第17話 恋人への想い
ある日の夜、バルティックは元の世界へと思いを馳せていた。
友人のこと、家族のこと、そして何よりも恋人のメアリーはどうしているのか。
そういう思いに耽りつつ、今日もまた眠りについてはまた朝を迎える。
朝食を食べている時のこと。バルティックはパンを持ったまま再び過去のことを思い出す。
「どうしたんですか、バルティックさん!」
ラゼックの返事に驚いたバルティック。その後すぐに再度パンに噛り付く。
「最近ボーっとしてることが多いですけど」
「そうか? 気にしないでくれ」
バルティックは仲間とは言え私事に突っ込まれるのが嫌だったのか、首を横に振る。
「はぁ……。どうしたんだか」
ラゼックは最近のバルティックの様子に見かねていた。
一方、バルティックは昔のことにいつまでも囚われてはいけないと思っていたが、どうしても彼の心の黒い霧は晴れずにいた。
彼は元の世界に戻ろうと思っても戻れない────
そのもどかしさに彼は頭を悩ませている。
「俺は、どうしたらいいんだ……」
彼の頭の中には、メアリーだけでなく両親やアメリカ軍の仲間達もよぎった。
「皆、元気でいてくれ……」
この状態に見かねてか、ミノスソルジャーがブレスレットの中から話しかける。
「おい……、バルティック!」
「どうした、ミノスソルジャー」
我に返って目を見開いたバルティック。
「どうしたもこうしたもあるかよ! メアリー達が恋しいんだろ?」
「まぁ……、そうだが。メアリーは心配性な所もあるから尚更でな……。気が気でない。俺はこれ以上元の世界の仲間に迷惑をかけたりなんて……」
この様子にミノスソルジャーは呆れる。
「あのなぁ、今は元の世界に帰るために前に進まねぇと。メアリーや友達が探してるけど帰れないなんて悩むだけでいいのか!? お前がそんなんだと、リュウタ達に示しが付かないだろ。帰るために努力するのが今のお前に出来ることだろ」
ミノスソルジャーは必死になってバルティックに喝を入れる。
「確かにそうだが……」
「またメアリー達に会いたくないのか? そこまでうじうじ言ってると、本当に二度と会えなくなるぞ! いいのかよ……」
その発言に、バルティックは次第に感化された。
しばし無言を貫いた末、バルティックは再び口を開いた。
「そうだな。今はただ元の世界に帰るため、戦いの道を進むしかないか。ミノスソルジャー、お前がそう言うなら……」
「やっと本調子になってくれたか。よし、それでこそバルティックだぜ」
そして彼は、悩みを何とか消し飛ばして自らを戦いの道へと奮い立たせようとする。
バルティックは自身のコンプレックスという名の黒い霧から脱した。
一方、浮遊大陸軍はメガリア王国の中で最も守りが脆弱な、当国南部のグレストにある基地を狙うべく、陸戦部隊を出撃させた。
「さぁ、皆殺しだ!」
ブラスティムに乗った兵士の一人は、ビームバズーカから光線を連射し、敵機を次々と撃墜していく。
「そんな……、このままでは……、ウワァッ!」
「貴様よくも!」
仲間の仇を討つため、連合軍の兵士はブラスティムに対抗する。
「ふん、死ねぇ!」
間髪入れずに光線を発射し、もう一機のレザスも撃墜した。
その後、健闘虚しくこの基地は陥落してしまう。これにより、浮遊大陸軍はグレスト基地を占領下に置く事に成功した。
翌日、このことを側近から伝えられたメガリア王国の国王のノーティス・アムリウスは、当然ながらこの事を快く思っておらず、すぐさま彼はある人物に指令を出すことを決断した。
「ゲイリー、よく来てくれた。昨日のグレストの件については聞いているな?」
「はい……、勿論」
真剣な眼差しでノーティスの話を聞くゲイリー。
「そこでだ。君の率いる第一防衛部隊は、すぐさま占領下に置かれたグレスト基地へと向かい、奪還すること。頼んだぞ、ゲイリー。健闘を祈る」
「承知しました、国王陛下」
ノーティスは自分が国王に即位したばかりの頃からゲイリーの実力を知っており、彼ならやってくれると信じていたのだ。
その後、ゲイリーは国王のいる城を出て、すぐさま部下に連絡した。
この事はリュウタ達四人にも伝えられ、その次の日にグレスト基地へと向かうことが決まった。
翌日、リュウタ達はゲイリー率いる第一防衛部隊と共にグレスト基地へと向かうべく、輸送艦に乗り込む。
数時間後、グレスト付近に到着した。
「よし、全員MHに乗って戦闘態勢を整えろ!」
「了解!」
連合軍各戦闘部隊は、すぐさま東側、西側双方のゲートから突入し、交戦することとなる。
無論、既に浮遊大陸軍側もこのことは察知しており、双方向に護衛部隊で対抗。
こうして、戦いは始まった。
イカロスナイトを駆るリュウタは、輸送船が並ぶ滑走路区域で空中を舞いながら地上に降下しつつ敵を斬り裂いていき、上手く敵部隊を翻弄していく。
「リュウタ! 地上は私とラゼックさんに任せて!」
”分かった、マナ。じゃあ俺は先に行くぜ”
高速飛行しながら、イカロスナイトは西側へと向かって行った。
「邪魔しないで! サイクロンブラスト・ツバイ!」
マナはケルブバスターに地上から攻撃を繰り出させ、上空にいた敵部隊を殲滅。
そのまま彼女は、地上の敵に再度照準を向けた。
一方でラゼックは、アクアトライデントを軽々と振り回して盾代わりにしつつ、隙を狙っては胴部キャノン砲から光線を放って、上手くマナの射程範囲へと牽制していた。
「よし、このままスプラッシュプランジ・ツバイで突っ込むぞ!」
「オーケー!」
スプラッシュプランジ・ツバイによって分身が生み出され、その分身もアクアトライデントで敵機を貫き、敵地上部隊をある程度片付ける事に成功する。
「この調子で片付けていくぞ、マナ!」
”分かったわ”
そして、突如として連合軍の兵士から通信が入った。
”ラゼック、ここは我々が一斉掃射で片付ける! 先に行け”
「了解!」
その後、滑走路区域の敵部隊はレザスやアルドロスで構成された戦闘部隊の手によって、集中砲火を喰らった事により全滅した。
一方、リュウタはバルティックと合流し、互いの利点と欠点を上手く理解した上で戦闘を行っていた。
西側の高射砲密集地帯には空戦部隊もおり、戦闘においてはやや苦戦している状態にあった。
ここにはゲイリーもおり、彼もまた苦戦する。
「イカロスナイト、バルカン使うぞ!」
「分かった!」
イカロスナイトは敵の死角に回ってバルカン砲を発射。
この攻撃は一機のウイルゾンに被弾。
だが、負けじとその敵機はビームソードを取り出し立ち向かう。
「喰らえ、コイツめ!」
「させるかよォ!」
すぐさまイカロスナイトはシールドを取り出し攻撃を防いだ。
そして、防いだ直後にすぐさまギガ・ファイアキャリバーで敵機を真っ二つに切断する。
「ウワアァァッ!!」
機体の破片は炎に包まれながら、地上に落ちていった。
その中でバルティックは、グランドアックスとツイン・グランドトマホークを併用して地上戦闘部隊と交戦していた。
「ゲイリー中佐、ここは先に最奥部へ行って下さい!」
”分かった、ここは任せる”
そして、ゲイリーが率いる第一防衛部隊は先に基地最奥部へと駆けて行った。
「ミノスソルジャー、グランドディバイドだ!」
「オーケー!」
地上の敵を上手く牽制した上で、グランドディバイドを放った。
「何ィ!? グアァァッ!」
この攻撃によって敵戦闘部隊は一瞬にして殲滅される。
その直後にミノスソルジャーはOSが自動的に強化された。
「よし、このまま行こう」
バルティックは戦意に満ちた目で操縦桿を握る。
「任せな! 早い所ゲイリー中佐を助けないとな」
こうして、バルティックは鉄塔がそびえ立つ基地最奥部へと向かった。
一方、リュウタ達は既に基地最奥部で敵部隊と交戦状態にあり、ラゼックやマナもここで戦闘を繰り広げていた。
バルティックはそこへと合流し、敵の殲滅に追われる。
その中でゲイリーはビームライフルを構える。
「ターゲット、確認! 発射!」
彼の標的は、高所にいる三機のリボルティム・スナイパータイプであった。
この三機を一発も外すことなく撃墜する。
その後、リュウタに指揮官機撃墜を、バルティックに残存戦力の殲滅をするよう合図を送った。
「分かりました、至急撃墜します」
「リュウタ、バーニングスラッシュ・ツバイを使うぞ!」
イカロスナイトは既に覚悟は出来ているようである。
「分かったよ、行こう」
「メタルクエスターか! 倒してやる!」
指揮官機のウイルゾンは、ビームソードを取り出して攻撃しようと試みる。
「やってやろうじゃないか! 喰らえ!」
炎を纏ったギガ・ファイアキャリバーの刃は、指揮官機のウイルゾンを真っ二つに斬り裂いた。
「そんなァ! まだ死にたくない!」
敵兵士の健闘も虚しく、機体はそのまま爆発四散する。
時を同じくして、バルティックは地上戦闘部隊と交戦していた。
「そこッ!」
「なにィッ!? ウワァァァッ!」
ミノスソルジャーはグランドアックスで敵機をすぐに真っ二つにして、そのまま次の敵の方へと向かう。
「これだけの数を相手にするのは困難だな…」
バルティックはモニターに映る敵の軍勢を見て苦悶している。
そこでミノスソルジャーは一つ提案をした。
「バルティック、グランドディバイド・ツバイを使うぞ!」
「出来るのか?」
バルティックはやや困惑していたが、そんな暇は無かった。
『やるしかない』という言葉が彼の脳内に浮かんだ。
「勿論だ」
「白いボタンを押せばいいんだな」
「察しが良いな。そうと決まれば……、行くぞ!」
グランドディバイド・ツバイを繰り出したことにより、敵戦闘部隊は一瞬にして殲滅された。
この技はツイン・グランドトマホークを投げて敵を斬り裂きつつ、グランドアックスを瞬時に持ち替えて十字に斬るという強力な技である。
バルティックは敵を倒し終えて、空を仰ぐ。
「やったな!」
「お前のお陰だよ。さぁ、輸送艦の方へ戻ろう」
こうして、今回の戦闘も大陸連合軍の勝利となった。
しかしながら、その様子を浮遊大陸軍が黙って見ているわけではなかった。
より強力な戦闘部隊を編成すべく、兵士達に特殊訓練を課していたのだ。
果たして、この兵士達の実力や如何に。




