいて来た敵機の胸部に槍を一突きして撃墜する。

 さらに彼は、スプラッシュプランジ・ツバイの姿勢を取った。


「やってやる! 喰らえェェッ!」


 本体と分身の放った攻撃により敵勢の中でも、地上にて攻撃をしていた部隊は殲滅された。

 しかし、空中のウイルゾンで構成された機動部隊はなかなか撃墜するのに手間取っており、リュウタも歯を食いしばる。


「クソッ……、敵機が何機もいるんじゃなぁ……」


 しかしそこへと、大陸連合軍の空戦部隊が接近して空中での戦いは少しずつ優勢になっていく。


「助けに来たぞ、若いの」

”ありがとうございます!”

「礼は後でな。お前も手伝ってくれよ」

”はい!”


 さらにリュウタは、西ゲート上空を舞いながら敵を素早く斬り裂いていく。

 ベテラン兵士のゴルク達が率いている部隊は後方からバズーカで光線を撃ち、敵機は少しずつ減っていった。


「リュウタ、あれを使うぞ」

「分かってるよ、バーニングスラッシュ・ツバイ!」


 イカロスナイトはバーニングスラッシュ・ツバイを使い、敵部隊を一気に十数機も撃墜していった。

 この技の威力も、イカロスナイトが知らない内に増していたのだ。

 その後、全滅回避を図ってか敵部隊は戦術的敗北とみなしてそのまま撤収することになる。

 この戦いでも、何とか大陸連合軍の戦闘部隊が勝利を収めた。



 今回の戦いでは、新たな武装をフルに使えたかと言うと微妙な所ではあったものの、リュウタ達は確かな手応えを感じていた。


「今回はキャノン砲があったおかげで、敵が多い段階でも優位に立てたけど、エネルギー切れは回避できないな……」


 リュウタは深刻な問題にぶつかっていた。この対策を行うためにも、彼はゲイリーにその問題について相談する。

 果たして、彼の心の靄は晴れるのか。

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