第14話 レベル3MHの秘密
メガリア王国の首都は日に日に復旧していき、現段階だとインフラもある程度襲撃以前の状態まで回復した。その中で、リュウタ達も他の兵士達と共に瓦礫の片付けなどを手伝っていた。
「それにしても、たった約一週間でここまで復旧するとは……。嬉しいことだ」
その様子を見ていた立派な口髭を生やした人物はメガリアの国王、ノーティス・アムリウスである。
彼はゲイリーと国王の座に就いたばかりの頃からの仲であり、ゲイリー達の働きぶりには非常に驚いていた。
「ノーティス国王、お久しぶりです」
ノーティスの姿を見た兵士達は敬礼をした。
「やあ、君達も元気そうで何よりだ。それよりも、この戦いで死んでいった者たちの事を思うと……」
「その気持ち、お察しします。我々の力をもってしても、全員の命を守れなかったことは悔やんでおります」
「うむ。この現実は受け入れざるを得ないな」
やや悲し気な顔つきで、ノーティスは俯く。
彼は元々平和主義者なのだが、テラノス大陸にあらゆる和平交渉を結ぼうとしても聞く耳を持たなかったが故にやむなく戦いの道を選んだのだ。
その後もノーティスの視察は続いた。
一方、リュウタ達はゲイリーと客室にいた。前回の戦いの事などの話をする中、リュウタはとある話題を切り出した。
「ゲイリー中佐、お話が……」
「今度は何だ?」
ゲイリーはリュウタ達からの様々な質問にひたすら答え続けており、彼は仕事での疲労もあってか疲れていた。
「レベル3MHには、何故人間が乗る必要があるんですか?」
その質問を聞いた途端に、ゲイリーはニヤリと笑みを浮かべた。
「いい質問だ。これにはちゃんとした理由がある。まず、レベル1MHは完全に人間が制御しなくてはならない。その次のレベル2は簡単な行動しか取れず、戦闘を行うには人間がコックピットに乗り、制御する必要がある。そして本題のレベル3MHだが、レベル3は完全に意思を持っているが、人間が搭乗していないと完全に性能を発揮することは出来ないのだよ」
「それは何故ですか?」
リュウタは前のめりになってゲイリーの話を聞く。
「人間特有の生命エネルギーと、レベル3MHのAIシステムが共鳴することによって、MH単体の戦闘能力が向上する……、これをシナジーシステムと呼ぶ。つまり、一人と一機の連携によって攻撃能力、機動性などの様々な力が強化され、これで初めて百パーセントの力を出すことが出来るのだ」
「なるほど……。シナジーシステムですか……」
シナジーシステムとは、レベル3MHに搭載された連携AIシステム〈DUAL〉が持っている戦闘能力向上機能である。パイロットの熟練度によって機体の性能は飛躍的に上がるというもの。
リュウタ達はまだ熟練の度合いが完全ではなく、そのために本来の力を引き出せずにいた。
それに見かねたゲイリーは、苦肉の策として機体そのものを強化したのだ。
「それと、何故イカロスナイト達がそれぞれ違う国にいたか。これについて引っかかるんだけどよ……」
ラゼックは顔をしかめつつ、自身の顎に手を添える。
「あぁ、これにははっきりとした理由がある。彼らは元々対浮遊大陸軍用の護衛部隊の指揮官機のような存在でな。元々本来の搭乗者が四人いたのだが、度重なる戦いで全員死んでいった……。イカロスナイト達はそれ故に君達を必死に守ろうと頑張っている」
「だからあの時……、私達を……」
マナは以前の激闘を思い出し、驚嘆した。
「俺達はゲイリー中佐のいるこの地じゃなきゃ……」
イカロスナイトは、もしあの時戦っていた場所がメガリアでは無ければどうなっていたかを想像して、恐怖した。
「とはいえ、結果的には敵軍を撤収に追い込めた。今後は君たち次元転移者を元の世界に帰すために協力する代わりに、MH戦闘部隊の一員として戦って貰いたい。いいかね?」
「あ……、はい! やります!」
リュウタは一瞬戸惑うも、すぐに快諾した。
「俺も乗るぜ。この話」
「私もやるわ!」
「俺も戦う。この戦いが果てないものになろうと」
ラゼック達三人も答えは同じであった。こうして、四人と四機のMH戦闘部隊が編成されることになる。
一方、浮遊大陸軍はレベル4空中戦用量産MH「ウイルゾン」の運用を既に開始しており、この機体のみで構成された空戦部隊は、アクライン西部の基地を襲撃することに成功。
この戦果を挙げたのはルガールの部隊であった。彼らは次の攻撃目標をメガリアに定めた。
ルガール達は作戦会議室から出て、横の廊下の休憩スペースで今回の作戦について話す。
「ルガール大佐、今回の作戦も上手くいきそうですね」
「だが油断はするな。一度メタルクエスターの連中を倒したオスリクタ隊の奴らも、撤収に追い込まれたほどだ。戦闘データを分析したところだと、強化されている可能性が高いとのことだ。至急より強力な戦力で対抗せねば」
ルガールは以前、スレインから前の戦闘についての話を聞いており、その事からリュウタ達を危険視していた。エース級の実力を持ったスレインですら苦戦するほどの〈メタルクエスター〉にどう対抗するか。これが今回の作戦の要である。
「はい。随分と顔色が悪いですが……」
「気のせいだ。早く自室に戻ろう」
「了解」
部下一同は、敬礼をした後にすぐさま去って行った。
そして翌日、彼らによる作戦名〈ヒッチコック〉が実行された。敵空戦部隊はバーベットによって輸送されてメガリア首都・マルキエルへと向かう。ついに戦いの火蓋は切られた。
「さぁてと、早速攻撃と行こうじゃないか!」
だが、既にメガリア側は戦闘態勢を整えており、対空戦闘部隊や、量産型空戦MH〈アルドロス〉の戦闘部隊が凄まじいスピードで接近。さらにそこへと遅れる形でリュウタ達も合流。
戦いの役者は全員揃った────────
「リュウタとラゼック、バルティックは近接戦闘で敵部隊を引き付けろ。マナは集中砲火地点付近で、輸送機の中からバズーカで攻撃を仕掛けるように」
ゲイリーから指示が下り、リュウタ達は心身ともに引き締めていく。
”了解!”
リュウタは意気揚々と返事をして、操縦桿を動かす。
「まずいぞ、敵は新型だ! 侮れば真っ先にハチの巣だぞ」
「分かった。なるべくバルカン砲を使って戦うさ」
澄ました表情のリュウタ。彼は拳を軽く握る。
”リュウタ、早く集中砲火地点に引き付けようぜ”
”ラゼックの言う通りだな。やろう”
「任せてくれ」
そしてリュウタとラゼックは各々のMHの内臓火器を使い、敵部隊を引き付ける。しかし、新型機であるゆえに火力及び機動力共に強靭で、即座に撃墜することは出来なかった。
「まずいな……。遠距離攻撃では話にならないぞ。リュウタ、作戦変更!」
イカロスナイトは剣を構えて、即座に敵へと真っ先に突撃する。
「来い! このまま粉々にしてやる」
「させてたまるかよ!」
素早い動きで、リュウタは自らの剣でウイルゾンと剣戟を繰り広げる。
「速い! 動きが速すぎる……。ならこれだ!」
リュウタは咄嗟にイカロスナイトの頭部のバルカン砲を発射。これに敵勢は怯みだす。
「何て戦い方だ……」
「トドメだ!」
剣を素早く横に振りかざし、敵機を撃墜した。機体は墜落し、地上に落ちる前に爆発四散する。
「これで行こう、リュウタ!」
「オーケー!」
リュウタはギガ・ファイアキャリバーを構えてすぐさまもう一機の敵を真っ二つにする。これほどの活躍をしていたのは、リュウタだけではなかった。
ラゼックとバルティックは各々の武器を振り回して、敵機を一機ずつ仕留めていく。
「よし、このまま来い!」
「何をッ!!」
ラゼックは素早く槍を何度も突き、敵機を撃墜する。
「へへっ、やったなクラーク!」
「そうだな」
その最中に、バルティックから通信が入る。
”ラゼック、調子に乗らないようにな”
「分かってるさ」
バルティックはトマホークを投げて上手く敵を牽制し、そこからその隙に大斧で斬りかかる。
「落ちろッ!」
ミノスソルジャーは即座に一対のトマホークで敵機の両腕を斬り裂き、さらに大斧に持ち替えて機体を真っ二つにした。
「機体が……、おのれェ!」
敵兵士は脱出する間もなく機体の爆発に巻き込まれた。
「もうすぐ、敵が例のエリアに……。マナに連絡を取ろう」
こうして戦いは終始優勢のまま、アルドロスで構成された空戦部隊が集中砲火を行うエリアである広大な森林地帯に到着した事により、追い打ちをかけていく事となる。
「来たわね。私たちの番ね!」
「集中砲火、撃てェッ!」
マナや空戦部隊は各々の持つ火器を乱射し、ウイルゾンで構成された戦闘部隊を殲滅に追い込もうとするが、運悪くルガールの率いる本隊はいち早くこの事を察していたため、その攻撃から免れた。
「おのれ……。何という奴だ……」
「機体の損傷度は一割だ。安心してくれ」
ルガールの乗るウイルゾンは、至って冷静であった。
「しかし慣れんな。自分の操縦するMHが人のように話すのは……」
今回の戦闘に関しては、事実上メガリア側の勝利となった。
しかしながら、現段階で彼らが交戦したウイルゾンの詳細に関しては諜報部隊が調べるものの、なかなか尻尾を掴めずにいた。
「しかし、我々でも実現てきていない量産型な上にレベル4タイプ相当と思しきMHを奴らが作っていたなんて……」
「事態は想像より悪化しているようだな。今後も調査を続けよ」
「分かりました。至急戦闘データの分析を行います」
ゲイリーは友軍の諜報兵との通信を切った。果たして、浮遊大陸軍の思惑とは────────
最後に笑うのは誰か。それはまだ誰も知らない。




